BBQフェア

BBQ FAIR

コラム『味と技』第93回

炭火で元気に

夏に食べたい!スパイシーでスモーキーな炭火焼き料理を集めた「BBQフェア」を7月19日(月)から7月31日(土)まで開催します。

期間限定メニューが9品登場。夏本番のパワーチャージに、ぜひご利用ください。

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ

写真・文/ライター 織田城司 
Supervised・Cooking  by Yuuki Inoue  Mami Tsuyuzume
Photo・Text  by George Oda

料理長ごあいさつ

炭火を味わう

炭火は、あらゆる食材を格別の美味しさに焼き上げます。

今回の「BBQフェア」では、炭火の魅力を追求して、王道のステーキのみならず、前菜やパスタ、ドルチェなど、さまざまなジャンルで炭火を活用します。

そのアイデアの背景には、『炭火で焼く』という料理本との出会いがありました。

ある日、新しいメニューのアイデアを探しに、本屋へ行きました。しかし、イタリア料理の本はどれも知り尽くしたメニューばかりでした。

すると、その近くにあった『炭火で焼く』が目につきました。自店も炭火焼き料理がメインのため、興味が湧き、手にとってページをめくると、新鮮な炭火焼きのメニューがたくさんあり、驚きました。

『炭火で焼く』は、アメリカ・カリフォルニア州のオーナーシェフ、ジョサイア・シトリンさんが自店のレシピをまとめたものです。

冒頭のコメントに、「極上の塩と挽きたてのコショウを少々。バーベキューの味つけには、それだけで十分という場合もあるでしょう。でも、アウトドア料理をまったく新しいレベルに引き上げてくれるスパイスはほかにもたくさんあります。」と書いてありました。

たしかに、イタリアンの炭火焼きの基本も、塩とコショウです。でも、それだけでは、守りばかりで、新鮮な提案がないことも事実です。

まるで、私に語りかけているようで、ドキッとして、すぐに本を買い、レシピを試作すると、どれも懐かしい味がしました。

ジョサイアさんのレシピは、世界各国の伝統的な炭火焼きを研究し、現代のグルメにリメイクしています。新鮮な味わいながら、しっかりしたルーツをベースにしている点に共感を持ちました。

そんなアイデアが生きたフェアメニューの美味しさに、炭火の奥深さを感じてお楽しみください。

2021年7月吉日

料理長 井上裕基

⚫︎前菜

1.ブラータチーズと炭火焼きイチジクのサラダ ザクロエキス風味

ブラータチーズと炭火焼きイチジクのサラダ ザクロエキス風味

メニューについて

◆真夏の夜のブラータチーズ・サラダ

やさしい甘みと、みずみずしい果汁が魅力のイチジクは、幅広くアレンジできる果物です。

乳製品との相性がよく、炭火で焼いて甘みが増したイチジクをブラータチーズと合わせるサラダは、春から夏にかけて人気の前菜メニューです。

盛夏はイチジクをザクロエキスと和えてから炭火で焼き、華やかな芳香や甘酸っぱさを加え、食欲をそそる刺激を増しておすすめします。

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

イチジクは愛知県産を使用。炭火で焼いたときにドロドロにならないよう、熟しすぎていないものを選ぶ

イチジクを半分に切り、ボウルに入れ、オレガノ(ドライ)のみじん切りを振りかけ、香りをつける

ザクロエキスを加える

ザクロエキスはザクロの果汁100%を濃縮還元したもの。色は黒に近い赤茶色でとろりとした濃度がある。世界有数のザクロの特産地、トルコ産を使用

ザクロエキスをイチジクと和える

イチジクを切り口を下に、炭火焼きグリルの焼き網の上に並べる

炭はオガ炭を使用。製材するときにできるオガ屑を再利用し、圧縮して中空の棒状に固めて焼いた成形炭。特徴は、火付けがよく、火持ちがよく、灰が少なく、煙も少ない。形が一定しているから隙間なく積みやすい

