RECOMMENDED SEASONAL MENU 2021 AUGUST
コラム『味と技』第94回
真夏の思い出
真夏の太陽を浴びると思い出す、祭りや旅、映画、音楽…そして、味覚。
8月は、真夏に美味しく、暑さを忘れるメニューを10品集めておすすめします。
メニュー編集・調理/料理人・老田裕樹
監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ
写真・文/ライター 織田城司
Menu editing・Cooking by Yuuki Oita
Supervised by Yuuki Inoue Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
⚫︎前菜
みずみずしい甘みの涼感
ブラータチーズのサラダでめぐる旬菜の歳時記シリーズです。
8月は、みずみずしい甘みが心地よいフルーツ、梨と黄金桃をブラータチーズと合わせておすすめします。
1.ブラータチーズと梨のサラダ
メニューについて
ブラータチーズと旬の梨を合わせたサラダです。
◆ブラータチーズとは
ブラータチーズはモッツアレラチーズと同じフレッシュチーズの仲間です。
ブラータはイタリア語で「バターのような」という意味で、バターのような風味と、ミルキーな甘みがあります。
袋状にしたモッツアレッラチーズのなかに、とろりとした「ストラッチャテッラ」というチーズを詰め、封をしてつくる手の込んだものです。
◆「ディ・ステファノ」社のブラータチーズ
ひとくちにブラータチーズといっても、質感や味は一様ではなく、豆腐のように、メーカーによって千差万別です。
「ディ・ステファノ」社のブラータチーズは、しっかりした質感と濃厚な味わいが特徴です。
同社は、イタリア南部プーリア州の親子2代のチーズ職人がアメリカに渡り、カリフォルニア州で生産するチーズメーカーで、同地の放牧乳牛「ハッピー・カウ」の濃厚なミルクを使用しています。
「ディ・ステファノ」のブラータチーズが購入できる通販サイトのリンクはこちら→「THE FOODS」
お召し上がり
◆とろける爽やかな甘み
梨の果肉は、シャリシャリした歯ごたえが心地よく、果汁たっぷりで、サラッとしたくちどけ。
梨の爽やかな甘みと、ブラータチーズのミルキーな風味が、絶妙にとけあいます。
2.ブラータチーズと黄金桃のサラダ
メニューについて
8月に旬をむかえる黄金桃をブラータチーズと合わせたサラダです。
お召し上がり
◆桃の強い甘みをやさしく包むチーズが絶妙
黄金桃の果肉は黄色く、柔らかい繊維が緻密で、ねっとりと濃い果汁をたっぷりたくわえ、強い甘みがあります。
ブラータチーズのまろやかな旨みが、ホッとするアクセントで、黄金桃の強い甘みをやさしく包みます。
3.カツオの炭火焼きのサラダ ジェノヴェーゼソース
メニューについて
◆カツオを爽やかに楽しむ
初夏から出まわる「初ガツオ」は、秋の「戻りガツオ」に比べると脂は少なめで、夏の味覚として楽しみます。
今回は爽やかな野菜をたっぷり合わせ、暑さが本番になる季節にぴったりのサラダに仕上げます。
調理
◆カツオを炭火で焼く
◆仕上げる
お召し上がり
◆旨み、酸味、爽やかさのベストマッチ
カツオの歯ごたえはもっちりして、弾力があります。旨みが強く、コクもしっかりしています。
炙った表面は、香ばしさや塩味、ほろ苦さが加わり、味が豊かに広がります。
カツオの濃厚な味わいに対して、和食は薬味を合わせてバランスを取りますが、今回のサラダは、野菜をたっぷり合わせてバランスを取ります。
