RECOMMENDED SEASONAL MENU 2021 APRIL
コラム『味と技』第86回
春菜のグラデーション
4月はコートを脱いで、軽やかな陽気を楽しみます。
そんな季節の旬菜を集め、たっぷり味わうメニューを6品おすすめします。
メニュー編集・調理/副料理長・露詰まみ
監修・調理/料理長・井上裕基
写真・文/ライター 織田城司
Menu editing・Cooking by Mami Tsuyuzume
Supervised by Yuuki Inoue
Photo・Text by George Oda
1.ブラータチーズと2色イチゴのサラダ
メニューについて
◆紅白の鮮やかな彩り
ブラータチーズのミルキーな甘みは、果物や野菜、生ハムなど、幅広い食材とよく合います。
4月は、旬のイチゴを2色合わせ、サラダをつくります。
紅白の鮮やかな彩りは、入学や入社など、お祝い気分のディナーを盛り上げます。
◆ブラータチーズとは
ブラータチーズは、モッツァレラチーズと同じフレッシュチーズの仲間です。
袋状にしたモッツァレラチーズの中に、とろ〜りとした「ストラッチャテッラ」というチーズを詰めて封をする、手の込んだものです。
ブラータとはイタリア語で「バターのような」という意味です。バターのようにとろ〜りとして、ミルキーな甘みと風味があることが由来です。
◆「ディ・ステファノ」社のブラータチーズについて
「ディ・ステファノ」社は、イタリア南部プーリア州の親子2代のチーズ職人がアメリカに渡り、カリフォルニア州で生産するチーズメーカーです。
同地の乳牛「ハッピー・カウ」のミルクを使用。干草や穀類、フルーツなど、バランスのとれたエサを与えられ、自由に放牧されて育った牛で、ミルクは濃厚な味わいです。
ひとくちにブラータチーズといっても、質感や味わいは一種類ではなく、豆腐のように、メーカーによって千差万別です。
「ディ・ステファノ」社のブラータチーズは、しっかりした質感と濃厚な味わいが特徴です。
外側の皮は薄くて柔らかく、なかのとろ〜りとした「ストラッチャテッラ」と呼ばれるチーズは、クリーミーでありながら、水っぽくなく、もっちりとして、しっかりした粘りがあります。
皮と中身の質感に差はほとんどなく、一体感があります。味わいはミルキーな甘みと風味が濃厚です。
「ディ・ステファノ」のブラータチーズが購入できる通販サイトのリンクはこちら→「THE FOODS」
お召し上がり
◆甘みの濃淡で味わうチーズ
紅白のイチゴは、どちらも歯ごたえがしっかりして、甘みが強く、酸味が弱いタイプです。
甘みは、見た目に似て、赤い「スカイベリー」は強く、白い「淡雪」は上品です。
その同系濃淡を、ひとつの「イチゴ」として味わいながら、春らしい彩りを楽しみます。
ブラータチーズのミルキーな風味と甘みは、「いちごミルク」の好相性のように、イチゴの甘酸っぱさとよく合います。
そこから先は、チーズゆえに、旨みやコクが、まったりとした舌ざわりとともに押し寄せ、白ワインが飲みたくなる、前菜の味わいまで高まります。
2.ヤリイカとカルチョーフィ、タラの芽のフライ
メニューについて
◆春のミックスフライ
1993年の創業以来続ける人気の定番、ヤリイカのフライに、イタリアと日本の旬菜を加えてつくる、春のミックスフライです。
ヤリイカのフライは、イタリア風というよりも、ビスボッチャ風というべき独特の揚げ方で、ほかにない軽やかな食感があります。
合わせるカルチョーフィやタラの芽のフライは、食材によって衣の素材を変えながら、美味しさを引き出します。
調理
◆タラの芽を揚げる
◆カルチョーフィを揚げる
◆ヤリイカを揚げる
◆仕上げる
お召し上がり
◆何度も食べたくなる揚げ加減
ヤリイカのフライは、香ばしいイカの風味を強く感じます。
たとえば、テイクアウトを車でピックアップしたときによくわかります。ほかのメニューもありながら、ヤリイカフライの香りが、いち早く車内に充満します。
ヤリイカの衣は薄くてカリッとした食感。それでもヤリイカにしっかりついていることが不思議です。ボロボロ崩れ落ちないから、中身のヤリイカと一緒に味わう美味しさを楽しみます。
中身のヤリイカは衣と好対照で、イカ特有の柔らかさが残り、粘り気があり、旨みや塩味を豊かに感じます。
合わせるカルチョーフィは、ほのかな甘みがあり、タラノ芽は、ほろ苦さがあります。
いずれも、若い繊維が重なった、じんわりとした余熱と、柔らかさに、春らしさを感じます。
3.トンナレッリ カチョ・エ・ペペ 3色アスパラガス入り
メニューについて
◆定番パスタの春味
ローマの郷土パスタに「トンナレッリ カチョ・エ・ペペ」があります。
