CHRISTMAS SPECIAL MENU 2019
コラム『味と技』第55回
クリスマスの特別感を、とっておきのイタリアンで
クリスマスは、美味しい料理をゆっくり楽しみたい。
というお客様のために、12月20日(金)〜28日(土)の9日間、
豪華なクリスマス限定メニューを8品ご用意します。
ご注文はアラカルトで承ります。定番メニューとともに、お好みでお選びください。
店内はイタリアン・アンティークのクリスマス飾りで彩り、本場の歳末の雰囲気です。お料理とともにお楽しみください。
解説/料理長・井上裕基 副料理長・ 露詰まみ
写真・文・エッセイ/ライター 織田城司
Commentary by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text ・Essay by George Oda
前菜
1.クリスマスカラーの前菜4種のプレート
◆冬の味覚で彩るクリスマス
クリスマス気分を盛り上げる前菜を、冬の味覚で彩りました。
フレッシュで、バラエティーに富んだ味をお楽しみください。
①ブッラータチーズのカプレーゼ
◆クリーミーな甘味
ブッラータチーズは、モッツァレッラチーズと同じフレッシュチーズの仲間です。
袋状にしたモッツァレッラの中に、刻んだモッツァレッラや生クリームを詰めた、チーズ好きがうなる手の込んだものです。
ブッラータとはイタリア語でバターのような、という意味。中身がトロッとして、バターのような香りと甘味があることが由来です。
トマトは甘味や酸味が強いフルーツトマトを合わせます。一味違うカプレーゼをご賞味ください。
②サン・ダニエーレ産生ハムと柿
◆高級食材の組み合わせ
生ハムの食べ方で人気が高いのは、フルーツとの組み合わせです。
クリスマス版のフルーツは、日本の冬の味覚、富有柿(ふゆうがき)を合わせます。果肉はヌメリとした柔らかさがあり、甘味の濃い果汁をたっぷり含み、高級食材として世界で評価されている柿です。
合わせる生ハムは、イタリアで最高峰とされるサン・ダニエーレ産を使用します。同じ前菜の次項に、サン・ダニエーレ産生ハムの単品メニューがあるので、詳しくはそちらで解説します。
③焼き野菜のマリネ
◆甘酸っぱさをギュッと詰めて
野菜の持つ自然の甘味と酸味を凝縮した焼き野菜のマリネ。クリスマス版はクリスマスカラーの野菜を中心に揃えました。
下ごしらえは野菜の特性に合わせ、全て異なる加熱を施すことで、とろける食感や甘味、酸味を引き出します。
④鮮魚のカルパッチョ
◆スパイシーなアクセント
イタリアにも生魚を食べる文化があります。オリーブオイルをベースに軽く味をつけ、生魚のフレッシュ感を引き立てます。
クリスマスカラーの香辛料と香草でスパイシーな要素を加えました。
2.サン・ダニエーレ産生ハム
◆生ハムの最高峰をたっぷり味わう
イタリアの特産品、生ハムは、豚のモモ肉を吊るし、自然の空気で熟成させたものです。
気候が大きく影響するため、産地が限られ、サン・ダニエーレとパルマが2大産地とされています。
なかでも、サンダニエーレ産のものは、プレスの工程を加え、脂肪と塩分を均等に広げることで、深い味わいを生み出しています。このため、生ハムの最高峰とされ、ローマの大統領官邸や英国王室などで、世界各国のVIPに振舞われています。
◆とろける舌ざわり、まろやかな塩味
削りたての生ハムからは、樽香や燻製香のような、熟成された香りが漂います。
肉質はキメ細かく、ナイフで切るというより、簡単にちぎれる柔さがあります。
フォークにまとわりついた生ハムはしっとりして、口に含むと、とろける舌ざわりと、まろやかな塩味を感じ、後味に甘味や旨味、コクを感じます。
深みのある味わいを、たっぷりお楽しみください。
3.フィレンツェ風牡蠣のグラタン
◆ホウレン草で美味しく
料理にホウレン草を加えるのがフィレンツェの特徴です。なかでも、牡蠣のグラタンは人気メニューとして知られています。
イタリア版チーズフォンデュに使われる、イタリア北部のフォンティーナチーズを加え、あたたかさをプラスしました。
◆あたたかさと元気を感じる味
アツアツのグラタンから、フォンティーナチーズの木の実のような芳香、なめらかな舌ざわり、甘みを感じ、牡蠣の美味しさが引き立ちます。
ホウレン草と牡蠣はしっかり火が入り、トロトロにやわらかくなり、甘みと旨みが増しています。
あたたかさと元気を感じる味わいに、北国の暮らしの知恵を思います。
パスタ
4.黒トリュフのタヤリン
◆冬の香りを楽しむ
クリスマスから2月頃までは、黒トリュフの旬で、香りが最も高くなります。
黒トリュフと相性のいいタヤリンのバターソース和えとともにお召し上がりください。
◆濃厚な森の香り
タヤリンの卵の風味とクリーミーなバターソースは、削りたての黒トリュフとよく馴染み、濃厚な森の香りを引き立てます。
その香りは、樽やヒノキなどのリラックス感ある木材系に、スパイスやナッツ系などニュアンスが加わり、香ばしく、深みがあり、食欲が進みます。
生ハムの塩味と旨み、コクが、香りを楽しむ料理のダシとして効いています。
今回掲載した黒トリュフのタヤリンの写真は、11月に撮影したため、使用した黒トリュフは、日本で秋トリュフや秋黒トリュフと呼ばれる断面が茶色のタイプです。イタリアではタルトゥーフォ・ネロ・アウトゥンナーレ( Tartufo nero autunnale )と呼ばれています。
