わかやまフェア

WAKAYAMA PREFECTURE FAIR

コラム『味と技』第83回

寒さをのりきる滋味

厳しい寒さが続くときは、風邪をひかないように、滋味豊かなお肉や、ビタミンたっぷりの果物が食べたくなります。

そこで、ジビエ肉や果物の特産地、和歌山県の旬菜を集めた「わかやまフェア」を2月16日(火)から2月28日(日)まで開催します。

期間限定メニューが7品登場。寒さをのりきる活力をたくわえましょう。

サラダの下ごしらえをする副料理長・露詰まみ

メニュー編集・調理 副料理長・露詰まみ

監修・調理/料理長・井上裕基

写真・文/ライター 織田城司
Menu editing・Cooking by Mami Tsuyuzume
Supervised・Cooking  by Yuuki Inoue 
Photo・Text  by George Oda

副料理長ごあいさつ

フェアで使用する和歌山県産の柑橘類

イタリアンで再発見する和歌山の香り

私が生まれ育った和歌山県は、温暖な気候と雄大な自然を背景に、海や山の幸に恵まれた美食の国です。

でも、学生時代はその魅力に気がつかず、料理人を目ざした頃は大都会に憧れ、大阪や東京で修行を積みました。

やがて、はじめてイタリアを訪ねたとき、価値観が変わりました。イタリア人が、郷土の料理や食材を大切にしていたからです。その土地にしかない、オンリーワンの味の魅力を誇りに思う心が、尊いことに気がつきました。

なおかつ、私が現地で出会ったイタリア人は、日本の文化や和食に敬意を抱いていました。そんなイタリア人から、日本の郷土料理のことを質問されても、答えられない自分が恥ずかしいと思いました。

それ以来、和歌山県の特産物を調べ、ビスボッチャの料理に取り入れるようになりました。

今回の「わかやまフェア」の魅力は、香りです。和歌山県の食材の香りを、料理のアクセントとして効果的に使っています。

近年、イタリアのシェフが、日本の食材の香りを隠し味に使う例も増えてきました。そんなミックス感をイメージして、イタリアンを新鮮にする「エキゾチックわかやま」の香りを、お楽しみください。

2021年 早春

副料理長 露詰まみ

1.マグロのカルパッチョ 醤油ドレッシング

マグロのカルパッチョ 醤油ドレッシング

メニューについて

◆手間をかけたマグロ漁の美味

和歌山県の新鮮なマグロの刺身を使って、カルパッチョをつくります。

イタリアン・ドレッシングに和歌山県の醤油を加え、味と香りを広げて合わせます。

調理

 ◆食材

マグロは、和歌山県の那智勝浦港で水揚げされたメバチマグロの背中の部位を使用

⚫︎わかやまのマグロの由来

和歌山県の那智勝浦漁港は、延縄漁(はえなわりょう)によるマグロの水揚げ日本一を誇ります。

延縄漁は、長い1本の縄から多数の枝縄を垂らし、その先につけた釣り針でマグロを釣り上げる方法です。

網を使った漁穫よりも手間がかかりますが、網を使った漁獲に見られる急な水圧の変化による身の損傷がほとんどなく、鮮度の良い状態でマグロを漁獲します。

こうして水揚げされたマグロは、繊維のキメが細かく、モチモチの食感があり、マグロ本来の旨みが満喫できます。

付け合わせに使う紅芯大根

付け合わせに使うマイクロ・ハーブス紫蘇のグリーンとパープル

◆醤油ドレッシングをつくる

醤油は和歌山県産の「三ツ星醤油」を使用。伝統製法による自然の味と香りにこだわり、木桶による天然醸造を続ける。大豆を煮て醤油を炊き上げる工程も薪を使い、伝統を忠実に再現

⚫︎わかやまの醤油の由来

鎌倉時代、宗で修行した禅僧、覚心が、現地でおぼえた金山寺味噌の製法を日本に持ち帰り、和歌山県の湯浅で人々に伝えました。その工程から出る液の美味しさが偶然発見され、醤油の元になったという説があります。

