第51回 AUTUMN CHIKEN FAIR 2019

地鶏の骨付きモモ肉の炭火焼き
地鶏のコクに感じる秋
秋に美味しくなる地鶏の料理を集めて、9月18日(水)〜30日(月)までフェアを開催します。
期間限定メニューが3品登場します。
地鶏のコクに秋を感じて、お楽しみください。

オーブンで焼いた地鶏の温度を計る料理長・井上裕基
解説/料理長 井上裕基
写真・文/ライター織田城司
Commentary by Yuuki Inoue
Photo・Text by George Oda
三重県の「熊野地鶏」をイタリアンで食す

三重県熊野市の丸山千枚田と熊野地鶏(公式写真より)
イタリア料理の根本に「その土地固有の味を楽しむ」という考え方があります。
そうであれば、日本のイタリアン・レストランでは、イタリアからの輸入食材ばかりでなく、日本の食材を使った料理があっても良いはずです。
このため、ビスボッチャでは、年に何回か、日本の食材を使った料理のフェアを開き、美味しさを紹介してきました。
今回の「秋の地鶏フェア」は、三重県の「熊野地鶏」を調理します。
紀伊半島南部は、古くから熊野と呼ばれ、豊かな自然に神々が宿るといわれてきました。多くの巡礼者が歩いた「熊野古道」は、世界遺産に登録されています。
そんな土壌を背景に、三重県が生み出した高級ブランド地鶏が「熊野地鶏」です。
のびのびとした環境で、健やかに育てられた地鶏の肉質は、
赤みが強く、弾力性に富み、旨み成分を多く含み、鶏肉本来のコクと風味があります。
イタリア料理との出会いを、ご堪能ください。
1.地鶏のガランティーナ

地鶏のガランティーナ
メニューについて
◆地鶏一羽をまるごと味わう
イタリア料理のガランティーナ(伊:gallantina)は、骨や内臓を取り除いた肉に、具材を詰めた料理です。
フランス料理のガランティーヌ(仏:galantine)と同じコンセプトで、フランスとの国境に近い北イタリアで多く見られます。
イタリアでは、鶏一羽をまるごと使うのが一般的です。見た目が華やかなことから、特別な日の前菜として振舞われることが多いメニューです。
ビスボッチャでは、北イタリアの伝統的な調理法をもとに、地鶏の繊細な美味しさを引き出します。

地鶏のガランティーナ
調理
◆詰めものに使う地鶏のペーストをつくる

熊野地鶏から切り分けた肉(ムネ、カワ、コシ)と内臓(レバー、ハツ、スナギモ)をフードプロセッサーで撹拌する

地鶏のペーストをボウルに移す

塩・コショウで下味をつける

松の実を加える

白ワインを加える

混ぜ合わせて地鶏のペーストの完成
◆詰めものに使う野菜の下ごしらえ

ガランティーナに使うニンジンは、本場イタリア北部ロンバルディア州の特産物を空輸して味を再現

ニンジンを洗う

ニンジンの皮をむく

ニンジンの葉を切り落とす

ガランティーナに使うインゲンは国産

インゲンの硬い両端と筋を取り除く
◆ガランティーナを成形する

ガランティーナは地鶏のなかでも、やわらかい雌鶏を一羽まるごと使う

地鶏の肉を開いて骨と内臓を取り除く

開いた地鶏の肉に塩・コショウで下味をつける

地鶏のペーストをのせる

インゲンをのせる

インゲンの上に地鶏のペーストをのせる

ニンジンをのせる

ニンジンの上に地鶏のペーストをのせる

地鶏の肉で詰めものを丸め込む

皮で覆う

丸めた地鶏をヒモで固定し、生のガランティーナの完成
◆ガランティーナの加熱と冷却

生のガランティーナの表面に塩・コショウで下味をつける

フライパンにピュア・オリーブオイルを注ぐ

ガランティーナを焼く。フライパンの底の熱いオイルをふりかけ、上部も加熱

トングを2本使い、ガランティーナの向きを変える

向きを変えながら加熱

焼き上がったガランティーナをアルミホイールにのせる

ガランティーナをアルミホイールで包む

オーブンを使ってガランティーナの中まで加熱

オーブンの設定は、80℃80分。低温長時間加熱でじっくり中まで火を通す

オーブンから出したガランティーナの芯温を計り、焼き加減を確認

ガランティーナを24時間冷やすため、冷蔵室の棚に置く

冷蔵室から取り出したガランティーナのアルミホイールをはがす

ガランティーナを固定していたヒモを取り除く

ガランティーナを食べやすい大きさに切って盛り付ける
お召し上がり

地鶏のガランティーナ
◆繊細な味をじっくり楽しむ
出来あがったガランティーナの輪の中には、地鶏が丸ごと詰まっています。
皮や身、内臓の繊細な美味しさを、冷前菜らしく、じっくりと味わいます。

