季節のおすすめメニュー7月 2022

RECOMMENDED SEASONAL MENU JULY 2022

コラム『味と技』第113

三重の美味が集結、食べ逃せない夏が来た!

7月は、大自然に恵まれた三重県の食材を使い、夏にぴったりのメニューを特集します。

三重県出身の料理長・井上裕基が自信をもっておすすめする15品が登場。

三重の美味に、夏を感じて、お楽しみください。

監修/料理長・井上裕基

三重県の食材を調理する料理長・井上裕基

写真・文/ライター 織田城司
Supervised by Yuuki Inoue    
Photo・Text  by George Oda

⚫︎前菜

1.ブラータチーズと2種のプチぷよのサラダ

ブラータチーズと2種のプチぷよのサラダ

メニューについて

ブラータチーズのサラダで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。

7月は、三重県産の新食感トマト「プチぷよ」のフレッシュとドライ、2種を合わせておすすめします。

三重県産プチぷよのフレッシュタイプ

三重県産プチぷよのドライタイプ

ブラータチーズは、イタリア南部プーリア州のチーズ職人が、アメリカ・カリフォルニア州でつくる「ディ・ステファノ」社製を使用。放牧牛のミルクを使い、とろりとした食感で、ミルキーな風味と甘み、旨みが濃厚

お召し上がり

ブラータチーズと2種のプチぷよのサラダ

◆はじける!爽やかな甘み

プチぷよは、薄い皮がプチッとはじけ、ぷよぷよの果肉が出てくる新食感が名称の由来です。

果肉はジューシーで、味わいは爽やかな甘みが強く、ドライタイプがその味を広げます。

爽やかな甘みが凝縮した、スッキリする切れ味は、夏に美味しく、ブラータチーズのミルキーな甘みが引き立てます。

ブラータチーズと2種のプチぷよのサラダ

ブラータチーズと2種のプチぷよのサラダ

ラ・ビスボッチャ店内

2.伊勢湾カツオの炙りカルパッチョ

伊勢湾カツオの炙りカルパッチョ

メニューについて

前菜の定番、鮮魚のカルパッチョ。

7月は、初夏から夏にかけて美味しくなるカツオを、伊勢湾から取り寄せ、炭火で表面を炙り、香ばしさを加えて仕上げました。

◆ウイキョウを炭火で焼く

スライスしたウイキョウにオリーブオイルで下味をつける

ウイキョウはイタリア産を使用

スライスしたウイキョウを炭火焼きグリルの焼き網にのせる

炭はオガ炭を使用。製材するときにできるオガ屑を再利用し、圧縮して中空の棒状に固めて焼いた成形炭。特徴は、火付けがよく、火持ちがよく、灰が少なく、煙も少ない。形が一定しているから隙間なく積みやすい。国産木材のみを使う宮崎県の「ひむかのオガ炭」を使用