江戸時代になると、紀州藩は湯浅の醤油づくりを地域の産業として推進。全盛期は92軒の醤油蔵が建ち並び、日本有数の産地として知られるようになりました。雄大な自然がもたらす上質な水も醤油づくりを支えました。

今もその名残りから、和歌山県には多くの醤油メーカーがあり、多彩な味を提供しています。

「三ツ星醤油」をボウルに注ぐ

バルサミコ酢を加える

バルサミコ酢は、イタリア北部エミリア=ロマーニャ州の酢の特産地、モデナで1871年に創業した老舗「レオナルディ」社製を使用。

エキストラヴァージン・オリーブオイルを加える

エキストラヴァージン・オリーブオイルはイタリア南部の特産地、プーリア州にある「ディサンティ」社製を使用。青々しい香りが豊かに香る

材料を混ぜ合わせて醤油ドレッシングの出来上がり

お召し上がり

マグロのカルパッチョ 醤油ドレッシング

◆マグロ本来の旨みを堪能

厚切りのマグロは、鮮やかなワインカラーのグラデーションが美しく、迫力があります。

まずは、何もつけないマグロを味わうと、モチモチの歯ごたえで、マグロ本来の旨みをしっかり感じます。

マグロのカルパッチョ 醤油ドレッシング

醤油ドレッシングは、甘辛い味わいです。バルサミコ酢のふくよかな甘みと、醤油のマイルドな塩味がバランス良く合わさり、醸造香や樽香など、両者に共通する香りが増幅しています。

日本とイタリアの調味料がうまく合い、新鮮な味と香りを醸し出しているところに、面白さを感じます。

付け合わせの紅芯大根のコリコリとした食感と青々しい風味や、紫蘇の爽やかな香りが、さっぱりとしたアクセントになり、マグロや醤油ドレッシングを引き立てます。

マグロのカルパッチョ 醤油ドレッシング

ラ・ビスボッチャ店内

2.不知火とケールのサラダ

不知火とケールのサラダ

メニューについて

◆果汁たっぷりのサラダ

柑橘類をたっぷりいただくサラダをつくります。

果汁がジューシーな和歌山県産の不知火(しらぬい)に、ケールを合わせます。

ケールは、青汁が有名ですが、そのケールとは別のサラダケールという品種を使います。

葉が薄くて柔らかく、生食しても苦みやエグ味が少なく、不知火とよく合います。

パルメザンチーズとアーモンドのスライスを振りかけ、アクセントを加えます。

調理

不知火の皮をむいて中身を取り出す

不知火は和歌山県産を使用。もとは熊本県生まれで、清見オレンジとポンカンを交配して生まれた品種で、熊本産はデコポンというブランドで流通されることが多い

⚫︎わかやまの果実の由来

和歌山県は、みかんと梅の収穫量が全国一の果実王国です。

穏やかな日差しに、年間を通じて温暖な気候があり、清らかな川の流れと、豊富な雨量の水系に恵まれています。

こうした自然に加え、山間部における朝夕の寒暖差が果実に適度な刺激を与え、美味しい果実をつくります。

ケールを食べやすい大きさにちぎり、表面の土砂を水で洗い落とす

ケールは静岡県産のサラダケールを使用

ケールをボウルに取り出し、自家製レモンドレッシング(レモンのしぼり汁、エキストラヴァージン・オリーブオイル、塩を混ぜてつくる)で味と香りをつける

不知火を加える

自家製レモンドレッシングと混ぜ合わせる

ローストして香ばしさを増したアーモンドスライスとパルメザンチーズの薄切りを振りかけて仕上げる

お召し上がり

不知火とケールのサラダ

◆ジューシーな甘みが爽やか

完熟した不知火の果肉は、果汁がたっぷり入っています。

噛みしめると飛び出す果汁は、柑橘系のフルーティな香りが高く、甘みは強いけれど、酸味は少なく、爽やかな印象です。

不知火とケールのサラダ

サラダケールの見た目は、ボリューム感があるけれど、ちりめん状の葉ゆえに、ほとんど空間で、噛みしめると思ったよりも薄く、柔らかく、青々しい風味をほのかに感じます。軽めの印象は、不知火とよく合います。

