イベントレポート:コスミック・ジャンクション 第4回 2025

ラ・ビスボッチャは2025年3月30日(日)、豊かな人生の創造を目指す予防医療クリニック「アフロード・クリニック」とコラボレーションして、アートと食の掛け合わせから生まれるビックバンを楽しむイベント「コスミック・ジャンクション」の第4回を開催しました。イベントの模様をお伝えします。

写真・文/ライター 織田城司

ラ・ビスボッチャのメインダイニング

1.イベントの概要

イベント名|「COSMIC JUNCTION(コスミック・ジャンクション)第4回」

日時|2025年3月30日(日)  

17:00 開店

18:00 コース料理スタート

22:00 閉店

会場|東京広尾 イタリアンレストラン「ラ・ビスボッチャ」

主催|アフロード・クリニック、ラ・ビスボッチャ

運営|

ビスボッチャ店内にギャラリー数社がアート作品を持ち込み、展示・販売。

食事は着席で、各自の席にイタリアンのフルコースとフリードリンクを提供。

各自の席に展示作品リストとコース料理メニューを配布。

展示作品の撮影は可能。

コース料理の合間に関係者の挨拶や、アーティストのトーク、パフォーマンスが盛り込まれた。

2.開会挨拶

開会の挨拶をするアフロード・クリニック代表 道下将太郎さん

「コスミック・ジャンクション」に込めた思い

主催者を代表して、アフロード・クリニック代表、道下将太郎さんから開会の挨拶がありました。

道下将太郎(みちした・しょうたろう)プロフィール

1991年神奈川県生まれ。2016年東京慈恵会医科大学卒業。

【道下将太郎さんのトーク】

なぜ、このような会を開いているか、私の自己紹介を含めて解説します。

私のメインの仕事は、脳神経外科医です。頭の血管をつなぐバイパス手術を手がける過程で、20歳代で1,000人以上の人が亡くなる姿を見てきました。

人は死ぬとき皆、つらそうでした。でも、人は絶対死ぬので、そこがハッピーにならないものかと、ずっと課題に思ってきました。そこで、人生観は、ウエルビーイングだけでは足りず、ウエルダイイングも必要と考えました。いま、私は34歳ですが、27歳くらいから、ウエルダイイングのプロジェクトを仕掛けるようになりました。

そこにアートを交えている理由は、言葉を超える表現のひとつが、アートの役割だと思っているからです。

人にとっての究極のアートは、臨終の時に心がやすらぎ、棺桶の中に、一緒に入れるものだと思います。そのとき、有名ブランドのバッグや、ピカソの絵は入れません。自分しかわからない大切なものを入れます。

そのようなものを、生前から用意し、託すことで、死の怖さが軽減することを患者にすすめています。その結果、ハッピーにお亡くなりいただいた方が、1000人中15名いました。

そのとき、アートは処方箋になると思い、その再現をすることが、残りの人生でやりたいことです。

開会の挨拶をするアフロード・クリニック代表 道下将太郎さん

なぜ、ビスボッチャかというと、ビスボッチャは今年創業32周年をむかえます。私は3歳の頃から、親に連れられて来て以来、30年近く通い続け、家族のように思っています。

私はアートが持つ、近寄りがたい、難しい、やたら語る人がいる、というイメージが好きではありません。

このため、美味しいご飯を食べながら、素敵な空間でアートに親しんでもらいたいと思い、お気に入りのレストランとコラボさせていただいております。

コスミック・ジャンクションというタイトルは、SNSのような、2次元的な人の出会いではなく、宇宙レベルの多次元な人の出会い、もしくは、感性の出会いの交差点になればと思って掲げています。