ウイキョウをひっくり返し、反対側からも焼く

◆カツオを炭火で炙る

伊勢湾産のカツオ。一尾仕入れ、自店でさばく

カツオを小分けにして塩で下味をつける

方向を変えて炙りながら、表面に焼き色をつける

炙りの仕上げに、皮目を直接炭火につけて焼く

皮目の焼き具合

◆仕上げる

炭火で焼いたウイキョウを皿に敷き、炙りカツオをカットして重ね、夏みかんとマイクロハーブをトッピングする。

仕上げに自家製レモンドレッシングを振りかける。

仕上げに使うマイクロハーブ。三重県多気町で塩水で育てたピーデンドリル

お召し上がり

伊勢湾カツオの炙りカルパッチョ

◆夏らしい味が広がる

夏場のカツオは、さっぱりしながら、食感はもっちりして、旨みは濃厚です。

そこで、炭火で炙ることで、香ばしさやコク、ほろ苦さが加わり、味の変化が広がります。

さらに、爽やかなウイキョウや夏みかんが、薬味の役割として加わり、夏らしい味わいです。

伊勢湾カツオの炙りカルパッチョ

伊勢湾カツオの炙りカルパッチョ

ラ・ビスボッチャ店内

3.的矢の岩牡蠣のムニエル 奥伊勢サフランソース

的矢の岩牡蠣のムニエル 奥伊勢サフランソース

メニューについて

三重県のブランド牡蠣「的矢の牡蠣」のなかでも、夏場にとれる厚底の岩牡蠣の大きな身を、バターたっぷりのムニエルで仕立てました。

合わせるソースは、奥伊勢のサフランで色と香りをつけています。

的矢の岩牡蠣。形は真牡蠣よりも大きく、厚底。殻は薄い板がパイのように重なる

◆的矢の牡蠣とは

三重県志摩市の的矢湾で生産される牡蠣です。

的矢湾は、山の養分をたっぷり含んだ川の水が海中に流れ込み、良質な牡蠣が早く育つことから、1928年に牡蠣の養殖がはじまりました。

的矢の牡蠣の身は柔らかく、ふっくら。味わいは、甘み、旨み、塩気のバランスがよく、牡蠣特有のえぐみや苦み、臭みはほとんど感じません。

その美味しさから的矢の牡蠣は、松阪牛や伊勢えび、熊野地鶏、真珠など、数十品とともに、三重県の優れた産物と生産者を認定する「三重ブランド」に選ばれています。

調理

◆牡蠣の下ごしらえ

岩牡蠣を蒸して開き、身を殻からはがす

岩牡蠣の身を集める。殻を開くときに生じた汁も集め、調理のダシ汁に使う

◆奥伊勢サフランソースをつくる

新姫熊野鯛のダシ汁を加熱し、牡蠣汁を加える

奥伊勢サフランを加え、色と香りをつける

奥伊勢サフランは、奥伊勢とよばれる三重県松坂市の山間部、飯高地域で育てられたサフラン

汁を煮詰め、無塩バターでとろみと風味をつけて奥伊勢サフランソースの出来上がり

◆牡蠣を焼いて仕上げる

フライパンで無塩バターを加熱し、薄力粉をまぶした岩牡蠣を焼く

岩牡蠣の向きを変えながら、低温でじっくり中まで加熱する

殻に岩牡蠣を盛りつけ、ソテーした後のバターを注ぐ

奥伊勢サフランソースを振りかけ、マイクロハーブをトッピングする

仕上げに使うマイクロハーブ。三重県多気町で塩水で育てたアマランサス

お召し上がり

的矢の岩牡蠣のムニエル 奥伊勢サフランソース

◆迫力の旨みをさっぱりと

夏の岩牡蠣の身は大きく、しっかりして、見た目と旨みに迫力があります。

サフランソースの華やかな色と香り、バターソテーの小麦粉の香ばしさ、トッピングのマイクロハーブの清々しさが、夏らしくさっぱりと仕上げます。

的矢の岩牡蠣のムニエル 奥伊勢サフランソース

的矢の岩牡蠣のムニエル 奥伊勢サフランソース

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎パスタ&リゾット

4.松阪牛すね肉のラビオリ バターソース

松阪牛すね肉のラビオリ バターソース

メニューについて

世界的に有名な三重ブランド「松阪牛」の美味しさをギュッと詰め、たっぷり味わう大判のラビオリです。

合わせるバターソースはオレンジやセージを入れて爽やかに仕上げました。

松阪牛のスネ肉

◆松阪牛とは

松阪牛は三重県松阪市とその近郊で飼育される黒毛和牛。品種の名称ではなく、ブランド和牛。

美しい霜降りが特徴で、通常煮込み料理に多く使われるスネ肉も筋っぽくなく、柔らかい。

調理

◆詰め物をつくる

小分けにカットした松阪牛のスネ肉を鍋底で加熱し、表面に焼き色をつける。松阪牛から出る脂のみで炒め、鍋底についた香ばしい焼き跡もダシに使う

香味野菜(ニンジン、タマネギ、セロリ)と少量の水を入れ、フタをかぶせて煮込む

煮込んだ松阪牛のスネ肉と香味野菜をミンチマシーンで細かくする

