RECOMMENDED SEASONAL MENU 2021 AUTUMN
コラム『味と技』第96回
初秋の味
9月は、暑い日が続くけれど、日ざしや雲のながれに、秋の訪れを感じます。
ディナーのメニューも、そんな季節の味を感じる料理を9品加えて、おすすめします。
メニュー編集・調理/料理人・村澤大
監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ
写真・文/ライター 織田城司
Menu editing・Cooking by Dai Murasawa
Supervised by Yuuki Inoue Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
⚫︎前菜
1.ブラータチーズと2色キウイのサラダ
メニューについて
ブラータチーズのサラダで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
9月の1品目は、2色のキウイを合わせておすすめします。
お召し上がり
◆とろける舌ざわりと爽やかな甘酸っぱさ
キウイの果肉は柔らかく、とろける舌ざわりで、爽やかな甘酸っぱさがあります。
黄色いキウイは甘さが強く、酸味は控えめ。グリーンのキウイは甘さに、青々しい酸味がバランスよく加わり、食べくらべを楽しみます。
ブラータチーズのとろりとした質感は、キウイの果肉とよくなじみ、ミルキーな風味は、キウイの甘酸っぱさを引き立て、小さな種のプチプチした食感がアクセントです。
2.ブラータチーズと2色ブドウのサラダ
メニューについて
ブラータチーズのサラダで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
9月の2品目は、2色のブドウ、シャインマスカットとナガノパープルを合わせておすすめします。
お召し上がり
◆パリッとした果肉と上品な甘み
どちらのブドウも大粒で、皮ごと食べられ、種がなく、パリッと締まった果肉の歯ごたえが心地よく、みずみずしい果汁に上品な甘みを感じます。
シャインマスカットは、マスカット特有のフルーティな芳香が高く、ナガノパープルは、皮のほのかな渋みを感じ、繊細な味のちがいを楽しみます。
ブラータチーズの旨みは、ブドウの上品な甘みを引き立て、振りかけた黒コショウのスパイシーな辛みでピリッと締まります。
3.シラスのフリッテッレ
メニューについて
9月は、シュワっとはじける泡系ドリンクが、まだまだ美味しく感じます。
食前酒のビールやスプマンテに合うおつまみとして、シラスと好相性の揚げ物、フリッテッレをおすすめします。
調理
◆フリッテッレの生地をつくる
◆フリッテッレを揚げる
お召し上がり
◆香ばしさ抜群!しみだす塩気
外側に近いシラスは、揚げ油の熱を強く受け、身はカリッとして、香ばしさがきわだちます。
中の生地はもっちりとして、噛みごたえがあり、シラスはふっくらとして、塩気がしみだしてきます。
カリカリとふっくら、ふたつのシラスの美味しさを一度に楽しみます。
香ばしさと塩気は、キリッと冷えた食前酒とよく合います。
⚫︎パスタ&リゾット
4.ツナとキノコのフェットチーネ
メニューについて
秋の味覚、キノコを、相性がよいツナと合わせ、イタリアで木こり風パスタとよばれるメニューです。
ツナの層が木の年輪に見えることも、名称の由来のひとつとされています。
今回は、自家製のごろっとしたツナと、4種のキノコをたっぷり使い、薄い平麺フェットチーネと、あっさりしたソースを合わせました。
調理
◆ツナの下ごしらえ
◆キノコ4種の下ごしらえ
◆ソースをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆具だくさんで味わう旨み
ごろっとしたツナは、ふっくらして、もちもちの歯ごたえです。噛みしめるとサクッとくずれ、味がしみたマグロの濃い旨みや塩気、コクが広がります。
しっかり炒めたキノコは、香りが芳醇。オリーブオイルがしっかりしみて、とろとろの柔らさかで、ほのかな旨みを感じます。
キノコの味は、やや淡白で、ツナを食べ直すと強い味で、ちょうどいいバランスを感じます。
具だくさんで味わう旨みに、ヒラヒラと出てくるフェットチーネや、あっさりした塩味のソースが、絶妙の軽さ加減で絡みます。
5.アワビのリゾット
メニューについて
旬のアワビでリゾットをつくり、ひと味ちがう食べ方を楽しみます。
アワビのカットは、トッピングの大きめのスライスと、米粒に合わせた細切れの2種で切り分け、歯ごたえのバリエーションを広げます。
