RECOMMENDED SEASONAL MENU 2021 MAY
コラム『味と技』第88回
初夏の爽快メニュー
5月は新緑が輝き、爽やかな風が心地よく感じます。
そんな季節に美味しく感じる、12品のメニューをおすすめします。
メニュー編集・調理/料理人・老田裕樹
監修・調理/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ
写真・文/ライター 織田城司
Menu editing・Cooking by Yuuki Oita
Supervised by Yuuki Inoue Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
⚫︎前菜
1.ブラータチーズとビワのサラダ
メニューについて
◆季節のフルーツをシンプルに味わう
ブラータチーズのミルキーな甘みは、果物や野菜、生ハムなど、幅広い食材とよく合います。
5月は旬の果物、ビワやマンゴー、焼きイチジクなどと合わせ、シンプルなサラダで味わいます。
⚫︎ブラータチーズとは
ブラータチーズは、モッツァレラチーズと同じフレッシュチーズの仲間です。
袋状にしたモッツァレラチーズの中に、とろ〜りとした「ストラッチャテッラ」というチーズを詰めて封をする、手の込んだものです。
ブラータとはイタリア語で「バターのような」という意味です。バターのようにとろ〜りとして、ミルキーな甘みと風味があることが由来です。
⚫︎「ディ・ステファノ」のブラータチーズ
「ディ・ステファノ」社は、イタリア南部プーリア州の親子2代のチーズ職人がアメリカに渡り、カリフォルニア州で生産するチーズメーカーです。
同地の乳牛「ハッピー・カウ」のミルクを使用。干草や穀類、フルーツなど、バランスのとれたエサを与えられ、自由に放牧されて育った牛で、ミルクは濃厚な味わいです。
ひとくちにブラータチーズといっても、質感や味わいは一種類ではなく、豆腐のように、メーカーによって千差万別です。
「ディ・ステファノ」社のブラータチーズは、しっかりした質感と濃厚な味わいが特徴です。
外側の皮は薄くて柔らかく、なかのとろ〜りとした「ストラッチャテッラ」と呼ばれるチーズは、クリーミーでありながら、水っぽくなく、もっちりとして、しっかりした粘りがあります。
皮と中身の質感に差はほとんどなく、一体感があります。味わいはミルキーな甘みと風味が濃厚です。
「ディ・ステファノ」のブラータチーズが購入できる通販サイトのリンクはこちら→「THE FOODS」
お召し上がり
◆みずみずしい果肉とやさしい甘み
種を除いたビワの果肉は、ナイフでサクッと切れる柔らかさで、果汁をたっぷりたくわえています。
ブラータチーズのバターのような風味が、ビワのみずみずしい果汁とやさしい甘みを引き立てます。
2.ブラータチーズとマンゴーのサラダ
お召し上がり
◆さまざまな味が交錯する複雑な甘み
マンゴーの色は黄色が強いオレンジで鮮やか。果肉はねっとり濃厚。味わいは甘みだけではなく、酸味やほろ苦さ、コクが少しずつ現れ、複雑に混ざります。
ブラータチーズのミルキーな甘みが、マンゴーの奥深い甘みを引き立てます。
3.ブラータチーズと焼きイチジクのサラダ
お召し上がり
◆しっかり焼いた皮の香ばしさがポイント
イチジクは幅広くアレンジできるフルーツです。炭火で焼くと、なかの果肉の甘みがジャムのように凝縮され、ブラータチーズのバターのような風味とよく合います。
外の皮は、ポプリの花びらを炙ったような、「甘香ばしい」芳香が絶品。コーヒー豆のロースト香がミルクと合うように、ブラータチーズのミルキーな甘みを引き立てます。
4.パルマ産生ハムとマンゴー
メニューについて
◆イタリア料理を象徴する食材
生ハムの製法は、豚のモモ肉に塩をすり込み、風にさらすだけです。
自然の素材を生かし、シンプルに調理するイタリア料理を象徴します。
イタリア北部パルマに吹く爽やかな風の温度や湿度が、豚のモモ肉を世界最高峰の生ハムに熟成させます。
自然の神秘を感じるパルマ産生ハムの味わいは、そのままでも美味しく、季節のフルーツと合わせても美味しくいただけます。
5月のフルーツは、マンゴーをおすすめします。
お召し上がり
◆とろける塩味はフルーツとも相性抜群