塩コショウで味をつけ、松阪牛スネ肉の詰め物の完成

◆ラビオリを製麺する

ラビオリの生地の上に松阪牛スネ肉の詰め物をのせる。生地は自家製生パスタで、全卵、卵黄、強力粉、セモリナ粉、オリーブオイル、塩を混ぜてつくる

生地を重ね、詰め物を覆う

パスタカッターで正方形に切り抜く

鉄串を使い、なかの空気を抜いてラビオリの完成

◆仕上げる

ラビオリを茹でる。茹で時間およそ6分

フライパンに無塩バター、オレンジ、セージ、黒オリーブを入れ、加熱する

オレンジは三重県産を使用

黒オリーブはイタリア北部リグーリア州で1870年に創業した老舗オリーブ製品メーカー「アルドイノ」社のオリーブオイル漬けを使用

パスタの茹で汁を加え、ソースの完成

茹で上がったラビオリをソースのフライパンに投入

ラビオリとソースを和え、皿に盛り付けてからパルミジャーノ・レッジャーノを振りかけて仕上げる

お召し上がり

松阪牛すね肉のラビオリ バターソース

◆薫る牛肉

ラビオリのなかで加熱された松阪牛は、肉汁と霜降りの脂が溶け合い、凝縮され、牛肉の風味が濃厚です。味わいは甘みと旨みがまろやかで、ラビオリの生地とよく合います。

バターソースのオレンジやセージの爽やかな香りが牛肉の風味を引き立て、黒オリーブのコクがアクセントになります。

松阪牛すね肉のラビオリ バターソース

松阪牛すね肉のラビオリ バターソース

ラ・ビスボッチャ店内

5.伊勢湾の磯貝とトマトソースのナチグロ

伊勢湾の磯貝とトマトソースのナチグロ

メニューについて

イカ墨を練り込んだショートパスタ、ナチグロ。

具沢山の磯貝とトマトを合わせ、夏の味覚満載で仕上げました。

自家製生パスタでつくるオリジナルの「ナチグロ」

◆ナチグロとは

ビスボッチャのオリジナル生パスタの名称です。

もとは、イタリア南部の代表的なショートパスタ、ストラッシナーティです。イタリア語で引きずる、という意味が変化した言葉で、パスタ生地を台にこすりつけ、凹みとザラザラした面をつけて製麺することが名称の由来です。

かつてビスボッチャで、このストラッシナーティにイカ墨を練り込み、三重県特産の那智黒石に見立てたパスタをつくったことがありました。

当初は「イカ墨を練り込んだストラッシナーティ」という長いパスタ名でしたが、いつしかスタッフやお客さまから「ナチグロ」の愛称で親しまれるようになり、その造語が定着したものです。

調理

◆ナチグロを製麺する

パスタ生地(イカ墨、全卵、強力粉、セモリナ粉、オリーブオイル)を練り、棒状に伸ばし、短く切り、親指で押し広げるように引きながら成形する

◆磯貝入りトマトソースをつくる

ソースの具材に使う伊勢湾の磯貝の例。左からサザエ、アサリ、アッパ貝、トコブシ、ムール貝。食材の収穫状況により、組み合わせは日々変わる。的矢の岩牡蠣が加わる場合もある

フライパンにオリーブオイル、ニンニクのみじん切り、赤唐辛子、磯貝の肝のペーストを入れ、加熱する。磯貝の肝のペーストは、具材に使うサザエやトコブシ、アッパ貝などの肝を裏ごしして混ぜてつくる

牡蠣汁を加え、ムール貝とアサリを入れる

フライパンにフタをして貝類を蒸し焼きにして開く

下ごしらしたサザエ、トコブシ、アッパ貝を入れる

自家製トマトソースを加える

半分にカットしたミニトマトとイタリアンパセリのみじん切りを加え、煮詰め、ソースの出来上がり

◆仕上げる

ナチグロを茹でる。茹で時間約4分

茹で上がったナチグロをソースのフライパンに投入

ナチグロをソースと和え、イタリアンパセリのみじん切りを振りかけて仕上げる

お召し上がり

伊勢湾の磯貝とトマトソースのナチグロ

◆魚介とトマトの旨みが凝縮

ナチグロはもっちり、しっかりした食感。味わいはイカ墨がきいてコクが深く、凹みにたくわえソースとよく合います。

ソースはさまざまな貝から出た旨みが凝縮。トマトの旨みとつながり、一体になりながら、トマトの甘みがアクセントになります。

伊勢湾の磯貝とトマトソースのナチグロ

伊勢湾の磯貝とトマトソースのナチグロ

ラ・ビスボッチャ店内

6.ペンネ・アラビアータ熊野唐辛子

ペンネ・アラビアータ熊野唐辛子

メニューについて

夏が来ると食べたくなる辛い料理。

パスタに合わせるソースは、アラビアータををおすすめします。

この夏のアラビアータは、熊野唐辛子とスペイン産ニンニクをたっぷり使い、イタリア産の辛みペースト「ンドゥイヤ」で旨みを加え、三重県産の「玉みそ」でコクを加えてつくりました。

