秋の豚肉フェア2018

第32回 FESTA DI  MAIARE 2018

子豚のポルケッタ。

子豚のポルケッタ

自家製ソーセージの炭火焼き

自家製ソーセージの炭火焼き

秋のパワーアップに豚肉

残暑の厳しい初秋は、疲労回復効果の高いビタミンB1を豊富に含む、豚肉を使った料理がおすすめです。 そこで、ラ ・ビスボッチャでは9月14日(金)〜9月24日(月)まで、イタリアの伝統的な豚肉料理を特集したフェアを開催します。 子豚のポルケッタと自家製ソーセージのバリエーションが期間限定で登場します。 この機会をぜひ、ご利用ください。

子豚のポルケッタを焼く料理長・井上裕基(右)と副料理長・露詰まみ(左)

解説/料理長 井上裕基・副料理長 露詰まみ

写真・文・エッセイ/ライター織田城司 Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume Photo・Text・Essay by George Oda

1.メニューについて

フィレンツェの街並み

フィレンツェの店頭。飲食店のウインドウに見るポルケッタ

◆子豚のポルケッタ

イタリアでは古代から豚肉を食べる習慣があり、人びとの生活に欠かせない食材として定着しています。 その中でも、ポルケッタとよばれる豚の丸焼きは、もともと山岳地帯の羊飼いの野営食として発達したワイルドな料理です。 仕込みと焼きに時間がかかるため、今は特別な料理として、お祝いの宴席のメイン料理や外食店のメニューとして親しまれています。 今回のフェアでは、子豚の肉を使った、やわらかくて繊細な味のポルケッタをご用意します。

フィレンツェの店頭。食材店のカウンターの上に置かれたポルケッタ

◆自家製ソーセージの炭火焼き

ソーセージは古代から保存食として発達しました。 当店ではサルシッチャとよばれる生ソーセージを自家製で生産しています。生のため、新鮮な豚肉の風味と旨味、食感が楽しめます。 挽肉の粒の大きさをオリジナルで設定できることも魅力です。当店はトスカーナ地方の伝統の挽肉の粒感を再現して、大きめの粗挽きで作ります。 今回のフェアでは3種の生ソーセージをご用意します。 ①「トスカーナ」トスカーナ地方の伝統の味を再現してフェンネルシードを入れたもの ②「バジル」生バジルの葉がたっぷり ③「アラビアータ」ピリ辛でコクがある 豚肉の豊かな味わいをお楽しみください。

フィレンツェの店頭。肉屋のウインドウに見る自家製生ソーセージ

2.  子豚のポルケッタ

子豚のポルケッタ

調理

子豚から内臓と骨を取り除き、開いた肉に塩・コショウで下味をつける

丸めて焼くため、内臓と骨を取り除いた部分にモモ肉などを詰める

豚肉の中に詰めるローズマリー、タイム、セージ、ニンニクなどをフードプロセッサーでみじん切りにする

豚肉の中にローズマリー、タイム、セージ、ニンニクのみじん切りをふりかける

皮をつまんで豚肉を丸める

丸めた豚肉をヒモでしばる

皮に塩・コショウで下味をつける

肉に調味料や香草の味を馴染ませるため、冷蔵庫で24時間保存する

ポルケッタにかけるソースを作るために、豚肉から取り除いた豚骨をオーブンで焼き、ダシの素にする

豚骨をニンジン、セロリ、タマネギなどの香味野菜とともに煮込んでソースを作る

豚肉にオリーブオイルをかけ、炭火で焼く

オリーブオイルを塗り広げる

豚肉を約2時間かけてじっくり焼く。炭火に滴り落ちた肉汁から立ち上る煙が燻製効果となって肉に香ばしさを加える

ときどき芯温を計り、焼き加減をチェックする

焼きあがった豚肉を切り分け、ヒモを取り除く

焼きあがったポルケッタの断面。皮が焦げすぎず、中心がほんのりピンク色になるのが、おいしい焼き上がりの目安

メインの料理として味わう場合は厚切りにする

お召し上がり

子豚のポルケッタ。ローストポテトとホウレン草のバター炒めを付け合わせた例

さっぱりした旨味と香草のアクセント

香りは香草とニンニクの芳香が混ざり、後から子豚のさっぱりした肉汁の香りが漂います。 子豚の肉はやわらかく、きめ細かい繊維質の歯ごたえを感じます。パリパリになった皮の香ばしさがアクセントになります。 噛みしめるとしみ出す肉汁には、まろやかな旨味と甘味が充実しています。ポルケッタの中に仕込まれた調味料や香草、ニンニクは、肉の中にしっかりと馴染んで、味に深みを加えています。

