フルーツフェア

FRUITS FAIR

コラム『味と技』第91回

フルーツで涼しく

夏がくると美味しくなる色鮮やかなフルーツを集め、イタリアンで味わう「フルーツフェア」を6月21日(月)から7月4日(日)まで開催します。

期間限定メニューが8品登場。フルーツと料理の新鮮な出会いに、涼しさ感じてお楽しみください。

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ

写真・文/ライター 織田城司 
Supervised・Cooking  by Yuuki Inoue  Mami Tsuyuzume
Photo・Text  by George Oda

料理長ごあいさつ

 

フルーツと夏の思い出

 

子どもの頃、夏の楽しみは、お盆に親戚が集まる夕食会でした。

 大人たちは食後もお酒を飲んでいましたが、子どもたちは庭に出て花火を楽しみ、縁台でスイカを食べました。

 真っ赤に熟れた甘いスイカに、顔ごと突っ込んでかぶりつき、種を庭に吹き出す豪快さは、他のフルーツにない醍醐味でした。

 すると、数日後、庭からスイカの芽が出てきました。

 「しめた!これで、家でも大きなスイカがゴロゴロできるぞ!」と大喜びしました。

 しかし、肥料のあげすぎで枯らしてしまい、ほろ苦い後味が残りました。

 毎夏ビスボッチャに、デザート用に仕入れたスイカが届くと、子どもの頃を思い出しながら、農家さんの技術に感心します。

 和食では、フルーツを単品で食べることが多いけれど、イタリアンでは、料理の食材にもよく使います。

 フルーツの美味しさが生きた料理を、夏の思い出に、ぜひ、ご賞味ください。

2021年6月吉日

料理長 井上裕基

⚫︎前菜

1.スイカと水茄子、タコのサラダ トラパニ風ペーストかけ

スイカと水茄子、タコのサラダ トラパニ風ペーストかけ

メニューについて

◆みずみずしさが夏らしい爽やかなサラダ

甘くてみずみずしく、夏に涼しく感じるスイカを使ったサラダです。

同じくみずみずしい旬の水茄子とマダコを合わせ、夏満載。

アーモンドとトマトからつくるシチリアのトラパニ風ペーストの香ばしさがアクセントです。

調理

メニュー提案・撮影調理 副料理長・露詰まみ

◆食材をカットする

スイカは熊本県産を使用

スイカの果肉を皮から外し、小分けにして種を取り除く

ひとくち大にカットする

水茄子は大阪産を使用

水茄子の皮をむく

ひとくち大にカットする

マダコを茹でる。マダコは神奈川県産を使用

ひとくち大にカットする

◆トラパニ風ペーストをつくる

トラパニ風ペーストの材料をミキサーで混ぜる。アーモンドの名産地、シチリア島のトラパニに伝わる香ばしいペーストをサラダ用に酸味を効かせてアレンジ

トラパニ風ペーストの材料。左からバジル、アーモンド、ニンニク、トマト、塩、白ワイン酢、エキストラヴァージン・オリーブオイル

アーモンドは世界有数の特産地、シチリア産を使用

白ワイン酢はイタリア北部の酢の特産地、モデナで1891年に創業した「アドリアーノ・グロソリ」社製を使用

◆仕上げる

カットした食材をボウルに入れ、塩、コショウ、自家製レモンドレッシング、エキストラヴァージン・オリーブオイルを加える

食材と調味料を和える

バジルの葉をちぎって加える

サラダを皿に盛り付け、トラパニ風ペーストを落とすように振りかけて完成

お召し上がり

スイカと水茄子、タコのサラダ トラパニ風ペーストかけ

◆ごろっと転がるぶつ切りの涼感

一見すると脈絡のなさそうな食材の取り合わせですが、夏の旬のみずみずしさが共通点で、そのハーモニーがスイカの甘さを引き立てます。

ハーモニーを盛り上げるのが、ひとくち大のぶつ切りです。スイカのシャリシャリ、水茄子のサクサク、タコのプリプリした食感のコントラストが存分に楽しめます。

スイカと水茄子、タコのサラダ トラパニ風ペーストかけ

