イタリアンBBQフェア 2019

第49回 ITALIAN BBQ FAIR 2019

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

真夏のパワーアップに

真夏に食べたいスタミナ料理を集め、

8月13日(火)〜8月27日(火)までフェアを開催します。

料理の下ごしらえをする料理長・井上裕基(左)と副料理長・露詰まみ

解説/料理長 井上裕基・副料理長 露詰まみ

写真・文・エッセイ/ライター 織田城司
Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text ・Essay  by George Oda

イタリアンBBQ

フィレンツェの街並み

◆イタリア流のバーベキュー

イタリア人はバーベキューが大好きです。

調味料は塩、コショウ、オリーブオイル、香草のみです。

自然の味覚に生きる喜びを感じて楽しみます。

古代から続くイタリア料理の原点です。

ビスボッチャのグリル

イタリアのレストランでもバーベキュー、いわゆる炭火焼き料理をメインにするお店が多く見られます。

特に、牛肉や豚肉の産地に近いフィレンツェでは、炭火焼き料理が名物になっています。

フィレンツェの郷土料理店をイメージするビスボッチャでは、本場の炭火焼きを再現しながら豊富なメニューをそろえています。

真夏の季節は、期間限定メニューを加え、食べる楽しさを増します。

◆ビスボッチャのグリルの火種

炭は火持ちが長く灰が少ないオガ炭の「五香備長炭」を使用

ガスコンロで着火した炭をグリルに移す

着火した炭は炉を形づくり、空気を通しながら燃焼を広げていく

着火した炭はグリルの底辺に広げ、薪を加えて香ばしさを増す

薪は果実香が豊かな桜の木を使用

薪の炎は直接食材に触れないように配置する

フィレンツェの街並み

定番の炭火焼きメニュー

手長海老の炭火焼き

手長海老の炭火焼き

本日の鮮魚の炭火焼き

本日の鮮魚の炭火焼き(カジキマグロの例)

骨付き牛ロースの炭火焼き

骨付き牛ロースの炭火焼き

牛リブロース、ルーコラ パルメザンチーズ添え

牛リブロース、ルーコラ パルメザンチーズ添え

牛フィレ肉の炭火焼き

牛フィレ肉の炭火焼き

骨付き松坂ポークの炭火焼き

骨付き松坂ポークの炭火焼き

自家製ソーセージの炭火焼き

自家製ソーセージの炭火焼き

仔羊の炭火焼き

仔羊の炭火焼き

フィレンツェの街並み

期間限定の炭火焼きメニュー

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

◆焼き野菜を堪能

野菜は炭火でじっくり焼くと味が凝縮して、サラダや煮物とは一味ちがう美味しさがあります。

とろけるチーズを添え、夏らしく豪快な前菜を楽しみます。

ビスボッチャの入口に置いた季節の野菜。左からポルチーニ茸(伊)、ズッキーニ・トロンベッタ(伊)、パプリカ(伊)、ウイキョウ(伊)、フルーツトマト(日)、米ナス(日)

トミーノチーズは半軟質の白カビチーズ。あたためるとトロリととろけ、イタリアではパンにつけたり、バーベキューで野菜につけて親しまれている。今回使用するのはイタリア北部ピエモンテ州のルイジ・グッファンティ社製

