魚フェア

FISH FAIR

コラム『味と技』第95回

さっぱりした魚料理で暑気払い!8月19()から8月31()まで「魚フェア」を開催します。

期間限定メニューが7品登場。ゆく夏を惜しむディナーに、ぜひご利用ください。

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ

写真・文/ライター 織田城司 
Supervised・Cooking  by Yuuki Inoue  Mami Tsuyuzume
Photo・Text  by George Oda

料理長ごあいさつ

ふるさとの魚

真夏になると思い出す味は、渓谷で食べたアユの塩焼きです。 

場所は瀞峡(どろきょう)。奈良や和歌山、三重の3県にまたがる渓谷です。

私が生まれ育った三重県の実家では、毎年夏に、家族で瀞峡へ出かけるのが恒例でした。

小学生だった私の味覚に、アユの塩焼きは、まだ早かったかもしれません。

でも、澄んだ川に映える、森林の緑を見ながら食べるアユは、とびきり美味しく感じました。

やがて、就職で上京。イタリアンレストランで働きながら、いつか子どもに瀞峡を見せたいと思っていると、コロナ禍が発生しました。

帰省できないまま歳月が経ち、望郷の念から、今回の「魚フェア」を企画しました。

はじめに紹介するアユは、瀞峡をイメージして、緑色のソースを合わせました。

魚料理に、ふるさとを思い出して、お楽しみいただければ幸いです。

2021年8月吉日

料理長 井上裕基

⚫︎前菜

1.アユのコンフィ ジェノヴェーゼソース

アユのコンフィ ジェノヴェーゼソース

メニューについて

自然に恵まれた日本の魚料理は、海の幸のみならず、川魚も魅力です。

アユは日本の川魚の代表として、古くから親しまれてきました。

夏から秋にかけて成魚になる、脂がのったアユの美味しさを、イタリアンの技で引き出します。

⚫︎コンフィとは

コンフィは、食材をオイルに浸し、低い温度で長時間煮て、柔らかくする調理法です。

フランスが発祥とされ、もとは冷凍技術がない時代に、食材の保存法として生まれました。

調理

メニュー提案・撮影用調理:料理長・井上裕基

◆アユをコンフィする

今回のアユは岐阜県の馬瀬川(まぜがわ)産を使用

アユをバットに並べ、塩を振り、1時間ほど置いて下味をつける

コンフィに使うオリーブオイルをバットに注ぐ。魚の臭みをおさえ、爽やかな香りをつけるローリエの葉を一緒に入れる

オーブンで80℃、2時間かけて加熱する

加熱したアユはオイルに浸けたまま冷蔵庫で保存してマリネする

◆アユに添えるウイキョウを炭火で焼く

ウイキョウはイタリア産を使用

ウイキョウを薄くスライスする

ウイキョウに塩とオリーブオイルで下味をつける

ウイキョウを炭火焼きグリルの焼き網の上で焼く

ウイキョウをひっくり返し、反対側からも加熱。冷ましてアユに添える

◆仕上げる

フライパンにオリーブオイルを広げて加熱。コンフィしたアユの表面に焼き色をつけながら、ローリエの葉で香りをつける

アユをひっくり返し、反対側にも焼き色をつけ、バジルソースやウイキョウなどと盛り付ける

トッピングに飾るクレイジーピー。美しい巻きひげが特徴のえんどう豆の幼葉で、山梨県産を使用

お召し上がり

アユのコンフィ ジェノヴェーゼソース

◆ハーブの香りが心地よいアユ

アユの皮の香ばしさは、オイルで焼く洋食らしい力強さがあります。

身はオイルがたっぷり染みて、パサつきはなく、しっとりととろける舌ざわりに、まろやかな旨みを感じます。

頭や骨も柔らかく、ボリボリ噛みしめ、頭に近くにある内臓のほろ苦さがアクセントになります。

アユのコンフィ ジェノヴェーゼソース

合わせるウイキョウや、バジルのハーブ香が心地よく感じます。

渓谷の森林浴の爽やかさを想わせ、川魚がより美味しく感じ、身も心も潤う気分になります。

アユのコンフィ ジェノヴェーゼソース

ラ・ビスボッチャ入口

2.イワシと炭火焼き野菜のサラダ

イワシと炭火焼き野菜のサラダ

メニューについて

秋にかけて大きくなるイワシの脂がのった旨みを、サラダで味わいます。

合わせる野菜は炭火で焼き、旨みを凝縮します。

調理

メニュー提案・撮影用調理:料理長・井上裕基

◆イワシの下ごしらえ

イワシは静岡県産の大羽イワシを使用

イワシの頭を落とし、腹から内臓を取り除く

腹に残った内臓を流水で洗い流す

三枚におろす

小骨を骨抜きで取り除く

皮をむく

細長くカットする

イワシをボウルに入れ、酸味がマイルドなホワイトバルサミコ酢で味をつける。ホワイトバルサミコ酢はイタリア北部リグーリア州のタジャスカにある「カーサ・オレアリア・タジャスカ」社製を使用