ぜひ、いろんな作品やアーティスト、参加者と交流していただき、美のアンテナを増やしていただけたら幸いです。

3.会場のレイアウト

ラ・ビスボッチャのメインダイニング

ラ・ビスボッチャのメインダイニング

ラ・ビスボッチャのメインダイニング

ラ・ビスボッチャのメインダイニング

ラ・ビスボッチャのメインダイニング

ラ・ビスボッチャのサローネ

ラ・ビスボッチャのサローネ

ラ・ビスボッチャのサローネ

4.出展作品と参加アーチストの解説

◆池谷友秀さんの作品

池谷秀友さんの作品

池谷秀友さんの作品

会場で作品の解説をするアーティスト 池谷友秀さん

池谷友秀(いけや・ともひで)プロフィール

1974年神奈川県生まれ。東京綜合写真専門学校卒。

【池谷友秀さんのトーク】

水中写真をベースに、人間の呼吸をクローズアップしながら、生と死や、生命力を表現しています。

◆葛本康彰さんの作品

葛本康彰さんの作品

会場で作品の解説をするアーティスト 葛本康彰さん

葛本康彰(くずもと・やすあき)プロフィール

1988年奈良県生まれ。

【葛本康彰さんのトーク】

人間と自然の関わり方のひとつとして、作品をつくることを考えています。

今回出展した作品は、作品の上に本物の霜(しも)を発生させ、その結晶の模様を定着させながらつくりました。

◆北浦雄大さんの作品

北浦雄大さんの作品

北浦雄大さんの作品

会場で作品の解説をするアーティスト 北浦雄大さん

北浦雄大(きたうら・ゆうだい)プロフィール

1994年奈良県生まれ。京都市立芸術大学院 美術研究科 漆専攻修了。

【北浦雄大さんのトーク】

漆を使った作品をつくっています。

生まれ育った奈良の東大寺で見た、日本古来の造形に感じる死生観を、自分なりに改質して、作品にしています。

◆金理有(きむ・りゆ)さんの作品

金理有さんの作品

会場で作品の解説をするアーティスト 金理有さん

金理有(きむ・りゆ)さんプロフィール

1980年大阪府生まれ。2006年大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修士課程修了。

【金理有さんのトーク】

日本と韓国のハーフで、生まれも育ちも大阪。だから、何人かときかれると、大阪人と答えています。

焼き物をつくり、海外ではアーティストと自己紹介しているけれど、日本では現代アートがまだ浸透していないから、陶芸家と自己紹介しています。

縄文土器に見る、古代の想像力との出会いが焼き物をつくるきっかけで、それまで好きだったSF映画やロボットアニメに見る、未来への想像力をミックスさせて、現代土器をつくることがコンセプトです。

◆本橋孝祐さんの作品

本橋孝祐さんの作品

本橋孝祐さんの作品

会場で作品の解説をするアーティスト 本橋孝祐さん

本橋孝祐(もとはし・こうすけ)さんプロフィール

1994年東京都生まれ。2018年武蔵野美術大学造形学部油絵専攻入学。

【本橋孝祐さんのトーク】

立体やペインティングの作品を通じて、宇宙や死生観を表現しています。

宇宙箱という作品は、丸、三角、四角という異なる要素のものをひとつの箱に入れることで、宇宙を表現しています。ドクロのオブジェは、死を意識することで、生を強く感じることがコンセプトです。

◆長坂真護(ながさか・まご)さんの作品

長坂真護さんの作品

【解説】

世界の電子機器の廃棄場、ガーナのスラム街で廃棄物を再構成して立体のアートを作り続け、環境問題を提起しながら作品を販売した収益の一部をスラム街に還元し、社会貢献に役立てている。

今回は、ガーナの子供たちが描いた絵画も同時に展示され、世界観を広げました。

ガーナの子どもたちの作品

ガーナの子どもたちの作品

◆草間彌生さんの作品

草間彌生さんの作品

草間彌生さんの作品

【解説】

草間彌生さんのシルクスクリーンの作品が2点出展され、価格表示は「ASK」になっていました。ギャラリーに尋ねると、黄色い作品は1,300万円、白い作品は800万円ということでした。

Banksyさんの作品

池上創さんの作品

中津川翔太さんの作品

中津川翔太さんの作品

中津川翔太さんの作品

今村能章さんの作品

今村能章さんの作品

今村能章さんの作品

奥直子さんの作品

ノグチミエコさんの作品

To Kai On Bennyさんの作品

葉山禎治さんの作品

5.舞踏パフォーマンス

孝藤右近さんの舞踊パフォーマンス

コース料理の合間に、孝藤右近さんの舞踊パフォーマンスがありました。

孝藤右近(たかふじ・うこん)さんプロフィール

石川県金沢市出身。日本舞踊家、振付師、演出家、創作日本舞踊孝藤流二代目、剣舞右近流家元、COOL JAPAN TVステージプロデューサー

孝藤右近さんの舞踊パフォーマンス

孝藤右近さんの舞踊パフォーマンス

孝藤右近さんの舞踏パフォーマンス

孝藤右近さんの舞踊パフォーマンス

孝藤右近さんの舞踊パフォーマンス

【解説】

孝藤右近さんのパフォーマンスは、江戸時代に吉原遊廓で遊女の存在感を象徴する行事として行われたパレードで、同時代を題材とした今年のNHK大河ドラマ『べらぼう』でも再現され、注目されている「花魁道中(おいらんどうちゅう)」をイメージしたものです。