生ハムは、ナイフで押さえ、フォークで引っ張るだけでスルリとちぎれます。
ビスボッチャの生ハムが柔らかく感じるのは、骨付きの原木を取り寄せ、自店で骨を抜き、新鮮な中身を乾く間もなくスライスするからです。
そんな生ハムの熟成香や塩味、旨み、コクは、幅広い食材やワインと合います。
生ハムをマンゴーに合わせると、生ハムの塩味とマンゴーの甘みが、お互い引き立て合います。
5.イワシのマリネのサラダ
メニューについて
◆光りものが主役の清涼感あふれるサラダ
イワシは酢でしめてから、薬味をたっぷり入れたオリーブオイルに漬けてマリネします。
ざっくり刻んだフルーツトマトやルッコラ、ウイキョウのフレッシュ感と合わせ、清涼感あふれるサラダに仕上げます。
調理
◆イワシをしめる
◆イワシをマリネする
◆仕上げる
お召し上がり
◆きりっとした酸味のおつまみ
サラダから、レモンや酢が合わさった爽やかな香りが漂います。
イワシのマリネは、しまった身にオイルがなじみ、ほどよい歯ごたえ。酢じめやマリネ、ドレッシングで重ねた、きりっとした酸味が、さっぱりとした旨みとコクを引き立てます。
フレッシュなレモンを使ったドレッシングが、フルーツトマトの甘みを引き出します。
ウイキョウとエシャロットのシャキシャキとした食感と、ほろ苦さがアクセントになります。
6.カルチョーフィ・アッラ・ロマーナ
メニューについて
旬のカルチョーフィを、温前菜で味わいます。
「アッラ・ロマーナ」とは、ローマ風という意味。カルチョーフィに詰め物をして蒸し煮にする、ローマの伝統的な調理法のことです。
同じローマでも、ユダヤ人街が発祥とされる、カルチョーフィを揚げる調理法と区別する呼び名です。
ローマのレストランを舞台にした映画『星降る夜のリストランテ』(1998年作)に散りばめられた料理ネタのひとつに登場する、ローマの春を感じるメニューです。
調理
◆香草パン粉をつくる
◆カルチョーフィをオーブンで蒸し煮にする
お召し上がり
◆煮汁がしみ込んだ野菜の美味しさ
カルチョーフィは、多彩な食感と味があります。
その味わいは、くったりするまで煮込み、煮汁がしみ込むことで美味しさが増します。
カルチョーフィの外側は、タケノコのようにシャキシャキとした繊維質の歯ごたえで、ほろ苦い味わいがあります。内側はサツマイモのようにホクホクして、ほのかな甘みがあります。
煮汁が染みてドロドロになった香草パン粉を、ナイフでカルチョーフィに塗りながら食べると、より美味しくいただけます。冷えて落ち着いた味も格別です。
⚫︎パスタ
7.イカ墨練り込みラビオリ イカとタコのペースト入り イカとフレッシュトマトのソース
メニューについて
◆旬の甲イカをたっぷり味わう
夏にかけて漁獲の最盛期を迎える甲イカの美味しさを、ラビオリでたっぷり味わいます。
ラビオリの生地は、イカ墨を練り込み、なかに入れるペーストは、甲イカとタコを合わせます。
ソースは、甲イカのスライスにフレッシュトマトソースを合わせます。
調理
◆ラビオリに入れるイカとタコのペーストをつくる
◆ラビオリをつくる
◆ソースをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆イカの香ばしいコクが重なる
ソースやラビオリ、あらゆる角度から、さまざまなイカの香りがたちのぼります。
ソースの甲イカのスライスは、コリコリした歯ごたえで、香ばしさとコクがきわだちます。
ラビオリの生地は柔らかく、練り込んだイカ墨のコクはまろやか。なかのペーストは、イカとタコの粒のポロポロした歯ごたえが心地よく、噛みしめると味が出て、ソースやラビオリの香ばしいコクを追いかけます。
トロトロになったフレッシュトマトソースの酸味と旨みが、重なるイカの味を濃厚すぎないバランスにまとめます。
8.2色のニョッキ・ルンゴのオーブン焼き 和牛のピリ辛ソース
メニューについて
◆新感覚で味わうニョッキ
暑くなると食べたくなる辛い料理を、新感覚のニョッキでつくります。
「ルンゴ」は、イタリア語で長いという意味。食べごたえのある長いニョッキにピリ辛ソースをのせ、オーブンで焼きます。
ニョッキ・ルンゴは、黄色のジャガイモ味と、緑のホウレンソウ味の2色を盛り込み、味を広げます。
調理
◆2色のニョッキ・ルンゴの生地をつくる