◆野菜を炭火で焼く

ナスは長野県産の米ナスを使用

ナスのヘタを取り除き、輪切りにする

ナスに塩を振って下味をつける

炭火焼きグリルの焼き網の上で両面焼く

タイムの葉で香りをつける

トマトは北海道産を使用

トマトのヘタを取り除き、輪切りにする

トマトに塩を振って下味をつける

炭火焼きグリルの焼き網の上で両面焼く

パプリカはアメリカ・カリフォルニア州産を使用。直接炭火のなかで焼く

パプリカの向きを変え、皮の表面を黒コゲにする

焼き上がったパプリカは、皮をむきやすくするため、ラップで覆う

キッチンペーパーを使い、パプリカの皮をむく

皮をむいたパプリカを開き、ヘタと種を取り除く

パプリカを細長くカットする

パプリカをボウルに入れ、エキストラヴァージン・オリーブオイルと魚醤、塩を加えて味をつける

バジルの葉をちぎって加え、香りをつける

◆仕上げる

黒オリーブとケッパーの実を細かくカットする

黒オリーブは、イタリア北部リグーリア州で1870年に創業した老舗オリーブ製品メーカー「アルドイノ」社のオリーブオイル漬けを使用

ケッパーの実は、イタリア南部シチリア島産の塩水漬けを使用

皿にナス、トマト、パプリカ、イワシの順に重ね、黒オリーブとケッパーのみじん切りを振りかける

2層目のナス、トマト、パプリカ、イワシを重ね、黒オリーブとケッパーのみじん切りを振りかける

バジルの葉とクレイジーピーをトッピングに飾って仕上げる

お召し上がり

イワシと炭火焼き野菜のサラダ

◆重なる旨みの迫力

イワシは刺身に近い状態で柔らかく、トロッとした舌ざわりに旨みを濃厚に感じます。

炭火で焼いたトマトやナス、パプリカは、旨みが凝縮して、香ばしさとほろ苦さが加わり、味わい深くなっています。

イワシと炭火焼き野菜のサラダ

炭火で焼いた野菜は、酢やオリーブオイルが染みて、しっとりと柔らかく、イワシの質感と一体化して、旨みを強調します。

オリーブとケッパーの塩味が程よいアクセントになり、おつまみ感を増しています。

イワシと炭火焼き野菜のサラダ

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎パスタ

3.ウニのスパゲッティ

ウニのスパゲッティ

メニューについて

ウニの風味や甘みを、アツアツのスパゲッティでシンプルに引き立て、たっぷり味わいます。

ウニは、ウニ本来の美味しさが生きた、塩水ウニを使用。ウニ好きには、たまらない一品です。

⚫︎塩水ウニとは

塩水ウニは、とれたてのウニ本来の美味しさを封じ込めるために、保存料を使わず、海水に近い濃度の人工海水に浸して保存したものです。

今回使用する塩水ウニは、特産地の北海道産。品種は「白ウニ」と呼ばれるキタムラサキウニです。

調理

メニュー提案・撮影用調理:副料理長・露詰まみ

◆ソースをつくる

ズッキーニは長野県産を使用

ズッキーニを薄くスライスして炒める

フライパンにオリーブオイル、ニンニク、赤唐辛子を入れ、加熱し、オイルに味と香りをつける

ニンニクは香りがマイルドなスペイン産を使用

パスタの茹で汁や自家製魚のダシ汁、魚醤を加え、味をつける

魚醤は南イタリアのチェターラ産を使用。魚醤の起源は古代ギリシャからローマに伝来したとされる。いまはイタリア南部カンパニア州のアマルフィ海岸にあるチェターラという町が特産地として伝統を継承。「チェターラ産の魚醤」という名で親しまれている

