第44回 EARLY SUMMER FAIR 2019
ラ・ビスボッチャ入口の花
初夏の美味しさを集めて
改元の風薫る5月、新鮮な食材を集めた「初夏の旬菜フェア」を5月13日(月)〜25日(土)まで開催します。期間限定メニューが5品登場。新緑がより爽やかに感じる美味しさをお楽しみください。
デザートの下ごしらえをする副料理長・露詰まみ
解説/副料理長・露詰まみ
写真・文/ライター織田城司
Commentary by Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
1.鴨と季節の野菜のサラダ
鴨と季節の野菜のサラダ
◆スパイシーなおつまみサラダ
イタリア料理の定番的な野菜のなかでも、ルッコラとクレソンは初夏が新芽の季節で旬になります。
そこに鴨肉やシシトウを加え、しっかりした味でいただくのがイタリア風。食前酒がすすむサラダです。
サラダに使う野菜。左からルッコラ、フルーツトマト、クレソン、ラディッキオ、シシトウ
調理担当・細井慎介。鴨に塩コショウで下味をつける。鴨はハンガリー産の合鴨を使用
フライパンにピュア・オリーブオイルを敷く
鴨の脂を下にして焼く
スプーンでフライパンの底から油をすくい、鴨の上部を加熱
トングで脂の焼き加減を確認
表面に焼き色が付いた鴨をオーブンで約4分加熱
焼きあがった鴨を寝かすためにアルミホイールで包む
鴨を焼いた時間と同じ時間寝かせ、肉汁が出過ぎないように落ち着かせる
シシトウに軽く塩をふり、下味をつける
シシトウがグリルパンにくっつかないようにオリーブオイルで和える
シシトウをグリルパンで加熱
シシトウを反転させて加熱。焼きあがったら冷ます
フルーツトマトとルッコラを包丁でカット
ラディッキオとクレソンは手でちぎって食べやすい大きさにする
葉菜を塩とオリーブオイルで和える
柔らかくて形が崩れやすいトマトとシシトウは後からボウルに入れ、軽めに和える
野菜を皿に盛り付け、バルサミコ酢をふりかけ、味と風味を加える
バルサミコ酢は本場、北イタリアのモデナ地区で1871年に創業した老舗「レオナルディ」社の10年熟成ものを使用。見るからに濃く、少量でも味と風味が豊か
野菜の上に鴨のスライスを乗せて出来上がり
鴨と季節の野菜のサラダ
◆味のバラエティーを楽しむ
色とりどりのサラダは「さて、どこから食べようか」と考える楽しみがあります。
たとえば、まずフルーツトマトの甘酸っぱさで舌を目覚めさせ、次にルッコラやクレソン、ラディッキオなど、比較的薄味の野菜で口直しをしながらシャキシャキとした食感を楽しみます。
鴨のしっかりした旨味とコクを堪能した後、シシトウの辛味でインパクトを加えます。ここで食前酒をゴクリと飲み、再びフルーツトマトの甘酸っぱさに戻るコースはいかがでしょうか。
鴨と季節の野菜のサラダ
ラ・ビスボッチャ入口の花
2.ビーツとリコッタチーズのラビオリ
ビーツとリコッタチーズのラビオリ
◆根菜の旬にビーツという選択肢
根菜が旬の初夏、日本ではジャガイモやタケノコを食べるのがポピュラーですが、イタリアではビーツを様々な料理法で食べる習慣があります。
そんな料理法の中からラビオリを選び、クリーミーなバターソースを合わせて提案します。
◆ビーツのペーストをつくる
ビーツはアメリカ産を使用。中身は濃い赤色で渦巻き模様がある
調理担当・老田裕樹。ビーツは硬いので、アルミホイールで丸ごと包み、オーブンで加熱してから皮をむく
ビーツをミキサーに入れやすい大きさにカット
カットしたビーツと自家製野菜のダシ汁をミキサーに入れる
ミキサーを小まめに止め、ビーツの攪拌具合を確かめながら制御。とろみが残るぐらいが理想
ミキサーにかけたビーツにリコッタチーズを混ぜ、粘性とコクを加える
リコッタチーズはフレッシュチーズの特産地、南イタリアのカンパーニャ州にある「チカテッリ」社製で、水牛のミルクを使った濃厚なタイプを使用
