EASTER FAIR 2022
コラム『味と技』第109回
春の訪れとともに楽しむイースターをテーマにした「イースターフェア」を3月21日(月)〜3月31日(木)まで開催します。
イースターのモチーフを使った期間限定メニューが6品登場。料理に感じるイースターの気分をご堪能ください。
監修/料理長・井上裕基
編集・写真・文/ライター 織田城司
Supervised by Yuuki Inoue
Edit・Photo・Text by George Oda
⚫︎前菜
1.魚介と豆のミモザサラダ
魚介と豆のミモザサラダ
メニューについて
イースターの復活のシンボル、卵を使い、春に咲く黄色い小花、ミモザをイメージしたサラダです。
魚介や季節の野菜を合わせ、彩り豊かに味わいます。
調理
メニュー提案・撮影調理 料理人・老田裕樹
◆卵の下ごしらえ
茹でた卵の殻をむく
卵は神奈川県産の「長寿卵」。卵黄がオレンジ色で味に深みとコクがあり、イタリアの卵の質に似ていることから使用
卵をマッシャーで細かくする
卵に塩とコショウで味をつける
◆仕上げる
魚介をレモンや白ワインで味をつけながら茹でる。ヤリイカは国産
エビはニューカレドニア産の天使のエビを使用
エビの殻を部分的にむく。頭と尾は飾りで残す
ヤリイカを輪切りにする
ボウルに茹でたソラ豆とピゼッリ、ヤリイカを入れ、塩コショウで味をつける
ソラ豆は鹿児島県産を使用
ピゼッリはイタリア産のグリーンピース。強い甘みが特徴。春が旬で、みずみずしさを保つために、さや付きのフレッシュタイプを空輸する
白ワイン酢とエキストラヴァージン・オリーブオイルでつくるドレッシングと和え、エビと盛り付けて完成
お召し上がり
魚介と豆のミモザサラダ
◆卵で華やぐ春のサラダ
サラダに振りかけた小さな卵は香ばしく、黄色は花のようで、春らしさを感じます。
魚介の磯の風味や旨み、豆の香ばしさや甘みが互いに引き立てます。
イタリアらしいシンプルなドレッシングの酸味が、サラダの味を引き締めます。
魚介と豆のミモザサラダ
魚介と豆のミモザサラダ
ラ・ビスボッチャ店内
2.アニメッラとカルチョーフィのミックスフライ
アニメッラとカルチョーフィのミックスフライ
メニューについて
アニメッラは、乳飲み仔牛の胸腺で、希少な珍味です。
カルチョーフィと合わせたミックスフライは、イタリアでは春のメニューとされています。
フライの衣に卵をたっぷり使い、イースターの気分を盛り上げます。
調理
メニュー提案・撮影調理 料理人・高部孝太
◆下ごしらえ
アニメッラを茹でて加熱する。アニメッラはイタリア産を使用
加熱したアニメッラを氷水で冷やす
アニメッラの筋をカットする
食べやすい大きさにカットする
カルチョーフィの過食部を食べやすい大きさにカットする
カルチョーフィはイタリア南部プーリア州産を使用
◆揚げる
衣は卵とパルメザンチーズを混ぜてつくる
小麦粉をまぶしたカルチョーフィに衣をつける
小麦粉をまぶしたアニメッラに衣をつける
フライヤーで揚げる
揚げた食材を油を切る用器に入れ、塩をふって味をつける
さらに、キッチンパーパーで余分な油を吸収してカラッと仕上げる
お召し上がり
アニメッラとカルチョーフィのミックスフライ
◆もっちりした歯ごたえ、繊細な味わい
アニメッレはもっちりして、弾力ある歯ごたえ。味わいは繊細で、ミルキーな甘み、ほのかな旨みがあります。
見過ごされてしましそうな希少な部位にも美味しさを見出す、イタリアの食文化の奥深さを感じます。
カルチョーフィのサクサクした食感と甘みがアクセントになります。
卵とパルメザンチーズでふっくら香ばしく揚げた衣が、イースターの季節感をきわだてます。
アニメッラとカルチョーフィのミックスフライ
アニメッラとカルチョーフィのミックスフライ
おすすめの食前酒
シャンパン「ボランジェ・スペシャル・キュヴェ」を手にするホールスタッフの江川智香
シャンパン「ボランジェ・スペシャル・キュヴェ」のラベル。英国王室御用達を認定する紋章が付く。この紋章はエリザベス女王のもので、王室のなかでもエリザベス女王が認定したことを表す
◆ミックスフライを爽やかに引き立てるシャンパン
銘柄/ボランジェ・スペシャル・キュヴェ
ワイナリー/ボランジェ
生産地/フランス・シャンパーニュ地方
ぶどう種/ピノ・ノワール60%、シャルドネ25%、ピノ・ムニエ15%
クリーミーな泡立ち、レモンや桃を思わせる香りが、ミックスフライをさっぱりと爽やかに引き立てます。
その一方で、力強い飲みごたえもあり、アニメッレの旨みをしっかり引き立てます。