煮詰めて濃度を出す

塩水ウニと炒めたズッキーニを加える

塩水ウニをゴムベラでほぐし、ソースになじませる

出来上がったソース

◆仕上げる

スパゲッティを計量する

スパゲッティはイタリア南部の乾麺の特産地、カンパニア州で1812年に創業した「ヴィチドーミニ」社製を使用。昔ながらの低温長時間乾燥で、イタリア産無農薬栽培デュラム・セモリナ小麦粉100%の風味がたっぷり生きている

吊り下げ乾燥のU字型と、それが割れたJ字型が混在する素朴さがイタリアらしい

一般的なスパゲッティの4倍の長さがあるため、好みの長さに折って使用する。茹で時間は12分

茹で上がったスパゲッティをソースのフライパンに投入

スパゲッティをソースと和える

イタリアンパセリのみじん切り、エキストラヴァージン・オリーブオイルを入れ、味と香り、とろみをつける

イタリアンパセリは長野県産を使用

エキストラヴァージン・オリーブオイルはイタリア南部の特産地、プーリア州にある「ディサンティ」社製を使用。青々しい香りが豊かに香り、マイルドな辛みがある

皿に盛り付けてから、再度イタリアンパセリのみじん切りを振りかけて仕上げる

お召し上がり

ウニのスパゲッティ

◆太めのスパゲッティできわだつウニの甘み

ウニが溶け込んだソースは、とろりとして、スパゲッティによく絡みます。

アツアツのスパゲッティであたためられたウニの味は、磯の風味と甘みが強く、続いて塩味や旨み、コクが広がります。

スパゲッティは太め。これ以上太いと主張しすぎだし、細いと物足りなく、絶妙のバランスです。もっちりした食感と、小麦の風味をたっぷり感じ、ウニの味に食べごたえのある立体感をつけています。

ウニのスパゲッティ

合わせるズッキーニの大きさや厚さは控えめで、しっかり炒めて柔らかく、まろやかな旨みがほどよいアクセントです。

脇役を最小限に絞りながら、クオリティと加減にこだわり、ウニの味を最大限に生かしています。

ウニのスパゲッティ

おすすめのお飲みもの

白ワイン「ソアヴェ・クラシコ」

おだやかな辛口白ワイン

銘柄/ソアヴェ・クラシコ
ワイナリー/ファルナーロ
生産地/イタリア北部ヴェネト州ソアヴェ村周辺
ぶどう種/ガルガーネガ100%

香りは、レモンやマスカット、青リンゴ、バナナ、マンゴーなど、フルーティなニュアンスが爽やかに香ります。

飲み口はスムーズで、のどごしが心地よく、味わいはおだやかな酸味、ふくよかなミネラルが広がる繊細な辛口です。

主張しすぎない味わいで魚料理とよく合い、ウニのスパゲッティの奥深い甘みを引き立てます。

「ウニのスパゲッティ」に白ワイン「ソアヴェ・クラシコ」を合わせて

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎メイン

4.ベッカフィーコ

ベッカフィーコ

メニューについて

シチリア島で生まれた、ベッカフィーコと呼ばれる、イワシのオーブン焼き料理を、忠実に再現しました。

丸めたイワシのなかに、イワシの身のみじん切りや木の実が入っています。

⚫︎ベッカフィーコの由来

ベッカフィーコは、イタリア南部シチリア島の郷土料理が発祥とされる料理です。

ベッカフィーコのイタリア語の意味は、イチジクを好んでついばむ小鳥のことです。

シチリアの貴族が狩猟した小鳥を焼いて食べる料理を見た庶民が、大衆的なイワシを小鳥に見立て、真似したことが由来とされ、魚料理なのに小鳥の名がついています。

イワシの尖った尾ヒレは、小鳥のくちばし、イワシの丸めた身は、木の実をいっぱい食べた小鳥の腹に見立てられています。

調理

メニュー提案・撮影用調理:料理長・井上裕基

◆イワシの下ごしらえ

イワシの下ごしらえは、前菜の「イワシと炭火焼き野菜のサラダ」のイワシと途中まで同じ。ベッカフィーコは開いて尾ヒレを残し、背骨を抜く

腹骨をそぎ落とす

◆中に詰めるタネをつくる

イワシの身をみじん切りにする

イワシの身のみじん切りをボウルに入れ、パン粉、松の実、干しブドウを加える

ペコリーノチーズをおろしかけ、香りと塩味、とろみをつける

羊乳からつくるペコリーノチーズは、塩味と豊かなコクがあり、風味はすっきりしている。イタリアで牧羊が盛んな特産地、サルディーニャ島産。側面にペコリーノの認証刻印が見える