子豚のポルケッタ。ローストポテトとホウレン草のバター炒めを付け合わせた例

ポルケッタは、薄くスライスしてお出しすることもできます。 前菜として、軽めにお召し上がりいただくこともできますので、ご用命ください。

ポルケッタをスライサーで薄く切る

ポルケッタの薄切り

3.自家製ソーセージ

自家製ソーセージ。焼く前の生の状態。左からトスカーナ、バジル、アラビアータ

調理

ソーセージに使う豚の肩・腕肉、モモ肉、バラ肉をミンチマシーンに入れるため、小さくカットする

ミンチマシーンから出てきた挽肉。大粒の粗挽き。これを基本の挽肉にして、様々な味を加え、バリエーションを組む

「トスカーナ」の挽肉に加えるフェンネルシード

「アラビアータ」は挽肉に辛いペーストとチーズを加える

フードプロセッサーで作った辛いペーストにオリーブオイルを加える

辛いペーストのメインにするイタリアの食材「ンドゥイヤ」。イタリア半島の長靴のつま先に位置するカラブリア州の特産品で、辛くてやわらかいサラミ

ンドゥイヤのパッケージ。カラブリア州の「サン・ヴィンチェンツォ」社のもの。1977年に創業した家族経営の食肉加工メーカー。ンドゥイヤの伝統製法を継承している

ペーストにはカラブレーゼとよばれるカラブリア州の辛い赤唐辛子も加える

「アラビアータ」は辛いペーストとともにスカモルツァ・チーズも加える

スカモルツァ・チーズはスモークされた香ばしくて濃厚なチーズ

挽肉と調味料を混ぜる

挽肉を豚腸に詰める

出来上がった生ソーセージを炭火で焼く。手前からトスカーナ、バジル、アラビアータ

炭火の遠赤外線効果で肉汁が沸騰して、太いソーセージの中心まで火がよく通る

反対側を焼く。煙の燻製効果で香ばしさが加わる

お召し上がり

自家製ソーセージの炭火焼き。手前からトスカーナ、バジル、アラビアータ

大粒の挽肉を、絶妙の焼き加減で

肉汁がソーセージの表面で焼け、揚げ物のような香ばしい香りが漂います。 炭火ならではの焼き加減で、外はカリッと、中はふっくら。 ナイフで切ったソーセージを口に含むと、大きめの粗挽き肉がボロボロ崩れ、生ソーセージならではのダイナミックな食感を楽しみます。 挽肉を噛みしめると、やわらかい弾力の中に旨味とコクが充実しています。

自家製ソーセージの炭火焼きの断面。左からトスカーナ、バジル、アラビアータ

「トスカーナ」はフェンネルシードがアクセントになって、爽やかな香りが鼻に抜けます。 「バジル」はバジルの葉がバサッと崩れ落ちるほどたくさん入っています。青々しい香りは、渋みを感じる落ち着いた味わいになっています。 「アラビアータ」の辛さは最初にピリッと感じるけれど、長く残りません。全体は苦味とコクが充実した濃厚な味わいで、ときどき感じるトロリとしたチーズの旨味がアクセントになっています。

自家製ソーセージの炭火焼き。手前からトスカーナ、バジル、アラビアータ

お飲物

赤ワイン「サンタ・バルバラ  “イル・マスキオ・ダ・モンテ”  ロッソ・ピチェーノDOC」

銘柄/サンタ・バルバラ  “イル・マスキオ・ダ・モンテ”  ロッソ・ピチェーノDOC ワイナリー/サンタ・バルバラ 生産地/イタリア中部マルケ州 ぶどう種/モンテプルチアーノ、サンジョベーゼ 生産年/2013年

豊かな果実味の辛口

グラスに注いだ赤ワインの色は、紫を帯びた濃いルビーレッド。香りはスミレやブラックベリー、チェリー、コショウ、ドライハーブが複雑に混ざります。 なめらかな辛口と余韻に感じる果実味は、豚肉料理の香ばしい香りと旨味によく合います。

赤ワイン「サンタ・バルバラ  “イル・マスキオ・ダ・モンテ”  ロッソ・ピチェーノDOC」と自家製ソーセージの炭火焼き

4.エッセイ

食のこぼれ話『味わうソーセージ』

フィレンツェ の街並み

イタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティ晩年の映画『家族の肖像』(1974年作)にソーセージが登場します。主人公の教授が青年を自宅に案内する場面です。 青年は教授の家の中を見て驚きました。キッチンの天井から、ソーセージや生ハムが、肉屋のごとく大量に吊り下がっていたからです。教授と女中だけで食べるには、数ヶ月かかるはずです。 青年のもうひとつの驚きは書棚の奥の隠し部屋でした。戦争中に母親が政治犯をかくまうために作ったものだそうです。 大量のソーセージと隠し部屋。教授はいつ戦争が起きても困らない用心をしていたのでしょうか。 この物語は、公開当時の1974年を想定した現代劇として作られました。 それから40数年経つ間に、文明は進化しました。建物内の人間を探査する装置ができ、隠し部屋は無用になりました。戦争もミサイルが主力になり、市街戦は幻になりつつあります。 食料は保存技術やコンビニエンスストア、宅配業者の発達から、自宅で大量にストックしなくても不自由しなくなりました。 こうして、ソーセージは保存食のみならず、純粋に味わう食材として注目されるようになりました。 ソーセージの種類は広がり、伝統的な生ソーセージの炭火焼きも、おいしい料理として再発見され、ディナーの食卓をにぎわせています。

自家製ソーセージの炭火焼き

いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。 今宵も、ラ ・ビスボッチャのディナーで、楽しいひと時をお過ごしください。