キアニーナ牛フェア 2022

CHIANINA BEEF FAIR 2022

コラム『味と技』第118

イタリア最高峰の赤身肉であたたまる

イタリア最高峰のブランド牛「キアニーナ」を味わうフェアを11月28日(月)〜12月8日(木)まで開催します。キアニーナ牛を使った期間限定メニューが4品登場。この機会に、豊かな旨みをご堪能ください。

※期間中でもキアニーナ牛がなくなり次第フェアが終了することがありますので、あらかじめご了承ください。

監修/料理長・井上裕基

写真・文/ライター 織田城司
Supervised by Yuuki Inoue    
Photo・Text  by George Oda

1.キアニーナ牛とは

大きな白いキアニーナ牛 (イタリア サン・ジョッべ社公式写真より)

大きな白いキアニーナ牛 (イタリア サン・ジョッべ社公式写真より)

キアニーナ(Chianina)牛は、イタリアの牛の品種のひとつです。この牛が生息する、イタリア中部トスカーナ州のキアーナ渓谷(Val di Chiana)の地名が品種の名の由来です。

前史時代の岩窟壁画にも描かれている大きな白い牛で、体高は2m近くにもなる、世界最大の種類です。

古代ローマ時代から神聖なものとされ、神事のパレードには欠かせない存在です。

現在は、食用の牛肉として知られ、キアニーナ牛の表記は、欧州連合統一の地理的表示保護認証(IGP)の対象のひとつとして、厳しい規定のもとで管理されています。

◆肉質と味わい

肉質は筋肉質で、脂肪が少ない赤身肉ながら、柔らかく、肉汁がしっとりしています。

ほどよい噛みごたえで、サクサク切れる繊維が心地よく、甘みや旨み、コクが豊かに広がり、豪快かつ繊細な味わいです。

2.フィレンツェ名物

フィレンツェの街並み。中央はドゥオーモとジョットの鐘楼

フィレンツェ駅前の「トラットリア・ダル・オステ」。フィレンツェ風ビーフ・ステーキの看板を掲げる。肉の冷蔵庫をショーウインドーと兼用。右の棚がキアニーナ牛

キアーナ渓谷があるトスカーナ州の州都フィレンツェは、中世の頃より経済や文化の発展で栄えた都市です。

世界中から旅行客が来るイタリア屈指の観光地で、特産の牛肉がご当地グルメとして推奨され、「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(フィレンツェ風ビーフステーキ Bistecca alla Fiorentina)」名で親しまれています。

ビーフステーキ用の牛肉のなかでも、キアニーナ牛は最上級の肉として提供されています。

ちなみに、ビステッカというイタリア語は、フィレンツェを訪れる英国貴族が牛肉の炭火焼きを英語でビーフステーキと語るのを、イタリア人がよく聞き取れなくてできた、伊製英語だそうです。

3.フェアメニュー

キアニーナ牛を使ったフェアメニュー4品

①キアニーナ牛 Tボーンの炭火焼き

キアニーナ牛 Tボーンの炭火焼き

◆メニューについて

フィレンツェ風ビーフステーキを再現するシンプルな炭火焼きです。

キアニーナ牛のTボーンに、塩とコショウ、オリーブオイルで味と香りをつけて、炭火で焼きました。

◆部位の解説

国産牛の塊肉でTボーンとLボーンの部位を図解。Tボーンはサーロインとヒレ、2種の部位を含む

国産牛の塊肉でTボーンの断面を図解。Tの字の骨を挟んで2種の部位が付く

◆炭火で焼く

撮影調理 料理人・高部孝太

キアニーナ牛のTボーンのカットを用意する。美味しく焼くためには厚さが必要。指2本分以上が目安

バットの上で両面に塩、黒コショウ、オリーブオイルを振りかけて味と香りをつける

塩は、シチリア産を使用。昔ながらの塩田で、天日干しによる自然海塩の生産を続けるシチリア島トラパニの街で、ソサルト社が手がける「エガディ」ブランドの細粒。辛みはまろやかで、ミネラルの旨みが豊富

