第10回 TAJARIN CON TARTUFO BIANCO

白トリュフのタヤリン(一人前)
解説/料理長 井上裕基
写真・文/ライター織田城司 Commentary by Yuuki Inoue Photo & Text by George Oda
メニューについて
今回は、メインメニューに加えておすすめする季節のメニューの中から「白トリュフのタヤリン」の味と技を紹介します。 「タヤリン」はイタリア語で「細切り」を意味するタリオリーニ(Tagliolini)が、イタリア北部ピエモンテ州で変化した方言です。このため、このメニューは、白トリュフを添えたピエモンテ風細切りパスタの意味になります。白いダイヤモンド

白トリュフのタヤリン(部分)

白トリュフとその断面

白トリュフをトリュフ専用のスライサーで削り、タヤリンにふりかける。
秋の味覚

イタリア北部ピエモンテ州バローロ地区(写真提供/料理長・井上裕基)

自家製生パスタで作るタヤリン(茹でる前の状態)

イタリア北部ピエモンテ州バローロ地区(写真提供/料理長・井上裕基)
食材

パスタマシーンでタヤリンを製麺する料理長・井上裕基。
白トリュフ

白トリュフとその断面。網目状の模様が白トリュフの特徴。

薄くスライスした白トリュフ(一人前相当分)
卵

コトブキ園の「長寿卵」

タヤリンの製麺に使用する「長寿卵」の卵黄
調理法
パスタの生地を作る

卵黄にエキストラバージン・オリーブオイルを加える。

業務用大型ミキサーに卵黄を入れる。ミキサーは日本の調理器具メーカーの老舗・愛工舎製作所のもの。

小麦粉に塩を少々加える。塩はまろやかな塩味と豊かな旨味が広がるイタリア・シチリア州ソ・サルト社の天日乾燥による自然海塩ブランド「エガディ」の細粒を使用。

小麦粉「ラ・トリプロ・ゼロ」

塩を加えた小麦粉をミキサーに入れる。

デュラムセモリナ粉をミキサーに入れる。粉物を液状のものより先にミキサー入れると、ダマが発生しやすくなるので、必ず卵の後から入れる。

ミキサーで生地の材料を混ぜる。いきなり高速で混ぜると粉が飛び散るので、最初は低速で粉と液を混ぜ、頃合いを見て高速に変える。

途中でミキサーを止め、素手で生地の質感を確かめる。

出来上がった生地は、素材をなじませ、乾燥を防ぐためビニール袋に入れる。

ビニール袋の空気を抜く。

30分ほど休ませる。
パスタを作る

製麺に使う電動式パスタマシーン

パスタマシーンは1932年にイタリア北部トリノで創業した調理器具メーカーの老舗・インペリア社のものを使用。

パスタの生地をパスタマシーンに入れるために10㎜ほどの厚さに切る。

生地をパスタマシーンに入れる。

パスタマシーンに内蔵された2本の回転ローラーが生地に圧力を加え、のばしながら送り出す。

パスタマシーンに1回通した生地の断面。生地がのびて厚さが8〜9㎜に減少している。

パスタマシーンに1回通した生地をそろえる。

2回目の投入に備え、生地の向きを90度変える。縦横均一に力が加わり、ムラなく生地がのびる。

2回目の生地投入は、生地を2枚重ねにする。

生地が食べる厚さになるまで繰り返しパスタマシーンに通す。毎回、パスタマシーンの脇に付いているダイヤルでローラーの間隔を調節する。最初はダイヤルの目盛りを10㎜にして、毎回1㎜ずつ減らし、最後は当店のタヤリンの厚さ設定の1㎜になるまで生地をのばす。

1㎜厚までのばした生地。一回で5㎜減らそうとしても生地に段ができたり、機械が壊れることがあるので、丁寧に回数を重ね、徐々に生地をのばす。回数を重ねることで生地が練られ、ムラが減り、ツヤとコシが出てくる。

のばした生地は、戻ろうとする力がはたらき、すぐパスタの細さにカットすると、ねじれやゆがみが生じやすい。このため、生地をカットする前に10分ほど休ませ、収縮を落ち着かせ、表面を乾燥させる。

生地をパスタの細さにカットするため、パスタマシーンにカッターのアタッチメントを取り付ける。

パスタの幅によって取り替えるカッターのアタッチメント。一番左がタヤリン用に使っているパスタ幅1.5〜2.0㎜用のもの。

生地をパスタを食べる長さの18㎝を目安にカットする。

カットした生地をパスタマシーンのカッターに入れる。

生地がタヤリンの幅にカットされて出てくる。

出てきたタヤリンをそのまま落とすと折れたり、くっついたりするので、素手でキャッチして並べる。

パスタマシーンから出てきたタヤリンをなるべく重ねず、広げて並べる。

出来上がったタヤリンにデュラムセモリナ粉をふりかけ、くっつきを防ぐ打ち粉とする。

タヤリンを0.5人前づつ計量する。当店では、お客様の人数によって1.5人前や2.5人前などの注文も受け付けているので、玉は0.5人前の単位で管理する。

計量したタヤリンは折れ目がつかないようにソフトに丸める。

丸めたタヤリンはソフト感を残すため重ねず、パスタボックスの中で横並びに配置する。パスタボックスは重ねて冷蔵庫に保存する。

細くて薄いタヤリンは少しでも乾燥するとすぐ割れてしまうので、一日に必要な分だけ、ほぼ毎日作る。
パスタを茹でる

茹で麺機に岩塩を入れる。

茹で麺機にタヤリンを入れる。

タヤリンを1分30秒で素早く茹でる。
バターソースで和える

フライパンに無塩バターを入れる。

バターを入れたフライパンを加熱する。

バターを焦がさないように中火で溶かす。

パスタの茹で汁を加え、水分と塩味を加える。

バターの風味とトロみを生かすため、ソースの段階ではバターの形が少し残るくらいが理想。

フライパンに茹で上がったタヤリンを入れる。

タヤリンとソースを和える。

パルメザンチーズをふりかけ、トロみと風味、コクを加える。

フライパンの余熱でパルメザンチーズを溶かしながら全体に混ぜ合わせる。

タヤリンをトングで皿に盛り付ける。

ゴムベラを使ってフライパンの底についたタヤリンとソースを残らず皿に注ぐ。
白トリュフのスライスをふりかける

冷蔵庫から白トリュフを入れた容器を取り出す。

容器から白トリュフの紙包みを取り出す。

紙包みから白トリュフを取り出す。

白トリュフの表面に付いている泥をブラシで除去する。泥を全て除去してしまうと白トリュフの乾燥が早まるので、スライスする分の周りにとどめる。

白トリュフのスライスに使うトリュフ専用スライサー。白トリュフの名産地イタリア北部ピエモンテ州アルバで1968年に創業した老舗トリュフ供給会社「タルトゥフランゲ」のもの。

スライサー裏のネジを回して刃を上下させ、スライスするトリュフの厚さを調節する。

スライスのネジに目盛りはなく、刃を親指の腹に当て、厚さをイメージしながら調節する。

白トリュフは削りたてが一番香りが高い。食べる直前にタヤリンの真上から削り落とす。
お召し上がり

白トリュフのタヤリン(一人前)

白トリュフのタヤリン(部分)
お飲物

白ワイン D.O.Cピエモンテ・シャルドネ・ジャローネ

ラ・ビスボッチャ店内

ラ・ビスボッチャ外観