アーモンドスライスの香ばしさや、パルメザンチーズの旨みがアクセントになります。

不知火とケールのサラダ

ラ・ビスボッチャ店内

3.ナチグロの魚介ソース

ナチグロの魚介ソース

メニューについて

◆魚介いっぱいの黒いパスタ

イタリア南部の代表的な手打ちショートパスタ、ストラッシナーティは、引きずるという意味のイタリア語が変化した言葉で、生地を台にこすりつけるようにして凹みとザラザラした面をつくります。

このパスタを、紀伊半島特産の那智黒石をイメージに、イカ墨を練り込んでつくった黒いパスタが、ビスボッチャ・オリジナルの「ナチグロ」です。

具材とソースは、魚介をたくさん使い、海の幸に恵まれた和歌山県や、イタリア南部のイメージを重ねます。

調理

◆ナチグロを製麺する

生パスタでつくる生地を練る。生地はイカ墨と全卵、強力粉、セモリナ粉、エキストラヴァージン・オリーブオイルを混ぜてつくる

生地を切り出し、棒状に伸ばす

棒状に伸ばした生地を短くカットし、まな板の上で引きずりながらナチグロの形をつくる

◆ソースをつくる

具材に使う魚介類。左からアサリ(愛知県産)、ハマグリ(千葉県産)、天使のエビ(ニューカレドニア産)、トコブシ(韓国産)、水ダコ(北海道産)。天使のエビはフェア期間中、足赤エビ(和歌山県産)に変更予定

フライパンにオリーブオイルを敷き、エビの甲羅を下にして炒め、ニンニクのみじん切りと赤トウガラシを入れ、味と香りを加える

カットしたミニトマト、加熱した水ダコとトコブシの切身、自家製トマトソースを加える

自家製トマトソースは、イタリア南部のトマトの特産地、カンパニア州で1954年に創業した缶詰と瓶詰の食品メーカー「ラ・ドリア」社のホールトマトを、エキストラヴァージン・オリーブオイルで炒めたタマネギのみじん切りと煮込んでつくる。ホールトマトに使用する縦長のサンマルツァーノ種は、柔らかく、果肉が厚く、程よい酸味があり、加熱すると旨みが引き立ち、トマトソースに適する