地鶏のガランティーナ
輪のまわりを囲む地鶏の皮は、コリッとした食感で、ほのかな塩味を感じます。
その内側の地鶏の身は、さっぱりした印象で、まろやかな甘みを感じます。
まんなかの地鶏のペーストは、レバーの苦味がきいて、濃厚な旨みとコクがあります。
ニンジンやインゲンの青々しい風味がアクセントになります。

地鶏のガランティーナ

ビスボッチャ入口の鉢植え
2.地鶏とポルチーニのリゾット

地鶏とポルチーニのリゾット
メニューについて
◆2種のかさねダシで深まるコク
まるで鶏釜飯のような、山の幸の滋味を集めた米料理です。
国や文化がちがっても、同じことを考える人間の面白さを感じます。
そんな秋味のリゾットは、ビスボッチャのベースとなる鶏のダシ汁に、特製地鶏のダシ汁を加える「かさねダシ」の技法で、コクを深めます。

地鶏とポルチーニのリゾット
調理
◆リゾットの具材に使う鶏肉の下ごしらえ

リゾットの地鶏は、肉質がしっかりした雄鶏を使う

切り分けた地鶏に塩・コショウで下味をつける

フライパンにピュア・オリーブオイルを注いで地鶏を焼く。フライパンの底の熱いオイルをふりかけ、上部も加熱

オーブンで中まで加熱。設定は180℃15分

オーブンで焼きあがった地鶏を冷ます

地鶏を皮、身、骨に切り分ける

切り分けた皮

切り分けた身

皮と身を細かく切る

リゾットの具材に使う地鶏の完成
◆かさねダシ用のダシ汁を2種つくる
かさねダシ用のダシ汁2種は、①ビスボッチャの味の基本となるベースの鶏のダシ汁、②特製地鶏のダシ汁。
①ベースの鶏のダシ汁

毎日仕込んで常用する鶏のダシ汁。鶏がら、ひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエを約6時間かけて煮込んだもの
②特製地鶏のダシ汁

地鶏から切り分けた骨を鍋底で加熱。鍋底に付いた焦げ目をダシ汁のコクにする

骨を焼いた鍋に氷を入れる

ダシをとるときは、氷から加熱するほうが濃く抽出できる

香味野菜のニンジン、タマネギ、セロリを加える

煮込んで特製地鶏のダシ汁の完成
◆米の下ごしらえ

リゾットに使う米は、リゾットに適したイタリア米のカルナローリ種を使用

リゾットに使うイタリア米は、イタリア最大の米処、北部のピエモンテ州で1935年に創業したロンドリーノ社の「アクエレッロ」ブランド。硬度が高く、粘度が低く、風味はまろやかで、味がしっかりしている。味を損なわないように真空缶で納品される

「アクエレッロ」缶の風景は、同ブランドの米がつくられる水田。田植えがはじまる初夏を描いたもので、水田に映る米倉庫とアルプスの残雪がレイアウトされている

オリーブオイルを加熱し、タマネギで香りをつける

タマネギを取り除いたオリーブオイルを別の鍋に移す

鍋に米を入れ、オリーブオイルで炒め、下ごしらえの完成
◆大麦の下ごしらえ

大麦をリゾットの具材として加える。鶏肉やポルチーニの風味や食感に合うため

大麦はイタリア産の皮なしタイプを使用。煮くずれしにくく、モチモチした食感の中に麦の香りと味を楽しむ

大麦を茹でる

茹で上がった大麦をザルにあけて下ごしらえの完成
◆リゾットをつくる

鍋底でポルチーニを炒め、鍋底に付いた焦げ目をダシ汁のコクにする

ポルチーニ茸は、香りが豊かなイタリア産生タイプを使用

具材の地鶏を投入

ポルチーニと一緒に地鶏を炒め、鍋底に付いた焦げ目をダシ汁のコクにする

ベースの鶏のダシ汁を加える

ベースの鶏のダシ汁で鍋底の焦げ目を洗い落とすように取り除き、コクとして混ぜ合わせる

米を加える

大麦を加える

塩をひとつまみ加える

特製地鶏のダシ汁を加え、鍋の中でダシ汁を2種かさねることで、コクを深める

米と具材を炊き込む

無塩バターを入れ、風味とトロみを加える

火を止めてからパルメザンチーズを混ぜ、風味とトロみ、塩味を加えて完成

出来上がったリゾットを皿に盛り付ける

イタリアンパセリのみじん切りをふりかけて仕上げる
お召し上がり

地鶏とポルチーニのリゾット
◆大地を感じる、豊饒な旨みとコク
出来あがったリゾットを口に含むと、どこか懐かしい、チキン風味に惹かれます。
食べ進むと、噛むほどに味は深まり、秋らしさを感じて、飽きることはありません。