ペンネやスパゲッティーなど、お好みのパスタに合わせてお召し上がりください。

熊野唐辛子のプロモーション・ビジュアル

◆熊野唐辛子とは

熊野唐辛子は、三重県熊野市の温暖な気候と豊かな大地がつくる唐辛子のシリーズです。

極上の辛さと、唐辛子本来の旨みが味わえます。

◆アラビアータソースのつくり方

フライパンに赤唐辛子、ニンニクの半カット、オリーブオイルを入れて加熱

赤唐辛子は熊野唐辛子の乾燥タイプを使用

ニンニクは、スペイン産の紫ニンニクを使用。風味はマイルドで、調理後の臭みやえぐみが少ない。ヨーロッパ諸国で広く普及している。

オリーブオイルに味と香りをつけながら、イタリア産の辛みペースト「ンドゥイヤ」を加える

ンドゥイヤはイタリア南部カラブリア州で伝統的につくられている豚ひき肉と唐辛子にオリーブオイルを混ぜたペースト。あまり辛くなく豚肉の旨みがぎゅっと詰まっている。同地で1984年に創業した「マデオ」社製を使用

自家製トマトソースを加える

イタリアンパセリを加える

三重県産の「玉みそ」を加える

「玉みそ」は三重県伊賀市で1873(明治6)年に創業した伊賀越株式会社製。全国でも珍しい大豆と米、どちらにも麹をつける製法を使い、およそ1年の間ゆっくり熟成させた味噌。甘みと豊かなコクが特徴

お召し上がり

ペンネ・アラビアータ熊野唐辛子

◆マイルドな辛さ

長い熊野唐辛子は目を引き、インパクトがあるけれど、ソースの辛さはマイルドです。もちろん、唐辛子そのものは辛いため、残す方が無難です。

次にインパクトがあるのはニンニクの香りです。香ばしさが強く、食欲をそそります。ニンニクを食べなければ、余韻は短めです。

ベースのトマトソースは、ンドゥイヤの旨みと、玉みそのコクがきいて、飽きない味わいで、パスタがすすみます。

ペンネ・アラビアータ熊野唐辛子

ペンネ・アラビアータ熊野唐辛子

7.スパゲッティ・アラビアータ熊野唐辛子

スパゲッティ・アラビアータ熊野唐辛子

スパゲッティ・アラビアータ熊野唐辛子

スパゲッティ・アラビアータ熊野唐辛子

スパゲッティ・アラビアータ熊野唐辛子

ラ・ビスボッチャ店内

8.奥伊勢サフランのリゾット

奥伊勢サフランのリゾット

メニューについ

イタリア北部ミラノで生まれ、伝統的よく食べられているサフランのリゾット。

奥伊勢サフランを使い、相性がいい魚介風味の出汁を加えて仕上げました。

調理

◆新姫熊野鯛の出汁をつくる

ほかのメニューで使う新姫熊野鯛から外した頭や背骨などの端材を鍋底で炒める

氷を入れ、出汁を抽出。水から加熱するよりも、濃い出汁が取れる

香味野菜(ニンジン、タマネギ、セロリ、イタリアンパセリの茎)を入れ、煮詰めて新姫熊野鯛の出汁の出来上がり

◆熊野地鶏の出汁をつくる

ほかのメニューに使う熊野地鶏から外した骨を鍋底で炒める

氷を入れ、出汁を抽出。水から加熱するよりも、濃い出汁が取れる

◆リゾットを仕上げる

鍋に米を入れ、牡蠣汁を入れて炊く

米は、煮崩れしにくいイタリア産のリゾット用品種を使用。イタリア北部ピエモンテ州の米処ヴェルチェッリ県で1935年からリゾット用の米をつくり続ける「ロンドリーノ」社のブランド米「アクエレッロ」

新姫熊野鯛の出汁と熊野地鶏の出汁を加える

奥伊勢サフランを加え、香りと色をつける

無塩バターを入れ、とろみと風味をつける

パルミジャーノ・レッジャーノを加え、とろみと風味をつける

パルミジャーノ・レッジャーノは、1877年に創業したイタリアの乳製品メーカーの老舗「アウリッキオ」社製。一年中干草のみを与えた牛の濃いミルクからつくるチーズは甘みと熟成感のバランスがよい。塊で仕入れ、自店で粉に挽く

