私とビスボッチャ:仙田剛さん

『イタリア人に喜ばれる店』

ME AND MY BISBOCCIA

Episode 1:Tsuyoshi Senda

恵比寿にあるアイネックス社のショールームでイタリア製のストールを手にする仙田剛さん

◆プロフィール 

株式会社アイネックス代表取締役社長。ネクタイの企画と製造を軸に、海外ファッションブランドの正規輸入代理店も手がける。百貨店や大手セレクトショップ、アパレルメーカーなどと取り組み、商品を展開している。

アイネックス社ショールームのネクタイ

1.イタリアへの想い

イタリア人にしかできない味がある

初めてイタリアに行ったのは、今から32年前です。28歳のときでした。

北イタリアのコモ湖畔は世界有数のシルク織物産地で、ネクタイ生地を発注するために訪ねました。今は年8回、イタリアに出張しています。

イタリアの魅力は、ネクタイの仕立てでいえば「遊び」だと思います。いわゆる「ゆるみ」や「ゆとり」のことで、その加減がとても上手いのです。

ネクタイの仕立ては、シルクで芯地を包み、裏で縫い閉じるシンプルなものです。イタリア人が包むと、ふんわり柔らかく仕上がります。こうしてできたネクタイの結び目は、丸みのある立体感が大きく、首まわりを魅力的に見せてくれます。

日本人は几帳面で、ネクタイも折り紙のようにキチンと仕上げるから、どうしても平面的になりがちです。ほんの数ミリのちがいですが、国民性があらわれます。

こうした仕上げの雰囲気を、ファッション業界でも「味」という言葉で表現します。イタリア人にしかできない「味」があるから、使い続けています。

冬のコモ湖畔

2.イタリア料理の魅力

おふくろの味が好き

イタリアに行くと、ワインが美味しく感じます。レストランに連れて行ってくれるイタリア人が、ソムリエでもないのに何十種類ものワインの味をおぼえていて、料理に合うワインを的確に選んでくれるからです。

そんなひとときに、イタリア人の食に対するこだわりを感じます。日本人で、日本酒の味を何十種類もおぼえている人は、少ないのではないでしょうか。

イタリア料理では、ナポリの料理が好きです。食材を「チャチャッと」炒めただけのものとか、おふくろの味のように、シンプルで素朴な料理に美味しさを感じます。

ミラノで星付きの高級料理店に行ったこともあるけれど、私にとっては、それほど美味しいとは思いませんでした。

ラ・ビスボッチャ店内

3.私とビスボッチャ

イタリア人から美味しいと言われる

ビスボッチャはここ数年、より美味しくなったと思います。お世辞じゃなくて。

イタリアでお世話になったイタリア人が来日すると、ビスボッチャに連れて行きます。みんな美味しいと言います。

たとえば、日本人がイタリアで「うどん」を食べるとします。美味しいと思う店は「あ、ここは日本の味のツボをよく心得ているな。日本が懐かしいな」と感じているはずです。イタリア人はビスボッチャの味を、そんな感覚でとらえていると思います。

注文を取る時、食材をワゴンで運んできて、旬のおすすめを紹介するサービスも良いと思います。その中でも、私のお気に入りメニューは「自家製ソーセージの炭火焼き」です。口に含むと、大粒の粗挽き肉がボロボロ崩れる醍醐味は、唯一無比の存在です。そんなことを語っていたら、また食べたくなりました。

自家製ソーセージの炭火焼き

井上料理長コメント

いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。

イタリア人から美味しいと言われると、嬉しいです。これからも味がブレないように精進します。

ソーセージをたくさん作ってお待ちしております。

 

監修/料理長・井上裕基 写真・文/ライター織田城司

インタビュー:2018年9月28日