春の彩りフェア

SPRING COLOR FAIR

コラム『味と技』第85回

春色あふれる食卓

厳しい寒さをのりこえ、命が芽吹く季節をむかえたことを喜び、春の花のようなカラフルな料理を集め、旬の食材でつくる「春の彩りフェア」を3月22日(月)〜4月4日(日)まで開催します。

期間限定メニューが10品登場。色と味わいに春を感じてお楽しみください。

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ

写真・文/ライター 織田城司 
Supervised・Cooking  by Yuuki Inoue  Mami Tsuyuzume
Photo・Text  by George Oda

⚫︎前菜

1.イチゴと春野菜のサラダ 卵のロザス添え

イチゴと春野菜のサラダ 卵のロザス添え

メニューについて

◆黄色で華やぐサラダ

卵はそのまま食べても美味しいし、さまざまな食材と合わせても美味しくいただけます。

そこで、卵の黄身にマヨネーズを混ぜてソースをつくり、ロザスで盛り付け、サラダに添えます。

ロザスはフランス語でバラ模様のことで、料理用語ではバラに見立てた絞り飾りになります。

調理

メニュー提案・撮影用調理 料理人・江川智香

◆イチゴと春野菜の下ごしらえ

イチゴのヘタを切り取り、実を半分にカットする

イチゴは甘みが強い栃木県産の「とちおとめ」を使用

ラディッキオ・タルディーヴォの葉をはがす

ラッディッキオ・タルディーヴォは、イタリア北部の特産地、ヴェネト州トレヴィーゾ県産を使用。冬から春にかけてが旬になる

ラディッキオ・タルディーヴォの葉を食べやすい大きさにカットし、水につける

グリーンアスパラガスは炭火で焼く

グリーンアスパラガスは佐賀県産を使用

炭火で焼いたグリーンアスパラガスは、遠赤外線効果で、茎のなかの水分が加熱され、甘みや旨みが凝縮。表面の焼き色が香ばしさを加える

炭火で焼いたグリーンアスパラガスは、かたい根本を切り落とし、食べやすいように半分にカットする

◆卵のロザスに使う自家製マヨネーズをつくる

マヨネーズは新鮮な風味と味の深みこだわり、自家製でつくる。ボウルで卵黄とマスタード、塩、コショウを混ぜ合わせる

オリーブオイルを混ぜながら泡立て、自家製マヨネーズの完成

◆卵のロザスをつくる

卵を鍋で茹でる

茹でた卵の殻をボウルの水のなかでむく

卵は神奈川県産の「長寿卵」。卵黄がオレンジ色で味に深みとコクがあり、イタリアの卵の質に似ていることから使用

茹でた卵を半分にカットする

卵黄をボウルに集める

卵黄をスプーンで広げ、パウダー状にする

卵黄に自家製マヨネーズを混ぜ、ロザスの生地にする

ロザスの生地を絞り、卵白の上に飾る。春野菜とともに盛り付け、自家製ドレッシング(赤ワイン酢、エキストラヴァージン・オリーブオイル、塩)をふりかけて仕上げる

お召し上がり

イチゴと春野菜のサラダ 卵のロザス添え

◆濃厚な卵の旨み

卵の黄色を散りばめたサラダは、ミモザや菜の花など、春の花を思わせる華やぎがあります。

卵のロザスは、マヨネーズを媒体に黄身の粒子が凝縮して、しっかりと自立し、まったりとした舌ざわりです。

イチゴと春野菜のサラダ 卵のロザス添え

卵のロザスの味は、卵の風味や旨みが濃厚で、マヨネーズにふくまれるマスタードや塩が効いて、深みとコクが増しています。

サラダのイチゴの甘酸っぱさやラディッキオ・タルディーヴォのさっぱりとした青々しさ、グリーンアスパラガスの炭火香など、多彩な味のバラエティーが、卵のロザスの美味しさを引き立てます。