水茄子やタコは淡白な味ですが、トラパニ風ペーストの濃厚なアーモンド味と酸味がよく合います。

スイカの甘みはバジルの香りとよく合います。新鮮な味の出会いに、涼しさと美味しさを感じます。

スイカと水茄子、タコのサラダ トラパニ風ペーストかけ

ラ・ビスボッチャ店内

2.カジキマグロの燻製カルパッチョ 炙り柑橘のせ

カジキマグロの燻製カルパッチョ 炙り柑橘のせ

メニューについて

◆定番のカルパッチョに炙り柑橘をトッピング

1993年の創業時から続ける人気の定番前菜「カジキマグロの燻製カルパッチョ」。

夏は炙り柑橘をトッピングします。

南イタリアや南フランスなど、地中海沿岸の地域では、海鮮と柑橘が特産物で、ふたつを組み合わせた料理も多く見られ、そんなイメージのカルパッチョです。

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

◆カジキマグロの燻製をつくる

カジキマグロの燻製は、創業時にイタリア人シェフから教わった古典的なレシピを踏襲して、3日間かけてつくります。

⚫︎1日目

カジキマグロは宮城県産を使用

小分けにしたカジキマグロのブロックに岩塩と黒コショウをまぶし、冷蔵庫で一晩置く。魚肉に味をつけながら、水分を吸収する

⚫︎2日目

ブロックについた塩コショウを流水で洗い流す

ブロックを吸水シートで包み、冷蔵庫で一晩置き、水分を吸収する

⚫︎3日目

桜の燻製チップを加熱し、煙を立てる

燻製チップの上に網を乗せ、カジキマグロのブロックをのせ、フタをする。ときどき燻製する面の向きを変える

燻製が完了したブロックをオリーブオイルでマリネする。注文に応じて薄く切って盛り付ける

◆炙り柑橘をつくる

まな板の上で柑橘をカットする。上下を薄くカットし、柑橘を立てて回しながら、側面の皮と袋をそぎ落とすようにカットしていく

柑橘の外側の皮と袋をむいた状態。左は果肉がピンク色のメキシコ産ルビー・グレープフルーツ。右はアメリカ産オレンジ

袋の側面だけを残して果肉だけを切り落としていく

切り分けた柑橘の果肉

柑橘の果肉を炙るため、トレイに整列させる

柑橘の果肉をバーナーで炙る

◆仕上げる

皿にルーコラを敷く

カジキマグロの燻製をスライスしてのせる

炙り柑橘をのせる

自家製レモンドレッシングを振りかけて完成

お召し上がり

カジキマグロの燻製カルパッチョ 炙り柑橘のせ

◆甘酸っぱさが広がる夏の贅沢

炙り柑橘は水分が飛ぶことでプリッとして、甘酸っぱさが増しています。柑橘の表面の焼き目や照りは、果肉の糖分が加熱されて出てくる現象で、お菓子のようです。

海鮮に柑橘を合わせる食べ方は、レモンが一般的ですが、そこに甘みが加わって広がる印象です。

カジキマグロの燻製カルパッチョ 炙り柑橘のせ

カジキマグロの香ばしい旨みを引き立てる合わせは、定番のルーコラの辛みに、炙り柑橘の甘酸っぱさが加わり、広がります。

ひと夏の贅沢な組み合わせは、地中海を見渡すマリンリゾートの気分です。

カジキマグロの燻製カルパッチョ 炙り柑橘のせ

ラ・ビスボッチャ入口の鉢植えで実ったイチジク(2021年6月3日撮影)

3.イチジクのグアンチャーレ巻きのフリット

イチジクのグアンチャーレ巻きのフリット

メニューについて

◆イチジクの丸ごと揚げを甘じょっぱく

イチジクにイタリア産豚ホホ肉の塩漬け、グアンチャーレを巻いて丸ごと揚げたフライです。

イタリアらしい塩味とコクが効いた「甘じょっぱい」味わいです。

調理

メニュー提案・撮影調理 副料理長・露詰まみ

イチジクは愛知県産を使用

イチジクの先の硬い部分をカットする

イチジクの表面に薄くスライスしたグアンチャーレを巻く

グアンチャーレとその断面。豚のホホ肉を塩やコショウ、ニンニクなどで味付けして乾燥熟成させたもので、ベーコンよりも香りが高い。イタリア中部マルケ州にある「トマッソーニ」社製を使用