側面の認定証のナンバリング、2042は上級クラスを表す

パルミジャーノ・レッジャーノを予熱でなじませて仕上げる

お召し上がり

奥伊勢サフランのリゾット

◆夏に美味しい色と香り

サフランの香りはリゾットに使うチーズや魚介の出汁とよく合います。

黄色い色とともに、夏に美味しく感じ、いつもとちがう雰囲気を楽しみます。

奥伊勢サフランのリゾット

奥伊勢サフランのリゾット

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎メイン

9.熊野地鶏の炭火焼き 熊野唐辛子のチミチュリソース

熊野地鶏の炭火焼き 熊野唐辛子のチミチュリソース

メニューについて

しっかりした肉質でボリュームたっぷり、旨みとコクが濃い熊野地鶏を、炭火で香ばしく焼きました。

熊野唐辛子や香草、柑橘を刻んでつくるチミチュリソースで、地鶏の美味しさを引き立てます。

熊野地鶏と三重県熊野市の丸山千枚田(公式写真より)

◆熊野地鶏とは

豊な自然を背景に、三重県が生み出した高級ブランド地鶏が「熊野地鶏」です。

のびのびとした環境で、健やかに育てられた地鶏の肉質は、

赤みが強く、弾力性に富み、旨み成分を多く含み、鶏肉本来のコクと風味があります。

熊野地鶏のパッケージ。頭と足、内臓と取り除いた一羽を丸ごと仕入れ、自店でさばく

調理

熊野地鶏を部位ごとに切り分け、塩、コショウで下味をつけ、炭火焼きグリルで焼く

ひっくり返して焼く

食べやすい大きさにカットして皿に盛り付ける

熊野唐辛子のチミチョリソースを振りかけて仕上げる。熊野唐辛子のチミチュリソースは、熊野唐辛子(乾燥赤唐辛子、生ハラペーニョ、生ポプラノ)、イタリアンパセリ、ミント、ディル、オレガノ、レモン、オレンジ、オリーブオイル、塩を混ぜてつくる