イチゴと春野菜のサラダ 卵のロザス添え

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎パスタ

2.白魚とカラスミのスパゲッティ

白魚とカラスミのスパゲッティ

メニューについて

◆白魚のはかなさに思う春

春の2〜4月が盛漁期をむかえる白魚をスパゲッティで味わいます。

白魚の繊細な美味しさを生かすため、味つけは最小限にして、あっさりした塩味で仕上げます。

調理

メニュー提案・撮影用調理 副料理長・露詰まみ

◆スパゲッティを茹でる

スパゲッティはイタリア南部の乾麺の特産地、カンパニア州で1912年に創業した「ディ・マルティーノ」社製を使用。イタリア産小麦を100%使い、低温で長時間乾燥させた麺は小麦の風味が濃厚。直径は1.8㎜。太めで食べごたえがある

茹で麺機でスパゲッティを茹でる。茹で時間8分

◆ソースをつくる

フライパンにオリーブオイルを敷き、ニンニクのみじん切りと赤トウガラシを入れてから加熱し、味と香りをつける

自家製魚のダシ汁を入れる

パスタの茹で汁を入れる

魚醤を入れ、味と香りをつける

魚醤は南イタリアのチェターラ産を使用。魚醤の起源は古代ギリシャからローマに伝来したとされる。いまはイタリア南部カンパニア州のアマルフィ海岸にあるチェターラという町が特産地として伝統を継承。「チェターラ産の魚醤」という名で親しまれている