イチジクに衣(氷水で溶いた薄力粉)をつける

イチジクを揚げる

キッチンペーパーで余分な油を吸収して出来上がり

お召し上がり

イチジクのグアンチャーレ巻きのフリット

◆トロトロのイチジクの甘みを引き立てる塩味とコク

丸ごと揚げたイチジクは、果肉がジャムのようにトロトロになり、甘みが凝縮しています。

香ばしい衣が引き立てる甘みは、揚げ饅頭のようです。

イチジクのグアンチャーレ巻きのフリット

そこに出てくるグアンチャーレの存在感。

脂分が多いため、揚げるととろけ、ほとんど姿をとどめていませんが、塩味とイタリアらしいコクは、イチジクの薄くて柔らかい皮にほどよく溶け込み、ワインに合う前菜の味わいに仕上げています。

イチジクのグアンチャーレ巻きのフリット

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎パスタ&リゾット

4.スモモとフルーツトマトの冷製カペッリーニ

スモモとフルーツトマトの冷製カペッリーニ

メニューについて

◆冷やしパスタはじめました

夏に美味しい、冷たい細麺です。

イタリアのロングパスタのなかでも最も細いカペッリーニに、さっぱりしたトマトソースを絡めています。

スモモの甘酸っぱさを合わせ、涼感を増しています。

調理

メニュー提案・撮影調理 副料理長・露詰まみ

◆スモモの下ごしらえ

スモモは和歌山県産を使用

スモモを回しながら種の周りに切り込みを入れる

スモモをひねって2つに割り、一方に残った種を取り除く

食べやすい大きさにカットする。スモモの皮は極薄で、シャリシャリとした食感をアクセントに残す

◆トマトの下ごしらえ

トマトとフルーツトマトの皮は、硬さが舌に残るため湯むきする。ヘタを取り除き、反対側に十文字の切り込みを入れる

トマトをサッと茹でる

氷水につける

トマトとフルーツトマトの皮をはがす

トマトを横から2つにカットし、種を取り除く

種を取り除いたトマトを1センチ角にカットし、ポッドに入れ、ハンドミキサーで攪拌して液状にする

液状になったトマトをソースのベースにする

フルーツトマトを食べやすい大きさにカットする。トロッとしたゼリー質の種の部分は食感として残す

◆ソースをつくる

ボウルにカットしたスモモ、フルーツトマト、液状トマトを入れ、バジルの葉をちぎって加える

塩、コショウを加える

バルサミコ酢とエキストラヴァージン・オリーブオイルを加える

バルサミコ酢は強い酸味のキレにこだわり、イタリア北部の酢の特産地、モデナで1891年に創業した「アドリアーノ・グロソリ」社製を使用

食材と調味料を混ぜ合わせてソースの出来上がり

◆仕上げる

カペッリーニを茹でる。茹で時間6分

カペッリーニはイタリア南部プーリア州で1907年に創業した「タンマ」社製を使用

茹で上がったカペッリーニを氷水で冷やす。冷やすと麺が引き締まってコシが強まるため、温製仕立てよりも少し柔らかめに茹でる

麺が完全に冷えたら、ざるを上げて水気をよくきる。ソースが繊細なため、水っぽくならないように、麺を手でおさえながら、麺と麺の間の水気も十二分に取り除く