アンチョビのフィレのオイル漬けを加える。イタリア南部シチリア島の「スカーリア」社製を使用

イタリアンパセリをちぎって加える

魚醤、オリーブオイル、黒コショウを加える

食材と調味料を混ぜ合わせる

◆タネを包む

イワシに塩コショウを振りかけて下味をつける。中に詰めるタネを握ってのせる

イワシの身に切り込みを入れる

イワシを丸め、切り込みに尾ヒレを通し、固定する

◆オーブンで焼く

オレンジの輪切りを半月型にカットする。オレンジはアメリカ産を使用

オーブン用の耐熱容器の底にオリーブオイルを広げる

丸めたイワシを入れ、香りをつけるローリエの葉とオレンジを添える

塩、オリーブオイル、パン粉を振りかけて味と香りをつける

オーブンで焼く

焼き上げたベッカフィーコにイタリアンパセリのみじん切りを振りかけて仕上げる

お召し上がり

ベッカフィーコ

◆夏の食欲を刺激する香ばしく焼けたイワシ

イワシの皮はパリッと焼け、振りかけたパン粉とともに香ばしさを増しています。

身は魚の風味や水分が程よくとび、旨みをしっかり感じます。なかの詰め物から出てくる干しブドウの甘酸っぱさや、松の実の香ばしさがアクセントになります。

ベッカフィーコ

オレンジの香り付けは、シチリアで多くとれる果物を取り入れたもので、郷土愛があります。

こうした地域色や土着感の濃さに、イタリア料理らしさを感じます。

ベッカフィーコ

ラ・ビスボッチャ店内

5.イトヨリのサルティンボッカ

イトヨリのサルティンボッカ

メニューについて

肉に生ハムを巻いて焼く料理、サルティンボッカを魚に置き換えてつくりました。

生ハムと合わせる肉は、仔牛など、繊細な味の肉と相性がよいことから、魚もイトヨリという繊細な味の白身魚を選びました。

⚫︎サルティンボッカの由来

サルティンボッカは、イタリア語で、直訳すると「口に飛び込む」という意味です。

味がついた生ハムで肉を包んでサッと焼き、短時間ですぐ調理できることが名称の由来になりました。

発祥地は定かでありませんが、現在はローマの名物料理のひとつとして有名です。

調理

メニュー提案・撮影用調理:料理長・井上裕基

◆イトヨリの下ごしらえ

イトヨリは一匹仕入れ、自店でさばく。九州の玄界灘産を使用

イトヨリの尾ヒレ。上部が長く、泳ぐと旋回して見える。製糸で糸に撚り(より:ひねること)を加える工程の見え方に似ていることから、イトヨリの名の由来になった。ちなみに、糸撚り工程の英語はスピナー(spinner)といい、フィギュアスケートなどで使うスピン(spin)と同じ語源になる

