RECOMMENDED SEASONAL MENU 2021 JUNE
コラム『味と技』第90回
夕暮れを爽やかに
6月は長雨が続き、すっきりしない気候のなかで、早くも夏至を迎えます。
一年でもっとも日が長く、夕暮れのムードからはじまるディナーを楽しみます。
そんな季節に、爽やかに感じるメニューを12品集めておすすめします。
メニュー編集・調理/料理人・村澤大
監修・調理/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ
写真・文/ライター 織田城司
Menu editing・Cooking by Dai Murasawa
Supervised by Yuuki Inoue Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
⚫︎前菜
1.ブラータチーズとアメリカンチェリーのサラダ
メニューについて
◆季節のフルーツをシンプルに味わう
ブラータチーズのミルキーな甘みは、果物や野菜、生ハムなど、幅広い食材とよく合います。
6月は、旬の果物や野菜と合わせ、シンプルなサラダで味わいます。
⚫︎ブラータチーズとは
ブラータチーズは、モッツアレッラチーズと同じフレッシュチーズの仲間です。
袋状にしたモッツアレッラチーズの中に、とろ〜りとした「ストラッチャテッラ」というチーズを詰めて封をする、手の込んだものです。
ブラータとはイタリア語で「バターのような」という意味です。バターのような風味と、ミルキーな甘みがあることが由来です。
⚫︎「ディ・ステファノ」のブラータチーズ
「ディ・ステファノ」社は、イタリア南部プーリア州の親子2代のチーズ職人がアメリカに渡り、カリフォルニア州で生産するチーズメーカーです。
同地の乳牛「ハッピー・カウ」のミルクを使用。干草や穀類、フルーツなど、バランスのとれたエサを与えられ、自由に放牧されて育った牛で、ミルクは濃厚な味わいです。
ひとくちにブラータチーズといっても、質感や味は一種類ではなく、豆腐のように、メーカーによって千差万別です。
「ディ・ステファノ」社のブラータチーズは、しっかりした質感と濃厚な味わいが特徴です。
外側の皮は薄くて柔らかく、なかのとろ〜りとした「ストラッチャテッラ」と呼ばれるチーズは、クリーミーでありながら、水っぽくなく、もっちりとして、しっかりした粘りがあります。
皮と中身の質感に差はほとんどなく、一体感があります。味わいはバターのような風味とミルキーな甘みが濃厚です。
「ディ・ステファノ」のブラータチーズが購入できる通販サイトのリンクはこちら→「THE FOODS」
お召し上がり
◆さっぱりした甘酸っぱさ
大粒のアメリカンチェリーの果肉はシャリシャリして、さっぱりした甘酸っぱさがあります。酸味よりも甘みが強く、ワインのような渋みやコクもあり、薄皮のパリッと弾ける食感がアクセントです。
ルーコラのゴマのような風味と辛み、ブラータチーズのとろ〜りとした食感とミルキーな甘みが加わると奥行きのある味わいになり、その意外性にワインも美味しくなります。
2.ブラータチーズと白桃のサラダ
メニューについて
お召し上がり
◆ミルキーなチーズと果汁が渾然一体に
白桃の果肉は柔らかく、爽やかで上品な甘みがあります。
そんな果肉は、とろみのある果汁の効果で、ブラータチーズと渾然一体となり、とろける口どけのなかで、ひとつの甘みになります。
3.ブラータチーズとメロンのサラダ
メニューについて
お召し上がり
◆メロンの甘い香りにテーブルが華やぐ
マントヴァ産のメロンは、甘い香りが高く、テーブルが華やぎます。