オガ炭は国産木材のみを使う宮崎県の「ひむかのオガ炭」を使用

トングを使ってそっとひっくり返し、ジャム状に柔らかくなるまで2〜3分焼く

バジルとミントをみじん切りする

皿にイチジクとブラータチーズを盛り付け、バジルとミントのみじん切り、黒コショウを振りかける

ブラータチーズは、アメリカ・カルフォルニア州の放牧乳牛「ハッピーカウ」の濃厚なミルクを使う「ディ・ステファノ」社製を使用

エキストラヴァージン・オリーブオイルを振りかけて完成

お召し上がり

ブラータチーズと炭火焼きイチジクのサラダ ザクロエキス風味

◆濃厚な甘酸っぱさの爽快感

炭火で焼いたイチジクの果肉はジャムのように柔らかくなり、甘みが増し、小さな種のプチプチした食感がアクセントになります。

ザクロエキスがイチジクに不足する酸味を補い、ひとつの濃厚な甘酸っぱい味として一体化します。やや強いと思う甘酸っぱさが、暑さが極まる季節にちょうどいい爽快感です。

ブラータチーズと炭火焼きイチジクのサラダ ザクロエキス風味

ザクロエキスの芳醇な香りは、ポプリや薬草、赤ワイン、スパイスなどの華やかなニュアンスが広がり、強い味で押すだけではない、リラックスした余韻を加えています。

ブラータチーズのミルキーな風味と旨みがアクセントになります。

ブラータチーズと炭火焼きイチジクのサラダ ザクロエキス風味

ラ・ビスボッチャ店内

2.夏野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース添え ペコリーノチーズかけ

夏野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース添え ペコリーノチーズかけ

メニューについて

◆しっとりしたソースでよみがえる焼き野菜の美味しさ

野菜を炭火で焼くと、香ばしさや甘みは増すものの、水分が蒸発して、旨みや風味は淡白になりがちです。

そこで、しっとりしたソースを合わせ、焼き野菜の潤いを補いながら味を引き立てます。

ソースはどんな野菜にもなじむ、汎用性の高いトマトをベースにします。

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

◆トマトの下ごしらえ

トマトは熊本県産を使用

トマトを半分にカットし、塩を振りかけて下味をつける

トマトの皮にまんべんなくエキストラヴァージン・オリーブオイルを塗る

炭火焼きグリルの焼き網の上にのせる

最初は皮を下にして焼く

ときどきひっくり返し、全体が黒く焦げ、皮にシワが寄るまで約10分間焼く

バットの上で冷まし、ヘタを取り、皮をむく

トマトの果肉をみじん切りにする

◆焦がしトマトソースをつくる

鍋底にオリーブオイルとニンニクを入れ、加熱し、オイルに香りをつける。オリーブの塩水漬けのみじん切りを加える

オリーブの塩水漬けはイタリアの「ラ・ロッカ」社製を使用。1988年にローマ郊外で創業したオリーブの実を扱う専業メーカー。オリーブの特産地、シチリア産の早摘みグリーンオリーブを使い、実は肉厚で、塩気は少なく、オリーブ本来の味が楽しめる

オレガノ(ドライ)のみじん切りとアンチョビを加える。アンチョビはヘラでつぶす

焦がしトマトの果肉と自家製トマトソースを加える

赤唐辛子を少量加える

赤唐辛子は、フランスとスペインをまたぐ美食の地、バスク地方で17世紀から栽培がはじまったエスプレット唐辛子を使用。辛すぎず、マイルドな味わいでフルーティーな風味がある

