RECOMMENDED SEASONAL MENU JULY 2022
コラム『味と技』第113回
三重の美味が集結、食べ逃せない夏が来た!
7月は、大自然に恵まれた三重県の食材を使い、夏にぴったりのメニューを特集します。
三重県出身の料理長・井上裕基が自信をもっておすすめする15品が登場。
三重の美味に、夏を感じて、お楽しみください。
監修/料理長・井上裕基
写真・文/ライター 織田城司
Supervised by Yuuki Inoue
Photo・Text by George Oda
⚫︎前菜
1.ブラータチーズと2種のプチぷよのサラダ
メニューについて
ブラータチーズのサラダで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
7月は、三重県産の新食感トマト「プチぷよ」のフレッシュとドライ、2種を合わせておすすめします。
お召し上がり
◆はじける!爽やかな甘み
プチぷよは、薄い皮がプチッとはじけ、ぷよぷよの果肉が出てくる新食感が名称の由来です。
果肉はジューシーで、味わいは爽やかな甘みが強く、ドライタイプがその味を広げます。
爽やかな甘みが凝縮した、スッキリする切れ味は、夏に美味しく、ブラータチーズのミルキーな甘みが引き立てます。
2.伊勢湾カツオの炙りカルパッチョ
メニューについて
前菜の定番、鮮魚のカルパッチョ。
7月は、初夏から夏にかけて美味しくなるカツオを、伊勢湾から取り寄せ、炭火で表面を炙り、香ばしさを加えて仕上げました。
◆ウイキョウを炭火で焼く
◆カツオを炭火で炙る
◆仕上げる
炭火で焼いたウイキョウを皿に敷き、炙りカツオをカットして重ね、夏みかんとマイクロハーブをトッピングする。
仕上げに自家製レモンドレッシングを振りかける。
お召し上がり
◆夏らしい味が広がる
夏場のカツオは、さっぱりしながら、食感はもっちりして、旨みは濃厚です。
そこで、炭火で炙ることで、香ばしさやコク、ほろ苦さが加わり、味の変化が広がります。
さらに、爽やかなウイキョウや夏みかんが、薬味の役割として加わり、夏らしい味わいです。
3.的矢の岩牡蠣のムニエル 奥伊勢サフランソース
メニューについて
三重県のブランド牡蠣「的矢の牡蠣」のなかでも、夏場にとれる厚底の岩牡蠣の大きな身を、バターたっぷりのムニエルで仕立てました。
合わせるソースは、奥伊勢のサフランで色と香りをつけています。
◆的矢の牡蠣とは
三重県志摩市の的矢湾で生産される牡蠣です。
的矢湾は、山の養分をたっぷり含んだ川の水が海中に流れ込み、良質な牡蠣が早く育つことから、1928年に牡蠣の養殖がはじまりました。
的矢の牡蠣の身は柔らかく、ふっくら。味わいは、甘み、旨み、塩気のバランスがよく、牡蠣特有のえぐみや苦み、臭みはほとんど感じません。
その美味しさから的矢の牡蠣は、松阪牛や伊勢えび、熊野地鶏、真珠など、数十品とともに、三重県の優れた産物と生産者を認定する「三重ブランド」に選ばれています。
調理
◆牡蠣の下ごしらえ
◆奥伊勢サフランソースをつくる
◆牡蠣を焼いて仕上げる
お召し上がり
◆迫力の旨みをさっぱりと
夏の岩牡蠣の身は大きく、しっかりして、見た目と旨みに迫力があります。
サフランソースの華やかな色と香り、バターソテーの小麦粉の香ばしさ、トッピングのマイクロハーブの清々しさが、夏らしくさっぱりと仕上げます。
⚫︎パスタ&リゾット
4.松阪牛すね肉のラビオリ バターソース
メニューについて
世界的に有名な三重ブランド「松阪牛」の美味しさをギュッと詰め、たっぷり味わう大判のラビオリです。
合わせるバターソースはオレンジやセージを入れて爽やかに仕上げました。
◆松阪牛とは
松阪牛は三重県松阪市とその近郊で飼育される黒毛和牛。品種の名称ではなく、ブランド和牛。
美しい霜降りが特徴で、通常煮込み料理に多く使われるスネ肉も筋っぽくなく、柔らかい。