これは、トンナレッリという断面が四角くて、卵を多めに使った太麺を、チーズと黒コショウを効かせたソースと和えるシンプルなパスタです。
今回は、このパスタに、アスパラガスを3種入れ、春らしい味わいと食感をプラスします。
調理
◆トンナレッリを製麺する
◆ソースをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆太麺を引き立てるアスパラガス
トンナレッリは太くてコシがあり、生パスタ特有のモッチリとした歯ごたえもあり、タマゴや小麦の風味を豊かに感じ、飽きない味わいです。
日本の素うどんとは、味はちがいますが、存在が似ています。シンプルな美味しさゆえに、好みの具材を足して食べたくなるからです。
合わせるアスパラガス3色のホワイトアスパラガスは、極太らしいおおらかな味わいで、まろやかな旨みがあります。
グリーンアスパラガスは、ほのかな青々しさがあり、野生のアスパラガスは、細いながらも濃い味わいで、甘みを強く感じます。
三者三様のアスパラガスは、あくまでも繊細で、主役のトンナレッリとソースを引き立てます。
4.足赤エビとピスタチオのリゾット
メニューについて
◆エビとピスタチオの香ばしい調和
冬から春にかけてが旬になる足赤エビを、リゾットで味わいます。
エビに合わせる食材はシチリア産ピスタチオ。シチリア島は南イタリアの豊富な太陽を背景に、レモンやオレンジがよく育つことが知られていますが、良質なピスタチオがとれる産地でもあります。
このため、シチリア島ではピスタチオを使ったリゾットも多く見られます。そんな料理をイメージしたリゾットは、ピスタチオの底力を発見する、新鮮な魅力にあふれています。
調理
◆エビの下ごしらえ
◆ピスタチオのペーストをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆ピスタチオがまとめる美味しさ
出来あがったリゾットからは、エビの香ばしい香りが漂います。
それを追いかけるピスタチオの香ばしさには、大地に根をおろした奥深さがあります。
リゾットにフォークを押し込んだときに感じる、ずっしりとした重みは、ピスタチオの濃厚な油脂分が、リゾットのエビやバター、チーズ、オリーブオイル、米を、うまくまとめているからです。
そんな味わいの妙を、仕上げに盛り付けたエビやピスタチオの実物から追体験する楽しさも魅力です。
5.乳飲み仔羊の骨付きロースとモモ肉のロースト
メニューについて
◆イースターのごちそう
イタリアでは、イースターのごちそうに仔羊を食べる習慣があります。
このため、ビスボッチャでも、毎年春になると仔羊の料理をそろえます。
今年は、仔羊のなかでも最も希少とされる、生後間もない乳飲み仔羊の骨付きロースとモモ肉を、柔らかく焼き上げて盛り合わせます。
フレッシュな味の食べくらべをお楽しみください。
調理
◆仔羊の下ごしらえ
◆ソースをつくる
◆仔羊のモモ肉を焼く
◆骨付きロースを焼く
◆仕上げる
お召し上がり
◆祝祭食のフレッシュな美味しさ
祝祭のごちそうは、洋の東西を問わず、神さまへ捧げるものとされながら、人間が食べても美味しく、一年間働いたご褒美のようでもあります。
そのひとつ、イタリアのイースターで珍重される乳飲み仔羊は、フレッシュな美味しさがあります。
そんな乳飲み仔羊の断面は淡いピンク色で、柔らかい肉質です。
骨付きロースは、小さくてもキメ細かい繊維質があり、ロースらしい旨みを、若々しく感じます。
モモ肉は、焼き目の香ばしさや、ミルキーな風味、甘めの旨みが絶品です。
6.3色ベリーのタルト ヴィーガンタイプ
メニューについて
◆イチゴの旬を満喫する3色盛り
イチゴの甘酸っぱさを、ブラックベリーやラズベリーの味で広げ、贅沢に味わいます。
イチゴと好相性のチョコレートを使ったクリームを合わせます。
なおかつ、すべて動物性食品を使わないヴィーガン仕様でつくり、ヘルシーに仕上げます。
調理
◆タルト生地を焼く
◆チョコレートクリームをつくる
◆タルトを組み立てる
お召し上がり
◆甘酸っぱさを重ねた深い味
真っ赤なイチゴは、露地栽培特有の、太陽をたっぷりと浴びた、甘酸っぱさを強く感じます。
そんなイチゴの甘酸っぱさを、ブラックベリーのワインのような渋みと、ラズベリーのシャープな酸っぱさが広げます。
タルト生地は、ボロッと崩れるかたさがありながら、濃厚なチョコレートクリームと合わせると、絶妙な口どけで、香ばしさと甘みがきわだちます。
イチゴの甘酸っぱさを輝かせるアクセントで、飽きない味わいがあります。
春の陽気に誘われたディナーは、
ラ・ビスボッチャの
季節のおすすめメニューで、お楽しみください。