バジルとタイムをみじん切りにする

バジルとタイムのみじん切りを加える

赤ワイン酢を加える。赤ワイン酢はイタリア北部の酢の特産地、モデナで1891年に創業した「アドリアーノ・グロソリ」社製を使用

◆夏野菜を焼く

炭火で焼くイタリアと日本の夏野菜の一例。組み合わせや産地は日によって変わる

野菜を食べやすい大きさにカットする

塩とオリーブオイルを振りかけて下味をつける

炭火焼きグリルの焼き網の上に並べる

トングを使ってときどき焼き面を変えながら、焦げ目がつき、歯ごたえが残る程度の柔らかさになるまで焼く

皿に焦がしトマトソースを広げ、炭火で焼いた夏野菜を盛り付け、エキストラヴァージン・オリーブオイルを振りかける

ペコリーノチーズをおろしかけて完成

ペコリーノチーズは羊乳からつくるチーズで香りが高く、後味はスッキリしている。牧羊が盛んな特産地、サルデーニャ島産を使用

お召し上がり

夏野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース添え ペコリーノチーズかけ

◆ソースで増す焼き野菜のおつまみ感

焦がしトマトソースは、ソースの味しかしない強い味ではなく、あくまでも焼き野菜の持ち味を引き立てる、やさしい味つけです。

焦がしトマトソースが染み込んだ焼き野菜は、水分が戻ることで柔らかくなり、それぞれの野菜の食感のちがいがきわだちます。

夏野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース添え ペコリーノチーズかけ

トマトの酸味や旨みが加わった焼き野菜は、焼き色の香ばしさやほろ苦さが生きて、より美味しく感じます。

焦がしトマトソースに混ぜたアンチョビやオリーブ、振りかけたペコリーノチーズの塩味は、焼き野菜にまろやかに効いて、おつまみ感を増します。

夏野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース添え ペコリーノチーズかけ

ラ・ビスボッチャ店内

3.スティッギオーラ

スティッギオーラ

メニューについて

◆ビールによく合う!屋台の味

スティッギオーラは、イタリア南部シチリア島最大の都市、パレルモのストリートフードです。

牛や豚、仔羊などの小腸を炭火で焼いたもので、いわばシチリア版モツ焼きです。

小腸だけを串に刺して焼くものや、野菜と一緒に焼くものなど、スタイルはさまざまです。

今回は国産牛の小腸をイタリア産の葉タマネギと一緒に串に刺し、炭火で香ばしく焼きます。

シチリアの屋台の味を、ビールが美味しい夏の前菜におすすめします。

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

◆スティッギオーラの下ごしらえ

下茹でした国産牛の小腸の端に金串を刺す。次に、葉タマネギ全体に金串を刺す

葉タマネギはイタリア産を使用

葉タマネギを芯に、牛小腸を巻きつける

牛小腸の先端を串の先に刺して固定する

◆スティッギオーラを炭火で焼く

スティッギオーラを炭火焼きグリルの焼き網の上に並べる

焼け具合を見ながらときどき向きを変える

滴り落ちる脂が炭火で燃え、立ちのぼる煙りが燻製効果となり、スティッギオーラに香ばしい香りをつける

牛小腸の表面がカリカリになるまで焼く

焼き上がったスティッギオーラから金串を抜く

食べやすい大きさにぶつ切りにする

レモンをたっぷり絞って仕上げる

お召し上がり

スティッギオーラ

◆脂のとろける甘みがうまい

牛の小腸は腸壁以外はほぼ脂身です。炭火で焼くと、溶けた脂が大量に炭火に落ち、モクモクと立ちのぼる煙が、小腸をすすけたような黒っぽく仕上げます。

そのスモーキーな風味が、レストランに居ながらストリートの活気を感じるキモです。

スティッギオーラ

焼き上がった脂身は、コラーゲンたっぷりでぷるぷるした食感のなかに、とろける甘みを感じます。キツネ色に焼き上がった腸壁はカリカリして、香ばしさがきわだちます。

間にはさんだ葉キャベツはとろとろに焼け、甘みがたっぷりして、まろやかになったタマネギの風味がアクセントになります。

味わいは、焼き鳥の「かわ」や「ねぎま」に似て、日本人に親しみやすい印象です。

スティッギオーラ

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎パスタ

4.炭火焼きトウモロコシとキャビアの冷製カペッリーニ

炭火焼きトウモロコシとキャビアの冷製カペッリーニ

メニューについて

◆トウモロコシを冷やしパスタで味わう

夏に食べたい冷やし麺を、イタリアンでつくるパスタです。

パスタはツルッとした喉ごしが心地よい、極細麺のカペッリーニを使い、冷製スープでおなじみのトウモロコシをソースに合わせます。

トウモロコシは皮付きのまま丸ごと炭火で焼き、香ばしさと甘みを増します。

キャビアをのせ、塩味や旨み、コクのバランスを加えて仕上げます。

調理

メニュー提案・撮影調理 副料理長・露詰まみ

◆トウモロコシを直炭火で焼く

トウモロコシは国産を使用。産地は日によって変わる

トウモロコシは皮付きのまま丸ごと炭火のなかに入れて焼く。このため、トウモロコシの皮をタコ糸でしばる。トウモロコシのなかに灰が入るの防ぎ、ふっくら焼き上げる効果がある

