イースターフェア2019

第42回 Fiera di Pasqua 2019

ラ・ビスボッチャ店内

フレッシュな春のお祭り

フレッシュな季節を盛り上げる、イースターをモチーフにしたお料理のフェアを4月1日(月)〜13日(土) に開催します。期間限定メニュー5品が登場。復活のシンボル、卵や仔羊を春野菜とともにお楽しみください。

ホワイトアスパラガスを茹でる料理長・井上裕基(左)と副料理長・露詰まみ(右)

解説/料理長 井上裕基・副料理長 露詰まみ

写真・文/ライター 織田城司
Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text  by George Oda

1. ホワイトアスパラガスのビスマルク風

ホワイトアスパラガスのビスマルク風

◆ヨーロッパの春野菜

春の挨拶といえば、日本は「お花見行った?」。ヨーロッパは「白アスパラ食べた?」になります。

そんなホワイトアスパラガスに、卵でパワフルな要素を加えて提供します。

◆調理

ホワイトアスパラガスは2〜3月にかけてフランス〜イタリアから空輸

ホワイトアスパラガスの旨みが茹で汁に流出するのを軽減するため、あらかじめ取り除いた皮と根元でダシを取る

茹で時間約8分。繊維がとろとろになるまで茹で、甘みや旨みを引き出すのがイタリア流

茹で上がったホワイトアスパラガスを澄ましバターを敷いた皿に盛り付け

澄ましバターは香りが高く、あっさりしてホワイトアスパラガスと相性が良いことから使用。最盛期は毎日ボウル2個分作る

目玉焼きを乗せ、すりおろしたパルメザンチーズをふりかけて出来上がり

ホワイトアスパラガスのビスマルク風

◆とろける甘み

じっくり茹でたホワイトアスパラガスは、とろとろの柔らかさで、甘みと旨みがふくらみます。

目玉焼きとバターソースを混ぜ合わせると、味と風味がより豊かになります。

ホワイトアスパラガスのビスマルク風

ラ・ビスボッチャ店内

2. 菜の花と牛肉のラザニア

菜の花と牛肉のラザニア

◆イタリア式おもてなし料理

ラザニアは昼間仕込んでおけば、夜のホームパーティーですぐに出すことができます。おもてなし料理の定番として、イースターパーティーでも活躍します。

具材の重ね方は自由で、我が家風のレシピがあります。ビスボッチャでは、菜の花と牛肉を使い、豪快な味わいで提供します。

◆調理

菜の花に岩塩で下味をつけ、蒸し焼きにする

菜の花は温暖な気候で特産地になっている千葉県産

牛肉と香味野菜を鍋底で炒め、自家製鶏のダシ汁を加えて煮込む

ベシャメルソースを作る。バターや小麦粉、牛乳などを煮込む

パスタマシーンでラザニアの生地を作る

茹でたラザニアの生地の水分を吸収

キャセロールの内側に焦げつきを防ぐバターを塗る

生地を敷き、ベシャメルソースを敷き詰める

菜の花の蒸し焼きを重ねる

牛肉と香味野菜の煮込みを重ねる

再びベシャメルソースを敷き詰める

すりおろしたパルメザンチーズをふりかける

同じ要領で4層重ねる。4層目は天井が無く、バターのかけらを散りばめて香りをつける

オーブンで焼く。180度約50分

焼き上がったラザニアを切り分けて出来上がり

菜の花と牛肉のラザニア

◆クリーミーな口どけ

焼きあがったラザニアからバターやパルメザンチーズの香ばしい香りが漂います。ナイフで切ると、4層が底までスーッと切れる柔らかさです。

クリーミーな口どけの中に甘みと旨み、コクを感じます。ときどき出てくる大きな牛肉の旨みと、菜の花のほろ苦さがアクセントになります。

菜の花と牛肉のラザニア

ラ・ビスボッチャ店内

3. 仔羊のロースト

仔羊のロースト

◆聖なる仔羊をいただく

復活祭のメインディッシュは、仔羊を食べる伝統があります。

ビスボッチャは仔羊の中でも、まだ草を食べていない乳飲み仔羊を使用します。甘い香りと柔らかいお肉をお楽しみください。

◆仔羊の下ごしらえ

今回使用する仔羊の肉はフランス産。半身で仕入れ、自店でさばく。モモ肉は塩コショウで下味をつけ、焼きやすいように丸める

丸めたモモ肉をヒモで固定する

仔羊の骨つきロースは肉をやわらかくして、余分な風味を除くために3日間マリネする。マリネはエキストラヴァージン・オリーブオイルやニンニク、タイムを使用

