RECOMMENDED SEASONAL MENU OCTOBER 2021
コラム『味と技』第98回
食欲の秋に
10月は、過ごしやすい陽気が続き、芸術の秋、スポーツの秋、そして食欲の秋を満喫します。
ディナーのメニューも、そんな季節に美味しく感じる料理を11品加えて、おすすめします。
メニュー編集・調理/料理人・高部孝太
監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ
写真・文/ライター 織田城司
Menu editing・Cooking by Kouta Takabe
Supervised by Yuuki Inoue Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
⚫︎前菜
1.ブラータチーズと洋梨のサラダ
メニューについて
ブラータチーズのサラダで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
10月の1品目は、洋梨を合わせて、おすすめします。
お召し上がり
◆フルーティな香りで華やぐ
洋梨の果肉は、とろける柔らかさで、ブラータチーズとよくなじみます。
味わいは、はじめにブラータチーズのミルキーな甘みと、まろやかな旨みが現れ、次に洋梨からツーンと鼻に抜けてくる、花のような甘い果実香と、ほのかな酸味が続きます。
黒コショウのスパイシーな辛みで、ピリッと締まります。
2.ブラータチーズとプルーンのサラダ
メニューについて
ブラータチーズのサラダで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
10月の2品目は、プルーンを合わせて、おすすめします。
お召し上がり
◆果肉の食べごたえが心地よい
種を取り、カットしたプルーンは、ちょうどひとくちの大きさです。
果肉は柔らかく、繊維のほどよい噛みごたえが心地よく感じます。
しっとりした果汁の、爽やかな甘みと酸味を、ブラータチーズのミルキーな風味が引き立てます。
3.ブラータチーズとザクロのサラダ エスニック風味
メニューについて
ブラータチーズのサラダで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
10月の3品目は、ザクロを合わせて、おすすめします。
中東で生まれ、世界に広まったザクロ。
日本には、シルクロードを通じて平安時代に伝来したとされています。
中東に近い南イタリアのプーリア州では、ザクロとパセリを使った中東風サラダが見られます。
そんなサラダをイメージしながら、プーリア州のチーズ職人がアメリカでつくるブラータチーズを加え、ビスボッチャ流に仕上げました。
お召し上がり
◆エスニック・ミックスの新鮮な出会いを味わう
ザクロの赤い実は甘酸っぱく、中の白っぽい種は、ポリポリした歯ごたえがあります。
ザクロに合わせて小さくカットしたパセリやイタリアンパセリ、ルッコラ、コーンスプラウトなどは、シャキシャキした食感と、ほろ苦さが効いています。
麦の香ばしさと、ブラータチーズのミルキーな甘みがアクセントになります。
具材はどれも小さく、一種類づつ分けて食べるより、フォークでザクッとランダムにすくって味わいます。
口の中で混ぜ合わさる味と、スパイシーな香りに、東西のエスニック・ミックスを感じて、楽しみます。
4.ムール貝の白ワイン蒸し ブラックペッパー風味
メニューについて
カナダ産のムール貝は、身が大きく、美味しさがたっぷり味わえます。
もっとも身が大きくなる秋から冬の旬をとらえ、伝統的な白ワイン蒸しに、ブラックパッパーを効かせて、美味しさをシンプルに引き立てました。
調理
お召し上がり
◆繊細な旨みがじわじわ効いてくる
ムール貝の身のふくらんだ部分は柔らかく、繊細な甘みや旨みが広がります。
身のエッジの茶色い部分は、コリコリした食感で、コクがあります。
ひとつの貝の味は、やや淡白ですが、いくつか食べすすむうちに、美味しさがじわじわ効いてきます。
飽きない食べごたえに、パンと白ワインがすすみます。
5.ウナギとズッキーニのフライ
メニューについて
海と川に恵まれたイタリアでは、ウナギ料理も盛んです。
特にナポリで人気のメニューは、ウナギのフライです。
そんなメニューをイメージして、秋向けに、アツアツに揚げました。
蒲焼や白焼きとちがう、新たなウナギの美味しさを、ぜひご賞味ください。
調理
◆ウナギの下ごしらえ
◆ズッキーニの下ごしらえ
◆揚げる
お召し上がり
◆細かいパン粉できわだつ、ふわとろの旨み
ウナギのフライは、細かいパン粉、揚げ油、ウナギの脂が、ひとつの香ばしさの束になり、強く香ります。
フライを噛みしめると、衣はサクッと崩れ、中から出てくるウナギのふわとろの食感と、旨みがきわだちます。