白魚を入れる

白魚は宮城県産を使用。新鮮なものほど透き通る

ソースを煮詰める。白魚は加熱するとすぐに崩れるため、ヘラを使わずにサッと煮る

出来上がったソース

◆仕上げる

茹で上がったスパゲッティをソースのフライパンに投入

スパゲッティとソースを和える

カラスミのパウダー、イタリアンパセリのみじん切り、エキストラヴァージン・オリーブオイルを入れ、味と香りをつける

カラスミは、ボラの卵巣を塩漬けにして干したもの。イタリア南部の特産地、サルディーニャ島産を使用

食材を混ぜ合わせる

皿に盛り付ける

再度カラスミパウダーとイタリアンパセリのみじん切りを振りかけて仕上げる

お召し上がり

白魚とカラスミのスパゲッティ

◆あっさり塩味のスパゲッティ

白魚は、あと数秒火を入れたら崩れるタイミングで仕上がっています。

スパゲッティとともに口に運ぶまでは、かろうじて白魚の姿を保っているけれど、口のなかに入れるとサラッととろけます。

白魚の身は、骨を感じることなく、柔らかく、かすかな旨みと塩味があります。

白魚とカラスミのスパゲッティ

カラスミの塩味とコクが味を引き締めますが、全体的にはあっさりとした塩味です。

そんな味のソースがスパゲッティにたっぷりしみています。

軽やかな後味に、春らしさを感じてお楽しみください。

白魚とカラスミのスパゲッティ

ラ・ビスボッチャ店内

3.ホタルイカとタケノコのリングイーネ

ホタルイカとタケノコのリングイーネ

メニューについて

◆小粒で柔らかいホタルイカの魅力をパスタで

3月〜5月に最漁期むかえるホタルイカの、小粒で柔らかい魅力をパスタで味わいます。

柔らかいタケノコや、コシのある平麺、リングイーネを合わせ、まろやかな味にまとめます。

調理

メニュー提案・撮影用調理 副料理長・露詰まみ

◆リングイーネを茹でる

リングイーネはイタリア中部アブルッツォ州で1886年に創業した老舗「ディ・チェコ」社製を使用

リングイーネを茹で麺機に入れて茹でる。茹で時間10分

◆ソースをつくる

フライパンにオリーブオイルを敷き、ニンニクのみじん切りと赤トウガラシを入れてから加熱し、味と香りをつける

アンチョビペーストを入れ、ゴムベラで広げながらオイルになじませ、ダシにする

下茹でし、かたい目をピンセットで取り除いたホタルイカを投入

ホタルイカは国産を使用

ホタルイカを加熱しながら胴を押し、ワタから出てくる旨みやコクをダシとして加える

白ワインを入れ、味と香りを加える

自家製魚のダシ汁を入れる

自家製イカとアンチョビのダシ汁を入れる

自家製トマトソースを加える

煮詰める

イタリアンパセリのみじん切りと、下茹でしたタケノコのスライスを入れてソースの出来上がり

◆仕上げる

茹で上がったリングイーネとソースを和える

イタリアンパセリのみじん切りと、エキストラ・ヴァージンオリーブオイルを入れ、味と香りをつける

皿に盛り付けてから、再度イタリアンパセリのみじん切りをふりかけて仕上げる

お召し上がり

ホタルイカとタケノコのリングイーネ