アニメッレとカルチョーフィのミックスフライにシャンパン「ボランジェ・スペシャル・キュヴェ」を合わせて
ラ・ビスボッチャ店内
⚫︎パスタ
3.ウサギのラヴィオリ のらぼう菜入りバターソース
ウサギのラヴィオリ のらぼう菜入りバターソース
メニューについて
繁栄を象徴し、イースターの縁起物とされるウサギ。そのモモ肉をラヴィオリに詰めて味わいます。
春野菜、のらぼう菜を入れたバターソースを合わせます。
調理
メニュー提案・撮影調理 料理人・老田裕樹
◆ウサギの詰め物をつくる
ニンニクで香りをつけたオリーブオイルでウサギの肉の表面をサッと焼く。ウサギの肉はモモの部位 で、イタリア産を使用
白ワインを加え、味と香りをつける
自家製鶏のダシ汁、炒めた香味野菜(にんじん、タマネギ、セロリ)を加え、煮込む
煮込んだウサギの肉を骨から外す
ウサギの肉をフードプロセッサーで細かくする
フードプロセッサーから取り出したウサギの肉にパルメザンチーズを混ぜて詰めものの出来上がり
◆ラヴィオリを製麺する
ラヴィオリの生地を製麺する。生地は全卵、卵黄、小麦粉、セモリナ粉、オリーブオイル、塩を混ぜてつくる
伸ばした生地の上に詰めものを絞り出す
生地を重ね、金型でくり抜く
ラヴィオリのエッジを押さえ、しっかり接合する
セモリナ粉を振りかけ、くっつき防止の打ち粉にする
◆仕上げる
ラヴィオリを茹でる
フライパンにバターを入れ、加熱し、自家製野菜のダシ汁を加える
茹でたのらぼう菜を入れ、ソースの出来上がり
のらぼう菜は神奈川県産。菜の花よりも苦味が少ない
茹で上がったラヴィオリをソースのフライパンに投入
パルメザンチーズを混ぜ合わせて仕上げる
お召し上がり
ウサギのラヴィオリ のらぼう菜入りバターソース
◆ウサギの旨みと肉汁が凝縮
生パスタでつくるラヴィオリは柔らかく、バターソースとよくなじみ、トロリとした口あたりです。
そのなかでも、生地が重なるエッジはもっちりして、詰め物を包む生地はふんわりして、食感のちがいを楽しみます。
詰め物は、ウサギのまろやかな旨みと肉汁が凝縮した美味しさが広がります。
のらぼう菜の、ほのかな青々しさが、ラヴィオリを引き立てます。
ウサギのラヴィオリ のらぼう菜入りバターソース
ウサギのラヴィオリ のらぼう菜入りバターソース
ラ・ビスボッチャ店内
4.和牛と菜の花のラザニア
和牛と菜の花のラザニア
メニューについて
ラザニアは、昼仕込んでおけば、ディナーにすぐ出すことができます。イースターなど、家族が集まる日のもてなしで活躍します。
具材の重ね方はお好みで、地域や家庭によってさまざま。ビスボッチャでは、和牛のラグーと菜の花を重ねておすすめします。
調理
メニュー提案・撮影調理 料理人・村澤大
耐熱容器の底に焦げつきを防ぐバターを塗る
底に自家製生パスタの生地を敷く
ベシャメルソースを重ねる
茹でた菜の花を重ねる
菜の花は特産地、千葉県産を使用
和牛のラグーソースを重ねる
和牛のラグーは鹿児島県産の「薩摩牛」を香味野菜やトマトソース、赤ワインなどと煮込んでつくる
2層目の生地を重ねる
2層目のベシャメルソースを重ねる
2層目の菜の花を重ねる
2層目の和牛のラグーソースを重ねる
3層目の生地を重ねる
3層目の菜の花と和牛のラグーソースを重ねる
ベシャメルソースを重ね、粗めのパルメザンチーズを振りかける
オーブンで加熱する
加熱したラザニアを冷ます
注文が入ると、ラザニアを切り分けて加熱。パルメザンチーズを振りかけて仕上げる
お召し上がり
和牛と菜の花のラザニア
◆とろける旨みとコク
柔らかい生パスタと具材は、ソースと一体になり、クリーミーでとろける口あたりです。
そのなかから、和牛の旨みや、菜の花のほろ苦さが交互に現れ、飽きない美味しさがあります。
パルメザンチーズの香ばしさがアクセントになります。
和牛と菜の花のラザニア
和牛と菜の花のラザニア
ラ・ビスボッチャ店内
⚫︎メイン
5.乳飲み仔羊のロースト ピゼッリとペコリーノチーズのソース
乳飲み仔羊のロースト ピゼッリとペコリーノチーズのソース
メニューについて
イタリアでは、イースターのごちそうに仔羊を食べる習慣があります。
このため、ビスボッチャでも、毎年春は、乳飲み仔羊の骨付きロースとモモ肉を、柔らかく焼き上げて盛り合わせます。
今年はピゼッリとペコリーノチーズでつくるソースを合わせ、春らしさやイースターの気分を増しています。
調理
メニュー提案・撮影調理 料理人・横田達也
◆下ごしらえ
乳飲み仔羊を解体して部位ごとに分ける
