第34回 FASSONE ALLA GRIGLIA
ファッソーネ牛・ランプ肉の炭火焼き
ファッソーネ牛・Tボーンの炭火焼き
ファッソーネ牛・ランプ肉の炭火焼き
ファッソーネ牛・Tボーンの炭火焼き
今年日本に初上陸したファッソーネ牛は、イタリアで一番親しまれている赤身肉のブランド牛です。
今回はその魅力と調理法を紹介します。
精肉したファッソーネ牛を計量する料理長・井上裕基
解説/料理長 井上裕基
写真・文/ライター織田城司
Commentary by Yuuki Inoue
Photo・Text by George Oda
メニューについて
ファッソーネ牛(イタリア COMPRAL社 公式写真)
ファッソーネ牛とは
ファッソーネ牛はイタリア北部ピエモンテ州で生育する中型の白い毛皮の牛で、筋肉質の体格から、赤身肉がたくさんとれます。
地元の牧畜業者がこの牛を区別して呼んだ愛称が品種名になりました。
肉質は、
・脂肪がほとんど無く、コレステロールが低い
・赤身なのに、やわらかい歯ごたえ
・しっかりした旨味がある
などの特徴があります。
仔牛の肉は通常の仔牛よりも赤身が強く、やわらかいのが特徴です。
ファッソーネ牛(イタリア COMPRAL社 公式写真)
調理
塊肉から焼く分の肉を切り分ける
◆肉の旨味を生かすシンプルな調理と味付け
ファッソーネ牛の肉はしっかりした旨味があり、調理は素材を生かす塩、コショウ、オリーブオイルのみのシンプルな味付けで提供します。
シンプルゆえに、調味料や焼き方にこだわり、肉の旨味を最大限に引き出します。
ファッソーネ牛のTボーン。撮影に使用したものは1200g
ファッソーネ牛のランプ肉。撮影に使用したものは200g
火おこし器を使ってガスコンロで着火した炭をグリルに移す
炭火に薪を加え、香ばしい香りを増す
炭は火持ちがよく、灰が少ないオガ炭の「五香備長炭」。薪はイタリア製。ヴァージンウッドの廃材をリサイクルした木材
ファッソーネ牛は赤身が多く、脂肪分が少ないため、焼く前にピュアオリーブオイルをふりかける
炭火の遠火でじっくり焼く。遠赤外線効果で肉汁が中まで循環する
塩をふって味をつける。焼く前に塩をふると塩が肉の水分を吸い、肉が硬くなるため
塩は旨味がたっぷりしてマイルドな辛さのシチリア産自然海塩「エガディ」の細粒を使用
コショウをふる
コショウはフルーティーな香りとまろやかな辛さのカンボジア産完熟胡椒(ライプペッパー)を使用。日本のクラタペッパーが現地で手がけるもので、コショウの実一房からほんの数粒しか採れない赤く完熟した胡椒のみを集めた最高級品
肉を反転させ、反対側を焼く(ランプ肉)
肉を反転させ、反対側を焼く(Tボーン)
炭火に滴り落ちた肉汁の煙が燻製効果になり、肉に香ばしい香りをつける
反対側に塩とコショウをふる
骨を焼く。骨に空いてる穴から髄液の旨味やコラーゲンがしみ出し、肉の旨味が増す
トングを使って脂身に火を通し、パリッとした食感に仕上げる
焼き上がったTボーンからヒレの部位を外す
Tボーンからサーロインの部位を外す
Tボーンから外したサーロイン(左)とヒレ(右)。食べやすい大きさに切り分け、盛り付ける
盛り付けた肉にエキストラヴァージン・オリーブオイルをふりかけ、香りをつける
エキストラヴァージン・オリーブオイルはイタリア南部の特産地・プーリア州にある「ディサンティ」社製。青々しい香りが高い
お召し上がり
ファッソーネ牛・Tボーンの炭火焼き
◆野生の本能を刺激する香ばしさと旨味
炭や薪の香りがついた肉の香ばしさは、原始時代からバーベキューに親しんだ人類のDNAを呼びさまし、野生の本能をゆさぶる感動があります。
Tボーンは、サーロインのしっかりした旨味とヒレのコク、骨に近い部分は濃厚な味わいがあり、部位ごとの食感と味の違いがお楽しみいただけます。
ファッソーネ牛・Tボーンの炭火焼き。サーロインの部分
ファッソーネ牛・Tボーンの炭火焼き。ヒレの部分
ファッソーネ牛・ランプ肉の炭火焼き
ランプ肉は風味が濃厚で、噛みしめるとやわらかく、きめ細かい肉質がすぐに砕け、サラサラした舌ざわりを感じます。
甘味や旨味を中心にしたまろやかな味わいで、後味にコクやほろ苦さを感じる奥深さがあります。
Tボーンとランプ肉の炭火焼きは分厚い肉を焼くと、より味の層が広がり、おすすめです。
ぜひ、大人数で分厚い肉の醍醐味をお楽しみください。
ファッソーネ牛・ランプ肉の炭火焼き
お飲物
赤ワイン「ニッツア D.O.C.G オリム・バウダ」
銘柄/ニッツア D.O.C.G オリム・バウダ
ワイナリー/オリム・バウダ
生産地/イタリア北部ピエモンテ州
ぶどう種/バルベーラ100%
生産年/2014年
◆赤身肉の旨味を引き立てる果実味
ファッソーネ牛の炭火焼きは赤身肉ゆえに、たくさん食べても脂分が少ない後味です。
このため、合わせるワインはガツンと重いものより、果実味が強いものをおすすめします。
こちらのワインは豊かな果実味と酸味がありながら渋みは控えめ。まろやかな口あたりの中辛口で、ファッソーネ牛の旨味を引き立てます。
ピエモンテ州土着の肉とワインによる、味のコントラストをお楽しみください。
ファッソーネ牛・Tボーンの炭火焼きと赤ワイン「ニッツア D.O.C.G オリム・バウダ」
いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。
今宵も、ラ・ビスボッチャのディナーで、楽しいひとときをお過ごしください。