第22回 BABY DAY 2018.4.15
子供といっしょにイタリアン!
◆ベビーデーのお知らせ
来たる2018年4月15日(日)、赤ちゃんや小さなお子様を連れたお客様を歓迎する「ベビーデー」を開催します。
通常メニューに加え、お子様用メニューもご用意します。
ベビーカーやベビーフードの持ち込みができます。おむつ替え場所もご用意します。
当日の営業時間は17:00〜22:30(ラストオーダー21:00)になります。
◆開催の背景
食を謳歌するイタリアでは、大人の夕食は、子供を寝かしつけた夜9時ぐらいから始まることが習慣になっています。夫婦や友人たちは、夜遅くまで料理を堪能し、人生を語ります。
当店もイタリアに見る大人の食空間をイメージして、普段は小さなお子様を連れたお客様の来店をお断りしていました。
今回の「ベビーデー」は、かねてからのお客様のご要望により、開催の運びとなりました。好評であれば、今後も開催したいと思います。
至らない点もあるかと思いますが、皆さまのご来店をお待ちしています。
解説/料理長 井上裕基・副料理長 露詰まみ
写真・文・エッセイ/ライター織田城司
Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text・Essay by George Oda
お子さま向けイタリア料理
◆子供たちに豊かな風味を
子供に伝えたい食文化のひとつに「食材の豊かな風味」があります。
その点、イタリア料理は、食材の風味を活かした素朴な料理が多く、おすすめです。
◆シェフの子育て経験を活かしたメニュー
お子様向けメニューの開発は、シェフの子育ての経験が活かされています。とはいえ、万人の食育に効果がある、と言っているのではありません。あくまでも、イタリア料理をベースにした、参考事例のひとつと捉えています。
今回は、ベビーデー限定メニューとして、「お子さまディナープレート」と「ベビーシュークリーム」が登場します。
メニューの中には、野菜など、シェフが「子供に食べてもらいたい」と思う願望も含まれています。
お子さまディナープレート
メニューについて
「食材の豊かな風味」が楽しめる、子供用イタリア料理5種のプレートです。
大人と同じ国内外の新鮮な食材をたっぷり使いながら、味付けは子供用にアレンジ。塩コショウやスパイスは少なめ、食感は柔らかめ、具材は小さめにカットしています。
ポテトフライ
◆調理
◆お召し上がり
豪快に揚げたジャガイモの香ばしさは、お子様のみならず、大人の手も伸びます。
中身は、メークイン特有の弾力ある柔らかさで、ジャガイモの風味と甘味、旨味を感じます。後味で焦げ目のほのかな苦味を感じます。
ホウレン草のバター炒め
◆調理
◆お召し上がり
まろやかな芳香、とろりとした食感、甘味と旨味をたっぷり感じる味わい。
ホウレン草とバターを通して、組み合わせの美味しさを堪能します。
ニョッキのクリームソース
◆調理
◆お召し上がり
クリーミーなソースから牛乳やチーズの甘い香りが漂います。
ニョッキを口に含むと、もっちりした食感の中に、ジャガイモや小麦粉の素朴な風味を感じます。ソースはまろやかな口どけで、甘くてコクがあり、ニョッキのあっさりした旨味を引き立てます。
フェットチーネのボロネーゼソース
◆調理
◆お召し上がり
じっくり煮込んだボロネーゼソースから、香味野菜と牛肉の香りが濃厚に漂います。
ソースに使われている新鮮な挽き肉の旨味とコクが、フェットチーネの卵の風味を引き立てます。
ハンバーグのトマトソース煮込み
◆調理
◆お召し上がり
香味野菜に肉汁が溶け合って、いかにも洋食らしい香りが漂います。
味わいは、ハンバーグのまろやかな旨味に、煮汁の野菜のさっぱりした甘味と酸味が加わります。
ベビーシュークリーム
メニューについて
お子様に人気のベビーシュークリーム。チョコレートを加え、ちょっと贅沢に。お子様向けに安心感ある、お酒を使わない製菓法で提供します。
◆調理
◆お召し上がり
香ばしい風味と小さな手持ち感がお子様の注目を集めます。
味わいは、チョコレートのスッキリした苦味が、全体の甘味を引き立てます。
いかがでしたか。
小さなお子様の印象に残らないことも多いと思います。
でも、原風景の片隅に残る味の思い出。その風味とともに刻まれる家族の記憶。
微力ながら、そのお役に立てれば幸いです。
エッセイ:食のこぼれ話『親のこころ』
赤ちゃんが、はじめて映画の主人公になったのは、市川崑監督が1962(昭和37)年に手がけた『私は二歳』でした。
当時の日本は、戦後の復興が一段落して、ようやく暮らしに余裕が出て、ベビーブームに沸いていました。梓みちよが歌う『こんにちは赤ちゃん』がレコード大賞を受賞したのもこの頃です。
この映画の主人公ターちゃんも、そんな家庭に生まれた一歳八ヶ月の男の子でした。
ある日、お母さんが美容院から帰ると、ターちゃんが残した昼食を見つけました。食パンや玉子焼き、牛乳、ヨーグルトはほとんど手つかずでした。お母さんは血相を変え、留守番をしていたお父さんに詰め寄ります。
お母さん「ダメじゃない!全部食べさせなくちゃ」
お父さん「食わねえんだよ。何を言っても」
お母さん「熱意が足りないのよ。どうしても、これだけは食べさせて、大きくしてやりたいという、親の愛情が足りないのよ」
お父さん「冗談じゃないよ!俺だってターちゃんのために、汗水たらして柵作ってんだろ」
お母さん「私はターちゃんにご飯食べさせるのに毎回1時間はかかるのよ。用意に30分。合計4時間半。あなた、会社で仕事してるの、正味4時間ぐらいでしょ。あとはタバコ吸ったり、野球の話をしたり」
時には、お婆ちゃんも加わってお父さんを総攻撃。その恐怖感は圧倒的な迫力です。その様子を見ていた、ターちゃんの心の声がナレーションでかぶります。
ターちゃん「お父さんは、お母さんとお婆ちゃんにさんざん叱られた。男というものは損だ。いくら叱られても、やっぱり会社に行かなければならないし、月給は持って帰らなければならないんだ」
ブラックユーモアに満ちたシナリオは、市川崑監督の夫人、和田夏十によって書かれました。当時二人の間には二歳になる娘がいました。なるほど、子育ての描写が上手いわけです。
市川崑監督は自分で子供を育てると、はじめて親の苦労がわかり、親への感謝の想いを込めて、この映画を作ったそうです。そして、子育ての場面の積み重ねの中に、親、子、孫へと続く「人間のつながり」の尊さと、生きる楽しさを描きました。
ターちゃんの世代が還暦を迎える間に、日本の食文化は東京オリンピックや大阪万博、バブル消費、海外旅行ブームなどを経て、世界各国の料理を受け入れながら成熟しました。
豊かな感受性と表現力を育てる、幼い頃の味の思い出も国際化。イタリア料理もそのひとつとして、「人間のつながり」とともに、継承されています。
いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。
今宵も、ラ・ビスボッチャのディナーで、楽しいひとときをお過ごしください。