調理
◆詰め物をつくる
◆ラビオリを製麺する
◆仕上げる
お召し上がり
◆薫る牛肉
ラビオリのなかで加熱された松阪牛は、肉汁と霜降りの脂が溶け合い、凝縮され、牛肉の風味が濃厚です。味わいは甘みと旨みがまろやかで、ラビオリの生地とよく合います。
バターソースのオレンジやセージの爽やかな香りが牛肉の風味を引き立て、黒オリーブのコクがアクセントになります。
5.伊勢湾の磯貝とトマトソースのナチグロ
メニューについて
イカ墨を練り込んだショートパスタ、ナチグロ。
具沢山の磯貝とトマトを合わせ、夏の味覚満載で仕上げました。
◆ナチグロとは
ビスボッチャのオリジナル生パスタの名称です。
もとは、イタリア南部の代表的なショートパスタ、ストラッシナーティです。イタリア語で引きずる、という意味が変化した言葉で、パスタ生地を台にこすりつけ、凹みとザラザラした面をつけて製麺することが名称の由来です。
かつてビスボッチャで、このストラッシナーティにイカ墨を練り込み、三重県特産の那智黒石に見立てたパスタをつくったことがありました。
当初は「イカ墨を練り込んだストラッシナーティ」という長いパスタ名でしたが、いつしかスタッフやお客さまから「ナチグロ」の愛称で親しまれるようになり、その造語が定着したものです。
調理
◆ナチグロを製麺する
◆磯貝入りトマトソースをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆魚介とトマトの旨みが凝縮
ナチグロはもっちり、しっかりした食感。味わいはイカ墨がきいてコクが深く、凹みにたくわえソースとよく合います。
ソースはさまざまな貝から出た旨みが凝縮。トマトの旨みとつながり、一体になりながら、トマトの甘みがアクセントになります。
6.ペンネ・アラビアータ熊野唐辛子
メニューについて
夏が来ると食べたくなる辛い料理。
パスタに合わせるソースは、アラビアータををおすすめします。
この夏のアラビアータは、熊野唐辛子とスペイン産ニンニクをたっぷり使い、イタリア産の辛みペースト「ンドゥイヤ」で旨みを加え、三重県産の「玉みそ」でコクを加えてつくりました。
ペンネやスパゲッティーなど、お好みのパスタに合わせてお召し上がりください。
◆熊野唐辛子とは
熊野唐辛子は、三重県熊野市の温暖な気候と豊かな大地がつくる唐辛子のシリーズです。
極上の辛さと、唐辛子本来の旨みが味わえます。
◆アラビアータソースのつくり方
お召し上がり
◆マイルドな辛さ
長い熊野唐辛子は目を引き、インパクトがあるけれど、ソースの辛さはマイルドです。もちろん、唐辛子そのものは辛いため、残す方が無難です。
次にインパクトがあるのはニンニクの香りです。香ばしさが強く、食欲をそそります。ニンニクを食べなければ、余韻は短めです。
ベースのトマトソースは、ンドゥイヤの旨みと、玉みそのコクがきいて、飽きない味わいで、パスタがすすみます。
7.スパゲッティ・アラビアータ熊野唐辛子
8.奥伊勢サフランのリゾット
メニューについ
イタリア北部ミラノで生まれ、伝統的よく食べられているサフランのリゾット。
奥伊勢サフランを使い、相性がいい魚介風味の出汁を加えて仕上げました。
調理
◆新姫熊野鯛の出汁をつくる
◆熊野地鶏の出汁をつくる
◆リゾットを仕上げる
お召し上がり
◆夏に美味しい色と香り
サフランの香りはリゾットに使うチーズや魚介の出汁とよく合います。
黄色い色とともに、夏に美味しく感じ、いつもとちがう雰囲気を楽しみます。
⚫︎メイン
9.熊野地鶏の炭火焼き 熊野唐辛子のチミチュリソース
メニューについて
しっかりした肉質でボリュームたっぷり、旨みとコクが濃い熊野地鶏を、炭火で香ばしく焼きました。
熊野唐辛子や香草、柑橘を刻んでつくるチミチュリソースで、地鶏の美味しさを引き立てます。
◆熊野地鶏とは