氷水のボウルの上にソースのボウルを重ねる。冷やしたカペッリーニを入れ、和えながら冷やして完成

お召し上がり

スモモとフルーツトマトの冷製カペッリーニ

◆スモモの甘酸っぱさがトマトを盛り上げる

カペッリーニは、細いながら一本一本の歯ごたえはしっかりしています。口のなかで束になるとプツプツ切れる噛みごたえが心地よく、喉ごしはツルッ、トロッとしています。

カペッリーニに絡んだソースは、トマトの果肉の細かい粒子がサラサラして、トマト畑に飛び込んだような香りが口いっぱいに広がります。

スモモとフルーツトマトの冷製カペッリーニ

スモモの甘酸っぱさが甘いフルーツトマトの旨みを引っ張り、バルサミコ酢のキレのある酸味とコクが追いかけ、バジルの爽やかな香りがアクセントになります。

イタリアンで味わう冷たい細麺は、和食や中華とひと味ちがい、サラダのような清涼感で、夏のメニューに加えたい一品です。

スモモとフルーツトマトの冷製カペッリーニ

おすすめのお飲みもの

スプマンテ「ペルレ・ミレジム」

フルーティな辛口スプマンテ

銘柄/ペルレ・ミレジム
ワイナリー/フェッラーリ
生産地/イタリア北部トレンティーノ・アルト・アディジェ州
ぶどう種/シャルドネ
生産年/2015年

冷製カッペリーニのさっぱりした味わいには、スプマンテがよく合います。

「ペルレ・ミレジム」の泡はきめ細かくなめらか。味わいは旨みのある辛口が優雅に広がり、長い余韻は爽やかな印象です。

リンゴのような香りや果実味が、冷製カペッリーニのスモモの甘酸っぱさとリンクして、引き立てます。

スプマンテ「ペルレ・ミレジム」を「スモモとフルーツトマトの冷製カペッリーニ」に合わせて

ラ・ビスボッチャ店内

5.鴨のリゾット オレンジとローズマリーの風味

鴨のリゾット オレンジとローズマリーの風味

メニューについて

◆鴨を爽やかに味わう夏味のリゾット

オレンジの甘酸っぱさ、ほろ苦さは、鴨の野生味とよく合います。

その相性を生かしてつくるリゾットです。

鴨の強い旨みと、オレンジとローズマリーの爽やかな風味は、夏にぴったりの味わいです。

調理

メニュー提案・撮影調理 副料理長・露詰まみ

◆鴨の下ごしらえ

フライパンにオリーブオイルを敷く

鴨を皮目から焼き、香ばしさを高め、旨みを封じ込める。鴨肉は旨みがしっかりしたフランス産モモ肉を使用

反対側からも焼く

鴨肉をふっくら仕上げるため、鍋に移して蒸し煮にする。鴨を炒めたフライパンに残った肉汁を自家製鶏のダシ汁で流し取りながら煮汁にする

鍋にフタをして鴨肉を蒸し煮にする

◆リゾットを炊く

イタリア産のリゾット米を自家製鶏のダシ汁で炊く

イタリア産のリゾット米は、イタリア最大の米どころピエモンテ州ヴェルチェッリ県で1935年からリゾット用の米をつくり続ける「ロンドリーノ」社のブランド米「アクエレッロ」を使用

自家製鶏のダシ汁は、ひね鶏の肉や鶏ガラ、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間煮込んでつくる