◆まろやかなコク

ホタルイカの柔らかい身の甘みや、ワタのコクが味のメインになります。

ソースも濃厚な魚介味を合わせ、ホタルイカの味を一段と豊かにします。

ホタルイカとタケノコのリングイーネ

ホタルイカはコクがありながら、小粒ゆえに、豪快なシーフードパスタほどの迫力は出ませんが、やさしい味のタケノコを合わせ、あえて引き算をすることで、まろやかなコクに仕上げ、そこに春らしさを感じます。

合わせるリングイーネのコシは、太すぎず、細すぎず、絶妙のバランスです。

ホタルイカとタケノコのリングイーネ

おすすめのワイン

白ワイン「ヴェッキョ・ヴィーニェ」

フルーティな辛口白ワイン

銘柄/「ヴェッキョ・ヴィーニェ」ヴェルディキオ・ディ・カステッリ・ディ・イエージ・クラッシコ・スペリオーレ
ワイナリー/ウマニ・ロンキ
生産地/イタリア中部マルケ州
ぶどう種/ヴェルディキオ100%

フルーティな香りが濃厚で、ブーケのニュアンスに華やぎがあります。

味わいはフレッシュな酸味と、心地よいほろ苦さがある辛口です。

ホタルイカのパスタのまろやかなコクを、爽やかに引き立てます。

「ホタルイカとタケノコのリングイーネ」に白ワイン「ヴェッキョ・ヴィーニェ」を合わせて

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎リゾット

4.ビーツのリゾット 溶かしチーズかけ カリフラワーのフライのせ

ビーツのリゾット 溶かしチーズかけ カリフラワーのフライのせ

メニューについて

◆インパクトあるピンクのリゾット

定番のパルメザンチーズのリゾットに、赤い根菜、ビーツを加え、春らしい鮮やかな色のリゾットをつくります。

溶かしチーズやカリフラワーのフライをトッピングして、味のアクセントを加えます。

調理

メニュー提案・撮影用調理 料理人・上田諒

◆溶かしチーズをつくる

カットしたチーズを薄力粉にまぶす

溶かしチーズに使うチーズは、イタリア北部でイタリア版チーズフォンデュに使うフォンティーナ・チーズを使用。加熱すると香ばしい香りが出て、クリーミーでなめらかな食感になる

ボウルで牛乳と卵黄を混ぜ合わせる

ボウルにチーズを入れる

ボウルを湯煎にかけ、チーズを溶かしてトッピングの液にする

◆カリフラワーを揚げる

下茹でしたカリフラワーに卵をつける

カリフラワーは千葉県産を使用

カリフラワーを、自家製パンからつくるパン粉の細粒にまぶす

フライヤーでカリフラワーを揚げる

ときどき向きを変える

パン粉の香ばしさと、カリフラワーの柔らかい食感が残るうちに揚げ油から上げる。その間わずか数十秒

軽く塩を振って味をつける

キッチンペーパーで余分な油を吸収し、カラッと仕上げる

◆リゾットをつくる

イタリアのリゾット米を自家製鶏のダシ汁で炊く

リゾットに使う米はイタリア米。イタリア最大の米どころピエモンテ州ヴェルチェッリ県で1935年からリゾット用の米をつくり続ける「ロンドリーノ」社のブランド米「アクエレッロ」を使用