炭のなかにトウモロコシを入れ、上からも炭をのせる

焼け具合を見て、ときどきトングで方向を変える

皮全体が黒く焦げるまで焼く

焼き上がったトウモロコシを冷ます

◆トウモロコシのソースをつくる

トウモロコシの皮を取り、まな板の上で回しながら包丁で実を切り落としていく

トウモロコシの実の一部は飾り用に取り置き、残りはみじん切りにしてソースに入れる

ボウルのなかで自家製鶏のダシ汁、エキストラヴァージン・オリーブオイル、魚醤を混ぜ、ソースのベースにする

自家製鶏のダシ汁は、鶏がらやひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間煮込んでつくる

エキストラヴァージン・オリーブオイルは、イタリア南部の特産地、プーリア州にある「ディサンティ」社製を使用。青々しい香りが豊かに香る

魚醤は、南イタリアのチェターラ産を使用。魚醤の起源は古代ギリシャからローマに伝来したとされる。いまはイタリア南部カンパニア州のアマルフィ海岸にあるチェターラという漁村が特産地として伝統を継承。現在は「チェターラ産の魚醤」という名で親しまれている

トウモロコシのみじん切りを加える

黒コショウを挽いて加える

黒コショウは世界最高峰の産地、カンボジアで日本人が手がける「クラタペッパー」社製を使用。柑橘系や木材系などのリラックス感ある香りが高く、爽やかな辛みがある

材料を混ぜ合わせてソースの完成

◆仕上げる

カペッリーニを茹でる。茹で時間6分

カペッリーニはイタリア南部プーリア州で1907年に創業した「タンマ」社製を使用

茹で上がったカペッリーニを氷水のなかのザルに投入

ザルを回しながら氷水でカペッリーニを冷やす

カペッリーニが完全に冷えたら、ざるを上げて水気をよくきる。ソースが水っぽくならないように、麺を手で押しながら、麺と麺の間の水気も十二分に落とす

カペッリーニをソースと和える

ソースと和えたカペッリーニを皿に盛り、キャビアをトッピングしてトウモロコシの実を飾って完成

キャビアは、世界のトップシェフ御用達のイタリアの高級ブランドキャビア「カルヴィシウス」を使用。イタリア北部ロンバルディア州の「アグロイッティカ・ロンバルダ」社で養殖されているシロチョウザメの卵からつくる

お召し上がり

炭火焼きトウモロコシとキャビアの冷製カペッリーニ

◆シンプルに輝く夏の主役

ソースのベースは、オリーブオイルや鶏のダシ汁、魚醤など、最も基本的な材料のみです。

ソースをニュートラルな味にすることで、夏の主役トウモロコシと、それを引き立てるキャビア、カペッリーニのバランスに集中します。

トウモロコシは、皮付きのまま丸ごと炭火で焼くことで、実はみずみずしさを保ち、くぼみがなく、ふっくらして、ところどころに焦げ目がつく仕上がりで、香ばしさと甘みが増しています。

カペッリーニは、細いながら、束になると強いコシの集積を感じ、プツプツ切れる歯ごたえが心地よく、ふんわり香る小麦の風味がトウモロコシの香ばしさを追いかけ、オリーブオイルが喉ごしのツルツル感を増しています。

炭火焼きトウモロコシとキャビアの冷製カペッリーニ

キャビアは、皮が極薄で、粒を感じない口どけに驚きます。中身の塩味や旨みはトウモロコシにない味で、引き立てあいます。昆布のような風味がソースの魚醤とリンク。磯の後味が涼感を増します。