ソースに使う熊野唐辛子の生ハラペーニョ(上)と生ポプラノ

お召し上がり

熊野地鶏の炭火焼き 熊野唐辛子のチミチュリソース

◆味わい深い旨み

炭火で焼いた地鶏の、パリパリの皮の香ばしさをたっぷり堪能。ジューシーな身はしっかりして、旨みは味わい深い。

鶏肉のさまさまな部位の美味しさを迫力あるボリューム感で楽しみます。

チミチュリソースの爽やかな香りや甘酸っぱさ、青々しさが鶏肉の美味しさを引き立てます。

熊野地鶏の炭火焼き 熊野唐辛子のチミチュリソース

熊野地鶏の炭火焼き 熊野唐辛子のチミチュリソース

ラ・ビスボッチャ店内

10.美熊野牛の炭火焼き

美熊野牛フィレ肉の炭火焼き

メニューについて

炭火焼きの牛肉は、三重県産のブランド牛「美熊野牛」のフィレ肉をおすすめします。

部位は入荷状況により変わる場合がありますので、ご了承ください。

◆美熊野牛とは

1900(明治33)年に三重県熊野市で創業した岡田精肉店の岡田牧場で育つブランド牛。黒毛和牛種、雌牛の未経産です。

熊野の大自然と、きれいな湧き水が、柔らかい肉質と濃厚な味を生み出しています。

美熊野牛フィレ肉の炭火焼き

美熊野牛フィレ肉の炭火焼き

ラ・ビスボッチャ店内

11.新姫熊野鯛の奥伊勢サフラン煮込み

新姫熊野鯛の奥伊勢サフラン煮込み

メニューについて

海に面したイタリア半島では、どの地域にも魚介の煮込み料理があります。

7月は、三重県産のブランド鯛「新姫熊野鯛」を使い、奥伊勢サフランで色と香りをつけ、南イタリア風に煮込みました。

新姫熊野鯛は1尾ごとに仕入れ、自店でおろす

◆新姫熊野鯛とは

黒潮が流れ、古くから良質な漁場として知られる三重県の熊野灘で、(有)水谷水産が自社の漁場で養殖するブランド鯛です。

養殖の飼料に、熊野市で発見された新種の柑橘類「新姫(にいひめ)」をオリジナルで配合することで、鯛の旨みを引き立て、臭みを軽減していることがブランドの由来です。

調理

◆新姫熊野鯛の下ごしらえ

新姫熊野鯛から身を切り出し、頭や背骨はダシ汁に使う

身に残った小骨を取り除く

塩を振って下味をつける

◆新姫熊野鯛を煮込む

切り分けた新姫熊野鯛に小麦粉をまぶし、オリーブオイルを敷いたフライパンに投入

皮目から焼き、フライパンを傾けながら側面にも焼き色をつける

新姫熊野鯛をひっくり返し、白ワインを入れ、味と香りをつける

貝が開いたら一時的に取り除き、仕上げる直前にソースとなじませる

奥伊勢サフランを入れ、香りと色をつける

新姫熊野鯛の出汁を加える

炭火で焼いたウイキョウのスライスを入れ、ソースになじませる

皿に盛り付け、イタリアンパセリのみじん切りを振りかけて仕上げる

お召し上がり

新姫熊野鯛の奥伊勢サフラン煮込み

◆しっかりした旨み

新姫熊野鯛の身は、弾力をしっかり感じる歯ごたえ。貝の味がきいたスープがしみ、旨みがしっかりしています。

三重県産のムール貝も、身と旨みがしっかりしています。

サフランとウイキョウのハーブ香が、魚介の旨みを引き立てます。

新姫熊野鯛の奥伊勢サフラン煮込み

新姫熊野鯛の奥伊勢サフラン煮込み

ラ・ビスボッチャ店内

12.伊勢湾イサキの炭火焼き

伊勢湾イサキの炭火焼き

メニューについて

夏の魚のひとつイサキは、夏に身が大きくなり、顔が小さく見えることから「小顔イサキ」ともよばれています。

お頭付きをまるごと炭火でじっくり焼き、美味しさを極め、シンプルな塩味で仕上げました。

調理

伊勢湾産のイサキ

イサキの内臓を取り除き、皮目に切り込みを入れ、塩コショウで下味をつける

炭火焼きグリルの焼き網の上でイサキを焼く。皮が薄くデリケートなため、遠火で時間をかけて焼く

ひっくり返して反対側からも焼く

◆焼き上がったイサキを客席で披露

焼き上がったイサキを皿に盛り付け、客席で披露する。

焼き上がったイサキの焼き色と香りを楽しむ

◆再度グリル前で仕上げる

焼き上がったイサキを開き背骨を外す

身に残った大きめ骨を取り除く

小骨を取り除く

塩、イタリアンパセリのみじん切り、エキストラヴァージン・オリーブオイルを振りかけて仕上げる

お召し上がり

伊勢湾イサキの炭火焼き

◆繊細な旨み

炭火でじっくり焼いたイサキは火入れが絶妙。身はふっくらして、柔らかく、脂がほどよく落ち、さっぱりした口あたりです。

味わいは、旨みが繊細で、塩気が心地よく感じます。薄い皮は揚げ物のようにサクサクして香ばしく、アクセントになり、そのまわりの身は燻製のような味わいです。

食材の美味しさをシンプルに極める、イタリアンの醍醐味を堪能します。

伊勢湾イサキの炭火焼き

伊勢湾イサキの炭火焼き

おすすめのお飲み物

三重県産日本酒「作 雅乃智 中取り(ざく みやびのとも なかどり)」純米大吟醸 冷やをワイングラスで

◆世界が注目する日本酒と、三重のモダンな「作(ざく)」

近年の日本酒市場において、国内の出荷量は、人口の減少と若者の酒離れで減少傾向にあるものの、純米酒及び純米吟醸酒など、特定名称酒は増加傾向にあります。

その一方で、輸出量は、コロナ禍やウクライナ情勢など、世界経済が急変する前までは増加傾向にあり、日本酒が世界的に注目されていることを示しています。

こうした傾向が、日本酒づくりの現場にも、新しい流れを生み出しています。

三重県は、鈴鹿山脈から湧き出る水が、米や酒をつくることに適し、古くから酒造りが栄えました。

この地で1869(明治2)年に創業した酒造メーカー、清水清三郎商店株式会社が手がける「作(ざく)」は、透明感にこだわるモダンなコンセプトのシリーズです。

すっきりした味わいの間口は広く、さまざまな食文化と合わせやすいことが特徴です。2016年に三重県志摩市で開催された伊勢志摩サミットでは、乾杯の酒に選ばれました。

「作」のシリーズのなかでも、今回おすすめする「雅乃智 中取り」は、搾りの工程で最初に出た荒走りと、最後の責めの部分を除いた、一番クリアな中取りのみを瓶詰めしたもので、希少ながらシリーズのなかでも人気の1本です。