メロンのたっぷりした果汁はなめらかで、強い甘みがあります。ブラータチーズのバターのような風味が、メロンの甘みを引き立てます。
4.ブラータチーズとアスパラソバージュ入りスクランブルエッグのサラダ
メニューについて
◆卵の風味が広げる旬菜のみずみずしい美味しさ
アスパラソバージュは卵と相性がよく、卵はブラータチーズと相性がよい。
卵が取りもつ縁で、新鮮なアスパラソバージュを美味しくいただくサラダです。
調理
お召し上がり
◆フレッシュな柔らかさと甘み
炭火で焼いたアスパラソバージュは柔らかく、若々しい甘みや旨みがあり、焼き色の香ばしさがアクセントです。
ブラータチーズは卵の熱でとろけ、卵と一体になり、バターのような風味がアスパラソバージュのフレッシュな美味しさを引き立てます。
5.フィノッキオとモッツアレッラチーズのサラダ
メニューについて
◆ハーブが香るおつまみサラダの涼感
フィノッキオとディルを重ね、爽やかなハーブ香を高め、蒸し暑い日にさっぱりと感じるサラダです。
モッツアレッラチーズを合わせ、レモン汁とオリーブオイルでつくるドレッシングを和え、清涼感を増しています。
小さなカットがおつまみ感を増し、ワインにぴったりです。
調理
◆自家製レモンドレッシングをつくる
◆食材を合わせる
お召し上がり
◆涼しげな香りと食感を楽しむ
フィノッキオはサクサクして、からんだディルの細葉とともに、涼しげなハーブ香が鼻にスッとぬけ、甘みとほろ苦さを感じます。
モッツアレッラチーズは水牛乳の効果で、もっちりした弾力とミルキーな風味が濃厚です。
柔らかい黒オリーブのまろやかなコクが、ミニトマトやルーコラとともにアクセントになります。
食感のバリエーションも楽しく「次はどれをつまもうかな…」と、無意識のうちに食材を見くらべながらワインを飲み、おつまみサラダを満喫します。
6.岩牡蠣の白ワイン蒸し
メニューについて
◆旬の岩牡蠣をシンプルに
春から初夏が旬の島根県産の岩牡蠣。
ふっくら、たっぷりした身を白ワインで蒸し焼きにして、美味しさをシンプルに凝縮します。
イタリアンパセリのみじん切りとパン粉を振りかけ、岩牡蠣の美味しさを引き立てます。
調理
お召し上がり
◆リッチな食感と濃厚な旨み
岩牡蠣の貝柱は、繊維質が柔らかく、香ばしさと旨み、コクがあります。
ぷるんと膨らんだ部分は、クリーミーで濃厚な旨みがあります。
パン粉は、牡蠣のソースがジワッと染みて、香ばしさを増しています。
パン粉に混ぜたペコリーノチーズの風味が、コクを深めます。
⚫︎パスタ&リゾット
7.白エビとグリーンアスパラガスのリングイーネ
メニューについて
◆白エビのやさしい味が生きた夏のパスタ
白エビは、全国でも夏場の富山湾でしか獲れない希少な食材です。
そのやさしい味を生かした、夏向けのパスタです。
あっさり塩味のソースを、幅広のリングイーネにたっぷり染みさせて味わいます。
調理
◆ソースをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆白エビからしみ出る甘みと旨み
白エビの殻はうすくて柔らかく、香ばしい風味がふんわり香ります。
噛みしめると中身が押され、甘みと旨みがしみ出てきます。味わいはやさしく上品です。
グリーンアスパラガスの甘みやほろ苦さ、ミニトマトの酸味が、白エビの海の旨みと好対照で、引き立て合います。
幅広のリングイーネは、もっちりした歯ごたえと強いコシで、あっさり塩味のソースがじんわり染み込んでいます。
8.ウニのリゾット
メニューについて
◆ウニで極まる夏味のリゾット
ウニの漁獲高が日本一の北海道。
ベストシーズンは産卵を控えた6月から9月中旬といわれています。