味わいは深いが具は小さく、軽めの食べ口から、ディナーの途中の口直しや、料理を食べ足りないときの「締めパスタ」にもおすすめの一品です。

炭火焼きトウモロコシとキャビアの冷製カペッリーニ

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎メイン

5.スズキの直炭火焼き レモンとウイキョウの風味

スズキの直炭火焼き レモンとウイキョウの風味

メニューについて

◆意表を突く黒コゲの魚

魚の姿焼きは見栄えがします。

形の美しさもありますが、美味しそうに見えます。

頭や背骨、ウロコがついたままの魚を丸ごと焼くと、旨みが凝縮することを知っているからでしょう。

今回は身がしまった旬のスズキを丸ごと、直接、炭火のなかに放り込んで焼きます。

炭火で黒コゲになったウロコのバリアが味の凝縮感をさらに高めます。

斬新なようで、古代からある素朴な調理法です。

レモンとウイキョウで夏らしい爽やかな香りをつけて仕上げます。

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

◆スズキの下ごしらえ

スズキは国産を使用。産地は日によって変わる。ウロコ付き、骨付きで焼き、旨みを凝縮する

スズキの内臓を取り出す

スズキの内臓を取り出した後の腹のなかを掃除する

スズキの腹のなかに塩を振って下味をつける

スズキの腹のなかに、風味をつけるレモン、ウイキョウの茎や葉、種を詰める

ウイキョウの茎と葉はイタリア産を使用

ウイキョウの種は近くの公園に自生するものを摘んで使用

詰めたものが落ちないよう、つま楊枝4〜5本で腹の口を留める

◆スズキを直炭火で焼く

スズキを炭火焼きグリルの炭の上に直接置き、約6分ほど焼く

スズキをトングでひっくり返し、さらに6分ほど焼く

焼き上がった魚をまな板にそっと移し、10分ほど休ませる。骨付きのおかげで身が冷めにくく、休ませる間にしっとりして、味が落ち着く

◆仕上げる

スズキを皿に盛り、客席に運び、姿焼きの状態を披露。その後、厨房に戻して、身を取り分ける

スズキをまな板に移し、スプーンとフォークで皮をむく

身の中心に切り込みを入れ、骨から外し、皿に盛り付ける。詰めもののレモンとウイキョウを飾りつけて完成

お召し上がり

スズキの直炭火焼き レモンとウイキョウの風味

◆素朴さが極める奥深い味わい

魚を炭火に放り込み、調味料は塩のみ。焼き上がりは黒コゲなのに、身の奥深い味わいに驚き、まさに目からウロコが落ちる思いがします。

これが炭火のパワーで、遠赤外線が魚をなかから効率よく加熱し、沸騰した水分や脂分は密封された体内を対流し、頭や骨のダシをピックアップしながら身にしっかり味をつけています。

スズキの直炭火焼き レモンとウイキョウの風味

焼き上がった身はふっくらと柔らかく、しっとりして、香ばしさや甘み、旨み、コクを豊かに感じます。

究極の引き算の調理法で単純ながら、焼く環境を考えると家庭では難しく、骨付きの魚を取り分けるサービスとともに、特別感のある食体験を、この機会に、ぜひお楽しみください。

スズキの直炭火焼き レモンとウイキョウの風味

ラ・ビスボッチャ店内

6.鴨の炭火焼き ハチミツとミントのソース

鴨の炭火焼き ハチミツとミントのソース

メニューについて

◆鴨の滋味を食べくらべる

肉の炭火焼きの味付けには、塩がある一方で、糖を加えて甘く仕上げる方法もあります。

鴨モモ肉に、爽やかなハチミツとミントのソースをつけて炭火で焼き、濃い旨みを引き立てます。

鴨のハツ(心臓)を塩味で焼いた串を添えます。鴨の滋味の食べくらべをお楽しみください。

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

◆ハチミツとミントのソースをつくる

ミントの葉をちぎる

ミントは千葉県産を使用

鍋底でハチミツを加熱

ハチミツが泡立ち、濃い琥珀色に変わりはじめたらミントのみじん切りと黒コショウを加える。かき混ぜながら、ミントとコショウの香りがハチミツに移るまで1〜2分間煮る。火から下ろし、室温で冷ましてソースの出来あがり