アワビの肝からつくるペーストを、バターやチーズとともにリゾットに混ぜ、風味豊かに仕上げました。
調理
お召し上がり
◆心地よい食感と奥深い味わい
リゾットから香るアワビの磯の風味は、バターの香りと好相性で、パルメザンチーズの香りがコクを加え、食欲をそそります。
ダシ汁の旨みや塩気、コクは、米にしっかりと染みて、飽きない味わいです。
トッピングのアワビは、もっちりした食感で、細切れのアワビは、コリコリした食感です。
アワビの心地よい食感を大小2種で楽しみながら、噛みしめると染み出す旨みを堪能します。
⚫︎メイン
6.四万十ポークのポルケッタ
メニューについて
イタリアでは、秋になると、全国各地で特産品の収穫祭が開かれます。
こうしたお祭りの屋台料理に欠かせないのが、豚肉を丸めて焼いたポルケッタです。
香ばしい味わいは、秋のすがすがしい空気のなかで、特に美味しく感じます。
そんなポルケッタを、高知県のブランド豚「四万十ポーク」で3日間かけてつくり、じっくり味つけました。
⚫︎ポルケッタとは
ポルケッタは豚肉を丸めて焼いたもので、古代ローマ時代からあるイタリアの伝統料理です。
本格的なものは、骨と内臓を抜いた豚を丸ごと一匹焼いてつくりますが、小分けにした豚肉を丸めて焼いたものもポルケッタと呼ばれるようになりました。
焼くのに時間がかかるため、お祭りなど、特別な機会の振る舞い料理として準備したり、食品店や屋台などからテイクアウトすることが多い料理です。
薄くスライスしてパンにはさんで食べると相性抜群で、ストリートフードとしても親しまれています。
調理3日間
◆1日目:巻く
◆2日目:焼く
◆3日目:仕上げる
お召し上がり
◆深まる旨みとコク
ポルケッタの仕込みの写真を見ると、初日の塊肉の大きさは、3日目に切り分けたときに、3分の2くらいの大きさまで縮んでいます。
それだけ脂が落ち、残った肉に味が凝縮していることがわかります。
外側に巻いたバラは、脂身が揚げ物のように焼け、カリカリの食感で、香ばしさがきわだちます。
中に巻いた肩ロースは、しっとりと柔らかく、噛みしめると、旨みとコクが深く広がります。
肉の繊維の奥まで染み込んだ、ローズマリーとニンニクの香りがアクセントです。
7.牛フィレ肉のソテー サマーポルチーニソース
メニューについて
柔らかい赤身肉の美味しさが人気の年間定番メニュー、牛フィレ肉のソテー。
その秋味として、サマーポルチーニを使ったソースで仕上げました。
調理
◆牛フィレ肉を焼く
◆ソースをかけて仕上げる
お召し上がり
◆まろやかなソースでひきたつ赤身の旨み
牛フィレ肉の肉質はきめ細かく、柔らかい歯ごたえです。
肉汁はしっとりして、旨みからコク、ほろ苦さへの奥深さが、豊かに広がります。
牛フィレ肉にしっかり味がついているため、ソースはまろやかな味で引き立てます。
バターが効いたソースのほのかな甘みが、クリーミーな質感で絶妙に絡みます。とろとろに柔らかくなったサマーポルチーニの食感と、上品な森の風味に、初秋らしい合わせを感じます。
⚫︎ドルチェ
8.2色ブドウのタルト
メニューについて
タルトで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
9月の1品目は、2色のブドウ、シャインマスカットとナガノパープルを合わせて、おすすめします。
お召し上がり
◆タルトで広がるブドウの爽やかな甘み
ブドウの果汁のみずみずしさを、タルトのクリームと、生地のサクサクした食感が引き立てます。
食感とともに、ブドウの爽やかな甘みを、クリームの甘みや、生地の甘みが相乗効果で広げます。
9.カボチャのプリンタルト
メニューについて
タルトで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
9月の2品目は、カボチャを合わせて、おすすめします。
中の黄色いカボチャの生地は、裏ごししたカボチャに生クリームや牛乳、卵、グラニュー糖を混ぜてつくります。
上にのせた白いクリームは、生クリームに粉糖を混ぜたもので、お菓子らしい甘さを加えました。
お召し上がり
◆ほっこりする後味
黄色いカボチャの生地は、土の上にごろんと転がる野菜らしく、植物繊維の粒子がしっかりして、まったりとした舌ざわりがあり、甘みに加え、香ばしい風味や旨みが広がります。
ほっこりする後味に、秋のお訪れを感じます。
9月のディナーは、
ラ・ビスボッチャの季節のおすすめメニューに、
ちいさい秋を見つけて、お楽しみください。