◆焼くタイミングが勝負

食べやすい大きさにカットした野菜に塩とオリーブオイルで下味をつける

食材により時間差をつけてグリルの網にのせる。すぐ火が通るポルチーニ茸とトミーノチーズは最初から焼かない

野菜を反転させた時点でポルチーニ茸を焼きはじめる

ポルチーニ茸を反転させた時点でトミーノチーズを焼きはじめる。チーズがトロける寸前にすべて焼き上げる

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

◆トロけるやわらかさに味が凝縮

炭火で芯から加熱された野菜はトロけるやわらかさがあります。

野菜の余分な水分が落ち、味が凝縮され、甘酸っぱさや旨みが増しています。

表面の焼き色に感じる香ばしさと苦みがアクセントになっています。

トミーノチーズはマイルドな味で、どのような野菜にも合います。

野菜は少し冷めても味が落ち着いて、美味しくいただけます。

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

季節の野菜とトミーノチーズの炭火焼き

フィレンツェの街並み

仔羊の炭火焼き

仔羊の串焼き

◆イタリアの伝統的な串焼き

イタリアのバーベキューには、串焼きもあります。

なかでも人気があるのは、仔羊の肉をローリエとともに刺した串焼きです。

伝統の美味しさを、ぜひご賞味ください。

◆仔羊の肉を精肉

仔羊の肉を部位ごとに分け、余分な部分を取り除く。羊の肉は北海道産サフォーク種を使用

精肉した仔羊のバラ肉。串焼きの先端に刺す

精肉した仔羊のモモ肉。串焼きの真ん中に刺す

◆仔羊の肉の生ソーセージをつくる

ソーセージに入れる挽肉をつくるために、ミンチマシーンに仔羊の肉を入れる。主にモモ肉を使用

挽肉をフィレンツェ風の大粒の粗挽きにするため、ミンチマシーンの先に大穴のアタッチメントを付ける

挽肉に塩を加える

コショウを加える

生のタイムを加える

白ワインを加える

オリーブオイルに漬けたニンニクのみじん切りを加える

調味料を加えた挽肉を混ぜ合わせる

絞り器に天然の豚腸をセットする

ソーセージ1本分の挽肉を絞り器に入れ、豚腸に絞り出す。素手で挽肉を詰めるため、肉の粒感と柔らかさが残る

ソーセージに混入した余分な空気をアイスピックで刺して抜く

串焼き用のソーセージはソーセージ単品の半分の長さにする

◆串に刺して焼く

金串に具材を刺す。ソーセージは回転しないように斜めに刺す。肉と肉の間にローリエの葉をはさみ、香りをつける

金串はビスボッチャに代々伝わるフランス製のもの。クラシックな装飾が王朝的で、ディナーの気分を盛り上げる

串に刺した具材は塩コショウで下味をつけてから焼く

串をグリルの網に並べる

炭火は肉の表面のみならず、遠赤外線効果が肉汁を循環させ、中までしっかり火を通し、旨みを引き出す

肉を反転させる

肉汁が滴り落ち、炭で燃える煙が燻製効果になり、肉に香ばしい香りをつける

仔羊の串焼き

◆いろんな味を楽しみ、パワーがわく

焼き上がった串焼き先端のS字状バラ肉は、脂身にトロける口あたりと甘みを感じ、赤身にまろやかな旨みを感じます。

真ん中の丸いモモ肉はやわらかい歯ごたえで肉質はキメ細かく、噛むほどに旨みとコクが濃くなります。

ソーセージは中心がうっすらピンク色で、甘みと旨みが最ものった焼き加減です。スパイスや香草の風味が大粒でやわらかい挽肉を引き立てます。

仔羊の串焼き

仔羊の肉は本来、風味が強いけれども、串焼きで小分けにして、香草で香りをつけながら食べると、旨みが際立ちます。

なおかつ、いろんな味が楽しめる一本に、体の底からパワーがわいてきます。

仔羊の串焼き

フィレンツェの街並み

BBQに合わせて食べたいメニュー

スパゲッティー・カルボナーラ

カルボナーラは、卵を使った濃厚なソースに食べごたえがあり、パスタの中でも人気のメニューになっています。

ビスボッチャでは、イタリアの食材をたっぷり使い、本場のように濃く、深い味でカルボナーラをおとどけします。

◆グアンチャーレでベースのソースをつくる

イタリア製のグアンチャーレとその断面。豚のホホ肉を塩漬けにして熟成したもので、これを刻んでパスタのベースにする

グアンチャーレはイタリア中部マルケ州にあるトマッソーニ社のものを使用

◆つくり手をたずねて

トマッソーニ社の看板(写真/井上裕基)

トマッソーニ社の社長ファビオさん(右)と生産責任者シモーネさん(写真/井上裕基)

2019年3月、カルボナーラの味の決め手になるグアンチャーレをつくるトマッソーニ社を見学しました。

こちらの食肉加工品は、昔ながらの製法にこだわり、保存料や着色料を使わず、塩のみで保存しています。

いわば、レトロな製法で、グアンチャーレも他社に比べると塩気がしっかりして、脂身は濃厚な風味があります。

原点回帰の素朴な味わいに魅力を感じ、パスタのソースに使うと、コクが出る背景を実感しました。

シモーネさんから生産工程の説明を聞く副料理長・露詰まみ(写真/井上裕基)

豚肉を塩漬けする塩蔵のプロセス(写真/井上裕基)

塩蔵後、熟成庫に移された食肉加工品(写真/井上裕基)