◆鴨肉の下ごしらえ

鴨のモモはフランス産を使用。焼きやすいように骨を切って開き、平らにする

鴨のハツ(心臓)はフランス産を使用。焼きやすいように中心に切り込みを入れて開き、金串に刺す

塩コショウを振りかけて下味をつける

オリーブオイルを振りかけて下味をつける

◆鴨肉を炭火で焼く

鴨のモモを炭火焼きグリルの焼き網の上に置く。はじめは皮目を下にして焼きはじめる

ひっくり返して反対側からも焼く

再度ひっくり返して焼く

再度ひっくり返し、皮目にハチミツとミントのソースを塗る

ソースを塗った皮目を下にして焼く、身の面もソースを塗る

ひっくり返し、ソースを塗った身の面も焼く。焼き色はソースに含まれる糖類が加熱の酸化でキャラメリゼされて甘香ばしさが増した状態

鴨のハツは味が濃いため、ソースを塗らずに焼く。小さくて柔らかいため、2〜3分ほどで両面を焼く

モモの骨を外し、切り分け、ハツの串焼きとともに皿に盛り付けて完成

お召し上がり

鴨の炭火焼き ハチミツとミントのソース

◆鴨肉の濃い旨みを、多彩に味わう

ハチミツとミントのソースを塗った鴨のモモは、ハチミツに含まれる糖が炭火で加熱されたコーティングの効果で、外はパリッと、なかはジューシーな仕上がりです。

甘香ばしさが濃い旨みを引き立て、ミントの爽やかな風味でさらに極まります。

鴨の炭火焼き ハチミツとミントのソース

串焼きにした鴨ハツは旨みが濃厚で、ほろ苦さやコクも広がります。小粒ながらしっかりした味わいを、塩でシンプルに引き立てます。

部位による味のちがいや、味つけのちがいを食べくらべながら、鴨の奥深い滋味を堪能。身体のなかから力が湧いてくる後味です。

鴨の炭火焼き ハチミツとミントのソース

ラ・ビスボッチャ店内

7.豚スペアリブの炭火焼き ポルチーニのドライラブ

豚スペアリブの炭火焼き ポルチーニのドライラブ

メニューについて

◆ポルチーニ香るスパイシーなスペアリブ

肉を炭火で焼く味つけのひとつにドライラブがあります。

ドライラブは、基本的に塩と砂糖とスパイスをミックスしてつくるパウダーです。

肉にドライラブをつけて焼くと、風味が高まり、表面がカリカリに焼きがります。

豚スペアリブには、乾燥ポルチーニ茸をメインにしたドライラブをつけ、夏らしくスパイシーに焼き上げます。

調理

◆豚スペアリブの下ごしらえ

メニュー提案・撮影調理 料理人・高部孝太

豚スペアリブは高知県産を使用

豚スペアリブの表面にまぶすドライラブ(スパイスや調味料のミックス)の材料をミキサーに入れ、細かく粉砕しながら混ぜる

左上の白い小鉢の中身が完成したポルチーニのドライラブ。混ぜる材料は左からイタリア産ポルチーニ茸(ドライ)、フランス・バスク地方産赤唐辛子、ブラウンシュガー、アニス(ドライ)、カンボジア産黒コショウ、イタリア・シチリア産自然海塩