花魁に扮した孝藤右近さんがディナーの会場を約90秒間練り歩きながら、イベントのテーマのひとつ、死生観を表現しました。

前半、花魁は高下駄を履き、提灯も持つ先導とともに、葬列のように、静かに歩き、日本古来のお化けのようなイメージで死を表現。

後半、花魁は高下駄を脱ぎ、身軽になり、春の桜を感じさせる明るい音楽と、躍動感ある舞踏で、生きるエネルギーを表現しました。

提灯を持つ先導は、孝藤さんの友人で、大ヒットした日本映画『カメラを止めるな!』(2017年)の共同原作者、和田亮一(わだ・りょういち)さんが演じ、豪華キャストによるパフォーマンスでした。

この「花魁道中」のパフォーマンスに合わせ、コース料理のメイン、アイルランド産グラスフェッド・ヘアフォード牛の炭火焼きの付け合わせに、和の惣菜、筑前煮が添えられる、異色の組み合わせがありました。

筑前煮の具材のひとつ、タケノコは、スクスク育つイメージから生命力を表現。また、イタリアの野菜、ピゼッリや、ラディッキオ・タルディーヴォを入れることで、ビスボッチャらしさと、既成概念を覆すコスミック・ジャンクションのテーマを表現しました。

パフォーマンス終了後、メイクを落として道下将太郎さんと挨拶する孝藤右近さん

コース料理のメイン アイルランド産グラスフェッド・ヘアフォード牛の炭火焼き 筑前煮

6.閉会挨拶

閉会の挨拶をするラ・ビスボッチャ代表 大森威宜さん

現代を代表するモダンアート

主催者を代表して、ラ・ビスボッチャ代表、大森威宜(おおもり・たけよし)さんから挨拶がありました。

【大森威宜さんのトーク】

ビスボッチャは、オーセンティックな雰囲気のレストランなのに、なぜ、現代アートとコラボするのか、と思われる方もいるかもしれません。

その発端は、数年前に、イタリアのローマにある大統領宮殿を訪問したときの出会いです。

伝統的で荘厳な宮殿の中に、古代や中世など、イタリアの歴史を感じるアートが、展示してありました。そんな回廊を観ているうちに、モダンな現代アートの展示コーナーに違和感を覚えました。

そこで、キュレーターにきくと、「3千年後に、我々の子孫が、21世紀を見たとき、時代を代表するアートが、この現代アートです」と答えてくれました。

なるほど、現代アートは、今の時代を代表するアートと気がつき、興味がわき、勉強するようになり、このようなイベントも開き、作品も購入するようになりました。

皆さまもぜひ、会場に展示してある作品を観て、人生に彩りを加えていただければ幸いです。

このイベントは、これからも5回、10回と続け、皆さまと一緒に、現代の文化をつくっていきますので、よろしくお願いします。

7.まとめ

閉会の挨拶をするラ・ビスボッチャ副料理長 高部孝太さん

アートの展示は、大きな美術館でも、小さなギャラリーでも、一人のアーティストの作品をクローズアップして、シンプルな空間で、見せるスタイルが多い。

コスミック・ジャンクションでは、平面や立体など、さまざまなアーティストの作品が集うグループ展に、パフォーマンスや食事が加わります。

アートやアーティスト同士が反応するような連鎖が感じられ、なおかつ、オリーブオイルの瓶やワイングラスのような、レストランの備品との混在を通して見える、アートと日常との反応も面白い。

今回は、宇宙の交流に加え、死生観のテーマを表現する演出も随所に見られ、コンセプトの深い広がりを感じました。

花魁の絢爛豪華な衣装や、フルコースの料理、フリードリンクとともに、一般的なアートの展示では感じられない、さまざまな交流がワンストップで楽しめる、このイベントならではビックバンを堪能しました。