ハマグリとアサリを入れ、自家製野菜のダシ汁を加える

自家製野菜のダシ汁は、ニンジンやセロリ、タマネギ、ズッキーニ、エリンギ、イタリアンパセリの茎などを約6時間煮込んでつくる

フタをして具材を蒸し焼きにする

蒸し焼きにした具材に、イタリアンパセリのみじん切りとエキストヴァージン・オリーブオイルを振りかけ、味と香りをつける

ソースとパスタを和えるため、具材を取り除く

◆仕上げる

茹で汁に岩塩を入れ、味をつける

ナチグロを茹で麺機に入れ、4分間茹でる。

茹で上がったナチグロをソースと和える

ナチグロとソースを盛り付ける

具材をトッピングして出来上がり

お召し上がり

ナチグロの魚介ソース

◆濃厚でコクのある魚介ソース

パスタの皿から、魚介の香ばしい香りが漂います。

一種類だけでもいいダシがとれる魚介がたくさん集まり、それぞれの身から出たエキスが凝縮したソースは、濃厚でコクがあります。

ナチグロは、凹みやザラザラした部分に濃厚なソースがしっかりからみ、歯ごたえはモッチリとして、練り込んだイカ墨の風味を程よく感じます。

ナチグロの魚介ソース

大きな吸盤のインパクトで目を引くタコのぶつ切りは、弾力のある歯ごたえのなかに、旨みをたっぷり感じます。

海に幸のバリエーションを堪能しながら、とろとろのミニトマトの甘みや酸味が、爽やかなアクセントになります。

ナチグロの魚介ソース

ラ・ビスボッチャ店内

4.イノシシの骨付きロースの炭火焼き

イノシシの骨付きロースの炭火焼き

メニューについて

◆炭火できわだつ野性味

山の幸に恵まれた和歌山県は、ジビエ肉の特産地でもあります。

新鮮なイノシシの骨付きロースを取り寄せ、シンプルに炭火で焼き、野性味を引き立てます。

骨付きで焼くのは、骨から染み出す髄液が肉のコクを増すからです。

その美味しさを古代から知っていたのは、狩猟を糧とし、イノシシの炭火焼きを常食としていた縄文人です。

ビスボッチャの近くにも「豊沢貝塚」という縄文遺跡があり、縄文人の足跡を間近に感じます。

そんな時代の祖先に思いをめぐらせながら、野性味の追体験を楽しみます。

調理

◆イノシシをマリネする

イノシシの骨付きロースの塊肉。和歌山県のジビエの解体施設「ひなたの杜」製

⚫︎わかやまのジビエ由来

和歌山県には、日本の原風景ともいえる里山が数多く存在していました。

しかし、近年は里山の住民が減少し、人の手が入らなくなった山は荒れ、餌に困った野生動物が人里に降り、農作物の被害が深刻化しました。

そこで、和歌山県は、捕獲するイノシシやシカの命を無駄にしないために、「わかやまジビエ」をブランディングするプロジュエクトを立ち上げ、ジビエ肉の処理設備の整備をはじめました。

そのひとつ「ひなたの杜」は、山間部の面積の多い田辺市にあり、野生のイノシシやシカが多く、捕獲されるとすぐに解体し、臭みやクセが少ない肉を供給しています。

イノシシの骨付きロースの塊肉から、一人前を切り出す

今回撮影に使用したイノシシの骨付きロースの切り身は250g

塩コショウで下味をつける

イノシシの骨付きロースをオリーブオイルに浸け、ニンニクとローズマリーで香りをつけ、2日間マリネし、肉を柔らかくしながら臭みをとる

◆炭火で焼く

炭火焼きグリルの焼き網の上で、イノシシの骨付きロースを焼く。滴り落ちた肉汁が炭火で燃え、立ち登る煙が燻製効果になって肉に香りをつける

炭は火持がよく、灰が少ないオガ炭の「五香備長炭」を使用

反対側からも焼く

側面の脂身も焼く

焼き足りない脂身に炭を近づけて焼く

焼き上がったイノシシ肉を骨から外す

イノシシのロースを食べやすい大きさにカットして盛り付ける

お召し上がり

イノシシの骨付きロースの炭火焼き

◆コクまろの旨み

焼き上がったイノシシのロースの断面は淡いピンク色。ぼたん肉と呼ばれた従来のイノシシ肉よりうすく、それだけ新鮮で、処理も素早く、塾達していることを感じます。

獣の臭みはほとんどなく、肉汁はしっとりして、噛みしめると、まろやかな旨みを感じ、噛むほどにコクが出てきます。

イノシシの骨付きロースの炭火焼き

琥珀色の脂身は、甘みと旨みをしっかりと感じます。

カリカリに焼けた茶色い表面は、塩コショウのスパイシーな味わいに、炭火香やマリネの風味を感じます。

イノシシの骨付きロースの炭火焼き

ラ・ビスボッチャ店内

5.イノシシの梅煮込み

イノシシの梅煮込み

メニューについて

◆梅がほぐすイノシシのやさしい味わい

冬に美味しく感じる、肉の煮込み料理。

その調理法は千差万別で、多彩な美味しさが広がります。

今回のフェアでは、和歌山県産のイノシシ肉を梅で煮込み、やさしく繊細な味に仕上げます。

調理

◆イノシシの下ごしらえ

和歌山県産のイノシシ肉の肩ロースとバラ肉を食べやすい大きさにカットし、塩コショウで下味をつける

フライパンにオリーブオイルを敷き、イノシシ肉の表面に焼き色をつける

反対側からも焼き色をつけ、旨みを封じ込める

焼き色をつけたイノシシ肉をバットに取り出す

◆イノシシをマリネする

香味野菜をフードプロセッサーでみじん切りにし、赤ワインで味と香りをつける

香味野菜は国産のニンジン、タマネギ、セロリを使用

香味野菜をバットに入れる

和歌山県産の蜂蜜梅干しの種をとる

蜂蜜梅干しは、梅の生産量日本一の和歌山県のなかでも、最高級品種として名高い「南高梅」を使用。果実は大粒で、皮は薄く、果肉は厚く柔らかく、蜂蜜に漬け込んだ甘口の梅干し