オレンジを半分にカットして絞る

オレンジはアメリカ産を使用

オレンジの絞り汁をリゾットに加える

塩をひとつまみ入れ、味をつける

ローズマリーを刻んで入れ、香りをつける

ローズマリーは長野県産を使用

鴨の味が染みた煮汁をリゾットに入れ、味をつける

焼き上げた鴨をカットして投入

風味ととろみをつけるため無塩バター入れる

風味ととろみをつけるためパルミザンチーズを加える

米と調味料を混ぜ合わせ、とろみ出たら皿に盛り付ける

リゾットを皿に盛り付け、オレンジの皮を擦りおろし、ローズマリーの葉をちぎって振りかけて完成

お召し上がり

鴨のリゾット オレンジとローズマリーの風味

◆濃厚な旨みと爽やかな香り

リゾットから頭を出す鴨肉は、旨みとコクが濃厚です。

その味わいがリゾットの米にしみて、広がります。

鴨のリゾット オレンジとローズマリーの風味

鴨の滋味豊かな味わいを、オレンジの酸味や苦味が引き立てます。

オレンジの爽やかな風味を、ローズマリーが追いかける余韻が、爽やかな後味に仕上げます。

鴨のリゾット オレンジとローズマリーの風味

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎メイン

6.イワシのカツレツ フルーツ入りカポナータ添え

イワシのカツレツ フルーツ入りカポナータ添え

メニューについて

◆フルーツで華やぐ夏のカツレツ

野菜の煮込み、カポナータは地域や家庭によってさまざまな味があり、前菜や付け合わせに食べる、イタリアの定番的な料理です。

夏はフルーツを入れ甘酸っぱさを加えます。

カリッと焼けたイワシのカツレツと相性抜群です。

調理

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基

◆カポナータに入れるフルーツをカットする

カポナータに入れる夏のフルーツのイメージ。旬菜のため、組み合わせは毎日変わる

フルーツはフェア食材の存在感をイメージして野菜よりやや大きめにカットする

◆カポナータに入れる野菜をカットする

カポナータに入れる野菜のイメージ。定番の野菜に旬菜を加え、組み合わせは毎日変わる

野菜をカットする。イワシに添えることを意識して、カポナータ単品用のカットより小さめにする

カポナータ用にカットしたフルーツのバット(左)と野菜のバット。たくさんの食材の小片が集まり、多彩な味が重なる美味しさがカポナータの魅力。フェア用にフルーツを加え、甘酸っぱさを増す

◆カポナータをつくる

鍋を傾け、オリーブオイルとニンニクを入れてから加熱し、オイルに香りをつける

オイルに香りをつけたニンニクは鍋から取り除く

鍋に野菜を投入

野菜に塩を振りかけ、炒める

鍋にフタをして野菜から出る水分だけで蒸し煮にする。水っぽくなく旨みたっぷりに仕上がる

煮込んでから約10分後に自家製トマトソースを入れる

干しブドウを加える

赤ワイン酢を入れ、酸味をつける。赤ワイン酢はイタリア北部の酢の特産地、モデナで1891年に創業した「アドリアーノ・グロソリ」社製を使用

フルーツは果肉の硬さにより時間差をつけて投入。最初はアメリカンチェリーとパイナップルを入れる

柔らかいフルーツは火を止めてから投入。

柔らかいフルーツを煮物に混ぜ、余熱であたためてカポナータの出来上がり。煮込み時間はトータルで約15分。これ以上煮込むと具材が煮くずれる。注文が入ると人数分のカポナータを別の鍋に取り分け、あたため直す

◆イワシの下ごしらえ

イワシは千葉県銚子沖産。メインの料理の食べごたえを想定して大羽イワシを選ぶ

イワシの頭を落とし、腹から内臓を取り出す

腹に残った内臓を流水で洗い流す

イワシを三枚におろす

小骨を骨抜きで取り除く

塩とコショウを振りかけ、しばらく休ませて味をなじませる

◆イワシを焼く

イワシから染み出した水分をキッチンペーパーで吸い取り、味を凝縮する

イワシに小麦粉をつけ、手のひらで叩いて余分な小麦粉を落とす

溶き卵にくぐらせる

パン粉をつける。パン粉は自家製パンを挽いた細粒

フライパンを加熱し、オリーブオイルを敷き、無塩バターを溶かし、イワシの皮目を下にして投入

焼いたイワシはこんがり焼けた皮も美味しいため、しっかり火を通す。香草タイムをのせて香りをつける

イワシを反転させ、反対側からも焼く

反対側にもタイムをのせ、香りをつける

焼き上がったイワシをキッチンペーパーの上にのせ、余分な油を吸収。カポナータとともに盛り付けて完成

お召し上がり

イワシのカツレツ フルーツ入りカポナータ添え

◆イワシの香ばしさとカポナータの酸味が絶妙に調和

イワシのカツレツは衣が絶品です。衣は薄くて軽く、細かいパン粉には凝縮感があり、カリッとしたクリスピーな食感が心地よく、香ばしバターの香りが食欲をそそります。

なかのイワシは濃い旨みやコク、ほろ苦さがあり、皮のパリパリした食感がアクセントになります。

イワシのカツレツ フルーツ入りカポナータ添え

カポナータは、個性豊かな食材がたくさん集まりながら、煮込むことで柔らかくなり、ひとつの味になじんでいます。野菜の旨みに、しっとりしたフルーツの甘酸っぱさが加わり、奥行きのある味に仕上がっています。

