第43回 SAYONARA HEISEI FAIR
イタリアンで振り返る平成
平成5年(1993)に開業したビスボッチャの歴史は平成史と重なります。
4月15日(月)〜30日(火)、開業時から親しまれている定番メニュー34品に復刻メニュー2品を加え、サヨナラ平成フェアを開催します。
平成を回顧し、令和を思う機会に、ぜひご利用ください。
解説/料理長 井上裕基・副料理長 露詰まみ
写真・文・エッセイ/ライター 織田城司
Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text・Essay by George Oda
1.平成を彩ったメニュー
開業から続ける定番全34メニュー
平成5年(1993)の開業時から親しまれている定番メニュー全34品。どこか懐かしいけれど、古さを感じない。そんな味に平成の思いをめぐらせ、素敵なひと時をお楽しみください。
(※解説 印のメニューは本コラムで紹介した記事とリンクしています)
前菜
◆前菜の盛り合わせ
◆パルマ産生ハムと季節のフルーツ
◆生ハム、サラミ、モルタデッラの盛り合わせ
◆トマトと水牛モッツアレッラチーズのサラダ
◆花ズッキーニの水牛モッツアレッラ詰めフライ
◆ヤリイカのフライ
※解説→ヤリイカのフライ
◆タコとジャガイモの温製サラダ
※解説→タコとじゃがいもの温製サラダ
パスタ・リゾット
◆アサリのスパゲッティー
※解説→アサリのスパゲッティー
◆フェットチーネのポルチーニ茸入りボロネーゼソース
◆ブカティーニのノルチャ産塩漬け豚ほほ肉入りトマトソース
※解説→ノルチャ産塩漬け豚ほほ肉とトマトソースのブカティーニ
◆パッパルデッレの手長海老ソース
※解説→パッパルデッレの手長海老ソース
◆リングイーネのジェノベーゼ
※解説→ジェノバ風ペーストのリングイーネ
◆自家製オレキエッテのサルシッチャロッソソース
◆リコッタチーズとほうれん草入りラビオリのセージソース
◆魚介入りラビオリのフレッシュトマトソース
◆パルメザンチーズのリゾット
※解説→パルメザンチーズのリゾット
魚料理
◆手長海老の炭火焼き
◆本日の鮮魚とジャガイモのホイル包み焼き
◆本日の鮮魚のアクアパッツァ
肉料理・グリル
◆骨付き牛ロースの炭火焼き
※解説→Tボーンステーキ
◆牛リブロース、ルッコラとパルメザンチーズ添え
◆牛フィレ肉の炭火焼き
◆骨付き松坂ポークの炭火焼き
◆仔羊の炭火焼き
◆自家製ソーセージの炭火焼き
※解説→自家製ソーセージの炭火焼き
肉料理・ロースト
◆牛フィレ肉のトリュフソース
◆牛フィレ肉のスライスとポルチーニ茸のソテー
◆ローマ風サルティンボッカ
◆仔牛のカツレツ
※解説→ミラノ風カツレツ
デザート
◆ティラミス
※解説→ティラミス
◆メリンガータ
※解説→メリンガータ
◆チョコラータ
◆ボスカイオーラ
◆フルーツタルト
2.期間限定復刻メニュー
ペペロンチーノ
◆ニンニク増しの裏メニュー
ぺぺロンチーノは平成初期のイタめしブームの頃、日本で知られるようになりました。シンプルながら、いかにもラテンを思わせる味が「何て美味しいんだ!」と評判になり、大流行しました。
家庭料理に普及すると、わざわざレストランに行くからには、手間のかかった料理が食べたい、というお客様が増え、注文が減り、メニューから外しました。
しかし、熱烈なファンのリクエストで、裏メニューとして生き延びていたのです。
ペペロンチーノが好きなお客様は、ニンニクが好きなお客様が多く見られます。そんなファンのリクエストに答え、ニンニクを増しながら進化したレシピで提供します。
◆ニンニクの美味しさを堪能
ローストガーリックの香ばしい香りとキツネ色が食欲をそそります。