実際にクリスマスの期間に使用する黒トリュフは、より成熟した断面が黒いタイプで、黒トリュフの中でも最も香りが高い「ネーロ・プレジャート(Nero pregiato)になります。
5.ワタリガニのパッケリ
◆冬の贅沢を丸ごと一匹
イタリアの魚介のパスタといえば、エビやアサリを使ったものがポピュラーです。そのクリスマス版として、日本の冬の味覚、ワタリガニを丸ごと一匹使ってパスタを作りました。
ワタリガニは身が詰まっていることにこだわり、青森県産を使用。
ソースは甲羅やカニ味噌から出る濃厚なコクにトマトソースを合わせ、まろやかに仕上げました。
パスタは味が染み込みやすいパッケリを合わせ、豪快にいただきます。
◆香ばしさと深いコク
パッケリには、ワタリガニが持つ香ばしさや甘味、塩味、旨味、コクなどが濃厚に染み込んでいます。
イタリアンパセリとズッキーニの青々しい風味が爽やかなアクセントになっています。
パッケリをナイフとフォークで食べやすい大きさに輪切りにして、輪の中にドロっとしたソースを入れ、噛みしめると、パッケリとソースが程よく溶け合い、それぞれの美味しさが引き立ちます。
ワタリガニのハサミや脚の中にある白い身は、キメが細かく、クリーミーな舌ざわりで、甘みや旨みが充実。ソースとよくなじみ、パスタとちがう味を楽しみます。
肉料理
6.仔牛のすね肉の煮込み“オッソブーコ”
◆ミラノの洗練された煮込み
寒い冬は、心身ともにあたたまる煮込み料理が人気です。そこで、ミラノで生まれた煮込み料理「オッソブーコ」をクリスマス版として提供します。
「オッソブーコ」はイタリア語で骨を意味するオッソ(Osso)と、穴を意味するブーコ(Buco)が合わさってできた言葉です。牛すね肉を煮込み、骨の真ん中の髄がとろけて陥没して、穴が目立つ姿がそのまま料理名になっています。
爽やかで軽めの味に仕上げるところに、ミラノらしい洗練を感じます。
◆まろやかな旨味
出来上がった煮込みは、髄液が溶け込んだ煮汁がワインや柑橘類で中和され、さっぱりした印象です。
スネ肉はフォークで簡単に切れる柔らかさで、口に含むとボロッと崩れ、噛みしめると、まろやかな旨味を感じます。
7.アイルランド産ヘレフォード牛ロースの炭火焼き
◆やわらかな赤身を味わう
炭火焼きのお肉は、アイルランド産のヘレフォード牛のロースをおすすめします。
◆ヘレフォード牛とは
ヘレフォード牛は、英国の中西部、ヘレフォード州で発祥した食肉専用の牛の品種です。現在は英国以外の国でも飼育されています。
◆アイルランド産の特徴
アイルランドは、国土の80%が牧草地で、雨が多く、年間を通じて牧草が生育するので、ヘレフォード牛はいつも新鮮な牧草を食べることができます。
広い牧草を自由に歩き回り、適度な運動をしたヘレフォード牛は脂肪が少なく、赤身の多い肉になります。なおかつ、ストレスのかからない環境で育つことで、肉質がとても柔らかくなります。
味は、牛肉らしい風味と深い旨みをしっかりと感じます。
◆豊かな風味と旨み
焼き上がったヘレフォード牛を口に含むと、牛肉そのものが持つ香りが鼻へ抜け、豊かな風味を感じます。
肉質は柔らかく、噛みしめると肉汁はしっとりして、繊細でまろやかな旨みと、深いコクがあります。
後味は重くなりすぎず、上品な余韻があり、バランスの良さを感じます。
おすすめのワイン
まろやかな辛口赤ワイン
銘柄/カステッロ・ディ・ブローリオ キャンティ・クラシコ・グランセレツィオーネ
ワイナリー/バローネ・リカーゾリ
生産地/イタリア中部トスカーナ州
ぶどう種/サンジョベーゼ80%、カベルネソーヴィニヨン10%、メルロー5%、プティ・ヴェルド5%
生産年/2015年
色は輝くようなルビーレッド。香りはベリー系果実やジャムに、トーストやヴァニラ、コーヒーなどのニュアンスが重なり、複雑な印象です。
味わいは、しっかりした口あたりがありながら、上品で繊細な奥行きがあり、丸みを帯びた辛口。豊かな余韻が長く続きます。
肉料理が郷土料理のトスカーナ州のワインらしく、力強い印象があり、ヘレフォード牛の旨みとよく合います。
デザート
8.パネトーネ
パネトーネはイタリアでクリスマスに食べる菓子パンです。
中身の黄色とドライフルーツが、宝石箱の金貨や宝石に見えることから、金運が良くなるといわれています。
見た目の印象だけではなく、中世の頃、パネトーネがミラノのスフォルツェスコ城の公爵に銘菓として認められ、開発した青年が恋愛成就した伝説も語り継がれています。
こうした背景から、パネトーネをクリスマスに食べると、翌年の開運につながると考えられています。
パネトーネの実質的な利便性は、イタリア北部でしかとれない特殊な天然酵母の働きで、防腐剤を使わなくても日持ちすることです。クリスマスから新年にかけて、ロングランで食べられます。
パネトーネの生地はしっかりした歯ごたえがあります。クリームと混ぜ、甘さと潤いを加えながら食べると美味しさが増します。
ドライフルーツの酸味と、焦げ目の香ばしい苦味がアクセントになります。そんな味わいを感じながら、来年の開運を祈願します。
特別な日のディナーは、
ラ・ビスボッチャの「クリスマス・スペシャル・メニュー」で、
お楽しみください。