フルーツトマトと赤タマネギの赤ワイン酢煮は、底に広げたレモンドレッシングと混ざり、酸味がきわだちます。
ルッコラとジェノヴェーゼソースは、青々しい味わいのなかに、爽やかな香りが広がります。
暑い日に、最初に飲みたい泡系の飲みもののおつまみにおすすめです。
4.揚げナスとチーズの重ね焼き
メニューについて
◆ナポリの郷土料理で味わうナス
イタリア人はウインドウ・ディスプレイがすごく上手。
街角の名もないバールでも、歩道に面したガラスケースのなかに、惣菜を盛り付けた白い大皿を整然と並べ、思わず見入ってしまいます。
そんな惣菜をイメージして、夏が旬のナスを使った前菜を、ナポリ出身のイタリア人から教えてもらったレシピでつくります。
こってりしていそうで、意外とさっぱりした後味です。
調理
◆ナスの下ごしらえ
◆ナスを揚げる
◆ナスを重ねて焼く
◆仕上げる
お召し上がり
◆ナスの甘みと旨みをたっぷり味わう
揚げてから焼いたナスはしっかり火が通り、とろとろに柔らかくなっています。
果肉が締まっているため、柔らかくても密度があり、ナチュラルな甘みと旨みがギュッと詰まっています。
ナスを揚げた衣は、ナスやトマトソース、モッツアレッラチーズなどの旨みが出た汁が染み、ふわとろの食感です
衣は、卵の風味が香ばしく、小麦粉は控えめで、軽めの印象。野菜をたっぷり食べた充実感にあふれています。
5.サマーポルチーニのソテー
メニューについて
◆イタリアの夏の味覚をシンプルに
きのこ王国イタリア。
香りを楽しむトリュフに対し、ポルチーニは味を楽しむきのこの代表です。
出まわりはじめのサマーポルチーニを、新鮮で柔らかいフレッシュタイプで仕入れ、シンプルにオリーブオイルでソテー。豊かな味をじっくり味わいます。
調理
お召し上がり
◆香り、旨み、コク、底なしの美味しさを堪能
サマーポルチーニは、炒めるオリーブオイルと相性がよく、とろとろの柔らかさに仕上がり、イタリアの食材の組み合わせが生む美味しさに、あらためて関心します。
柔らかさは、部分によってちがい、茶色い部分はとろける柔らかさで、ベージュの部分はもっちりして、食感のちがいを楽しみます。
味わいも部分によってちがい、茶色い部分は香ばしさやコク、ほろ苦さがきわだち、ベージュの部分は甘みや旨みがまろやかに広がります。
複雑に入り組む味は神秘的で、付け合わせはもちろん、単品でもじっくり味わえる美味しさです。
⚫︎パスタ
6.牛肉詰めのアニョロッティ 枝豆ソース
メニューについて
◆パスタで引き出す枝豆の美味しさ
和食の広がりから世界的に注目され、人気が高まる枝豆。
その美味しさの可能性を、詰めものパスタ、アニョロッティで引き出します。
新感覚で味わう夏の風物詩をお楽しみください。
調理
◆枝豆のソースをつくる
◆アニョロッティで包む牛肉の詰めものをつくる
◆アニョロッティを製麺する
◆仕上げる
お召し上がり
◆香ばしさと甘みが引き立つクリーミーなソース
枝豆は、完熟すると大豆になります。大豆は、醤油や豆腐の材料になる普遍性があり、枝豆にもその性格が備わり、さまざま食材となじみやすく、今回のパスタに使う乳製品や卵ともよく合います。
枝豆ソースに使う牛乳や生クリームのミルキーな風味は、クリーミーな質感で枝豆の香ばしさと甘みを引き立てます。
枝豆ソースは、アニョロッティの生地や詰めものに混ぜた卵や乳製品とよくなじみ、詰めものの主役で乳製品の親、牛肉の旨みへと導きます。
一見すると脈絡のなさそうな取り合わせが、一筋通った味の連鎖でまとまる展開に新鮮な美味しさがあります。食べ慣れた枝豆の粒も添えられ、食べ比べも楽しみです。
⚫︎メイン
7.魚介の炭火焼き
