第53回 SAGRA D’ AUTUNNO 2019
秋の旬をイタリアンで味わう
秋に美味しくなる食材を集めて、
10月21日(月)から11月2日(土)まで、「秋の味覚フェア」を開催します。
期間限定メニューが5品登場。
イタリアンの素朴な調理法で引き出された、深い味と香りに、
秋を感じてお楽しみください。
パスタを計量する副料理長・露詰まみ
解説/副料理長 露詰まみ
写真・文/ライター織田城司
Commentary by Mami Tsuyuzume
Photo & Text by George Oda
◆冷前菜
1.秋刀魚の燻製と焼きナスのサラダ仕立て
秋刀魚の燻製と焼きナスのサラダ仕立て
メニューについて
◆香ばしい秋刀魚のスモーク
イタリアでよく見られる燻製の調理法で秋刀魚をいただきます。
香ばしい香りが秋刀魚と好相性で、奥深い味を感じます。
秋刀魚の燻製と焼きナスのサラダ仕立て
調理
◆野菜の下ごしらえ
エンダイブを洗う
エンダイブは岡山県産
撮影を担当した料理人・高部孝太。エンダイブは手でちぎって細かくする
エンダイブを水切り器に入れ、手で回しながら水を切る
ナスを金網にのせ、直火で焼く
ナスは群馬県産
焼いたナスの皮をむく
ナスを食べやすい大きさに切る
ミニトマトを半分に切る
ミニトマトは長野県産
ミニトマトにブラウンシュガーと塩で味をつける
ミニトマトをオーブンで焼き、味を凝縮させる
◆秋刀魚の燻製をつくる
秋刀魚をさばき、頭や内臓、骨を取り除く
秋刀魚は北海道産
小骨を抜く
塩をふって下味をつけながら身をしめる
燻製に使う用具。鉄鍋にアルミホイールをのせ、砂糖をふりかけたスモークチップを加熱する。砂糖はスモークチップを均等に加熱しながら香りを強める効果がある
スモークチップは国産のサクラ材を使用
金網の上に香草をのせる。香草は秋刀魚が金網にくっつくのを防ぎ、香りをつける
秋刀魚を香草の上にのせる
ボウルでフタをしてスモークチップの煙りを充満させる
燻製が完了した秋刀魚を用具ごと氷水で冷やす
燻製が完了した秋刀魚。燻製の煙と熱で赤茶の色がつく
燻製した秋刀魚は、味を落ち着かせるため、冷蔵庫で24時間保存する
盛り付ける直前に冷蔵庫から取り出した秋刀魚をバーナーで炙り、香りを強め、脂分を柔らかくする
食べやすい大きさに切る
◆仕上げる
秋刀魚と野菜を盛り付け、自家製レモンドレッシングをふりかける
お召し上がり
秋刀魚の燻製と焼きナスのサラダ仕立て
◆重なり合う香ばしさと苦味
燻製の香りがついた秋刀魚は、魚の臭いがほとんどなくなり、落ち着いた味わいです。
香ばしさが秋刀魚の旨みや苦みとよく合い、素材が持つ味の広がりと奥深さを感じます。
秋刀魚の燻製と焼きナスのサラダ仕立て
ナスは、直火で炙っただけなのに旨みが凝縮して、シンプルなイタリア料理の醍醐味を感じます。
トロトロの食感に、香ばしい余韻が残り、秋刀魚の燻製と調和します。
秋刀魚の燻製と焼きナスのサラダ仕立て
フィレンツェの街並み
◆温前菜
2.キノコのフリッタータ
キノコのフリッタータ
メニューについて
◆秋の森が薫る
フリッタータはイタリア式のオムレツで、フライパンで平たく焼くのが特徴です。
ポルチーニタケ、ジロールタケ、トランペットタケなど、
ヨーロッパの香り高いキノコをトッピングしました。
キノコのフリッタータ
調理
◆キノコの下ごしらえ
撮影を担当した料理人・井上慎也。フリッタータにのせるキノコを食べやすい大きさにカットする
トランペットタケはフランス中部ソローニュ産
ジロールタケはフランス中部ソローニュ産
ポルチーニタケはイタリア北部ピエモンテ州産
◆キノコを炒める
ジロールタケとポルチーニタケを先に炒める
薄いトランペットタケは時間差をつけて後から炒める
◆フリッタータをつくる
卵2個をフォークでかきまぜる
卵は神奈川県産「長寿卵」を使用。イタリアの卵に似て黄身がオレンジ色で味と香りが濃厚
卵に塩とパルメザンチーズを加え、味と風味をつける
熱したフライパンに無塩バターを敷く
溶き卵を入れる
溶き卵の中心部をかき混ぜて加熱する
外側からも加熱する
焼いた卵に炒めたキノコをのせ、フライパンごとオーブンで約1分ほど加熱。キノコの香りを強め、卵の上部に火を通す
加熱が完了したフライパンをオーブンから取り出す
◆仕上げる
削りたての黒コショウふりかける
お召し上がり
キノコのフリッタータ
◆香ばしさの競演
炒めたキノコの香りが、アツアツの卵で増します。
ヨーロッパのキノコ特有の香ばしくてコクのある香りです。