頭を落とし、ヒレとウロコ、内臓を取り除く

三枚におろす

小骨を骨抜きで抜く

出来上がったイトヨリのフィレ

◆サルティンボッカを組み立てる

イトヨリのフィレを切り分ける

イトヨリの切り身に塩コショウを振りかけて下味をつける

セージの葉を合わせ、香りをつけるのが伝統

セージは長野県産を使用

スライスしたての生ハムでイトヨリを包む

生ハムはイタリアの特産地、パルマ産を使用。風味が強い原木の状態で仕入れ、自店で骨を抜いてスライスする

◆サルティンボッカを焼く

表面に小麦粉を振りかける

フライパンにオリーブオイルを広げ、加熱する

サルティンボッカをフライパンに投入して焼く

ある程度火が通ったらひっくり返す

反対側からも焼く

◆仕上げる

無塩バターを溶かし、セージで香りをつける

白ワインを加え、アルコール分をとばし、味と香りをつける

自家製魚のダシ汁を加える

自家製鶏のダシ汁を加える

サルティンボッカを取り除き、煮詰めた煮汁にレモンの絞り汁を加えて、ソースの出来上がり。レモンの輪切りとともに盛り付けて仕上げる

レモンはアメリカ産を使用

お召し上がり

イトヨリのサルティンボッカ

◆セージとレモンが香る爽やかな一品

生ハムをじっくり焼くと、香ばしさが加わり、塩気や旨み、コクが凝縮します。

生ハムの強めの味を、なかに包んだイトヨリの繊細な味わいがやさしく受け止めます。

イトヨリのサルティンボッカ

ソースのしっとり感が生ハムとイトヨリのコントラストをまろやかにまとめ、セージとレモンの香りが、夏らしく爽やかな印象に仕上げます。

肉料理やデザートもあれこれ食べたいと思うときに、軽めの魚料理としておすすめです。

イトヨリのサルティンボッカ

ラ・ビスボッチャ店内

6.ホウボウのアクアパッツァ パッケリ入り

ホウボウのアクアパッツァ パッケリ入り

メニューについて

イタリアの煮魚料理の定番、アクアパッツァ。

今回は、大きな筒型パスタ、パッケリを入れ、煮汁の美味しさをたっぷり染みさせて味わいます。

⚫︎アクアパッツァの由来

アクアパッツァは、イタリア南部カンパニア州の郷土料理が発祥とされる煮魚料理です。

アクアパッツァの名は、直訳すると「風変わりな水」という意味です。

魚を水だけで煮込んでいるのに、なぜ美味しいのだろう、という思いが由来とされています。

実際には、水だけで煮込むのではなく、トマトやオリーブオイルも加えますが、魚や貝から出るダシが煮汁を美味しくすることを表現しています。

魚は切り身でもよいのですが、1尾まるごと使ったほうが頭や骨のまわりから旨みが出るため、フライパンやお皿にまるごと入るサイズの魚を選びます。

今回のようにホウボウを使うのは、イタリアでもポピュラーです。トマトを入れて甘みや酸味を加えるのが伝統です。

調理

メニュー提案・撮影用調理:副料理長・露詰まみ

◆ホウボウの下ごしらえ

ホウボウとアサリは千葉県産を使用

ホウボウのヒレ、ウロコ、内臓を取り除く

ホウボウの側面に切り込みを入れる

キッチンペーパーで表面の余分な水分を拭き取る

塩を振って下味をつける

◆パッケリを茹でる

パッケリはイタリア南部の乾麺の特産地、カンパニア州で1812年に創業した「ヴィチドーミニ」社製を使用。昔ながらの低温長時間乾燥で、イタリア産無農薬栽培デュラム・セモリナ小麦粉100%の風味がたっぷり生きている

パッケリの外と中の表面はザラザラした仕上げで、ソースが絡みやすい

パッケリを茹で麺機で茹でる。茹で時間18分

◆ホウボウを煮込む

ホウボウの表面に小麦粉をまぶし、オリーブオイルを広げたフライパンに投入して焼く

方向を変えながら表面を焼く。香ばしさをつけながら旨みを封じ込める。皮は縮むが、切り込みを入れた効果で、身はまっすくの姿勢を保ち、見た目と煮込みに安定感をもたらす

キッチンペーパーで余分な油を吸収する

自家製の魚のダシ汁と、イカの肝やアンチョビ、トマトペーストなどでつくるダシ汁を加える

ミニトマトやドライトマトのみじん切り、アサリを加える

アルミホイルでフタをして蒸し煮にする

アサリが開いたら、火が入りすぎないように取り除く

茹で上がったパッケリを加え、煮汁の味をつける

仕上げる直前にアサリを戻し、バジルの葉をちぎって加え、香りをつける

皿に盛り付けてからイタリアンパセリのみじん切りを振りかけて仕上げる。客席でプレゼンテーションした後厨房に戻し、骨を除いて取り分ける

お召し上がり

ホウボウのアクアパッツァ パッケリ入り

◆旨みたっぷりの煮汁が美味

煮込んだホウボウは身がしっかりして、旨みが凝縮しています。

煮汁はホウボウやアサリ、トマトなどから染み出した旨みが集まり、重なり、深いコクがあります。

ホウボウのアクアパッツァ パッケリ入り

パッケリの生地は厚く、もっちりした歯ごたえで、たっぷり染みた煮汁の旨みを味わいます。

和食の鍋料理で、最後に麺を入れるように、煮汁の美味しさを二度味わうよろこびがあります。

ホウボウのアクアパッツァ パッケリ入り

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎ドルチェ

7.塩キャラメルのセミフレッド

塩キャラメルのセミフレッド

メニューについて

塩キャラメルは、フランスの菓子屋が発祥とされ、さまざまなお菓子に発展しました。

今回の「魚フェア」では、魚に縁が深い塩に注目して選びました。

夏らしく、イタリアのセミフレッドという製法で、塩キャラメル味のひんやりデザートに仕上げました。

土台に、イタリア北部ロンバルディア州の郷土菓子、ズブリゾローナを使い、アクセントに加えました。

⚫︎セミフレッドとは

セミフレッドは、イタリアの冷菓のジャンルの呼称で、製法に由来します。直訳すると「半分冷たい」という意味。

アイスクリームマシーンを使い、生地に空気を含ませながら凍らせてつくるアイスクリームに対し、アイスクリームマシーンを使わず、生地を冷凍庫で凍らせてつくる冷菓をセミフレッドと呼びます。