◆ソースを作る

仔羊の肉から除いた骨をソースのダシに使う。オーブンで加熱してから鍋に入れる

氷を鍋に入れ、加熱しながら骨のダシを抽出。水より濃くダシがとれる

炒めた香味野菜を加え、24時間煮込む

煮汁を1人前取り出し、煮詰めてソースにする

◆仔羊を焼く

加熱したフライパンにオリーブオイルを敷く

仔羊のモモ肉を焼く。フライパンの底の熱いオイルを火の通りにくい骨まわりに注ぐ

全面に焼き色をつけた後、オーブンで加熱

仔羊の骨付ロースを焼く

曲面が多いため、絶えずトングで支えながら焼く

フライパンの底からすくった熱いオイルを火の通りにくい骨まわりに注ぐ

ロースの中心にアイスピックを刺し、火の通り具合を確認

反対側に焼き色をつける

オーブンで加熱

オーブンで焼きあがったばかりの肉は肉汁が出すぎるため、約5分寝かせる

カットして、ソースとともに盛り付けて出来上がり

仔羊のロースト。骨付ロースの部位

◆若々しい旨み

焼きあがった仔羊の断面はうすいピンク色。とろける柔らかさと、あっさりした肉汁の中に若々しい肉の旨みを感じます。

骨付ロースは甘み、モモはまろやかな旨みとコクが際立ちます。カリッと焼けた表面の香ばしさとともに味わいます。

仔羊のロースト。モモの部位

ラ・ビスボッチャ店内

4. 焼きメレンゲのフルーツ添え

焼きメレンゲのフルーツ添え

◆卵を象徴するケーキ

イースターは卵をイメージするケーキが気分を盛り上げます。

焼いたメレンゲはガラス細工のような食感で、卵の殻を思わせます。

◆調理

卵白とグラニュー糖をミキサーにかけてメレンゲを作る

メレンゲを絞り袋に入れ、ケーキのパーツを成形

メレンゲをオーブンで焼く。100度約90分

薄くスライスした自家製スポンジを円形の金具でくり抜く

生クリームとカスタードクリームを混ぜ、キルシュ酒で香りをつける

キルシュ酒はチェリーからつくるリキュール。香りが高く、酸味があることから製菓やカクテルの香料として使われる。オランダのアムステルダムで1575年に創業したボルス社のものを使用

焼きあがったメレンゲにクリームの層を重ねる

スポンジを重ねる

クリームと上部のパーツを重ねる

イチゴ、ブルーベリー、ミントの葉を飾って出来上がり

焼きメレンゲのフルーツ添え

◆パリンと割れる心地よさ

焼いたメレンゲのパリパリした食感は、柔らかいクリームやスポンジと混ぜ合わせて食べると、それぞれが引き立ちます。

口の中が甘さでいっぱいになると、イチゴやブルーベリーの酸味でバランスをとります。

焼きメレンゲのフルーツ添え

ラ・ビスボッチャ店内

5. ヘーゼルナッツの卵型ケーキ

ヘーゼルナッツの卵型ケーキ

◆卵型のケーキ

イースターは卵型のお菓子も多く見られます。

ヘーゼルナッツのケーキはデザートのみならず、ティータイムとおやつとしても食べられる小菓子です。

◆調理

ケーキの生地を作るため、卵、バター、グラニュー糖、卵、薄力粉、ヘーゼルナッツのパウダーをミキサーで混ぜる

ヘーゼルナッツのパウダーはシチリア島パレルモ産

イースターケーキ用卵型天板

バターを塗った型に生地を入れ、オーブンで焼く。170度約18分

焼きあがった生地

生地を反転させ、冷ます

ホワイトチョコレートを湯煎で溶かす

ホワイトチョコレートはカカオの主要産地コロンビアで1909年に創業したカサルカ社のものを使用。甘すぎず心地よいカカオフレーバーがある

溶かしたホワイトチョコレートを生地の表面に塗って出来上がり

ヘーゼルナッツの卵型ケーキ

◆エキゾチックな風味

ヘーゼルナッツのエキゾチックな風味が食欲をそそります。

しっとりとした生地感は口の中でパサつくことが少なく、もぐもぐしながら、まろやかな甘みを楽しみます。

ヘーゼルナッツの卵型ケーキ

お飲み物

イタリアのスペシャリストおすすめのワイン

イースターフェアに合うワインを、イタリアから来店されたワイナリーの人々と紹介します。

「北の巨匠」がつくる珠玉の白ワイン

フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州にあるヴィエ・ディ・ロマンス社のブドウ畑と社屋(写真/モトックス)