キノコのフリッタータ
ゴロッと散らばるキノコは、個々の存在がよく見え、3種の味のちがいを比べて楽しむことができます。
旨みや苦み、コクのバラエティーは、飽きることがありません。
キノコのフリッタータ
フィレンツェの街並み
◆パスタ
3.カボチャとリコッタチーズのカッペレッティ
カボチャとリコッタチーズのカッペレッティ
メニューについて
◆手詰めのやわらかパスタ
カッペレッティは「小さな帽子」という意味の詰め物パスタです。
カボチャのペーストを詰め、クリーミーなゴルゴンゾーラチーズのソースで和えました。
カボチャとリコッタチーズのカッペレッティ
調理
◆カボチャの下ごしらえ
カボチャのヘタを取り除く
カボチャは千葉県産
カボチャを半分に切るため、切り込みを入れる
カボチャを180度回転させる
カボチャの反対側に切り込みを入れる
包丁を叩きながらカボチャを半分に切る
半分に切ったカボチャの中身を確認する
カボチャの種をくり抜く
カボチャを柔らかくするためオーブンで加熱。その前にアルミホイールで包む
カボチャをオーブンに入れて加熱する
オーブンから取り出したカボチャのアルミホイールを外す
カボチャの皮を取り除く
カボチャの果肉をフルイで裏ごしする
裏ごししたカボチャをボウルに移す
◆カボチャとリコッタチーズのペーストをつくる
裏ごししたカボチャにリコッタチーズを加える
リコッタチーズはイタリア北部エミリア・ロマーニャ州産
塩を加える
パルメザンチーズを加える
削りたての黒コショウを加える
材料を混ぜ合わせる
出来上がったカボチャのペーストを絞り袋に移す
◆カッペレッティの生地をつくる
カッペロッティの生地の材料、卵や小麦粉、デュラム・セモリナ粉、オリーブオイル、塩などを業務用大型ミキサーで混ぜ合わせる。卵は卵黄のみを増量し、味と香りを濃くする
混ぜ合わせた生地をビニール袋に入れ、30分ほど休ませてなじませる
生地をパスタマシーンで伸ばすため、輪切りにする
パスタマシーンの中で回転する2本の棒に生地をはさみ、圧力を加えながら伸ばしていく
生地を伸ばしながら練りを加えることで、ムラなく均一な生地感に仕上げていく
生地の厚さを確認。カッペレッティの生地は0.9㎜が目安
◆生地でペーストを包む
生地に正方形の目安をつけ、余分な生地は取り除く
生地を正方形に切り分ける
生地の真ん中にペーストを絞り出す
生地を対角線上に折り、重ねた口を指で密着させる
三角形を二つに折り、2つの頂点を重ね、指で密着させる
ひとつずつ手づくりでペーストを詰める
セモリナ粉をふりかけ、くっつき防止の打ち粉にする
◆カッペレッティをゆでる
カッペレッティを計量する
茹で麺機に岩塩を入れ、カッペレッティに下味をつける
茹で麺機にカッペレッティを投入
カッペレッティが茹で上がるのを待つ
茹で時間は4分
◆ゴルゴンゾーラソースをつくる
フライパンに生クリームを入れる
塩を加え、味をつける
生クリームを煮詰める
フライパンに広がった生クリームをヘラで集める
ゴルゴンゾーラチーズを切り取り、フライパンの生クリームに加える
ゴルゴンゾーラチーズはイタリア北部ロンバルディア州産
生クリームに加えたゴルゴンゾーラチーズ
生クリームとゴルゴンゾーラチーズをヘラで混ぜてソースの出来上がり
◆仕上げる
茹で上がったカッペレッティをソースのフライパンに投入
フライパンを加熱しながらカッペレッティとソースを和える
パルメザンチーズを入れ、風味やトロみを加える
パルメザンチーズを全体に混ぜ合わせる
皿に盛り付ける
お召し上がり
カボチャとリコッタチーズのカッペレッティ
◆クリーミーでまろやか
肌寒くなったと感じる季節にうれしい、じんわりとあたたかい喉ごしです。
カボチャと乳製品のクリーミーでまろやかな味わいが、あたたかみを引き立てます。
カボチャとリコッタチーズのカッペレッティ
正方形の生地を使ったカッペレッティは、帽子のツバのような部分が広く、噛みごたえがあります。
生地が重なった部分のモッチリとした弾力と、まん中のとろける柔らかさのコントラストを楽しみます。
カボチャとリコッタチーズのカッペレッティ
フィレンツェの街並み
◆肉料理
4.フィレンツェ産ハトのロースト
フィレンツェ産ハトのロースト
メニューについて
◆ジビエの野性味をじっくり味わう
ヨーロッパで野生のハト猟が解禁になるシーズンに合わせ、
ハトのローストを濃厚な赤ワインソースでいただきます。
フィレンツェ産ハトのロースト
調理
◆付け合わせのトレヴィスを準備する