黒コショウは、世界最高峰の産地、カンボジアで日本人が手がける「クラタペッパー」社製を使用。柑橘系や木材系などのリラックス感ある香りが高く、爽やかな辛みがある

オリーブオイルは、イタリア南部の特産地、プーリア州の「ディサンティ」社製を使用。青々しい香りが豊かで、辛みはマイルド

炭はオガ炭を使用。製材するときにできるオガ屑を再利用し、圧縮して中空の棒状に固めて焼いた成形炭。特徴は、火付けがよく、火持ちがよく、灰が少なく、煙も少ない。形が一定しているから隙間なく積みやすい。国産木材のみを使う宮崎県の「ひむかのオガ炭」を使用

炭火焼きグリルの焼き網の上で、骨から焼く。骨に含まれる髄液が沸騰して肉に染み出し、コクを深める

トングで肉を固定し、脇の脂身を加熱する

側面Aを焼く

ひっくり返して側面Bを焼く

ひっくり返して側面Aを2度焼く。初回と焼き網の位置が重ならないように角度を変える

ひっくり返して側面Bを2度焼く。初回と焼き網の位置が重ならないように角度を変える

炭火から外して休ませる。熱々のまま肉を切ると、肉汁の流量が多く、旨みも流失する。このため、肉の温度を下げ、肉汁を赤身のなかに落ち着かせる

肉汁を落ち着かせた肉を、仕上げでさっと再加熱。側面Aの表面を直火で香ばしく、パリッと焼く

ひっくり返し、側面Bの表面も直火でさっと焼いて仕上げる

肉を骨から外し、切り分けて盛り付ける

◆お召し上がり

キアニーナ牛 Tボーンの炭火焼き

◆2種の部位の味くらべを楽しむ

炭火の直火で仕上げた、スモーキーな風味に、フィレンツェのステーキを思い出す豪快な迫力を感じます。

Tボーンのサーロインは、サシがほどよく入り、旨みや甘みがバランスよく広がります。

ヒレは、サシがほとんどなく、赤身中心で柔らかく、旨みが濃厚です。

2種の食べくらべをお楽しみください。

キアニーナ牛 Tボーンの炭火焼き

キアニーナ牛 Tボーンの炭火焼き

②キアニーナ牛 Lボーンの炭火焼き

キアニーナ牛 Lボーンの炭火焼き

◆メニューについて

キアニーナ牛Lボーンの炭火焼きです。骨付きで焼いてコクを深めます。Tボーンよりも大きく、赤身肉をたっぷり味わいたいときにおすすめです。

◆部位の解説

キアニーナ牛Lボーンの図解

◆炭火で焼く

炭火で焼く手順はTボーンと同じ

骨を焼き、沸騰した髄液が染み出している状態

炭火で焼き上げ、骨から外して切り分けた状態

◆お召し上がり

キアニーナ牛 Lボーンの炭火焼き

◆旨みをたっぷり堪能

ボリューム感のある赤身肉で、旨みをたっぷり堪能。

赤身の間に入る、バター色の脂分の甘みがアクセントになります。

キアニーナ牛 Lボーンの炭火焼き

キアニーナ牛 Lボーンの炭火焼き

③キアニーナ牛 ウチモモの炭火焼き

キアニーナ牛 ウチモモの炭火焼き

◆メニューについて

キアニーナ牛のモモの内側にある部位の肉を使った炭火焼きです。

運動量が多く、筋肉質で赤身が濃厚ながら、柔らかさも兼ね備えています。

◆部位の解説

キアニーナ牛のウチモモの塊肉

◆炭火で焼く

塊肉からカットしたウチモモを炭火で焼く。手順はTボーンと同じ

ウチモモを直火で焼いて仕上げている状態

◆お召し上がり

キアニーナ牛 ウチモモの炭火焼き

◆しっかりした旨み

ウチモモは柔らかく、赤身が濃く、牛肉の風味も濃厚です。

味わいは、旨みがしっかりして、コクやほろ苦さまで、奥深く広がります。

キアニーナ牛 ウチモモの炭火焼き

キアニーナ牛 ウチモモの炭火焼き

④キアニーナ牛 ラグーソースのパッパルデッレ

キアニーナ牛 ラグーソースのパッパルデッレ

◆メニューについて

キアニーナ牛の挽肉を煮込んでつくるラグーソースに、トスカーナ州発祥で、肉と相性がいい幅広麺、パッパルデッレを合わせたパスタ料理です。