トマッソーニ社のグアンチャーレをカットしてフライパンに入れる

ピュア・オリーブオイルを加え、グアンチャーレを炒める

グアンチャーレの向きを変えながら、脂の旨みとコクを抽出

フライパンに自家製野菜のダシ汁を加え、火から下ろし、スパゲッティーの茹で上がりを待つ

自家製野菜のダシ汁は、ニンジンやセロリ、タマネギ、ズッキーニ、エリンギ、イタリアンパセリの茎などを煮込んだもの

◆パスタソースに使う卵液をつくる

ボウルに卵を割り入れる

ビスボッチャのカルボナーラに使う卵の量は、一人前全卵1個と卵黄1個

卵は神奈川県産の「長寿卵」を使用。イタリアの卵に似て卵黄がオレンジ色で濃厚な風味と深い味わいがある

擦りおろしたパルメザンチーズを加える

黒コショウを加える

黒コショウは世界最高峰のコショウ産地、カンボジアで日本人が手がける「クラタペッパー」のものを使用。香りは高く、辛さはマイルド

ボウルの材料を混ぜ合わせて卵液が完成

◆スパゲッティーを茹で、ソースと和える

茹で麺機に岩塩を入れ、スパゲッティーに下味をつける

スパゲッティーを茹で麺機に投入。茹で時間は6分40秒

スパゲッティーはイタリアのパスタの名産地のひとつ、アブルッツォ州にある「トラフィーダ・ルヴィダ」社のものを使用。直径は1.7㎜とやや太め。昔ながらの長時間乾燥で小麦の風味が強く、ザラザラした表面はソースとよくなじむ

茹で麺機に入れたスパゲッティーはくっつかないように、最初にほぐす

スパゲッティーの茹で上がりを待つ

茹で上がったスパゲッティーを、ベースのソースが入ったフライパンに投入

スパゲッティーとベースのソースを和える

卵液を加える

卵液とベースのソースを混ぜ、火加減を調整しながらトロみをつける

スパゲッティーを盛り付ける

ペコリーノ・ロマーノ・チーズを摩り下ろす

ブラックペッパーを振りかけて出来上がり

スパゲッティー・カルボナーラ

◆濃厚ソースの深いコク

出来上がったカルボナーラのソースはドロリと濃厚で、フォークでスパゲッティーを回すとズッシリと重い手ごたえがあります。

ズルッと回り出したスパゲッティーにソースが厚くからみ、クリーミーな舌ざわりのなかに塩味や旨み、コクをしっかり感じます。

合間に口に含むグアンチャーレは柔らかく、噛みしめると香ばしさと塩味が増します。

シンプルでありながら、深みのある味のバランスに飽きない食べごたえがあり、あっという間に食べ進んでしまいます。

スパゲッティー・カルボナーラ

エッセイ:食のこぼれ話『ジャズとカルボナーラ』

カルボナーラは、炭焼き職人という意味のイタリア語です。

パスタにふりかけた黒コショウが炭の粉のように見えることから、この愛称で呼ばれています。

しかし、カルボナーラの料理の起源は、炭焼き職人が生み出したものではなく、第二次世界大戦でイタリアに上陸したアメリカ兵が、アメリカ人が好む卵とベーコンを使ってパスタをつくらせたことを起源とする説が有力です。

当時ナチスドイツに占領されていたイタリアの市民は、アメリカ兵の上陸を喜び、各地で料理を振舞って支援しました。

アメリカの戦争映画『アンツィオ大作戦』(1968年)では、戦時中のアメリカ兵とイタリア市民の交流が描かれています。

アメリカ兵は料理のお礼にと、イタリア人にキャンディーを配り、ジャズの歌を教えるシーンがあります。

アメリカ兵はジャズを教える理由を「俺たちは、これからナチスと戦って死ぬかもしれない。だからジャズを歌って、イタリア人を救いに来たアメリカ人がいたことを思い出してほしい」と語りました。

カルボナーラにも、そんな背景があったのかもしれません。それを思うと、黒コショウの苦みが効いてきます。

スパゲッティー・カルボナーラ

フィレンツェの街並み

尾花沢スイカ

尾花沢スイカ

◆夏の旬をいただく

8月はスイカの旬です。

どこかに郷愁がある夏の風物詩に、涼しさを感じて楽しみます。

ビスボッチャの入口に置いた山形県産の「尾花沢スイカ」

「尾花沢スイカ」の断面。山形県の尾花沢市は山に囲まれた盆地にあり、昼と夜の寒暖差が美味しいスイカを育む

スイカの表面に付いたシールをはがす

食べやすい大きさにカットする

尾花沢スイカ

◆しっかりした果肉に強い甘味

色はピンクがかった鮮やかな赤。香りは透明感あるスイカの香りが爽やかに漂います。

果肉はシャリシャリした歯ごたえがあり、果汁をしっかりたくわえ、どこを切り取っても強い甘味を感じます。

尾花沢スイカ

おすすめのワイン

ビスボッチャの店内に並べたヴァッレ・レアレ社の赤ワイン

高原のスローな赤ワイン

ヴァッレ・レアレ社のブドウ畑とワイナリーの看板(写真/井上裕基)