柔らかさがありながら、煮くずれていないため、個々の食材をピックアップして個性を楽しむこともできます。

カポナータの多彩な食材による、壮大なスケールの甘酸っぱさが、イワシの香ばしさを引き立てます。

イワシのカツレツ フルーツ入りカポナータ添え

ラ・ビスボッチャ店内

7.トリッパのローマ風煮込み ビワの炭火焼き入り

トリッパのローマ風煮込み ビワの炭火焼き入り

メニューについて

◆爽やかで夏向きのモツ煮込み

フルーツ入りのモツ煮込みは、意外な組み合わせと思われるかもしれませんが、イタリアのモツ煮込みは、トマトや香味野菜と煮込み、爽やかで、さっぱりした仕上がりです。

特にローマでは、地域に自生するミントを入れるのが特徴で、爽やかさを増しています。

炭火で香ばしく焼いたビワとよく合います。

調理

◆トリッパを下茹でする

メニュー提案・撮影調理 料理長・井上裕基 トリッパを鍋に入れ、香味野菜(ニンジン、タマネギ、セロリ)を加えて茹でる

トリッパはイタリア語で牛の第2胃袋のこと。日本では外観からハチノスと呼ばれている。国産を使用

モツ特有の臭いやクセを軽減するため、茹でたトリッパ表面のぬめりを洗い落とす

◆トリッパを煮込む

鍋底で香味野菜(ニンジン、タマネギ、セロリ)やグアンチャーレを炒める

下茹でしたトリッパを食べやすい大きさにカットする

鍋にトリッパを入れ、白ワインを加える

自家製トマトソースを入れ、混ぜ合わせる

トリッパを茹でた汁をシノアで濾して鍋に入れ、煮汁にする

約20分かけて煮込む

◆ビワを炭火で焼く

ビワは愛媛県産を使用

ビスボッチャ店内の炭火焼きグリル。炭は火持ちがよく、灰が少ないオガ炭の五香備長炭を使用

ビワを直接炭火に放り込み、炭の中で焼く

ビワの向きを変え、上から炭を重ねて焼く

焼き上げたビワを氷で冷やす

ビワの皮をむく

ビワを指で半分に割る

種を取り除く

ビワの丸い面を上にして、皿に盛り付けたトリッパに入れる

◆仕上げる

トリッパの注文が入ると、煮込んだ大鍋から小鍋に取り分けて温める

ミントの葉をちぎって入れ、混ぜ合わせてから皿に盛り付け、ビワの炭火焼きを入れて完成

ミントは千葉県産を使用

お召し上がり

トリッパのローマ風煮込み ビワの炭火焼き入り

◆スモーキーなビワのアクセント

トリッパは時間をかけて煮込むことでトロトロに柔らかくなり、歯ごたえはシャキシャキして、旨みは淡白です。

やさしい甘さとほのかな酸味がきいた煮汁とよくなじみます。

トリッパのローマ風煮込み ビワの炭火焼き入り

炭火で焼いたビワの果肉は、とろける柔らかさで煮汁になじみ、スモーキーな風味のなかに、濃縮した甘酸っぱさを感じます。

トリッパの味が淡白なため、ビワの炭火焼きの「甘香ばしさ」が、インパクトのあるアクセントになります。ミントの葉の爽やかな香りと青々しい味わいが、さっぱりした後味に仕上げます。

トリッパのローマ風煮込み ビワの炭火焼き入り

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎ドルチェ

8.マリトッツォ

マリトッツォ

メニューについて

◆小ぶりで、しっかり味の菓子パン

ローマの伝統的な菓子パン「マリトッツォ」。

近年は日本でも注目され、さまざまなタイプが登場するようになりました。

ビスボッチャの「マリトッツォ」の特徴は3つです。

①デザートサイズ

そもそもローマの「マリトッツォ」は、バールなどで朝食として食べるサイズが一般的ですが、レストランのデザートに食べやすいように、コンパクトなサイズにアレンジしました。高さは約7㎝ほどです。

