花ズッキーニの水牛モッツァレッラ詰めフライ

第1回 FIORI DI ZUCCHINE RIPIENI FRITTI

解説/料理長 井上裕基

写真・文/ライター織田城司 Commentary by Yuuki Inoue Photo & Text by George Oda

メニューについて

花ズッキーニの水牛モッツアレッラ詰めフライ

今回はアンティパストの中から「花ズッキーニの水牛モッツアレラ詰めフライ」の味と技をご紹介します。 イタリア生まれのズッキーニは、イタリア料理には欠かせない野菜として古くから人々に親しまれてきました。こちらの花びらにモッツアレラチーズを包んで揚げたフライもイタリアの伝統料理で、当店でも1993年の開業当時から続けている人気の前菜メニューです。

食材

ズッキーニ

花ズッキーニ(保形のウレタン入り)

自然に恵まれたイタリアでは、古代より野菜を使った料理が発達しました。その中でも、ズッキーニは新しい野菜になります。 メキシコの先住民が夏のカボチャと呼んでいた野菜が大航海時代にヨーロッパに伝来し、イタリアの農家が細長い形に改良したのが現在のズッキーニのルーツになります。 花ズッキーニは実が大きくなる前の状態で、ちりめん状の薄い花びらが詰め物料理に珍重されてきました。この花は咲いている時間が短く、なおかつ詰め物に好都合な花びらが立った状態になるのは咲き始めの一瞬で、貴重な存在になります。

ズッキーニ前線

花ズッキーニ(保形のウレタンをのぞいた状態)

日本のズッキーニは1990年代に本格的なイタリアンやフレンチのレストランが増えたことから栽培が始まりました。当店も日本の農家で朝咲いた花ズッキーニを、その日のうちに直送してもらい、翌日かその次の日までに提供しています。 花ズッキーニは温暖な気候の条件で咲くので、気温の変化とともに産地も移動して、冬は九州まで南下します。さすがに、真冬はどこでも咲かなくなるので、数週間ご注文をお休みすることがありますのでご了承ください。

水牛モッツアレッラチーズ

アンチョビと水牛モッツアレッラチーズ

イタリア南部の代表的なフレッシュチーズです。水牛乳は普通の牛乳に比べて脂肪分で2倍、たんぱく質で1.5倍と非常に濃く、これを材料にしたモッツアレッラチーズは濃厚な味わいがあります。 ただし、水牛乳は生産量が少ないためモッツアレッラチーズも高価になります。生のため1週間ぐらいしか保存できないので、毎週イタリアから新鮮なものを空輸しています。

調理

詰め

花の中にアンチョビと水牛モッツアレッラチーズのねり物を詰める

アンチョビのフィレを細かく刻み、モッツアレッラチーズとよく混ぜ合わせ、くるみ大に丸め、花びらで包み、先をひねって密封します。

揚げ

衣をつける

揚げ方は花びらの繊細さを最大限に活かすため、あえてあっさり目の材料を選んでいます。 衣は小麦粉と水を混ぜたものにイーストを加え、約1時間発酵させています。こうすると衣の中に細かい気泡ができて、サクサクとした軽い口あたりに揚がります。 揚げ油はオリーブオイルよりも香りの弱いサラダ油を使います。花と実の接合部は折れやすいので、慎重に扱いながら短時間のうちにサッと揚げます。

サラダ油で揚げる

お召し上がり

花ズッキーニの水牛モッツアレッラの盛り付け。一人前2本。写真は2人前。

ナイフとフォークでカットした断面

出来上がったフライは、サクッとした花びら、熱々で濃厚なチーズ、ホロにがいアンチョビのスパイス、種が少なく柔らかくて甘みのあるズッキーニの実など、様々な食感と味のアンサンブルがお楽しみいただけます。 日本の大地を季節とともに移動する花ズッキーニの一瞬をとらえ、全国の産地から厨房へと素早くリレーしながら食卓に提供する味わいは、旬を体感する喜びにあふれています。

お飲物

おすすめのワイン

イタリア白ワイン「ヴェッキエ・ヴィーニェ」

銘柄/ヴェッキエ・ヴィーニェ ワイナリー/ウマニ・ロンキ 生産地/イタリア・マルケ州 ぶどう種/ヴェルディッキオ 生産年/2014年 銘柄のヴェッキエ・ヴェーニェはイタリア語で古木の意味。ワイナリーのウマニ・ロンニ社の中でも樹齢30年以上のヴェルディッキオ種ぶどうの古樹から採れるぶどうで作ったワインです。 樹齢30年以上の古樹はぶどうの収穫量が減りますが、その分残ったぶどうに養分が凝縮しています。このため、出来上がった白ワインは色も味も濃い目になります。 苦味が心地よく残り、野菜やアンチョビとよく合い、お料理のスタートにふさわしい組み合わせです。

イタリア白ワイン「ヴェッキョ・ヴィーニェ」

ラ・ビスボッチャ店内

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