ヴァッレ・レアレ社の応接間(写真/井上裕基)

◆ワイナリーをたずねて

2018年春、イタリア南部アブルッツォ州のワイナリー「ヴァッレ・レアレ」社を訪ねました。

1997年に創業。歴史は浅いながら、世界的に高い評価のワインを生産することから注目していました。

ヴァッレ・レアレ社のブドウ畑(写真/井上裕基)

山岳地帯の高原にあるワイナリーの周辺は昼と夜の寒暖差があり、渓谷の澄んだ源泉や動植物の豊かな生態系に恵まれています。良質なブドウを育む環境を実感しました。

ヴァッレ・レアレ社はこの地で土着のブドウを有機栽培し、天然酵母での自然発酵にこだわってワインを生産しています。

スローな製法による小ロットのものづくりながら、ワインの味には気候風土の特徴が豊かに表れています。これからの時代のものづくりを象徴するようなワインづくりでした。

左)ヴァッレ・レアレ社のブドウ畑に見るモンテプルチアーノのブドウ種。右)ブドウ畑の土に自生するミントやセージがブドウの味と香りを豊かにしている(写真/井上裕基)

ワイナリーに聞く

ビスボッチャの店内で語るヴァッレ・レアレ社当主レオナルド・ピッゾーロ氏

2018年10月30日、ビスボッチャでヴァッレ・レアレ社のスペシャル・ワインデー・イベントが開かれました。来店された当主のレオナルド・ピッゾーロさんに、ワインづくりを語っていただきました。

◆ピッゾーロ氏のワインづくり

私の両親はワインの瓶詰めをする工場を経営していました。私は大人になるにつれ、瓶より中身のワインをつくりたい、という気持ちが強くなりました。

そこで、家族が持っていた土地を利用してワインづくりをはじめました。今はブドウ栽培のこだわりが高じて、栽培に使う金具を独自に開発し、特許を申請しています。

ビスボッチャの店内で語るヴァッレ・レアレ社当主レオナルド・ピッゾーロ氏

◆ヴァッレ・レアレの市場

当社のワインの流通先は70%が輸出で30%が国内です。輸出はアメリカが一番で、スウェーデン、ノルウェーと続きます。日本の関係者が毎日5分、当社のことを考えてくれれば、日本への輸出はノルウェーを越えるでしょう。

取り扱ってくれるレストランは老舗やミシュランの星付きなどです。オーナー兼ソムリエなど、目利きでワインの情報を持っている仕入れ担当者が当社に興味を示してくれました。

一般のユーザーでも、インターネットでオーガニックのワインを検索しているうちに当社を知り、ファンになったという若いお客さまもいました。

こうしたお客さまが、私のような新参者にチャンスを与えてくれました。

ビスボッチャの店内で語るヴァッレ・レアレ社当主レオナルド・ピッゾーロ氏

◆日本の印象

今回のプロモーションで日本に初めて来ました。昨日、東京を巡回していたら、フェラーリを10台見ました。イタリアでフェラーリを見ることはほとんどありません。富裕層が多い国だと思いました。

次に日本に来るときは、和食や日本酒、スキーをゆっくり楽しみたい。

私事ですが、いま49歳で、子どもが2歳です。父親として長生きしたいから、カロリーを控えめにしています。玄米が好きで毎日食べています。

◆ビスボッチャについて

ビスボッチャはイタリアらしいトラットリアという感じがしました。料理はグリッシーニが美味しかった。メインにいただいたアクアパッツァも美味しかったです。

ビスボッチャのスタッフと記念撮影に収まるヴァッレ・レアレ社当主レオナルド・ピッゾーロ氏

ヴァッレ・レアレ社赤ワイン「サン・カリスト モンテプルチアーノ ダブルッツォ」

◆果実味が凝縮した辛口赤ワイン

銘柄/サン・カリスト モンテプルチアーノ ダブルッツォ
ワイナリー/ヴァッレ・レアレ 
生産地/イタリア南部アブルッツォ州
ぶどう種/モンテプルチアーノ100%
生産年/2011年

色は深いルビー。香りはブラックベリーやチェリー、カシス、レザー、ドライハーブなどのニュアンスが複雑にミックスしてスパイシーな印象です。

味わいはブドウの凝縮感があり、豊かな舌ざわりとタンニンを感じる余韻が長く続きます。

仔羊の串焼きの旨みに合う力強さがあります。

赤ワイン「サン・カリスト モンテプルチアーノ ダブルッツォ」と仔羊の串焼き

真夏のパワーアップに!

ビスボッチャの「イタリアンBBQフェア」を、ぜひご利用ください。