②イタリア産チーズを入れた濃厚クリーム

サイズが小さくなる分、クリームをしっかりさせ、味を濃くして食べごたえを持たせています。生クリームに、ティラミスなどに使う、イタリア産のマスカルポーネチーズを加えています。

③もっちり弾力のきめ細かいパン

パン生地は濃厚なクリームのしっかり感に負けないように、ブリオッシュをベースにしながら独自のブレンドを加え、きめ細かさのなかに、もっちりとした弾力を持たせ、オレンジの風味をつけて焼いています。

マリトッツォ(プレーン)

調理

メニュー提案・撮影調理 副料理長・露詰まみ

◆パンを焼く

パン生地の中種(なかだね)の材料を混ぜ合わせ、発酵させる

中種の材料。左から生イースト、ぬるま湯、薄力粉、グラニュー糖

約1時間かけて発酵させた中種。2倍くらいの大きさになっている

パン生地に味と香りをつける材料を混ぜ合わせる

パン生地に味と香りをつける材料。左から卵(卵黄のみ使用)、無塩バター、強力粉、オレンジ(皮のみ使用)、グラニュー糖、牛乳

パン生地に味と香りをつける材料のボウルに中種を投入

パン生地に味と香りをつける材料と中種を混ぜ合わせる

ある程度生地がまとまったら、平らな場所で力を入れて練りを加える

生地を丸めてボウルに入れ、ラップをかけ、一次発酵させる

約2時間後、生地が2倍くらいの大きさになっている。指を差し、押し戻されなければ適切な一次発酵の目安

生地に打ち粉を振る

膨らんだ生地を拳で叩いてガス抜きをする

生地を棒状に伸ばす

生地をパン1個の大きさに切り分け、重さを軽量しながら分量を均一にする

生地を丸く成型して、オーブンシートを敷いた天板にのせる

生地をビニールで覆い、約50分かけて二次発酵させる

卵黄を牛乳でのばして生地に刷毛で塗る

180℃に温めたオーブンで10〜15分焼く

◆マリトッツォを組み立てる

焼き上がったパンに切り込みを入れる

パンを開く。中の生地のキメは細かく、バターや卵、オレンジの影響で黄色っぽい

絞り袋に入れたクリームをパンに注入。クリームは生クリームにイタリア産マスカルポーネチーズを加えてつくる

マスカルポーネチーズは生クリームからつくるクリーム状のチーズ。濃厚なミルクの風味とコク、粘りのある舌ざわりにこだわり、イタリア北部ロンバルディア州で1900年に創業した乳製品メーカー「ザネッティ」社製を使用

ヘラでクリームの形を整える

アメリカンチェリーは半分に切って埋め込む

ニュージーランド産ゴールデンキウイは皮をむき、半分に切って埋め込み、周りをクリームで埋める

ニュージーランド産キウイは皮をむき、半分に切って埋め込み、周りをクリームで埋める

お召し上がり

マリトッツォ(プレーン)

◆濃厚なクリームをたっぷり味わう

マリトッツォの正面からハンバーガーのようにかぶりつくと、かじりとった上下のパンとクリームが、口のなかで絡みます。

クリームはしっかりした舌ざわりで、ミルクの風味がバターのように濃厚です。

パンはもっちりした弾力と、サラッとした噛みごたえで、香ばしさとオレンジの風味が、クリームのシンプルな味を引き立て、飽きのこない食べごたえがあります。

フルーツを入れたタイプは、フルーツのフレッシュな甘酸っぱさと、クリームのミルキーな甘さが引き立て合います。

マリトッツォ・アメリカンチェリー

マリトッツォ・キウイ

マリトッツォ・ゴールデンキウイ

マリトッツォ

梅雨の蒸し暑い夜は、

ラ・ビスボッチャの「フルーツフェア」で、

涼しさ感じてお楽しみください。