自家製鶏のダシ汁は、鶏がらやひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間煮込んでつくる

ビーツからつくるペーストを入れる

ビーツは地中海原産の根菜。断面に赤い年輪のような模様がある。近年は日本国内でも栽培されるようになった。今回はアメリカ産を使用

ビーツを入れて炊き込みながら、米に味と風味、色をつける

ビーツを追加し、無塩バターを入れ、風味ととろみをつける

パルメザンチーズを加え、味と香り、とろみをつける

パルメザンチーズを混ぜ合わせて、水分をとばしながらとろみを調節する

◆仕上げる

溶かしチーズをジグザグにふりかけ、カリフラワーのフライをのせて仕上げる

お召し上がり

ビーツのリゾット 溶かしチーズかけ カリフラワーのフライのせ

◆ほっこりとした根菜の風味

桃の節句やイースターなど、春祭りではさまざまなピンクが登場し、お正月の赤とちがう印象で、春らしさを彩ります。

そんな彩りを思わせるビーツのリゾットは、赤に近い濃いピンク。根菜の色素ゆえに、ローズピンクのように、どこか自然を感じるニュアンスがあり、食欲をそそります。

ビーツのリゾット 溶かしチーズかけ カリフラワーのフライのせ

リゾットを口にふくむと、ほっこりとした根菜の風味が広がります。

トッピングの溶かしチーズの濃厚な旨み、サクサクとしたフライの衣の香ばしさ、ホクホクとしたカリフラワーの甘みが、アクセントになります。

ビーツのリゾット 溶かしチーズかけ カリフラワーのフライのせ

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎メイン

5.マダイとハマグリ、春野菜のホイル包み焼き

マダイとハマグリ、春野菜のホイル包み焼き

メニューについて

◆魚料理の春

年間を通じて展開している、鮮魚のホイル包み焼き。

今年の春は、マダイに春野菜を合わせ、レモンと白ワインを中心に、爽やかで、さっぱりとした味つけでおとどけします。

調理

メニュー提案・撮影用調理 料理人・村澤大

◆マダイの下ごしらえ

下処理したマダイの皮に、加熱の反りを防ぐ切り込みを入れる

マダイは九州・玄界灘産を一匹仕入れ、自店でさばく。端材は自家製魚のダシ汁に利用する

塩を振って下味をつける

◆ホイルに材料を入れる

ホイルの箱にマダイを入れる

ハマグリを入れる

ハマグリは千葉県産を使用

下処理した春野菜(カルチョーフィ、ホワイトアスパラガス、ソラ豆)を入れる

カルチョーフィはイタリア産を使用

ホワイトアスパラガスはフランス・ロワール地方産を使用

ソラ豆は鹿児島県産を使用

白ワインを入れる

自家製魚のダシ汁を入れる

エキストラヴァージン・オリーブオイルを入れる

レモンを絞って入れる

◆ホイルで包み、オーブンで焼く

箱の下に敷いたホイルを前に半分に折って箱を包む

ホイルの接合部を丸め込んで密封する

加熱で膨張する水蒸気のスペースを広げておく

4辺を密封してオーブンで20分加熱

◆お客さまのテーブルでホイルを開く

加熱したホイル焼きを皿に盛り、お客さまのテーブルに運び、ナイフで開封する

十字に開封したホイルを手で広げて完成

お召し上がり

マダイとハマグリ、春野菜のホイル包み焼き

◆ダイナミックなマダイの迫力と繊細なスープ

開封したホイルから、春野菜やエキストラヴァージン・オリーブオイルなど、グリーン系の香りがフワッと広がり、春らしさを感じます。

マダイは身がしっかりして、フォークで持ち上げると、ボソッととれる量がソラ豆よりも大きく、厚みに迫力があり、食べごたえがあります。

白い身は、スープがしみて、弾力ある歯ごたえのなかに、まろやかな旨みを感じます。

マダイとハマグリ、春野菜のホイル包み焼き

スープは、半透明のグレーベージュで、天井のライトをキラキラと反射しています。

味は魚介のエキスをベースに、春野菜の甘みが混ざり、あっさりしながら深い味わいがあります。

食べすすむにつれて、スープの底に、マダイとソラ豆から欠け落ちた、米粒ほどの小片が見えてきます。

これをスプーンでスープとともにすくい、一緒に飲むと、あっさりしたスープのなかに、小さなマダイの旨みとソラ豆の甘みが広がり、もうひとつの味わいを楽しみます。

マダイとハマグリ、春野菜のホイル包み焼き

ラ・ビスボッチャ店内

6.仔羊の香草パン粉焼き マデラソース

仔羊の香草パン粉焼き マデラソース

メニューについて

◆仔羊を新鮮に味わうグリーンカツレツ

炭火で焼くことが多い仔羊を、衣をつけてカラッと焼きます。

パン粉は春の草原をイメージして、香草をたっぷり入れます。

マデラソースの甘酸っぱさがアクセントになります。

調理

メニュー提案・撮影用調理 料理人・横田達也

◆仔羊の肉の下ごしらえ

仔羊は羊の特産地、オーストラリア産。柔らかくてコクがある骨付きロースの部位を使用

塊肉から切り分けた肉の脂肪や筋を取り除く

肉に保存用袋をかぶせ、ミートハンマーで叩いて広げる

塩コショウで下味をつける

 

◆マデラソースをつくる

フライパンにマデラ酒を入れ、加熱する

マデラ酒はポルトガルでつくられる酒精強化ワイン。ポルトガルで15世紀からワイン用のブドウの産地になったマデラ島で1850年に創業した「エンリケシュ&エンリケシュ」社の赤ワインを使用。スモーキーなフレーバーと、ほのかなキャラメルの味、繊細な酸味が特徴のフルボディタイプの甘口。食後のデザートワインに最適で、ソースにも使われる