メニューについて
◆海の幸を香り高くふっくらと
夏がくると思い出す、海辺の旅館や飲食店で味わった魚介の美味しさ。
そんな魚介の美味しさを、絶妙な炭火加減で、香り高く、ふっくらと焼き上げて味わいます。
調理
お召し上がり
◆パリッと心地よい塩味が爽快
数ある炭火焼きのなかでも魚介は、磯の香ばしい香りと、海から生まれた塩との再会に比類なき味わいがあり、海に行きたくなる夏は、特に美味しく感じます。
今回のように、ひとつひとつの食材が大きい場合は、素材本来の味わいを堪能します。
ヤリイカのふっくら焼き上がった身は、甘みや旨みが充実。末端の薄い部分に進むにつれて焼き色が濃くなり、香ばしさやコク、ほろ苦さがきわだつグラデーションを楽しみます。
手長エビの身は、旨みがしっかりして、殻の香ばしさが染みています。
イサキの締まった白身は、旨みが豊かに広がり、パリッと焼けた皮の塩味が爽快に抜けていきます。
8.イタリア産 乳飲み仔牛の骨付きロースのソテー サマーポルチーニソース
メニューについて
◆夏らしいフレッシュな美味しさを極めて
サマーポルチーニの味わいは、秋のポルチーニの濃厚な味わいに比べるとおだやかです。そのおかげで、落ち着いて味の広がりを楽しむことができます。
そんなサマーポルチーニからつくるソースは、乳飲み仔牛の繊細な味わいと相性抜群です。
夏だけの「ぜいたく」な組み合わせをご堪能ください。
調理
お召し上がり
◆ポルチーニできわだつミルキーな旨み
乳飲み仔牛の肉質は、繊維質がサクッと噛み切れる柔らかさです。
うすいピンク色に焼き上がり、ミルキーな風味や甘み、若々しい旨みを感じます。
サマーポルチーニソースのまろやかな旨みと香りは、仔牛の繊細な味と響き合い、夏のわずかな期間の組み合わせを楽しみます。
肉の表面につけた小麦粉は、とろみがあり、香ばしさがアクセントになります。
⚫︎ドルチェ
9.イチジクのティラミス
メニューについて
人気の定番ドルチェ、ティラミスの夏味です。
ティラミスを構成するクリームや焼菓子、リキュールの香りを生かしながら、旬のイチジクの甘みミックスして、夏らしくアレンジします。
調理
お召し上がり
◆涼しそうな香りで引き立つクリームの甘み
ケーキを食べると、クリームをもっと食べたいと思う方には、うれしいボリュームのクリームです。
クリームの比率が半分以上あり、しかも、イタリア産マルカルポーネチーズの濃厚な風味と舌ざわりが効いて、しっかりした食べごたえがあります。
クリームを食べすすめるアクセントのイチジクは、マルサラ酒の熟成した果実香が染みて、爽やかな甘みが引き立ちます。
トッピングのアマレッティは軽い歯ごたえで、カリッと小気味よく割れたかと思うとボロッと崩れ、噛みしめると杏仁の甘い風味がふわっと香ります。
フルーティな香りのハーモニーはいかにも涼しそうで、クリームがより美味しく感じます。
10.パッションフルーツのソルベ
メニューについて
ソルベは、乳脂肪分を入れず、果汁を凍らせてつくる、さっぱりした口あたりの氷菓子です。
今回は、パッションフルーツの果肉と果汁、ピューレを混ぜて凍らせ、イタリアらしい濃厚な舌ざわりで仕上げます。
お召し上がり
◆鮮烈な酸味でひんやり
ソルベを口にふくむと、パッションフルーツの華やかな香りが広がります。
果汁たっぷりでつくるソルベ粒子はきめ細かく、とろりとして、濃密なくちどけに涼感がジーンと伝わります。
キリッと鮮烈な酸味が、真夏のディナーをスッキリと締めくくります。
8月のディナーは、
「ラ・ビスボッチャ」の季節のおすすめメニューを、
真夏の思い出に加えて、お楽しみください。