撮影を担当した料理人・老田裕樹。トレヴィスを4分の1に切る
塩をふって下味をつける
ピュアオリーブオイルをふりかける
トレヴィスをグリルプレートで網焼きにする
トレヴィスを反転させ、反対側も加熱する
◆ハトの下ごしらえ
ハトをさばき、頭や内臓、骨を取り除く
塩をふって下味をつける
◆ハトを焼く
フライパンにピュアオリーブオイルを敷く
トングでハトの肉の表面に焼き色をつける
フライパンに香草とバターを投入
溶けたバターをスプーンでハトにふりかけて加熱
ハトの肉は柔らかいため、上から何度もバターをかけ、低温でじわじわ焼く
時間差をつけて小麦粉をまぶしたハトの内臓を投入。加熱した後、ソースの味付けに使う
ハトの内臓もバターで加熱
表面に火が通ったハトの肉と内臓
ハトの肉をアルミホイールで包み、オーブンで加熱
◆赤ワインソースをつくる
赤ワインソースに使うワインは2種使い、味と香りに広がりを持たせる
ワインを強火で沸騰させる
ワインに自然と火がつく。火が消えたらアルコール分が飛んだ目安
無塩バターと自家製仔牛のダシ汁を凝縮したペーストを加える
アルミホイールに残ったハトの肉汁を加える
自家製鶏のダシ汁を加える
加熱したハトの内臓をみじん切りにして加える
煮詰めてソースの出来上がり
◆仕上げる
ハトの肉を食べやい大きさに切る
ハトの肉とトレヴィスを盛り付け、赤ワインソースをふりかける
お召し上がり
フィレンツェ産ハトのロースト
◆コク深く、ほろ苦い
ハトの肉質はキメが細かく、柔らかくて繊細な舌ざわりです。
味わいはコクが深く、ほろ苦さがあります。
フィレンツェ産ハトのロースト
冷めると味が落ち着いて、丸みが出てきます。
ワインと一緒に、じっくり楽しみたい味わいです。
フィレンツェ産ハトのロースト
おすすめのワイン
赤ワイン「ランゲ・ロッソ シラー “ハリス”」
スパイシーな香りの辛口赤ワイン
銘柄/ランゲ・ロッソ シラー “ハリス” ワイナリー/ジッラルディ 社
生産地/イタリア北部ピエモンテ州
ぶどう種/シラー100%
生産年/2014年
香りは、フレッシュなブラックベリーやブルーベリーなどの果実に、コーヒーやヴァニラ、コショウなどのスパイシーなニュアンスが加わります。
味わいは、果実味が凝縮した辛口で、複雑味があり、口あたりはエレガントで、長い余韻があります。
スパイシーな香りの辛口がハトの野性味とバランスをとります。
赤ワイン「ランゲ・ロッソ シラー “ハリス”」と「フィレンツェ産ハトのロースト」
フィレンツェの街並み
◆デザート
5.キノコ形シュークリーム
キノコ形シュークリーム
メニューについて
◆秋を感じるデザート
キノコの形をした、秋らしいシュークリームです。
クリームにヘーゼルナッツのペーストを加え、香ばしく仕上げます。
キノコ形シュークリーム
調理
◆シュークリームの生地をつくる
撮影を担当した料理人・村澤大。鍋で無塩バターと牛乳を温める
薄力粉を加える
加熱しながら材料を混ぜ合わせる
鍋底に薄く膜がはるまで練る
混ぜ合わせたバターと薄力粉に卵を加え、ミキサーで混ぜる
途中で生地の粘性を確認し、溶き卵を追加しながら微調整を繰り返す
ヘラから落ちる生地が逆三角形になるのが粘性の目安
◆シュークリームの生地を焼く
オーブン角皿にクッキングシートを敷き、絞り袋に入れた生地を絞り出す
キノコの傘と柄(え)の形を作るため、絞り袋の先につける金具のを大きさを変える
焼き上がりの光沢を出すため、溶き卵を塗る
オーブンで加熱する
◆ヘーゼルナッツのクリームをつくる
自家製カスタードクリームに泡だてた生クリームとヘーゼルナッツのペーストを加える
ヘーゼルナッツのペーストはイタリア製
材料を混ぜ合わせてヘーゼルナッツのクリームの出来上がり
出来上がったヘーゼルナッツのクリーム
◆仕上げる
焼きあがったシュークリームの傘の部分の底にジョウゴで穴を開ける
傘の部分にヘーゼルナッツクリームを注入する
柄の(え)の部分を縦に2分割する
分割した柄(え)の上にヘーゼルナッツクリームを絞り出す
分割した片方でクリームをはさむ
傘の底の穴に柄(え)を差し込み、キノコの形をつくる
お召し上がり
キノコ形シュークリーム
◆しあわせのクリーム
クリームは、キノコの傘の中だけに入っていると思いきや、
柄(え)の中にも入っているサプライズに、至福を感じます。
キノコ形シュークリーム
キノコの形と、ヘーゼルナッツの香ばしさが、
秋のディナーの思い出に残ります。
キノコ形シュークリーム
深まる秋は、
ビスボッチャの「秋の味覚フェア」でお楽しみください。