調理

メニュー提案・撮影用調理:副料理長・露詰まみ

◆土台のズブリゾローナを焼く

ズブリゾローナの生地の材料を混ぜる

ズブリゾローナに使う生地の材料。左からトウモロコシの粉、アーモンド、卵、無塩バター、グラニュー糖、薄力粉

ズブリゾローナに使うトウモロコシの粉は、イタリア北部ロンバルディア州ブレシア県で1853年に創業した専業老舗「ラ・グランデ・ルオータ」社製を使用

アーモンドは世界有数の特産地、イタリア・シチリア島産を使用

ラム酒を加え、香りをつける

ラム酒は香りが高いフランス産の「ネグリタ」ブランドを使用

ズブリゾローナの生地を練り、オーブン用の天板に薄く広げ、130℃、90分の設定で焼く

焼き上がったズブリゾローナを室温で冷ます

◆塩キャラメルの生地をつくる

鍋底でグラニュー糖を加熱する

鍋底でキャラメル化したグラニュー糖

塩を入れて加熱した生クリームを加えて混ぜる

無塩バターを加え、風味ととろみをつける

塩キャラメルのもとになる生地を鍋からボウルに移し、ミキサーで混ぜた卵、ミキサーで泡立てた卵白、ミキサーで混ぜた生クリームと砂糖を加えて混ぜ合わせる

◆塩キャラメルを冷やし固める

塩キャラメルの生地を半球の製菓用型に流し込む

土台にするズブリゾローナを砕いてのせる

冷凍庫で冷やし固める

◆仕上げる

柔らかい型を反転させ、冷やした塩キャラメルを取り出し、器に盛り付ける

キャラメルソースを振りかけ、粗塩をトッピングして仕上げる

粗塩は、世界有数の自然海塩の特産地、イタリア南部シチリア島のトラパニでソサルト社が手がける「モティア」ブランドを使用。昔ながらの手法を続け、海水を塩田で長時間干した結晶を手摘みしてつくる。トラパニ近くの島の名がブランド名の由来

お召し上がり

塩キャラメルのセミフレッド

◆シチリアの海塩でひきたつキャラメルの甘香ばしさ

塩キャラメルのセミフレッドの生地は、ひんやりとして、なめらかなくちどけ。キャラメルの甘香ばしさと、ミルキーなコクが広がります。

味の主役はあくまでも甘みです。甘みをひきたてるシチリア産の自然海塩は、ミネラルの旨みがたっぷりして、辛さは控えめです。

塩キャラメルのセミフレッド

塩キャラメルの生地に使われている卵や乳製品は、砂糖のみならず、塩とも好相性で、甘みと塩味が共存する意外な面白さを仲介しています。

底に敷いたズブリゾローナのザクザクした食感と香ばしさが、絶妙に絡みます。

おすすめのお飲みもの

デザートワイン「モスカート・デッロ・ズッコ」

華やかな香りのデザートワイン

銘柄/モスカート・デッロ・ズッコ
ワイナリー/クズマーノ
生産地/イタリア南部シチリア島パレルモ県
ぶどう種/モスカート・ビアンコ100%
生産年/2012年

香りは、ハチミツやジャム、アカシア、バニラなどを想わせる、華やかなニュアンス。

味わいは、ボリューム感ある甘みに、ほのかな酸味が加わり、塩キャラメルの甘みや塩味をひきたてます。

塩キャラメルとデザートワインの黄金色は、夏の終わりのディナーを、夕陽のように印象深く締めくくります。

「塩キャラメルのセミフレッド」にデザートワイン「モスカート・デッロ・ズッコ」を合わせて

塩キャラメルのセミフレッド

お盆が明けて、日が短くなったと感じたら、

夏が終わるまえに、

ラ・ビスボッチャの「魚フェア」で、

お楽しみください。