◆ワインの新しい可能性に挑戦

イタリア最北東の地にある「ヴィエ・ディ・ロマンス」社は1世紀もの間ワインをつくり続けている老舗ワイナリーです。

一族の3代目、ジャンフランコ・ガッロ氏はワインの革新に取り組み、従来の枠を越えたモダンな味を追求しています。その創造性から「北の巨匠」と呼ばれ、ワイン愛好家から動向が注目されています。

ヴィエ・ディ・ロマンス社が栽培するブドウ(写真/モトックス)

ヴィエ・ディ・ロマンス社のワイン醸造所(写真/モトックス)

ヴィエ・ディ・ロマンス社白ワイン「デッシミス・ピノ・グリージョ 2016」

◆ピンクゴールドの個性派白ワイン

【デッシミス・ピノ・グリージョ 2016年】

・ピノ・グリージョ100% オーク樽熟成

色はピンクがかったゴールド。香りは白桃やリンゴのニュアンス。味わいはまろやかな果実味が濃厚に広がり、フルーツジュースと錯覚するようなインパクトが新鮮。余韻にかすかな酸味とピリッとした舌ざわりを感じます。五感を惹きつける新感覚に、テーブルが華やぎます。

ワイナリーに聞く

ビスボッチャの店内で自社の広告パネルを持つジャンフランコ・ガッロさん(中央)と夫人(左)長女(右)

ビスボッチャで「ヴィエ・ディ・ロマンス」社のメイカーズディナーが開かれた2019年3月14日、当主のジャンフランコ・ガッロさんが夫人と長女を伴って来店されました。

ジャンフランコさんは会食の合間、お客様のテーブルをまわり、自社のワインを詳しく説明。なかには福島県から駆けつけたファンもいました。

◆日本の印象

ジャンフランコさん「日本に来たのは4回目です。イタリアと共通点があり、初来日から気に入っています。それは、エレガントを追求していることです。日本のお寺や飲食店、ブティックなどは、どれもエレガントです。他のアジア諸国もエレガントな造形はあるけれど、日本の造形はそれほど華美ではなく、とてもクールで、洗練された美学を感じます。

日本人の働き方はとても勤勉で、イタリア人が学ぶべき姿勢があります。日本人のおもてなしは世界でもトップクラスです。イタリアにもおもてなしはあるけれど、ごく一部で、日本のようにどこでも感じることはありません。」

長女「私は初めて日本に来ました。あらゆる所が自動化されて驚きました。特に、お手洗いで便器に近づくと、フタが自然に開いたのは衝撃でした。」

夫人「私も日本は初めて。とてもきれいな国。イタリアに帰ったら、家にシャワートイレを付けるわ」

ビスボッチャの客席で自社の白ワインをテイスティングするジャンフランコ・ガッロさん

◆ワインの創造

ジャンフランコさん「ワイナリーでは昼間、仕込んだワインの試飲を繰り返し、味と香りのチェックをしています。その夜、家で食事をするときは、世界中から取り寄せた名作ワインを試飲し、味と香りの研究を続けています。新しいワインは、そんな日常から生まれると思います。」

◆ビスボッチャについて

ジャンフランコさん「ビスボッチャは初めて来ました。トスカーナ地方のトラットリアという雰囲気です。特に音。客席のざわめきやオープンキッチンの鼓動、ウエイターの掛け声などはイタリアそのものです。うるさいけれど、そこに生きてる実感を見いだすイタリアの食文化の伝統です。

もちろん、料理も美味しい。和牛の炭火焼きのまろやかな旨みは、赤ワインのみならず、当社の白ワイン『デッシミス・ピノ・グリージョ』も合うと思います。」

シャンフランコさんのメニューセレクト

前菜/花ズッキーニのフライ、パスタ/アサリのスパゲッティー、メイン/和牛の炭火焼き、デザート/フルーツタルト

ジャンフランコさんは終始家族を思いやり、表情は穏やかで、ジェントルマンの印象。しかし、発言には、クリエイターらしい鋭さが光りました。

ヴィエ・ディ・ロマンス社白ワイン「デッシミス・ピノ・グリージョ 2016」と、菜の花と牛肉のラザニア

トスカーナのエレガントな赤ワイン

トスカーナ州にあるコル・ドルチャ社の外観(写真/フードライナー)

