第37回 CHRISTMAS SPECIAL MENU 2018
クリスマスの特別感を、とっておきのイタリアンで
平成最後のクリスマスは、美味しい料理をゆっくり楽しみたい。
というお客様のために、12月21日(金)〜26日(水)の6日間、
豪華なクリスマス限定メニューを8品ご用意します。
ご注文はアラカルトで承ります。定番メニューとともに、お好みでお選びください。
解説/料理長 井上裕基・副料理長 露詰まみ
写真・文・エッセイ/ライター 織田城司
Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text ・Essay by George Oda
前菜
1.クリスマスカラーの前菜4種の盛り合わせ
◆冬の味覚と高級食材で彩るクリスマス
クリスマス気分を盛り上げる前菜を、冬の味覚と高級食材で彩りました。
フレッシュで、バラエティーに富んだ味をお楽しみください。
① 焼き野菜のマリネ
◆甘酸っぱさをギュッと詰めて
野菜の持つ自然の甘味と酸味を凝縮した焼き野菜のマリネ。クリスマス版はクリスマスカラーの野菜を中心に揃えました。
下ごしらえは野菜の特性に合わせ、全て異なる加熱を施すことで、とろける食感や甘味、酸味を引き出します。
② サン・ダニエーレ産生ハムと柿
◆高級食材の組み合わせ
生ハムの食べ方で人気が高いのは、フルーツとの組み合わせです。
クリスマス版のフルーツは、日本の冬の味覚、富有柿(ふゆうがき)を合わせます。果肉はヌメリとした柔らかさがあり、甘味の濃い果汁をたっぷり含み、高級食材として世界で評価されています。
合わせる生ハムは、イタリアで最高峰とされるサン・ダニエーレ産を使用します。同じ前菜の次項に、サン・ダニエーレ産生ハムの単品メニューがあるので、詳しくはそちらで解説します。
③ ブッラータチーズのカプレーゼ
◆クリーミーな甘味
ブッラータチーズは、モッツァレッラチーズと同じフレッシュチーズの仲間です。
袋状にしたモッツァレッラの中に、刻んだモッツァレッラや生クリームを詰めた、チーズ好きがうなる手の込んだものです。
ブッラータとはイタリア語でバターのような、という意味。中身がトロッとして、バターのような香りと甘味があることが由来です。
トマトは甘味や酸味が強いフルーツトマトを合わせます。一味違うカプレーゼをご賞味ください。
④ 鮮魚のカルパッチョ
イタリアにも生魚を食べる文化があります。オリーブオイルをベースに軽く味をつけ、生魚のフレッシュ感を引き立てます。
クリスマスカラーの香辛料と香草でスパイシーな要素を加えました。
2.サン・ダニエーレ産生ハム
◆生ハムの最高峰をたっぷり味わう
イタリアの特産品、生ハムは、豚のモモ肉を吊るし、自然の空気で熟成させたものです。
気候が大きく影響するため、産地が限られ、北イタリアのパルマとサン・ダニエーレが2大産地とされています。
なかでも、サンダニエーレ産のものは、プレスの工程を加え、脂肪と塩分を均等に広げることで、深い味わいを生み出しています。このため、生ハムの最高峰とされ、ローマの大統領官邸や英国王室などで、世界各国のVIPに振舞われています。
◆とろける舌ざわり、まろやかな塩味
削りたての生ハムからは、樽香や燻製香のような、熟成された香りが漂います。
肉質はキメ細かく、ナイフで切るというより、簡単にちぎれる柔さがあります。
フォークにまとわりついた生ハムはしっとりして、口に含むと、とろける舌ざわりと、まろやかな塩味を感じ、後味に甘味や旨味、コクを感じます。
深みのある味わいを、たっぷりお楽しみください。
エッセイ:食のこぼれ話『感謝の生ハム』
人生の節目に、転居は付きものです。
映画『陽気なドン・カミロ』(1951年)は北イタリアの片田舎を舞台に、牧師の転居を描いた作品です。
牧師は村人とともに、村長の理不尽な政策に異議を唱え、抵抗活動を繰り返してきました。
ところが、牧師の行為は聖職者として行き過ぎ、と司教から批判され、転勤を命じられました。
牧師が村を去る朝、駅に集まった村人が「これをお持ちください。私たちの感謝の気持ちです」と言って、牧師に手渡した餞別は、大きな生ハムの原木でした。
人情味の表現に、生ハムが持つ土着感や生活感を巧みに使った、見事な演出でした。
3.フィレンツェ風 牡蠣のグラタン
◆ホウレン草で美味しく
料理にホウレン草を加えるのがフィレンツェの特徴です。なかでも、牡蠣のグラタンは人気メニューとして知られています。
クリスマス版では、イタリア北部のフォンティーナチーズを加え、あたたかさをプラスしました。
◆北国のチーズをのせて
フォンティーナチーズはイタリア北部、アルプス山脈のふもとで13世紀頃から作られはじめました。夏の間放牧した牛のミルクを秋から冬にかけて熟成させたセミハードチーズです。
山岳地帯の冬を乗り切るための保存食で、脂肪分が多く、イタリア版のチーズフォンデュにも使われています。
◆あたたかさと元気を感じる味
アツアツのグラタンから、フォンティーナチーズの香ばしい香りが漂います。
中から出てきたホウレン草と牡蠣はしっかり火が入り、トロトロにやわらかくなり、甘みと旨味が増しています。
北国の知恵を想いながら、あたたかさと元気を感じる味わいを楽しみます。