ウナギがとろけた後、奥歯に残る細かいパン粉のポリポリした噛みごたえが、心地よい余韻です。
ズッキーニの青々しい風味が、さっぱりするコントラストです。
6.パルマ産生ハムと柿
メニューについて
生ハムは、自然の食材をシンプルに調理する、イタリア料理を象徴します。
つくり方は、豚のモモ肉に塩をすり込み、吊るして風にさらすだけです。
イタリア北部パルマに吹く、爽やかな風が、世界最高峰の生ハムをつくります。
その美味しさの評判は、古代ローマ帝国の時代から
知られていました。
そのままでも美味しく、フルーツと合わせても美味しくいただけます。
10月のフルーツは、柿をおすすめします。
お召し上がり
◆柿の甘みで引き立つ、新鮮な生ハムの味
スライスしたての生ハムは、しっとりと柔らかく、熟成香が食欲をそそります。
赤身の味わいは、まろやかな塩味のなかに、旨みとコクが奥深く広がります。
白い脂身は、とろとろの食感で、ほのかな甘みがあります。
柿のやさしい甘みは、生ハムにはない味わいで、引き立て合います。
7.カボチャのニョッキ ゴルゴンゾーラソース
メニューについて
年間定番のゴルゴンゾーラソースのニョッキの秋味です。
ふだんはジャガイモでつくるニョッキの生地に、旬のカボチャを加えて仕上げました。
調理
◆ニョッキをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆青カビでさえる、カボチャの甘み
出来上がったニョッキから、チーズが香ばしく香り、食欲をそそります。
ゴルゴンゾーラチーズは、生クリームやパルメザンチーズと溶け合うことで、青カビの辛みや塩味がマイルドになり、コクをほどよく残しながら、ニョッキを引き立てます。
ニョッキの歯ごたえは、もっちりしながら、弾力はやさしく、植物繊維の粒子のサラッとしたくちどけが心地よい。
カボチャで増したニョッキの甘みを、ソースのコクが引き立てます。
8.トンナレッリのポルチーニ入りカルボナーラ
メニューについて
秋に最盛期をむかえるイタリア産ポルチーニ茸。
その豊穣な旨みを、カルボナーラソースに加え、太くて四角い麺、トンナレッリでしっかり受け、たっぷり味わいます。
調理
◆トンナレッリを製麺する
◆ソースをつくる
◆仕上げる
お召し上がり
◆ポルチーニ茸で増す旨みとコク
味のベースはカルボナーラ。たっぷっりした卵と、グアンチャーレ、ペコリーノチーズが重なり、すでに旨みは濃厚です。
ポルチーニ茸が加わることで、さらに旨みとコクが増しています。
合わせるトンナレッリは、やや太く、卵黄がリッチで存在感があり、ソースの濃さとバランスを取ります。
秋だけの、迫力ある味わいを楽しみます。
9.白トリュフのタヤリン
メニューについて
トリュフのなかで、もっとも香りが高い白トリュフは、秋に最盛期をむかえます。
その芳香を、好相性の卵黄でつくる極細麺、タヤリンと、同じく相性がいいバターのソースで堪能します。
調理
お召し上がり
◆白トリュフの香りを、細い平麺で高める
白トリュフ香りは、トリュフの中でもっとも強く、かぐわしさが高く香ります。
森の中のさまざまな香り、木の幹や葉、土、などが凝縮しているようで、リラックス感があります。
タヤリンの細くて平たい形状は、しなやかで、バターソースに溶け込むようになじみ、白トリュフの香りを高めます。
生地に使われている卵黄も白トリュフと相性がよく、香りをシンプルに高めます。
10.牛フィレ肉の炭火焼き 白トリュフかけ
メニューについて
牛フィレ肉の旨みは、トリュフと相性抜群です。
香りの高い白トリュフと合わせるときは、ソースを使わず、塩コショウの炭火焼きのみで、シンプルに香りを堪能します。
調理
お召し上がり
◆白トリュフの香りを、肉汁で高める
牛フィレ肉の上に舞い落ちた白トリュフは、肉汁がしみて、細かい文様がみるみるうちに透き通っていきまます。
それとともに立ちのぼる白トリュフの香りは、肉汁についた炭火香と一体になります。炭は、森の木材からできているため、白トリュフとよく合い、香ばしさがきわだちます。
肉汁をメデイアにした白トリュフの香りは、牛フィレ肉の風味とリンクし、肉の旨みやコクを引き立てます。
牛フィレ肉と合わせた白トリュフの香りは、バターや卵と合わせた香りよりも野太い印象で、ニュアンスのちがいを楽しみます。
11.柿のタルト
メニューについて
タルトで味わう、旬の食材の歳時記シリーズです。
10月は、柿を合わせて、おすすめします。
お召し上がり
◆やさしい甘みにホッとする
種のない柿の果肉は、柔らかく、タルトのクリームとよくなじみます。
味わいは、やさしい甘みで、秋のディナーを、おだやかに締めくくります。
食欲の秋のディナーは、
ラ・ビスボッチャの、
季節のおすすめメニューで、お楽しみください。