伊勢湾イサキの炭火焼きに合わせ、冷やをワイングラスに注いでおすすめします。

三重県産日本酒「作 雅乃智 中取り(ざく みやびのとも なかどり)」純米大吟醸

◆イサキを引き立てるエレガントな透明感

銘柄/作 雅乃智 中取り 純米大吟醸
醸造元/清水清三郎商店株式会社
生産地/三重県鈴鹿市
原料米/国産山田錦100%
精米歩合/50%
アルコール度数/16度
容量/750ml

香りはほんのり甘く、華やかで、上品に広がります。口あたりはスムーズでクリア。舌ざわりはやわらかく、膨らみもあります。

キレと透明感にこだわる「作」らしいエレガントな印象は、日本酒が苦手な人でも飲みやすく感じると思います。

味わいは、はじめに、まろやかな甘みを感じ、次に、舌と喉ごしにピリッと感じる辛さが、じんわり現れ、デリケートで奥が深い。伊勢湾イサキの旨みや塩気を引き立てます。

三重でつながる、和と伊の新鮮な交流をお楽しみください。

三重県産日本酒「作 雅乃智 中取り(ざく みやびのとも なかどり)」純米大吟醸を「伊勢湾イサキの炭火焼き」に合わせて

ラ・ビスボッチャ店内

13.三重県産有機野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース

三重県産有機野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース

メニューについて

野菜を炭火で焼くと、香ばしさや甘みは増すものの、水分が蒸発して、旨みや風味は淡白になりがちです。

そこで、しっとりしたソースを合わせ、焼き野菜の潤いを補いながら味を引き立てます。

ソースはどんな野菜にもなじむ、トマトをメインに使いました。

調理

◆焦がしトマトソースをつくる

トマトをスライスして皮目を炭火で焼き、冷やしてから細かくカットする

鍋にオリーブオイルを広げ、味と香りをつける食材を入れ、加熱する。左からアンチョビペースト、ケッパーとグリーンオリーブのみじん切り、タイム、おろしニンニク

カットした焦がしトマトを加える

自家製トマトソースを加える

味と香りをつける食材を加える。左からイタリアンパセリ、熊野唐辛子の乾燥赤唐辛子、バジル

赤ワイン酢を加えて煮詰め、焦がしトマトソースの出来上がり

◆野菜を炭火で焼く

炭火で焼く三重県産有機野菜の一例。左からツルムラサキ、ナス、ズッキーニ、黄色ズッキーニ、レタス、小タマネギ、赤タマネギ、丸ズッキーニ、春菊、インゲン。野菜の組み合わせは収穫状況により日々変わります

三重県産の有機野菜は鈴鹿山脈の麓、いなべ市で化学農薬や化学肥料を使用せずに野菜を育てる農家「HATAKEYA」から仕入れる

野菜をカットし、塩とオリーブオイルで下味をつける

野菜を炭火焼きグリルで焼く

野菜をひっくり返し、反対側からも焼く。食材の質感により時間差をつけて焼く

皿に焦がしトマトソースを広げ、焼き上げた野菜を盛り付ける

トッピングにペコリーノチーズを細かくスライスして振りかけ、仕上げる

ペコリーノチーズは、羊乳からつくるチーズ。塩味とコクが豊かで、風味はすっきりしている。イタリアで牧羊が盛んな特産地、サルディーニャ島産。側面にペコリーノの認証刻印が見える

お召し上がり

三重県産有機野菜の炭火焼き 焦がトマトソース

◆ソースで引き立つ焼き野菜のおつまみ感

炭火で焼いた野菜は柔らかく、香ばしさや甘み、旨みがきわだち、焼き目のほろ苦さがアクセントになります。

焦がしトマトソースは、焼き野菜の味と香りと同調しながら、しっとりと引き立てます。

三重県産有機野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース

三重県産有機野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎ドルチェ

14.三重県産ブンタンのカンノーリ

三重県産ブンタンのカンノーリ

メニューについて

映画『ゴッドファーザー PART Ⅲ』(1990年)に登場して、一躍有名になったシチリア島の郷土菓子、カンノーリ。

7月は、柑橘の特産地、三重県からブンタンを選び、トッピングに合わせ、爽やかに仕立てました。

調理

撮影調理 料理人・水谷結

カンノーリの生地を型に巻く

今回のカンノーリの生地の材料。左からマルサラ酒、オリーブオイル、卵黄、薄力粉、ココアパウダー。このほかグラニュー糖が加わる

ココアパウダーはオランダで1828年に世界で初めてココアパウダーの製造法を発明した「バン・ホーテン」社製を使用

マルサラ酒は、シチリア生まれの酒精強化ワイン。防腐のためにアルコールを加えたワインで、アルコール度数は18度。オークの樽で24ヶ月熟成し、木材系とブドウの香りが高く、甘さと酸味が強く、食前酒や食後酒として飲まれる。シチリアで1880年に創業したぺッレグリーノ社の甘口を使用

