第41回 FESTA DELLA DONNA
春気分を味わう
3月8日は国際女性デー。イタリアでは女性にミモザの花を贈る習慣があります。そんな春の気分をお料理で味わうフェアを3月4日(月)〜14日(木) に開催。期間限定メニュー6品が登場します。期間中来店された女性に食前酒ミモザをサービス。ノンアルコール版もあります。
解説/料理長 井上裕基・副料理長 露詰まみ
写真・文・エッセイ/ライター 織田城司
Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text・Essay by George Oda
1. ミモザ風サラダ
◆春サラダの定番
細かく砕いたゆで卵をミモザの花に見立てた、春サラダの定番です。
旬の食材をあわせ、春らしいフレッシュな味を楽しみます。
◆サラダの食材
◆ほろ甘い口どけ
茹で分けられた食材はどれもプリッとした歯ごたえ。フレッシュな弾力に生命の芽生えを感じ、春らしさを満喫します。
味はレモンドレッシングの酸味、グリーンピースとソラマメの甘み、菜の花とルッコラの青々しさ、エビの旨みと塩味が多彩に現れては消え、小さな卵のトロリとした口どけ感が全体をほろ甘くまとめます。
2. カキとカリフラワー、アーティチョークのフリット
◆春の旬菜を軽やかに
食材を主役に、あっさり揚げるのがイタリア流のフライです。
旬の食材を集め、それぞれに似合う衣をつけて揚げます。
◆アーティチョークの下処理
◆カリフラワーの下処理
◆カキの下処理
◆アーティチョークを揚げる
◆カリフラワーを揚げる
◆カキを揚げる
◆食材と絶妙になじむ衣
フライの衣はサクッとしていません。「サ」まで感じながら、ふわふわに揚がった食材に「ク」の音が吸収され、フェイドアウトするからです。それほど衣が薄く、食材と絶妙になじんでいます。
どの食材も素材の甘みや風味が際立ち、軽やかな後味です。特にカキのフライは、パン粉のフライ以外で食べる希少な機会です。中まで火が通り、ふわふわになった身の旨みをぜひお試しください。
3. ズッキーニの花とカラスミのスパゲッティー
◆春らしいパスタ
カラスミはイタリアではボッタルガとよばれ、パスタの食材としてポピュラーな存在です。
カラスミが持つ春らしい色と軽いイメージを、スパゲッティーとズッキーニの花で広げました。
◆調理
◆あっさりした塩味とコク
カラスミの卵は小さく、サラッとしています。スパゲッティーやズッキーニの花としっかりなじみ、あっさりした塩味とコクで全体を引きしめます。
ズッキーニの花はシャキシャキした歯ごたえで、爽やかな風味があり、スパゲッティーの小麦の風味とともに春の草原を思わせます。
4. ムール貝とサフランのリゾット
◆幸せの黄色いリゾット
イタリアでは、サフランとムール貝の組み合わせがよく合うレシピとして知られています。
そんな名コンビをリゾットに取り入れ、春らしく仕上げました。
◆調理
◆まろやかな甘みと旨み
鮮やかな黄色に染まった大皿が、食卓に春らしい華やぎをもたらします。
ムール貝がリゾットの甘みや旨み、塩味を際立たせ、春の印象とともに記憶に刻まれます。
5. 仔羊のピカタ
卵の黄色い衣と軽い後味に春さしさを感じるピカタ。そのルーツはイタリアでした。ミートフォークで突き、ひっくり返して焼いたことから、イタリア語のピッカータ(piccata:槍で突く)が語源になりました。
料理長井上は幼い頃、お母さんが作るピカタを好んで食べたそうです。当時、母子ともにピカタがイタリア料理とは知りませんでした。ピカタはイタリアからヨーロッパに広まり、洋食という分類で日本に伝わるうちにルーツが薄れたものと思われます。それほどポピュラーなメニューです。
◆調理
◆ふわふわの旨み
黄金色のピカタからバターと卵が焼けた香ばしい香りが漂います。
仔羊の肉は卵の衣と同じくらい柔らかく、甘みと旨みが充実しています。ふわふわの軽さとともに春を感じる味わいです。
6. ミモザケーキ
◆ミモザに見たてたケーキ
ミモザの季節を満喫するため、スポンジを散りばめてミモザに見たてたケーキです。
中にイチゴのスライスとクリームが入っています。
◆調理
◆たっぷりしたクリームの甘み
イチゴとクリーム、スポンジ。ショートケーキでおなじみの基本素材を春の装いでいただきます。
ドーム形の土台になるクリームはたっぷり積み重なっています。細かいスポンジと混ぜると、ボリューミーな食べごたえの中に甘さが広がり、春気分を盛り上げます。
エッセイ:食のこぼれ話
『ミモザ館』
食事の楽しみのひとつに、香りがあります。
イタリア料理であれば、パルメザンチーズの香りは記憶の奥から味覚を引き出し、味わいをより楽しくしてくれます。
映画のタイトルも、中味を予感させる大切な要素です。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)は、クイーンのファンならタイトルを見ただけで「クイーンの映画だな、あの曲よかったな、どんな内容なのかな」と興味をそそられます。
もし、映画会社がクイーンのファンの他にも、映画の内容を分かりやすくしようとして、『クイーン物語』というタイトルをつけたとしたら、味が半減してしまうでしょう。
SNSの発達で直接的な表現が多い現代でも、奥ゆかしい表現は健在です。
映画『ミモザ館』(1934年)は南仏のペンション「ミモザ館」の女将を描いたドラマです。いかにも「女性が主人公の映画だな」という予感がするタイトルです。ミモザの季節になると思い出す、奥ゆかしい表現の好例です。
お飲み物
◆すべての女性にミモザを!
ミモザフェアの期間中来店された女性に食前酒ミモザをサービスします。
カクテルのミモザはシャンパンをオレンジジュースで割った飲み物です。フレッシュオレンジジュースの見た目が黄色で、ミモザの花の色に似ていることから名称の由来となりました。
ノンアルコール版もあります。ご希望の方はスタッフにご用命ください。
いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。
ラ・ビスボッチャのミモザフェアで、春気分の味わいをお楽しみください。