スペアリブに塩コショウを振りかけて下味をつける

スペアリブの両面にポルチーニのドライラブをまぶす

ドライラブをまぶしたスペアリブのバットをラップで覆い、冷蔵室で24時間かけて味と香りを染み込ませる

◆豚スペアリブを炭火で焼く

豚スペアリブを炭火焼きグリルの焼き網の上で骨の面から焼きはじめる

焼け具合を見ながら、ときどきひっくり返して焼く

焼き上がったスペアリブをまな板に移し、粗熱を冷ます。黒っぽい焼き色はポルチーニのドライラブに含まれる糖類が加熱の酸化でキャラメリゼされて、甘香ばしさが増した状態

スペアリブを骨ごとに切り分け、皿に盛り付けて完成

お召し上がり

豚スペアリブの炭火焼き ポルチーニのドライラブ

◆下味がしっかり染みた肉を噛みしめるよろこび

ドライラブがしっかり染みたスペアリブを噛みしめると、ポルチーニがふんわり香ります。

香ばしさと泥臭さが官能的なポルチーニの芳香が、食欲をすすめます。

豚スペアリブの炭火焼き ポルチーニのドライラブ

締まった肉は、歯ごたえがしっかりして、噛みしめるほどに甘辛い味が染み出し、肉の旨みやコクを引き立てます。

表面でパリパリに焼けたブラウンシュガーの甘香ばしさがアクセントになります。

豚スペアリブの炭火焼き ポルチーニのドライラブ

おすすめのワイン

赤ワイン「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ」

エレガントな辛口赤ワイン

銘柄/ブルネロ・ディ・モンタルチーノ
ワイナリー/ピオンバイア
生産地/イタリア中部トスカーナ州
ぶどう種/サンジョベーゼ・グロッソ100%
生産年/2015年

力強い辛口で定評のある赤ワイン「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ」。

ワイナリーのピオンバイアが、できる限り自然のままの製法でつくると、力強さにまろやかさが加わり、飲みやすくなり、奥深さが広がります。

エレガントな辛口が、ポリチーニ風味の豚スペアリブのスパイシーな味わいを引き立てます。

「豚スペアリブの炭火焼き ポルチーニ風味」に赤ワイン「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ」を合わせて

ラ・ビスボッチャ店内

8.トマホークの炭火焼き

トマホークの炭火焼き

メニューについて

撮影に使用したトマホークの塊肉。肉の種類はキングアイランドビーフ

◆トマホークとは

トマホークの語源はアメリカの先住民が使っていた斧のことです。

牛肉の骨付きリブロースの形が斧に似ていることから、ステーキの名に転用されるようになりました。

斧のイメージが豪快なステーキとよく合い、骨についた肉までワイルドに食べる気分を盛り上げます。

キングアイランドビーフとキングアイランドの地図(公式写真より)