豊な自然を背景に、三重県が生み出した高級ブランド地鶏が「熊野地鶏」です。
のびのびとした環境で、健やかに育てられた地鶏の肉質は、
赤みが強く、弾力性に富み、旨み成分を多く含み、鶏肉本来のコクと風味があります。
調理
お召し上がり
◆味わい深い旨み
炭火で焼いた地鶏の、パリパリの皮の香ばしさをたっぷり堪能。ジューシーな身はしっかりして、旨みは味わい深い。
鶏肉のさまさまな部位の美味しさを迫力あるボリューム感で楽しみます。
チミチュリソースの爽やかな香りや甘酸っぱさ、青々しさが鶏肉の美味しさを引き立てます。
10.美熊野牛の炭火焼き
メニューについて
炭火焼きの牛肉は、三重県産のブランド牛「美熊野牛」のフィレ肉をおすすめします。
部位は入荷状況により変わる場合がありますので、ご了承ください。
◆美熊野牛とは
1900(明治33)年に三重県熊野市で創業した岡田精肉店の岡田牧場で育つブランド牛。黒毛和牛種、雌牛の未経産です。
熊野の大自然と、きれいな湧き水が、柔らかい肉質と濃厚な味を生み出しています。
11.新姫熊野鯛の奥伊勢サフラン煮込み
メニューについて
海に面したイタリア半島では、どの地域にも魚介の煮込み料理があります。
7月は、三重県産のブランド鯛「新姫熊野鯛」を使い、奥伊勢サフランで色と香りをつけ、南イタリア風に煮込みました。
◆新姫熊野鯛とは
黒潮が流れ、古くから良質な漁場として知られる三重県の熊野灘で、(有)水谷水産が自社の漁場で養殖するブランド鯛です。
養殖の飼料に、熊野市で発見された新種の柑橘類「新姫(にいひめ)」をオリジナルで配合することで、鯛の旨みを引き立て、臭みを軽減していることがブランドの由来です。
調理
◆新姫熊野鯛の下ごしらえ
◆新姫熊野鯛を煮込む
お召し上がり
◆しっかりした旨み
新姫熊野鯛の身は、弾力をしっかり感じる歯ごたえ。貝の味がきいたスープがしみ、旨みがしっかりしています。
三重県産のムール貝も、身と旨みがしっかりしています。
サフランとウイキョウのハーブ香が、魚介の旨みを引き立てます。
12.伊勢湾イサキの炭火焼き
メニューについて
夏の魚のひとつイサキは、夏に身が大きくなり、顔が小さく見えることから「小顔イサキ」ともよばれています。
お頭付きをまるごと炭火でじっくり焼き、美味しさを極め、シンプルな塩味で仕上げました。
調理
◆焼き上がったイサキを客席で披露
◆再度グリル前で仕上げる
お召し上がり
◆繊細な旨み
炭火でじっくり焼いたイサキは火入れが絶妙。身はふっくらして、柔らかく、脂がほどよく落ち、さっぱりした口あたりです。
味わいは、旨みが繊細で、塩気が心地よく感じます。薄い皮は揚げ物のようにサクサクして香ばしく、アクセントになり、そのまわりの身は燻製のような味わいです。
食材の美味しさをシンプルに極める、イタリアンの醍醐味を堪能します。
おすすめのお飲み物
◆世界が注目する日本酒と、三重のモダンな「作(ざく)」
近年の日本酒市場において、国内の出荷量は、人口の減少と若者の酒離れで減少傾向にあるものの、純米酒及び純米吟醸酒など、特定名称酒は増加傾向にあります。
その一方で、輸出量は、コロナ禍やウクライナ情勢など、世界経済が急変する前までは増加傾向にあり、日本酒が世界的に注目されていることを示しています。
こうした傾向が、日本酒づくりの現場にも、新しい流れを生み出しています。
三重県は、鈴鹿山脈から湧き出る水が、米や酒をつくることに適し、古くから酒造りが栄えました。
この地で1869(明治2)年に創業した酒造メーカー、清水清三郎商店株式会社が手がける「作(ざく)」は、透明感にこだわるモダンなコンセプトのシリーズです。
すっきりした味わいの間口は広く、さまざまな食文化と合わせやすいことが特徴です。2016年に三重県志摩市で開催された伊勢志摩サミットでは、乾杯の酒に選ばれました。