◆ラグーソースをつくる

撮影調理 料理長・井上裕基

キアニーナ牛のモモをミンチマシーンで挽肉にする

ミンチマシーンのアタッチメントの穴は最大のものを使い、大きめの粗挽きにする。肉の食べごたえを楽しむ大きめの粗挽きがフィレンツェ風の特徴

フライパンにオリーブオイルを広げる

フライパンに挽肉を投入

挽肉を炒める。焦げつかないように、ときどきヘラで混ぜる

赤ワインを入れ、味と香りをつける

炒めた挽肉を鍋に移す

自家製鶏の出汁を加える

ニンニク、ローズマリー、セージをみじん切りにする

みじん切りにしたニンニク、ローズマリー、セージを鍋に入れ、香りをつける

チョコレートを鍋に入れ、味と香りをつけ、煮込んでラグーソースの出来上がり

チョコレートは、カカオの特産地コロンビアで1906年に創業した製菓用チョコレートのトップメーカー、カサルカ社のカカオ分61%のタイプを使用

◆仕上げる

パッパルデッレを茹でる。茹で時間は4分

パッパルデッレは自家製生パスタでつくる。生地は、全卵、卵黄、小麦粉、セモリナ粉、オリーブオイル、塩を混ぜてつくる

フライパンにラグーソースをいれ、バターを加えて味と香り、とろみをつける

茹で上がったパッパルデッレをソースのフライパンに投入

パッパルデッレをソースと和え、皿に盛り付けてから、パルミジャーノ・レッジャーノを振りかけて仕上げる

パルミジャーノ・レッジャーノは、1877年にイタリア北部エミリア・ロマーニャ州で1877年に創業した乳製品メーカーの老舗「アウリッキオ」社製。一年中干草のみを与えた牛の濃いミルクからつくるチーズは甘みと熟成感のバランスがよい。側面の認証刻印の2042のナンバリングはハイグレードの証。塊で仕入れ、自店で粉に挽く

◆お召し上がり

キアニーナ牛 ラグーソースのパッパルデッレ

◆まろやかな旨み

ラグーソースの挽肉はボロボロと大きく、弾力があり、噛みしめると牛肉の旨みを感じます。野菜やワインなどと煮込んでいるため、旨みはまろやかです。

パッパルデッレの卵と小麦の風味がアクセントになります。

キアニーナ牛 ラグーソースのパッパルデッレ

キアニーナ牛 ラグーソースのパッパルデッレ

4.メーカーズ・ディナーのお知らせ

キアニーナ牛とサン・ジョッべ社の牧場(イタリア サン・ジョッべ社公式写真より)

キアニーナ牛の仔牛とサン・ジョッべ社の牧場(イタリア サン・ジョッべ社公式写真より)

アグリコーラ・サン・ジョッべ社の当主が来店

ワインや食材の生産者さんをお招きして、ディナーに来店されるお客さまと交流していただくイベント「メーカーズ・ディナー」を「キアニーナ牛フェア」初日の11月28日(月)に開催します。

当日は、キアニーナ牛の繁殖、肥育、屠畜を一貫で生産管理する、イタリア・トスカーナ州の「アグリコーラ・サン・ジョッべ (AGRICOLA SAN GIOBBE ホームページ)」社の当主アンドレア・ブルグナーロ(ANDREA BRUGNARO)さんが来店されます。

日本の輸入代理店である(株)佐勇の社員が通訳しながら、お客さまのテーブルをご挨拶でまわり、キアニーナ牛の説明や、質疑応答、記念撮影などに応じます。

生産者さんと直接お話ができる貴重な機会を、ぜひご利用ください。

当日のメニューは通常営業と同じ、アラカルトです。

また、翌日の11月29日(火)は「いいにくの日」です。キアニーナ牛の最高峰の赤身肉を賞味する気分が、より盛り上がる日です。

さらに、白熱するサッカー・ワールドカップ・カタール大会(11/20〜12/18)の応援パワーチャージにもおすすめです。

忘年会シーズンは、ビスボッチャの「キアニーナ牛フェア」でお楽しみください。