◆名ブランドの担い手「コル・ドルチャ社」

トスカーナ地方を代表する赤ワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。良質なブドウが育つモンタルチーノ地区の表記が認められたブランドです。

なかでも、「コル・ドルチャ」社のものはエレガントな味わいで数々の賞を受賞し、ワイン愛好家を魅了しています。トスカーナ名物、炭火焼きとよく合います。

コル・ドルチャ社が栽培するブルネッロ種のブドウ(写真/フードライナー)

コル・ドルチャ社のワイン醸造所(写真/フードライナー)

コル・ドルチャ社赤ワイン「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ DOCG 2013」(左)と「ロッソ・ディ・モンタルチーノ DOG 2015」

◆スムーズでエレガントな辛口

【ブルネロ・ディ・モンタルチーノ DOCG 2013 】

・ブルネッロ種100%、オーク樽で36ヶ月熟成

色はガーネットがかったルビーレッド。香りは芳醇な果実に樽からくるヴァニラやチョコレートのニュアンスが加わります。しっかりした味わいながらタンニンはやさしく、繊細な果実味が広がります。

【ロッソ・ディ・モンタルチーノ DOC 2015】

・ブルネッロ100%、オーク樽で12ヶ月熟成

色はスミレ色を帯びたルビーレッド。香りは熟したベリー系に樽からくるスパイシーなニュアンスが加わります。味わいは質の良いタンニンを背景に、豊かな果実味とスパイシーな余韻を感じます。

ワイナリーに聞く

ビスボッチャの店内で顧客にワインの解説をするパオラ・テアルディさん(右から二人目)

ビスボッチャで「コル・ドルチャ」社のメイカーズディナーが開かれた2019年2月27日、輸出マネージャーのパオラ・テアルディさんが来店されました。

パオラさんは会食の合間、お客様のテーブルをまわり、自社のワインを詳しく説明しながら記念撮影に応じました。

◆日本の印象

パオラさん「イタリアでワインの世界戦略を話し合うとき、日本を含めてアジアと話す人がいるけれど、私はちがうと思います。日本は別格です。

日本をひいきにしたり、他の国を差別しているわけではありません。実際にアジア諸国をラウンドすると、そのちがいがよくわかります。日本は成熟した独立エリアです。

もちろん、他のアジア諸国も進歩しています。巨大な空港や高層ビルがたくさんできています。でも、レストランに行くとお皿のふちが欠けていたり、おもてなしがわかっていないと感じることが少なくありません。

日本人はとても勤勉です。イタリアやワインのことをよく勉強しています。今日、ビスボッチャで会った女性のお客さまは、以前から当社のワインを指名して愛飲されてるそうです。昨日、新潟で会ったシェフはイタリアの一流店で修行したそうです。地方都市でも本格的なイタリアンが味わえます。日本人は文化の表面をコピーするのではなく、本質を熱心に学び、自分なりにこなすのが上手です。」

◆ビスボッチャについて

パオラさん「ビスボッチャは初めて来ました料理?その質問の答えは簡単よ。目隠しして食べたらフィレンツェだと思うわ。和牛も美味しかった。ウソじゃないの、ホントよ。

あらやだ、スーツケースを忘れて帰るところだった。すっかりイタリアにいる気分になってしまって…。ウソじゃないの、ホントよ。」

パオラさんのメニューセレクト

前菜/おまかせで生ハムやフライの盛り合わせをシェア、パスタ/なし、メイン/和牛の炭火焼き、デザート/パンナコッタ

パオラさんは自社のワインが消費される現場を地道に訪ね、市場を見極めています。ネットの情報に頼りがちな今こそ、見習いたい活動です。

パオラ女史(左から三人目)を囲むスタッフ。左から井上、ヴェリア、露詰

コル・ドルチャ社赤ワイン「ロッソ・ディ・モンタルチーノ DOG2015」と仔羊のロースト

フレッシュな季節のディナーは、

ラ・ビスボッチャのイースターフェアでお楽しみください。