「作」のシリーズのなかでも、今回おすすめする「雅乃智 中取り」は、搾りの工程で最初に出た荒走りと、最後の責めの部分を除いた、一番クリアな中取りのみを瓶詰めしたもので、希少ながらシリーズのなかでも人気の1本です。
伊勢湾イサキの炭火焼きに合わせ、冷やをワイングラスに注いでおすすめします。
◆イサキを引き立てるエレガントな透明感
銘柄/作 雅乃智 中取り 純米大吟醸
醸造元/清水清三郎商店株式会社
生産地/三重県鈴鹿市
原料米/国産山田錦100%
精米歩合/50%
アルコール度数/16度
容量/750ml
香りはほんのり甘く、華やかで、上品に広がります。口あたりはスムーズでクリア。舌ざわりはやわらかく、膨らみもあります。
キレと透明感にこだわる「作」らしいエレガントな印象は、日本酒が苦手な人でも飲みやすく感じると思います。
味わいは、はじめに、まろやかな甘みを感じ、次に、舌と喉ごしにピリッと感じる辛さが、じんわり現れ、デリケートで奥が深い。伊勢湾イサキの旨みや塩気を引き立てます。
三重でつながる、和と伊の新鮮な交流をお楽しみください。
13.三重県産有機野菜の炭火焼き 焦がしトマトソース
メニューについて
野菜を炭火で焼くと、香ばしさや甘みは増すものの、水分が蒸発して、旨みや風味は淡白になりがちです。
そこで、しっとりしたソースを合わせ、焼き野菜の潤いを補いながら味を引き立てます。
ソースはどんな野菜にもなじむ、トマトをメインに使いました。
調理
◆焦がしトマトソースをつくる
◆野菜を炭火で焼く
お召し上がり
◆ソースで引き立つ焼き野菜のおつまみ感
炭火で焼いた野菜は柔らかく、香ばしさや甘み、旨みがきわだち、焼き目のほろ苦さがアクセントになります。
焦がしトマトソースは、焼き野菜の味と香りと同調しながら、しっとりと引き立てます。
⚫︎ドルチェ
14.三重県産ブンタンのカンノーリ
メニューについて
映画『ゴッドファーザー PART Ⅲ』(1990年)に登場して、一躍有名になったシチリア島の郷土菓子、カンノーリ。
7月は、柑橘の特産地、三重県からブンタンを選び、トッピングに合わせ、爽やかに仕立てました。
調理
お召し上がり
◆クリームの魅力をたっぷり味わう
カンノーリをかじると、生地がパリンと割れ、なかから濃厚なクリームが飛び出し、魅力の瞬間です。
細かく砕けた生地のパリパリした歯ごたえと、濃厚なクリームの食べ合わせは絶品です。
生地はココアの風味がきいて、ブンタンの甘酸っぱさと相性抜群。一味ちがうカンノーリに、夏を感じて楽しみます。
15.三重県産ブンタンのババレーゼ
メニューについて
夏に食べたい冷たいお菓子を、ババレーゼでつくりました。
ババレーゼはイタリア語でババロアの意味で、生地のなかにブンタンの果肉や、リモンチェッロを入れ、清々しい味と香りをつけて冷やしました。
調理
◆リモンチェッロとは
イタリア南部は温暖な気候で柑橘類がよく育つ。特にカンパニア州はレモンの特産地。通常のレモンの3倍ほどの大きさがあるアマルフィ・リモーネとよばれる種類で、皮が厚く香りが高いことが特徴。
このアマルフィ・リモーネを使い、食後酒として家庭でつくられていた地酒の美味しさが評判になり、イタリア全土に広まった酒がリモンチェッロ。
「プロフーミ・デラ・コスティエーラ」社は、アマルフィ・リモーネの皮の黄色い部分のみを手しごとではぎとり、リモンチェッロに使用。着色料・香料・保存料一切なしの伝統的な製法を続けている。
お召し上がり
◆柑橘でひんやり
ババレーゼのトッピングにはブンタンの果肉がたっぷり入っています。ババレーゼの生地のなかにも、ブンタンの果肉がザクザク入っています。
ブンタンの爽やかな甘酸っぱさが、リモンチェッロとともに広がります。
スプーンで食べる、冷たい果肉の涼感に、夏の至福を感じます。
7月のディナーは、ラ・ビスボッチャの
季節のおすすめメニューでお楽しみください。