地鶏とポルチーニのリゾット
具材の地鶏やポルチーニ、大麦などは、微妙な食感のちがいを楽しみます。どれも大地を感じる、豊饒な旨みとコクに溢れています。
大麦は名脇役です。米より少し大きな舌ざわりで、ポロポロ、モチモチした食感に感じる香ばしさと、ほのかな渋みは、地鶏やポルチーニと良く合い、全体の味を深めています。
皿に残った汁はパンですくい、秋らしい味の余韻を楽しみます。

地鶏とポルチーニのリゾット

ビスボッチャ入口の鉢植え
3.地鶏の骨付きモモ肉の炭火焼き

地鶏の骨付きモモ肉の炭火焼き
メニューについて
◆豪快かつ繊細に地鶏を味わう
熊野地鶏が持つ、素材そのものの美味しさを、素朴な炭火で味わいます。
パリッとした皮や、香ばしい焦げ目、しっとりした身。
炭の火力が引き出す、豪快かつ繊細な味のバリエーションを楽しみます。
調理
◆骨付きモモ肉をマリネする

炭火焼きは肉質がしっかりした雄鶏を使用。モモ肉を切り分ける

モモ肉を骨から半分切り開く

塩・コショウで下味をつける

バットに骨付きモモ肉を入れ、ニンニクとローズマリーを加える

バットにオリーブオイルを注ぎ、冷蔵庫で2日間マリネする
◆骨付きモモ肉を炭火で焼く

コンロで炭に火をつける

炭の着火は底があいた火起こし鍋を使う

炭は火力に対して縦に並べると着火が早い

炭は火持ちがよく、灰が少ないオガ炭の五香備長炭を使用

着火した炭をグリルに運ぶ

トングで炭をグリルに移す

グリルに広げた炭に薪を加え、香ばしい香りを増す。薪は国産の桜の木を使用

地鶏の皮を下にして焼きはじめる。ローズマリーで香りをつける

皮の面が焼けた頃合いに地鶏を反転させる

炭にしたたり落ちた肉汁の煙が燻製効果になって地鶏に香ばしい香りをつける

トングで地鶏を起こして側面を焼いて出来上がり
お召し上がり

地鶏の骨付きモモ肉の炭火焼き
◆濃い肉汁に旨みとコクが凝縮
焼きあがった地鶏の皮は、炭火で余分な脂が落ち、揚げ物のようにカリッとしています。
厚くて食べごたえがあり、香ばしい風味を楽しみます。

地鶏の骨付きモモ肉の炭火焼き
モモ肉の中身は、丸々として、ボリューム感があり、肉質はキメ細かいながら、しっかりした弾力があり、ほどよい噛みごたえです。
肉汁は濃く、粘りがあり、甘みや旨み、コクがギュッと詰まっています。
地鶏の豪快かつ繊細な味わいに、秋の至福を感じます。

地鶏の骨付きモモ肉の炭火焼き
4.おすすめのワイン

赤ワイン「ロッソ・ディ・モンタルチーノ コンティ・コンスタンティ」
地鶏のコクに、エレガントな辛口赤ワイン
銘柄/ロッソ・ディ・モンタルチーノ コンティ・コンスタンティ
ワイナリー/コンティ・コンスタンティ社
生産地/イタリア中部トスカーナ州
ぶどう種/サンジョヴェーゼ・グロッソ100%
生産年/2017年
コンスタンティ家は、15世紀までさかのぼる名家です。ワインの味もトスカーナワインの伝統を今に伝えています。
色は濃いルビー。香りは赤い果実系に樽香のニュアンスが加わります。
味わいは、エレガントで、活き活きした旨みがあり、しっかりした骨格の辛口です。
繊細で滑らかな印象が、地鶏のコクを引き立てます。

赤ワイン「ロッソ・ディ・モンタルチーノ コンティ・コンスタンティ」と「地鶏の骨付きモモ肉の炭火焼き」
鈴虫の鳴き声が聞こえたら、
ビスボッチャの「秋の地鶏フェア」で、お楽しみください。

ビスボッチャ入口の鉢植え