◆キングアイランドビーフを使用

今回のトマホーク(骨付きリブロース)は、キングアイランドビーフを使います。

オーストラリアの南に位置するキングアイランド島は、年間を通じて温暖で雨量が多く、栄養価が高い土壌が良質な牧草を育てます。

この地でストレスなく放牧された牛の赤身肉は柔らかく、旨みに深い味わいがあります。

その魅力を、ぜひ厚切りでお楽しみください。

トマホークの炭火焼き

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

トマホークを塊肉から切り出す

切り出したトマホーク。斧の形に似ているのがわかる

トマホークの両面に塩コショウで下味をつける

側面も塩コショウで下味をつける

トマホークを炭火焼きグリルで焼く

炭を焼き網に乗せ、側面を焼く

反対側を焼く。滴り落ちた肉汁が炭火で燃える煙が燻製効果になり、肉に香りをつける

焼き上がった肉を骨から外し、切り分ける。豪快な噛みごたえを楽しむために厚切り

トマホークを皿に盛り付け、エキストラヴァージン・オリーブオイルを振りかけて仕上げる

お召し上がり

トマホークの炭火焼き

◆豪快な見た目、繊細な味わい

肉質は、弾力がしっかりしているが、無理なく噛み切れる柔らかさ。

厚切りのなかで、細かい繊維がジャキジャキと噛み切れる歯ごたえが小気味よい。

肉汁は粘性があり、しっとりして、牛肉の風味が濃厚。

噛みしめると、甘みから旨み、苦みまでの幅が広く、飽きがこない繊細な味わいがあります。

トマホークの炭火焼き

外側の焼き目はパリッとして、ほのかに感じる塩味と苦みがアクセントになります。

脂身はプルンとした柔らかさで、口のなかでトロけ、甘みと旨みが際立つ。

骨についた肉はコクがあり、ナイフで延々と削ぎ落としながらチビチビ食べる。満腹で会話が盛り上がり、飲み足りないと感じる赤ワインに丁度いい肴です。

トマホークの炭火焼き

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎ドルチェ

9.マリトッツォ・レモン風味 炭火焼きメレンゲのせ

マリトッツォ・レモン風味 炭火焼きメレンゲのせ

メニューについて

◆伝統菓子の夏味

今回のBBQフェア用につくるマリトッツォは、食後のデザートをイメージして、コンパクトなサイズにアレンジしています。

ホームメイドのブリオッシュと、カスタードクリームには、夏らしくレモンの風味をつけ、重ねるハーモニーで、爽やかさを増しています。

トッピングのメレンゲは、燃える炭をトングで近づけて表面を焼きます。焼き色の甘香ばしい味がアクセントになります。

調理

メニュー提案・撮影調理 副料理長・露詰まみ

◆製パンする

パン生地の中種(なかだね)の材料を混ぜ合わせ、発酵させる

中種の材料。左から生イースト、ぬるま湯、薄力粉、グラニュー糖

約1時間かけて発酵させた中種。2倍くらいの大きさになっている

パン生地に味と香りをつける材料を混ぜ合わせる

パン生地に味と香りをつける材料。左から卵(卵黄のみ使用)、無塩バター、レモン(皮のみ使用)、強力粉、グラニュー糖、牛乳

パン生地に味と香りをつける材料と中種を混ぜ合わせる

生地を丸めてボウルに入れ、ラップをかけ、一次発酵させる

約2時間後、生地が2倍くらいの大きさになっている。指を差し、押し戻されなければ適切な一次発酵の目安

生地に打ち粉を振る

膨らんだ生地を拳で叩いてガス抜きをする

生地を棒状に伸ばす

生地をパン1個の大きさに切り分け、重さを軽量しながら分量を均一にする

生地を丸く成形して、オーブンシートを敷いた天板にのせ、二次発酵させてから焼く

◆レモン・カスタード・クリームをつくる

ボウルのなかで卵黄、グラニュー糖、薄力粉を混ぜ合わせる

レモンを絞った汁を加える

レモンはアメリカ産を使用

沸騰させた牛乳を加える

ボウルで混ぜ合わせた材料を鍋に移し、混ぜながら加熱する

おろしたレモンの皮とバターを加え、香りととろみをつける

煮込んで粘性が出たカスタードクリームをボウルに移す

カスタードクリームをラップで覆い、冷蔵庫で冷やして出来あがり

◆マリトッツォを組み立てる

焼き上がったマリトッツォ用パンを上下半分にカットする

上下の断面にリモンチェッロを塗り、香りをつける

リモンチェッロはイタリア南部カンパニア州のコスティエラ社製の「プロフーミ・デラ・コスティエラ・アマルフィ」を使用。皮が厚く、香りが高く、苦味が少ないアマルフィ海岸で取れるレモンを、着色料、香料、保存料なしの手づくりにこだわってつくる

パン生地の上にカスタードクリームを絞る

上部のパン生地の上にミキサーで混ぜたメレンゲをつけ、カスタードクリームの上にのせる

炭をトングでつかみ、メレンゲに近づける

炭火が放つ輻射(ふくしゃ)熱で、メレンゲに含まれる糖類がキャラメリゼされて甘香ばしさを増す

お召し上がり

マリトッツォ・レモン風味 炭火焼きメレンゲのせ

◆レモンの香りの重なりにハッとする

炭火でキャラメリゼしたメレンゲの焦げ茶の焼き色は食欲をそそります。

マリトッツォにかじりつくと、レモンの香りがふわっと香ります。パン生地に混ぜたレモンピールの香り、パン生地に染み込ませたリモンチェッロの香り、カスタードクリームに混ぜたレモンピールの香りが、次々と現れます。

マリトッツォ・レモン風味 炭火焼きメレンゲのせ

クリームのボリュームはひかえ目で、レモンの香りのオーケストラのようなハーモニーが味わい深く、夏に美味しく感じます。

炭火で焼いたメレンゲの甘香ばしさがアクセントになります。

マリトッツォ・レモン風味 炭火焼きメレンゲのせ

夏本番の太陽がまぶしく感じたら、

ラ・ビスボッチャの

「BBQフェア」でお楽しみください。