加熱してアルコール分をとばす。マデラ酒はワインよりもアルコール度数が高く、19度あり、火がつく

自家製鶏のダシ汁を入れ、水分と旨みを加える

自家製仔牛のブイヨンと無塩バターを入れ、味と香りをつけ、煮詰めてソースにする

◆仔羊の肉に衣をつける

肉に薄力粉をつける

卵をつける

香草パン粉をつける

香草パン粉に使う食材。左からローズマリー、イタリア産ペコリーノ・ロマーノチーズ、自家製パン粉の細粒、イタリアンパセリ、スペイン産ニンニク、タイム

◆仔羊の肉を焼く

フライパンにオリーブオイルを多めに入れる

無塩バターを入れ、風味を加える

衣をつけた肉を投入

肉にオイルをまわしがけしながら、低温でじっくり加熱していく

骨の付け根はフライパンとの接地面がなく、火が通りにくいため、まわしがけで加熱する

肉を反転させ、反対側もまわしがけで加熱

焼き上がった肉の衣の余分な油をキッチンペーパーで上下から吸収し、マデラソースとともに盛り付けて完成

お召し上がり

仔羊の香草パン粉焼き マデラソース

◆香草が引き立てる若々しい旨み

焼き上がったカツレツの衣は、パン粉や香草、チーズなど、さまざまな食材が加熱された香ばしさが混ざり、食欲をそそります。

衣は肉にしっかりつき、カリカリとした食感がありながら薄く、自家製パン粉の細かい粒子が、絶妙のバランスで効いています。

仔羊の香草パン粉焼き マデラソース

仔羊の肉は、衣のおかげで、火が通りすぎずに柔らかく、若々しい旨みがきわだちます。衣の香草が、肉の風味を爽やかに包みます。

甘酸っぱいマデラソースの甘さは、マデラ酒の材料、ブドウが醸し出す自然の甘さで、肉や香草、ワインによく合います。

春らしい、軽やかな肉料理をお楽しみください。

仔羊の香草パン粉焼き マデラソース

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎季節の付け合わせ

7.スイスチャードのガーリック炒め

スイスチャードのガーリック炒め

メニューについて

◆鮮やかさを春の付け合わせに

スイスチャードの和名は「不断草(フダンソウ)」。一年中食べられることが名称の由来です。

色の鮮やかさから、春の付け合わせにおすすめします。

茹でると色が抜ける性質があるため、シンプルにニンニクを使って炒めます。

調理

メニュー提案・撮影用調理 料理人・江川智香

フライパンにオリーブオイルを敷き、ニンニクのみじん切りと赤トウガラシを入れてから加熱し、味と香りをつける

スイスチャードを食べやすい大きさに切って投入

スイスチャードは地中海沿岸が原産で、ホウレン草と同じアカザ課の野菜でカラフルな葉軸をもつ。近年は鮮やかな色から注目され、国内の栽培も増えている。今回は千葉県産を使用

オイルを満遍なくつけて炒める

フタを落し、蒸しを加え、加熱を促進する。盛り付けてから黒コショウをふりかけて仕上げる

お召し上がり

スイスチャードのガーリック炒め

◆とろける葉、シャキシャキとした葉軸

炒めたスイスチャードの葉は、とろとろに柔らかくなり、ガーリックオイルで甘みが増しています。

葉軸は、シャキシャキとした食感が残り、2種の味わいでメインの料理を引き立てます。

スイスチャードのガーリック炒め

ラ・ビスボッチャ店内

8.ソラ豆の温製サラダ

ソラ豆の温製サラダ

メニューについて

◆ソラ豆をイタリアらしい味つけで

春先から初夏にかけて旬になるソラ豆を、イタリアらしく、香りを高めた味つけでいただきます。

茹でたソラ豆をオリーブオイルやバルサミコ酢で和え、ペコリーノ・ロマーノチーズを薄くスライスしてふりかけます。

ソラ豆は鹿児島県産を使用

お召し上がり

ソラ豆の温製サラダ

◆カリンとしたソラ豆

ソラ豆はカリンと小気味よい食感が残る絶妙の茹で加減で、爽やかな風味や香ばしさ、甘みを豊かに感じます。

茹でたソラ豆のアツアツの熱が、和えたオイルや酢、チーズの香りを高め、イタリアらしい熟成された香りの共演を楽しみます。

メインの料理の付け合わせはもちろんですが、メインを待つ間の、ワインのちょっとした肴としてもおすすめです。

ソラ豆の温製サラダ

ラ・ビスボッチャ店内

9.リンゴのサラダ

リンゴのサラダ

メニューについて

◆春らしいリンゴのアクセント

オーソドックスなイタリアン・ドレッシング(エキストラヴァージン・オリーブオイル、赤ワイン酢、塩)を合わせるグリーンサラダ(ルッコラ、サニーレタス、グリーンカール、ラディッキョ)に、冬から春が旬になるリンゴを加えてアクセントにします。

リンゴのスライスをオーブンで加熱したチップスをトッピングして、リンゴの香りを増します。

サラダに使うリンゴは、日本最大の生産地、青森県の「紅玉(こうぎょく)」種を使用。果肉が緻密で、加熱しても形崩れしにくい。太陽の光をうけて養分をつくる葉を取らずに栽培するため、リンゴの表面に色ムラができ、一般の店頭には出ないが、味はギュッと凝縮している