カンノーリ用の型。10年以上使い続ける

型に巻いた生地をオーブンで焼く

焼き上がったカンノーリの生地を冷ます

生地を型から外す

生地にクリームを注入する。クリームはホイップクリーム、リコッタ、粉糖を混ぜてつくる

リコッタはチーズの生成過程で生じた乳清を再加熱してつくる食品。低脂肪でさっぱりして、ソフトな食感とミルクの自然な甘みが特徴。イタリア北部ピエモンテ州で1934年に創業した乳製品メーカー「ビラーギ」社製を使用

トッピングを飾り、仕上げる

トッピングのブンタンのピール(左)とピスタチオのみじん切り。ブンタンのピールは自家製で、ブンタンの皮のみじん切りにして、砂糖と水で煮る作業を毎晩2日間くり返してつくる

ブンタンは三重県産を使用

お召し上がり

三重県産ブンタンのカンノーリ

◆クリームの魅力をたっぷり味わう

カンノーリをかじると、生地がパリンと割れ、なかから濃厚なクリームが飛び出し、魅力の瞬間です。

細かく砕けた生地のパリパリした歯ごたえと、濃厚なクリームの食べ合わせは絶品です。

生地はココアの風味がきいて、ブンタンの甘酸っぱさと相性抜群。一味ちがうカンノーリに、夏を感じて楽しみます。

三重県産ブンタンのカンノーリ

三重県産ブンタンのカンノーリ

ラ・ビスボッチャ店内

15.三重県産ブンタンのババレーゼ

三重県産ブンタンのババレーゼ

メニューについて

夏に食べたい冷たいお菓子を、ババレーゼでつくりました。

ババレーゼはイタリア語でババロアの意味で、生地のなかにブンタンの果肉や、リモンチェッロを入れ、清々しい味と香りをつけて冷やしました。

調理

撮影調理 料理人・水谷結

ババレーゼの生地の材料を混ぜる

ババレーゼの生地の材料。左から卵黄、牛乳、リモンチェッロ、生クリーム、板ゼタチン、グラニュー糖。このほかにブンタンの果肉が加わる

リモンチェッロはイタリア南部カンパニア州「プロフーミ・デラ・コスティエーラ」社製を使用

◆リモンチェッロとは

イタリア南部は温暖な気候で柑橘類がよく育つ。特にカンパニア州はレモンの特産地。通常のレモンの3倍ほどの大きさがあるアマルフィ・リモーネとよばれる種類で、皮が厚く香りが高いことが特徴。

このアマルフィ・リモーネを使い、食後酒として家庭でつくられていた地酒の美味しさが評判になり、イタリア全土に広まった酒がリモンチェッロ。

「プロフーミ・デラ・コスティエーラ」社は、アマルフィ・リモーネの皮の黄色い部分のみを手しごとではぎとり、リモンチェッロに使用。着色料・香料・保存料一切なしの伝統的な製法を続けている。

混ぜ合わせたババレーゼの生地を器に注ぐ

器からはみ出した生地を拭き取る

ババレーゼを冷やし固める

冷やし固めたババレーゼの上にブンタンの果肉を重ねる

トッピングにミントの葉を飾って仕上げる

お召し上がり

三重県産ブンタンのババレーゼ

◆柑橘でひんやり

ババレーゼのトッピングにはブンタンの果肉がたっぷり入っています。ババレーゼの生地のなかにも、ブンタンの果肉がザクザク入っています。

ブンタンの爽やかな甘酸っぱさが、リモンチェッロとともに広がります。

スプーンで食べる、冷たい果肉の涼感に、夏の至福を感じます。

三重県産ブンタンのババレーゼ。お好みでリモンチェッロを注ぎ足して

三重県産ブンタンのカンノーリ

7月のディナーは、ラ・ビスボッチャの

季節のおすすめメニューでお楽しみください。