フードプロセッサーで蜂蜜梅干しを香味野菜とみじん切りにする

梅酢を入れ、味と香りをつける

梅酢は、柑橘類を仕入れている和歌山県の農家、野久保さんに別注したもの。梅と塩のみでつくり、無地のペットボトルに手作り感がある

赤ワインを加え味と香りをつける

梅干しと香味野菜をバットに入れる

ラップでフタをして冷蔵庫で2日間マリネする

◆煮込む

マリネしたイノシシ肉を鍋に入れ、赤ワインを加える

自家製鶏のダシ汁を加える

自家製鶏のダシ汁は、鶏がらやひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間煮込んでつくる

◆仕上げる

煮込みを仕上げる直前に、香りをつける材料を混ぜ合わせる

香りをつける材料は、左からチョコレート(コロンビア産)、山椒(和歌山県産)、ローズマリー(国産)、ニンニク(スペイン産)をみじん切りにしたもの

一人前のイノシシ肉を煮汁から取り出し、皿に盛る

煮汁を煮詰めたソースに梅酢で味と香りをつけ、肉と一緒に盛り付ける

お召し上がり

イノシシの梅煮込み

◆爽やかな香りでほどける肉

煮汁でつくったソースは、フルーティな香りがまろやかに漂い、爽やかな印象。味わいは、イノシシの肉から出た旨みを繊細に感じます。

和歌山県産の梅や山椒を赤ワインと調和させ、果実を中心にした味つけの効果が出ています。

イノシシの梅煮込み

煮込んだイノシシの肉は、柔らかくなり、ホロホロとほどけ、旨みとコクをまろやかに感じます。

脂身のプルプルとした食感の甘みがアクセントになり、フルーティな煮汁とともに、滋味が豊かに広がります。

イノシシの梅煮込み

おすすめのワイン

赤ワイン「バローロ」

エレガントな辛口赤ワイン

銘柄/バローロ
ワイナリー/エラルド・ヴィベルティ
生産地/イタリア北部ピエモンテ州
ぶどう種/ネッビオーロ100%
生産年/2006年

色は、輝きのあるガーネットレッド。香りは、煮詰めたフランボワーズやカシス、スミレやローズ、ローストナッツやカカオなどのニュアンスが豊かに広がります。

味わいは、タンニンがとてもきれいで、しなやかな飲み口。エレガントで凝縮感のある辛口です。ヴィンテージを重ね、深みが増し、飲みごたえがあります。

梅や赤ワインで煮込んだイノシシ肉の旨みを、相乗効果で引き立てます。

イノシシの梅煮込みに赤ワイン「バローロ」を合わせて

ラ・ビスボッチャ店内

6.ジャバイオーネ

ジャバイオーネ

メニューについて

◆イタリアの伝統菓子に和歌山の味をつけて

イタリア北部ピエモンテ州の郷土菓子、ザバイオーネは、卵黄に砂糖を混ぜて泡立て、マルサラ酒で香りをつけた、イタリアらしいシンプルなお菓子です。

そんなザバイオーネに、和歌山県が発祥の柑橘類、ジャバラで味と香りを加え、ビスボッチャ独自の造語「ジャバイオーネ」で呼ぶお菓子です。

調理

ジャバラを濃縮した液を卵黄に加え、味と香りをつける

ジャバラは、和歌山県発祥の柑橘類で、目の覚めるような強い酸味と、ほろ苦さがある

マルサラ酒を入れ、味と香りを加える

マルサラ酒は、シチリア生まれの酒精強化ワイン。防腐のためにアルコールを加えたワインで、アルコール度数は18度。オークの樽で24ヶ月熟成し、木材系とブドウの香りが高く、甘さと酸味が強く、食前酒や食後酒として飲まれる。シチリアで1880年に創業したぺッレグリーノ社の甘口を使用