塩を軽くふって味をつける
パルメザンチーズをふりかけ、味と粘性、風味を加える
出来上がったビーツのペースト。天然だが鮮やかな色彩がある
◆ラビオリを成形する
パスタマシーンで自家製のパスタ生地を薄くのばす
絞り袋に入れたビーツのペーストを生地の上にのせる
生地を折り、ビーツのペーストを包む
折りたたんだ生地を指で押さえ、余分な空気を抜く
丸い金型で生地をくり抜く
生地から切り取られた半月型のラビオリ
切り取った生地の口を指でしっかり閉じてラビオリの成形が完成
◆ラビオリを調理する
ラビオリのソースに使うバターとセージは焦げ付かないようにフライパンに入れてから加熱
セージは千葉県産のものを使用
フライパンを加熱し、バターを溶かし、パスタの茹で汁を入れ、塩味を加える
ソースの加熱はバターが半分溶けた状態で止め、ラビオリが茹で上がるまで待つ
茹で麺機に岩塩を加える
茹で麺機にラビオリを投入
茹で時間は約4分
茹で上がったラビオリをソースのフライパンに投入
フライパンを加熱し、ラビオリとソースを和える
フライパンを火からおろし、パルメザンチーズを和える。皿に盛り付けてから再度パルメザンチーズをふりかけて仕上げる
ビーツとリコッタチーズのラビオリ
◆とろける旨味に大地が薫る
バターとセージが香るソースに浸ったラビオリは、フォークで切れるほどの柔らかさです。
ツルッとした舌ざわりの中に感じるビーツのペーストはクリーミーで、まろやかな旨味があります。ビーツの風味に感じる土の匂いに、初夏の大地を思います。
ビーツとリコッタチーズのラビオリ
ラ・ビスボッチャ入口の花
3.イチゴとブラータチーズのリゾット
イチゴとブラータチーズのリゾット
◆ヴェローナの郷土料理
イチゴのリゾットはイタリア北部・ヴェネト州の古都、ヴェローナの郷土料理です。
今年はブラータチーズを加え、旨味を増しています。
イチゴは強い甘味と、ほどよい酸味がある「とちおとめ」を使用
調理担当・高部孝太。イチゴのヘタを取り、リゾットに混ぜやすい大きさにカットする
鍋にイタリア米を入れ、塩を加えて味をつける
イタリア北部にあるロンドリーノ社の「アクエレッロ」ブランドの米と納品用の真空缶
リゾットに使うイタリア米はイタリア最大の米処、ピエモンテ州ヴィルチェッロ県で1935年に創業したロンドリーノ社の「アクエレッロ」ブランドを使用しています。
リゾットに適したカルナローリ種の米を独自の方法で生産することで、硬度が高く、粘性が低く、風味はまろやかで味がしっかりした米を実現。味を損なわない配慮から真空缶で納品されています。
鍋にイチゴを入れる
鍋に自家製鶏のダシ汁を入れ、水分とコクを加える
イタリア米を約18分程かけて炊く
無塩バターを入れ、とろみと風味を加える
パルメザンチーズを入れ、とろみと風味を加える
リゾットを混ぜ合わせ、皿に盛り付ける
リゾットの上にブラータチーズを乗せ、イチゴを飾って出来上がり
ブラータチーズはアメリカの「ディ・ステファノ」社のものを使用。イタリア南部プーリア州出身のチーズ職人がカリフォルニア酪農協会が認めた良質なミルクを使ってつくるチーズ
イチゴとブラータチーズのリゾット
◆まろやかなイチゴ味
初夏が旬のイチゴ。リゾット好きのイタリア人が合わせようとした発想はよくわかります。砂糖は使わないので、お菓子風ではなく、イチゴそのものの酸味をしっかり感じることができます。イチゴの種のプチプチとした食感がアクセントになります。
イチゴとミルクの好相性は実績があり、リゾットの熱でトロトロになったブラータチーズの旨味もイチゴとよく合います。
イチゴとブラータチーズのリゾット
ラ・ビスボッチャ入口の花
4.シチリア風マグロのカツレツ
シチリア風マグロのカツレツ
◆豊かな衣に感じるシチリア
イタリア料理の味付けは南下するにつれて濃くなり、豪快さが加わる傾向にあります。南の島、シチリアもその典型で、豪快な魚料理が名物です。