お召し上がり

リンゴのサラダ

◆さっぱり爽やかな味わい

グリーンサラダにリンゴが加わることで、見た目が華やぎます。

リンゴのシャリシャリとした食感と甘酸っぱさで爽やかさが増した味わいは、さっぱりとして、メインの料理の付け合わせによく合います。

リンゴのサラダ

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎ドルチェ

10.「はるか」とキャラメルナッツのセミフレッド

「はるか」とキャラメルナッツのセミフレッド

メニューについて

◆春の陽気に合う涼感

「セミフレッド」はイタリア語で「半分冷たい」という意味です。

ドルチェの一般的な例は、クリームとスポンジを組み合わせたケーキを冷凍し、クリームの部分だけをアイスクリームにして冷たくする方法です。

今回のドルチェは、ナッツが入ったクリームに、「はるか」という柑橘類の果肉をのせて冷凍します。

あたたかい陽気に合う、爽やかな涼感です。

調理

メニュー提案・撮影用調理 料理人・水谷結

◆キャラメルナッツをつくる

ナッツをオーブンでロースト。香ばしさを増しながらカリッと仕上げる

キャラメルナッツに使うアーモンドはイタリア南部シチリア島産を使用

クルミはアメリカ産を使用

ピスタチオはイタリア南部シチリア島産を使用

鍋底で砂糖水を加熱し、キャラメルシロップをつくる

鍋にナッツを入れ、キャラメルシロップと和える

キャラメルシロップを固めるために冷やす

キャラメルナッツをミキサーで細かく砕く

ミキサーから取り出したキャラメルナッツのフレーク。大粒のものは包丁でみじん切りにして完成

◆クリームをつくる

卵黄をミキサーで混ぜる

118℃まで上げたシロップを入れ、甘みをつける

ゼラチンを入れ、クリームにかたさを加える

ゼラチンは、板ゼラチンを湯煎で溶かし、アマレット酒で香りをつけながらジェル状にする

アマレット酒は、イタリア北部ロンバルディア州で、ミラノから20kmほど北にあるサローノの町で1525年に創業した「ディサローノ」社製を使用。アンズの種からつくるリキュールで、杏仁やアーモンドの香り、エレガントな甘みが特徴。カクテルや製菓によく使われる

食材を混ぜ合わせる

ミキサーで混ぜ合わせたクリームをボウルに取り出す

あらかじめ用意した、生クリームを泡立てたクリームをボウルに加える

2種のクリームを混ぜ合わせる

キャラメルナッツを混ぜ合わせ、クリームの完成

◆セミフレッドを組み立てる

「はるか」の皮をむき、なかの薄皮をむき、果肉を取り出す

「はるか」は「日向夏(ひゅうがなつ)」の自然交雑種として1996年に品種登録された柑橘類。果皮は黄色で、果肉はとろりとして、さっぱりとした甘さがあり、酸味は低め。2〜3月にかけて成熟する春の味覚。生産量日本一の愛媛県産を使用

「はるか」の果肉を製菓用トレイに敷き詰める

キャラメルナッツ入りクリームを重ねる

ラップで封をして冷凍庫で凍らせて完成。盛り付けは天地を逆転し、「はるか」が上になるようトレイから取り出す

お召し上がり

「はるか」とキャラメルナッツのセミフレッド

◆ナッツがザクザク

冷凍したセミフレッドは、淡い黄色と白を基調に、やさしく繊細な表情です。

フォークで食べやすい大きさに切ろうとすると、かたさに驚きます。

それは、材料が凍っているだけではななく、白いクリームのなかのナッツが城壁のようにぎっしり詰まり、土台がしっかりしているからです。

「はるか」とキャラメルナッツのセミフレッド

クリームのなかのナッツは、一粒のなかに、アーモンドやクルミ、ピスタチオの断片が、キャラメルシロップの香ばしい甘みとともに混在しています。ザクザク食べすすむと、ミックスしたナッツ味の存在感に圧倒されます。

その上から落ちてくる「はるか」の果肉は、クリームとちがう食感で、シャーベットのようにシャリシャリしています。ナッツと好対照の爽やかな甘みがあり、その仕掛けに贅沢な余韻を感じます。

「はるか」とキャラメルナッツのセミフレッド

大切な人とむかえる春は、

ラ・ビスボッチャの

「春の彩りフェア」でお楽しみください。