◆2色のニョッキ・ルンゴの下ごしらえ
◆和牛のピリ辛ソースをつくる
◆オーブンで焼く
お召し上がり
◆強いソースのパンチをやさしく受けるニョッキのクッション
カリカリに焼けたチーズやパン粉の香ばしい香りが食欲をそそります。
その下から出てくる、ソースの和牛のヒモ肉はじっくり煮込まれ、繊維がほどける柔らかさで、強い旨みがあります。
後味に感じるピリ辛は一瞬で、あくまでも肉の旨みにシフトした控えめのバランスです。
そんな強い味のソースを、ニョッキ・ルンゴがやさしいクッションで受け、絶妙のコントラストを楽しみます。
ニョッキ・ルンゴはもっちりした歯ごたえながら、なめらかに噛み切れる柔らかさで、ソースと一体化します。
黄色のジャガイモ味は、まろやかな香ばしさと、ほっこりした甘みがあり、緑色のホウレンソウ味は、青々しい風味がふんわり香り、ほのかな旨みがあります。
9.タヤリンのバターソース サマートリュフかけ
メニューについて
◆サマートリュフの季節
イタリア北部ピエモンテ州が発祥とされる極細麺、タヤリン。
濃厚な卵の風味と、とろ〜りとバターソースになじむ質感は、トリュフと相性抜群です。
5月はサマートリュフを振りかけて味わいます。
お召し上がり
◆マイルドなトリュフに感じる夏
サマートリュフの香りは、秋冬ものに比べるとおだやかです。
その分、極細麺、タヤリンの卵の風味や、バターソースの旨みとバランスがよく、とろける調和をじっくり味わうことができます。
「これもひとつの夏味」と思う余韻に浸ります。
⚫︎メイン
10.ウサギとフォアグラのファルチート
メニューについて
◆繊細な味の肉料理
ファルチートはイタリア中部で多く見られる、小さな動物の肉を丸ごと使い、なかに詰め物をして焼く料理です。
5月はウサギの肉にフォアグラとハーブを合わせ、繊細な旨みを味わいます。
調理
◆ファルチートの中身をつくる
◆ファルチートを巻く
◆ファルチートを焼く
◆仕上げる
お召し上がり
◆さっぱりした旨みが凝縮
ウサギの肉質は柔らかく、肉汁はサラサラ。味わいは、甘みやさっぱりした旨みを感じます。
旨みは淡白になりすぎることなく、肉をギュウギュウ巻き込んだ効果で凝縮しています。
焼き目の香ばしさとカリカリした食感が美味しさを広げます。
巻き込んだフォアグラの濃厚な旨みとタイムの爽やかな香りがアクセントになります。
白ワインにも合いそうな繊細な味は、初夏にじっくり味わうのが気分です。
⚫︎ドルチェ
11.キャラメルヘーゼルナッツのミルフィーユ
メニューについて
◆キャラメルヘーゼルナッツが極める人気定番の5月スペシャル
イタリアらしい分厚いクリームのボリューム感が人気で、ファンからお取り置きのリクエストが多いビスボッチャのミルフィーユ。
5月はスペシャル・エディションとして、キャラメルヘーゼルナッツ味が登場。
キャラメルヘーゼルナッツのフレークを、トッピングとクリームに加え、甘さと香ばしさを広げます。
調理
◆パイ生地を焼く
◆キャラメルヘーゼルナッツのフレークをつくる
◆クリームをつくる
◆ミルフィーユを組み立てる
お召し上がり
◆ヘーゼルナッツがつなぐ香ばしさのリンク
ヘーゼルナッツの香ばしい風味や旨み、渋み、コクは、キャラメルシロップと好相性です。
そのふたつが合体したキャラメルヘーゼルナッツのフレークは、ミルフィーユに散りばめられ、パイ生地のキャラメルやチョコレートなどと、香ばしさのリンクを次々と広げ、甘さを引き立てます。
サクサクしたパイ生地と、ポリポリしたフレークの食感とともに、分厚くて濃厚なクリームがすすみます。
12.イチゴとイチジクのタルト
メニューについて
◆爽やかな甘みの初夏のタルト
季節の果物をタルトで味わう歳時記のシリーズです。
5月はイチゴとイチジク2種の味を楽しみます。
お召し上がり
◆2種の甘みを味わう贅沢
イチゴの果肉はしっかりして、甘みが強く、酸味は控えめです。
イチジクの果肉はとろける柔らかさで、フルーティな香りが広がります。舌ざわりはなめらかで、甘さは上品で繊細。小花のプチプチした食感がアクセントになります。
2種の甘みの爽やかな余韻に、初夏の季節を感じます。
新緑が輝く5月のディナーは、
「ラ・ビスボッチャ」の、
季節のおすすめメニューで、お楽しみください。