そんなシチリアのカツレツに見られる、味わい豊かな衣で、旬のメバチマグロを揚げます。
マグロは日本近海で獲れたメバチマグロを使用
調理担当・村澤大。マグロの皮をむく
食べやすい大きさにカットしたマグロに軽く塩をふって下味をつける
塩をふったマグロをしばらく置き、味をなじませる
カツレツに使うパン粉は自家製パンをミンチマシーンで粗挽きにした大粒
アーモンドスライスを指先で細かく砕きながらパン粉に加える
ペコリーノ・ロマーノチーズをすりおろしてパン粉に加える
イタリアンパセリのみじん切りをパン粉に加える
食材を加えたパン粉を混ぜ合わせる
キッチンペーパーでマグロの余分な水分を吸収する
マグロに強力粉をまぶす
タマゴをつける
パン粉をつける
フライパンにピュア・オリーブオイルをたっぷり注ぐ
マグロをフライパンに投入
マグロを反転させる
金串を刺して芯温を確認
衣がキツネ色になったらフライパンから取り出し、キッチンペーパーで余分な油を吸収。皿に盛り付けて出来上がり
シチリア風マグロのカツレツ
◆香ばしい衣を堪能
たまには揚げ物をたっぷり食べたい、という方におすすめのカツレツです。
厚めの衣は粗挽きのパン粉に混ぜた具材が香ばしく、ガリガリとした歯ざわりとともに楽しみます。衣だけでも酒の肴になりそうな食べごたえがあります。お肉に比べると淡白な味のマグロがバランスよくなじみます。
シチリア風マグロのカツレツ
ラ・ビスボッチャ入口の花
5.ペスケ・ドルチ
ペスケ・ドルチ
◆桃に見立てたイタリアのお菓子
当店のイタリア人のリクエストで再現したお菓子です。
日本人がイタリアで暮らすと、アンコの甘さが懐かしく感じるのではないでしょうか。そんな郷土の甘さのイタリア版です。
小麦粉をふるいにかけながらボウルに入れる
砂糖と塩を混ぜたもの入れ、味をつける
タマゴ、常温に戻したバター、イーストを溶かした牛乳を加える
混ぜ合わせる
生地をボウルから取り出し、叩きつけながら練る
生地の練りを繰り返しながら粘性を確認
薄く膜ができるのが練り上がり目安
生地をボウルに入れ、ラップで覆い、一次発酵させる
一次発酵した生地を小分けにする
生地を丸める
丸めた生地の上部を手の平で押さえ、饅頭型に成形
成形した生地を湿らせた布で覆い、二次発酵させる
二次発酵が終わり、焼き上げた生地の底をくり抜く
生地を製菓用リキュール「アルケルメス」に浸し、味と香りをつける
「アルケルメス」は中世フィレンツェを統治したメディチ家が発祥とされる。現在はイタリアのパリーニ社のものを使用
生地の表面にグラニュー糖をつける
生地の底のくぼみにチョコレートクリームを注入
生地を2個合体させ、桃の形をつくる
ミントの葉を飾って出来上がり
ペスケ・ドルチ
◆エスプレッソが合う甘さ
生地に染みた「アルケルメス」の薬草や香草系の香り、酸味や苦味をたっぷり味わいます。抜けるような爽やかさが初夏の気分です。食べ慣れたチョコレートの甘さに落ち着きを感じ、エスプレッソが飲みたくなります。
日本で見ることが少ないイタリアン・スイーツゆえに、イタリア土着の濃い甘さをリアルに感じます。
ペスケ・ドルチを半分に切った状態。チョコレートが桃の種のように見える
お飲物
白ワイン「ドンナ・フガータ・リゲア」
◆初夏におすすめ、スッキリした辛口白ワイン
銘柄/ドンナ・フガータ・リゲア
ワイナリー/ドンナ・フガータ
生産地/イタリア南部シチリア島
ぶどう種/ジビッボ100%
生産年/2017年
海に囲まれたシチリア島のワインらしく、人魚のイラストのラベルが初夏の気分を盛り上げます。
味わいもマリンリゾートに似合う、スッキリした辛口です。今回のフェアに登場するバターソースのラビオリや、シチリア風マグロのカツレツをキリッと引き締めます。
白ワイン「ドンナ・フガータ・リゲア」と、ビーツとリコッタチーズのラビオリ
新緑が輝く季節は、
ラ・ビスボッチャの「初夏の旬菜フェア」で、素敵なひとときをお過ごしください