パスタ
4.黒トリュフのタヤリン
◆冬の香りを楽しむ
秋から冬は、キノコの旬で、香りを楽しむ料理が食卓に並びます。日本ではマツタケが名物ですが、イタリアではトリュフが名物です。
今回使用するトリュフは、主に10〜11月に収穫される断面が茶色の黒トリュフです。
イタリアではタルトゥーフォ・ネロ・アウトゥンナーレ( Tartufo nero autunnale )と呼ばれ、日本では秋トリュフや秋黒トリュフなどと呼ばれる種類です。
トリュフと相性のいい極細パスタ、タヤリンのバターソース和えとともにお召し上がりください。
◆濃厚な森の香り
タヤリンの卵の風味とクリーミーなバターソースは、削りたての黒トリュフとよく馴染み、濃厚な森の香りを引き立てます。
生ハムの塩味とコクが、香りを楽しむ料理のダシとして効いています。
5.ワタリガニのフェットチーネ
◆冬の贅沢を丸ごと一匹
イタリアの魚介のパスタといえば、エビやアサリを使ったものがポピュラーです。そのクリスマス版として、日本の冬の味覚、ワタリガニを丸ごと一匹使ってパスタを作りました。
ワタリガニは身が詰まっていることにこだわり、青森県産を使用。
ソースは甲羅やカニ味噌から出る濃厚なコクにトマトの酸味を合わせ、まろやかに仕上げました。
パスタは味が染み込みやすい生パスタのフェットチーネを合わせました。
◆香ばしさと深いコク
フェットチーネには、ワタリガニが持つ香ばしさや甘味、塩味、旨味、コクなど、多彩な味が染み込んでいます。
イタリアンパセリとズッキーニの青々しい風味が爽やかなアクセントになっています。
ハサミや脚の付け根にある白い身は、キメが細かく、クリーミーな舌ざわりで、甘味や旨味が充実。ソースに絡めながら、パスタとちがう味わいを楽しみます。
肉料理
6.“オッソブーコ” 仔牛のすね肉の煮込み
◆ミラノの洗練された煮込み
寒い冬は、心身ともにあたたまる煮込み料理が人気です。そこで、ミラノで生まれた煮込み料理「オッソブーコ」をクリスマス版として提供します。
「オッソブーコ」はイタリア語で骨を意味するオッソ(Osso)と、穴を意味するブーコ(Buco)が合わさってできた言葉です。牛すね肉を煮込み、骨の真ん中の髄がとろけて陥没して、穴が目立つ姿がそのまま料理名になっています。
爽やかで軽めの味に仕上げるところに、ミラノらしい洗練を感じます。
◆まろやかな旨味
出来上がった煮込みは、髄液が溶け込んだ煮汁がワインや柑橘類で中和され、さっぱりした印象です。
すね肉はフォークで簡単に切れる柔らかさで、口に含むとボロッと崩れ、噛みしめると、まろやかな旨味を感じます。
7.ファッソーネ牛の炭火焼き
◆イタリアで最も親しまれている赤身肉
今年日本に初上陸したファッソーネ牛は、イタリアで一番親しまれている赤身肉のブランド牛です。
その旨味をダイレクトに感じるように、最もシンプルに調理します。
炭火で焼き、塩、コショウ、オリーブオイルだけで味付けます。
◆ファッソーネ牛とは
ファッソーネ牛はイタリア北部ピエモンテ州で生育する中型の白い毛皮の牛で、筋肉質の体格から、赤身肉がたくさんとれます。
地元の牧畜業者がこの牛を区別して呼んだ愛称が品種名になりました。
肉質は、
・脂肪がほとんど無く、コレステロールが低く、ヘルシー
・赤身なのに、やわらかい歯ごたえ
・しっかりした旨味がある
などの特徴があります。
仔牛の肉は通常の仔牛よりも赤身が強く、やわらかいのが特徴です。
◆野生の本能を刺激する香ばしさ
炭や薪の香りがついた肉の香ばしさは、原始時代からバーベキューに親しんだ人類のDNAを呼びさまし、野生の本能を刺激します。
ランプ肉は風味が濃厚で、噛みしめるとやわらかく、きめ細かい肉質がすぐに砕け、サラサラした舌ざわりを感じます。
甘味や旨味を中心にしたまろやかな味わいで、後味にコクやほろ苦さを感じる奥深さがあります。
分厚い肉を焼くと、より味の層が広がります。ぜひ、大人数で分厚い肉の醍醐味をお楽しみください。
デザート
8.パネトーネ
パネトーネはイタリアでクリスマスに食べる菓子パンです。
中身の黄色とドライフルーツが、宝石箱の金貨や宝石に見えることから、金運が良くなると言われています。
見た目の印象だけではなく、中世の頃、パネトーネがミラノのスフォルツェスコ城の公爵に銘菓として認められ、開発した青年が恋愛成就した伝説も語り継がれています。
こうした背景から、パネトーネをクリスマスに食べると、翌年に幸運をもたらすと考えられています。
パネトーネの実質的な利便性は、イタリア北部でしかとれない特殊な天然酵母の働きで、防腐剤を使わなくても日持ちすることです。クリスマスから新年にかけて、ロングランで食べられます。
パネトーネの生地はしっかりした歯ごたえがあります。クリームと混ぜ、甘さと潤いを加えながら食べると美味しさが増します。
ドライフルーツの酸味と、焦げ目の香ばしい苦味がアクセントになります。
いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。
クリスマスのディナーは、ラ・ビスボッチャのスペシャル・メニューでお楽しみください。
皆さまのご来店を、スタッフ一同、心よりお待ちしております。