赤トウガラシやイタリアンパセリ、オリーブオイルは控えめで、ニンニクとの一騎打ちを存分に楽しみます。
スパゲッティーに染み込んだニンニクの甘みと旨みは奥深く、ニンニクファンが余韻を楽しむポイントです。
パンナコッタ
◆官能的な食感
パンナコッタはブルンとした弾力と、濃厚なミルク味に官能的な食感があります。
それゆえ、平成初期のイタめしブームの頃、食べたか食べないかの経験値が問われ、ある日突然パッと火が付いたかと思うと、すぐに消えてしまいました。
イタリアでは定番的に親しまれながら、日本では一発ヒットのように扱われた運命に平成らしさを感じ、復刻しました。
◆パンナコッタの生地をつくる
◆フランボワーズソースをつくる
◆濃厚な舌ざわりを楽しむ
出来上がったパンナコッタは、生地の中に見えるバニラビーンズの小さな粒が甘さを予兆します。
フォークをあてると強い弾力を感じ、濃厚な舌ざわりに感じる甘みは、ソースの木苺のシャープな酸味と好相性です。
懐かしいお客様も、はじめての客様も、この機会に本格レシピの味わいをお楽しみください。
カウントダウンプレート
フェア期間中、デザートを注文されたお客様のプレートに、来店された平成入り日付のペインティングサービスを行います。思い出や、撮影などの記念に、ご利用ください。
エッセイ『イタめしブームの現在進行形』
◆プレーバック平成イタリアン
平成のできごとを振り返る上で欠かせないのが「イタめしブーム」です。
平成がはじまった1980年代、市場はバブル景気に沸き、高額の輸入品が飛ぶように売れ、若者はディスコで踊り明かしていました。
そんな享楽的な時代に注目されたのは、人生を謳歌するイタリア人の文化です。イタリアのファッションやインテリア、スポーツカーなどが人気になりました。
イタリアン・レストランも次々とオープンしました。そのとき、イタリア料理はイタリア人シェフや、イタリアで修行した日本人シェフがつくる、本場の美味しさを再現する味に進化しました。
こうしたレストランはトレンドスポットになり、デートに誘うことが流行しました。一連の現象は「イタめしブーム」と呼ばれ、ピークさなかの平成5年(1993)、ビスボッチャもオープンしました。
◆本場の味を極めて
しかし、その頃バブル景気が崩壊。平成7年の阪神淡路大震災で市場はさらに低迷。時代は長引く平成不況に突入。企業の倒産や飲食店の閉店が相次ぎ、「イタめしブーム」も陰りが見えるようになりました。
再びイタリア料理が注目されたのは平成なかば、2000年頃からはじまったイタリア旅行客の増加でした。ガイドブックのグルメ案内も年々充実し、本場イタリアの美味しさを実感する人が広がりました。素朴な旨みに、重めのイタリアン・ワインを合わせる喜びは比類がなく、多くのリピーターを生みました。
イタリア本場の美味しさを知ると、日本にいても食べたくなります。来日したイタリア人も和食ばかりだと母国の味が食べたくなります。そのとき、「そういえば、ビスボッチャがあった。そう!ズバリこの味だ」と感じる人々が集まり、今日に至りました。
ビスボッチャの井上料理長は回想します。「オープン当時はブームに便乗したのではなく、本場の美味しさを再現することを意識していました。このため、メニューはほとんど変わっていません。その味が平成を通して浸透したと思います」
ビスボッチャのイタリア料理に感じる平成とは、本場の美味しさを再現した味と、食文化の本質を楽しむ雰囲気だと思います。
井上料理長は「令和は、より極めた味が求められると思います。老舗レストランになるべく、本場の味を極めてまいりますので、よろしくお願いします」と締めくくりました。
平成の見納めは、
ラ・ビスボッチャのディナーでお楽しみください。