砂糖を加える

材料を湯煎で加熱しながら混ぜ合わせる

細かい泡ができて、ふっくらとしたら出来上がり。ビスケットを添えて盛り付ける

お召し上がり

ジャバイオーネ

◆ふわとろに香る華やぎ

ふわとろのジャバイオーネは、程よい甘さがあり、さまざまな香りに華やぎを感じます。

ジャバラのフルーティな香りは爽やかで、酸味とほろ苦さを加えています。

ジャバイオーネ

マルサラ酒は、ティラミスの味つけにも使うお酒で、深い熟成香が、大人らしい印象を加えています。

合わせたビスケットは、サクサクとした食感と、小麦粉の香ばしさがアクセントになります。

ジャバイオーネ

ラ・ビスボッチャ店内

7.金柑のタルト 山椒かけ

金柑のタルト 山椒かけ

メニューについて

◆タルトを和のスパイスで味わう

自家製のパイとクリームでつくるタルトに、季節のフルーツをトッピングして味わう歳時記のシリーズ。

今回のフェアでは、和歌山県産の金柑をトッピングして、同じく和歌山県産の山椒をスパイスに振りかけ、洋菓子と和のスパイスのマリアージュを楽しみます。

調理

◆トッピングの金柑の下ごしらえ

金柑の皮に切り込みを入れる

金柑は和歌山県産を使用。金柑は江戸時代に中国から伝来し、寒さに弱い関係で生産地のほとんどが西日本になっている

砂糖を入れた水で金柑を煮込み、味をつける

冷ました金柑を半分にカットする

金柑の種を取り除く

◆タルトを組み立てる

自家製タルト生地の底に、溶かしたチョコレートを敷く

自家製カスタードクリームと生クリームを混ぜたクリームを重ねる

自家製スポンジ生地を重ねる

再度、自家製カスタードクリームと生クリームを混ぜたクリームを重ねる

金柑を砂糖で煮てつくったジャムを重ねる

タルトのエッジにトッピングの金柑を飾る

トッピングの金柑の上に山椒を振りかけて仕上げる

振りかける山椒は、乾燥させた山椒の果皮を包丁でみじん切りにしたもの。果皮を粉末にした山椒よりも、切りたての方が香りが高い

⚫︎わかやまの山椒の由来

山椒は、ミカン科サンショウ属の植物で、若葉や果皮が香辛料として使われます。鰻の蒲焼きなどにかける山椒の粉末は、山椒の実の果皮を粉末にしたものです。

山椒のなかでも、ぶどう山椒と呼ばれる品種は粒が大きく、香りも豊かです。ミカンの収穫量日本一の和歌山県は、ミカン科の山椒の生育にも適し、ぶどう山椒発祥の地といわれ、その収穫量は日本全国一で、70%を占めます。

山椒は、日本のスパイスとしてヨーロッパから注目され、フランスやベルギーなどに輸出され、一流のレストランで製菓や料理に使われています。

山椒の果皮は、和歌山県有田川町産の大粒のぶどう山椒を使用

お召し上がり

金柑のタルト山椒かけ

◆山椒のピリッとした余韻

金柑は柔らかく、爽やかな香りと甘酸っぱさはマイルドで、クリームとよく馴染みます。

柑橘類と相性抜群なチョコレートが、クリームの下から現れるサプライズにうれしくなります。

金柑のタルト山椒かけ

振りかけられた山椒は、果皮をカットしているので、粉末よりも粒が大きく、存在感があり、爽やかな香りが高く、金柑を引き立てます。

舌にピリッとくる山椒の辛みにインパクトがあり、和歌山の香りの余韻になります。

金柑のタルト山椒かけ

2月のディナーは、

「ラ・ビスボッチャ」の、

滋味豊かな「わかやまフェア」で、お楽しみください。