そんな旬のウニをたっぷり使った、夏味のリゾットです。
調理
お召し上がり
◆バターとチーズが濃厚にからんだウニのうまさ
イタリアのリゾット米は日本の米より粒が大きく、歯ごたえはもっちりした食感が残り、ウニのソースがたっぷり染みています。
リゾットに使うバターやチーズの脂分がウニのとろりとした質感とよく合い、濃厚な旨みを増します。
その一方で、バターやチーズのミルキーな風味が、ウニの磯の香りを程よく中和します。
トッピングの生ウニを少しずつ崩しながら、おかずのように食べるとちょうどいい味わいです。
⚫︎メイン
9.北海道産放牧豚「どろぶた」 自家製ピリ辛ソーセージの炭火焼き
メニューについて
◆夏に食べたいスパイシーな味
豚肉の夏味シリーズのひとつ、ピリ辛ソーセージです。
豚肉は北海道産の放牧豚「どろぶた」を使っています。十勝の広大な大地で放牧され、どろんこ遊びが好きなことが名の由来です。
豚特有の臭みが少なく、柔らかくて豚本来の旨みがぎっしり詰まっています。
スパイスにイタリア産の辛みペースト「ンドゥイヤ」と赤唐辛子を入れ、辛みをつけています。
調理
◆ソーセージの中身をつくる
◆腸詰めする
◆炭火で焼く
お召し上がり
◆イタリアの辛みペーストが味の決め手
炭火で焼いたソーセージは香ばしく、挽肉そのものも香ばしく、旨みがしっかりしています。
挽肉に混ぜたスカモルツァチーズのみじん切りはとろけ、ミルキーな甘みがアクセントになります。
辛さの感じ方には個人差がありますが、1本食べ終わるころに舌がしびれはじめ、汗が出てきます。
辛みペースト「ンドゥイヤ」そのものはマイルドな辛みで、赤唐辛子と豚肉を辛すぎない加減にまとめています。
10.北海道産放牧豚「どろぶた」のピカタ カラフルトマトソース
メニューについて
◆トマトと卵が引きたてる豚肉の旨さ
豚肉の夏味シリーズのひとつ、ピカタです。
豚肉は北海道産の放牧豚「どろぶた」の肩ロースを使っています。
見た目も爽やかなカラフルトマトソースが、ピカタをさっぱりと引き立てます。
調理
◆カラフルトマトソースをつくる
◆豚肉の下ごしらえ
◆ピカタを焼く
お召し上がり
◆とろとろの三重奏
焼き上がったピカタは、黄色い衣や中身の豚肉、ソースなどが、すべてとろとろの舌ざわりで、しっとりしています。
とろとろの三重奏が、豚肩ロースのジューシーでまろやかな旨みを引き立てます。
ピカタの衣は、卵やチーズ、バターが焼け、子どものころから好きだった香ばしさの重なりに郷愁を感じます。
それに合わせるカラフルトマトソースは、オムレツとトマトケチャップの関係に似て好相性。ケチャップよリもさっぱりして、夏らしい味でピカタをまとめます。
⚫︎ドルチェ
11.アメリカンチェリーのタルト
メニューについて
旬のフルーツをタルトで味わう歳時記。
6月は、アメリカンチェリーと、フランボワーズをトッピングします。
お召し上がり
◆さっぱりした甘酸っぱさ
ブラータチーズのサラダで使うアメリカンチェリーを、タルトでも使います。
タルトは砂糖を加えた素材の甘さで、アメリカンチェリーのさっぱりとした甘酸っぱさを引き立てます。
12.フランボワーズのタルト
メニューについて
お召し上がり
◆小粒だけど強い甘酸っぱさ
フランボワーズは小粒ながら、果肉はしっかりして、強い甘酸っぱさがあります。
種のプチプチとした食感がアクセントになります。
クリームの底に敷いたフランボワーズのジャムが、果肉の甘酸っぱさを追いかけ、爽やかな印象です。
6月の夕暮れ時は、
ラ・ビスボッチャの季節のおすすめメニューで、
爽やかなディナーをお楽しみください。