乳飲み仔羊は半頭で仕入れ、自店でさばく。産地のフランス・ピレネー山脈の認定証が見える
骨付きロースはオリーブオイルやニンニク、タイムなどでマリネする
モモ肉はウデ肉などからつくる挽肉を包んで丸め込む
モモ肉をヒモで縛る
◆焼く
フライパンにオリーブオイルを広げる
フライパンにモモ肉を投入
方向を変えながら表面に焼き色をつける
モモ肉をアルミホイルで包み、オーブンで加熱する
骨付きロースを焼く。骨の周辺はオイルを回しがけして加熱する
骨付きロースをアルミホイルに包み、オーブンで加熱する
◆ソースをつくる
ピゼッリをサヤから取り出す
ピゼッリを茹でる
茹でたピゼッリをみじん切りにする
鍋に仔羊の骨からつくるダシ汁を入れる
鍋にピゼッリを入れ、生クリームやペコリーノチーズを加え、煮詰めてソースにする
ペコリーノチーズは、羊乳からつくるチーズ。塩味とコクが豊かで、風味はすっきりしている。イタリアで牧羊が盛んな特産地、サルディーニャ島産。側面にペコリーノの認証刻印が見える
◆仕上げる
モモ肉のヒモをカットする
モモ肉を輪切りにする
輪切りにしたモモ肉の表面をサッと炒めて香ばしく仕上げる
2本分の骨付きで焼いたロースは、半分に分割。ソースとともに盛り付ける
お召し上がり
乳飲み仔羊のロースト ピゼッリとペコリーノチーズのソース
◆ミルキーな甘み、若々しい香ばしさ
薄いピンク色に焼けた骨付きロースは、ミルキーな甘みがあります。焼き色は明るく、細い香ばしさに若々しさを感じます。
モモ肉の旨みはロースよりやや濃く、なかに包んだ挽肉のポロポロした食感と香草タイムの香りがアクセントになります。
ソースのピゼッリの甘みと、羊乳チーズの風味が、乳飲み仔羊の味と春らしさ、イースターらしさを増しています。
乳飲み仔羊のロースト ピゼッリとペコリーノチーズのソース
乳飲み仔羊のロースト ピゼッリとペコリーノチーズのソース
おすすめのワイン
赤ワイン「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ カステッロ・ロミトリオ」を手にするホールスタッフの江川智香
赤ワイン「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ カステッロ・ロミトリオ」のラベル。ワイナリーのオーナー、サンドロ・キア氏が描いた絵が使われている
◆赤ワインの果実香で引き立つ仔羊の甘み
銘柄/ブルネロ・ディ・モンタルチーノ カステッロ・ロミトリオ
ワイナリー/カステッロ・ロミトリオ
生産地/イタリア中部トスカーナ州
ぶどう種/サンジョヴェーゼ100%
生産年/2005年
乳飲み仔羊には、果実味がしっかりした赤ワインがよく合います。
シャープな酸味やスパイシーな辛味、スモーキーな樽香などが乳飲み仔羊の甘みを引き立てます。
乳飲み仔羊のローストに赤ワイン「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ カステッロ・ロミトリオ」を合わせて
ラ・ビスボッチャ店内
⚫︎ドルチェ
6.ピスタチオの卵型ケーキ
ピスタチオの卵型ケーキ
メニューについて
イースターのシーズンになると食べたくなる、卵の形をしたケーキです。
今年は、ピスタチオ味で香ばしく仕上げました。
調理
メニュー提案・撮影調理 料理人・水谷結
卵型菓子用の型の底に焦げつきを防ぐバターを塗る
生地の素材をバターで混ぜる
生地の素材。左から薄力粉、バター、卵、グラニュー糖、ヘーゼルナッツ・プードル、ピスタチオペースト
ピスタチオペーストは1952年にイタリア北部エミリア・ロマーニャ州でジェラート用のコーンの工場として創業した「バビ」社製を使用
生地を絞り袋に入れる
生地を型に絞り出す
生地を焼く
焼いた生地を冷ます
ピスタチオをみじん切りにする
ピスタチオは特産地のシチリア産を使用
ホワイトチョコレートを湯煎で溶かす
生地の表面にホワイトチョコレートをつける
ピスタチオのみじん切りを振りかけて仕上げる
お召し上がり
ピスタチオの卵型ケーキ
◆お菓子に感じる卵とイースター
表面のホワイトチョコレートは、パリパリした歯ごたえです。
サクサクした生地はピスタチオの香りが香ばしく、素材に使われている卵の風味もふんわり感じます。
お菓子に感じる卵に、イースターの気分を感じて楽しみます。
ピスタチオの卵型ケーキ
ピスタチオの卵型ケーキ
3月のディナーは、
ラ・ビスボッチャの「イースターフェア」に、
春の訪れを感じて、お楽しみください。