白トリュフフェア 2021

 SAGRA DEL TARTUFO BIANCO 2021

コラム『味と技』第101回

イタリアの秋の味覚、白トリュフの料理を集めた「白トリュフフェア」を、11月16日(火)〜11月30日(火)まで開催します。

期間限定メニューが7品登場。多彩なアレンジで香り高めた、白トリュフづくしをお楽しみください。

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ

写真・文/ライター 織田城司 
Supervised・Cooking  by Yuuki Inoue  Mami Tsuyuzume
Photo・Text  by George Oda

料理長ごあいさつ

大地の香り

アルバは、白トリュフの産地として有名な、イタリア北部ピエモンテ州の街です。

かつて、イタリアへ出張したとき、白トリュフ料理を食べにアルバへ行くと、そこはピエモンテ州のなかでも標高の高いところにありました。

いつも霧が深く、景色の印象はありませんが、土の匂いがするような街でした。

そこで、今年の「白トリュフフェア」は、

アルバをイメージして、国内外から大地が育む食材を集め、

土のつながりで、白トリュフの香りを引き立てました。

大地の香りに、秋から冬へかわる季節を感じて、ご堪能ください。

2021年11月吉日

料理長 井上裕基

⚫︎前菜

1.白トリュフのブルスケッタ

白トリュフのブルスケッタ

メニューについて

バターを使い、白トリュフの香りを高めた前菜です。

ブルスケッタのパンは、サツマイモを入れたフォカッチャを薄くスライスし、炭火で焼きました。

香ばしさが食欲をそそり、食前酒にぴったりの一品です。

調理

メニュー提案・撮影調理:料理長・井上裕基

◆フォカッチャを焼く

サツマイモは北海道産を使用

サツマイモの皮をピーラーでむく

サツマイモを細かくカットする

フォカッチャの生地の材料を混ぜる。材料は強力粉、ブラウンシュガー、塩、麦芽、生イースト、オリーブオイル、水

ボウルでまとめた生地の素材を平板の上に移し、練りを加える

練った生地をボウルに戻し、サツマイモを入れる

サツマイモを混ぜ合わせ、フォカッチャ生地の出来あがり

生地をラップで覆い発酵させる

生地が発酵した約60分後。生地は大きく膨らんでいる

生地のガス抜きをする

めん棒で生地を伸ばし、フォカッチャの形に整える

生地をオーブン用天板に移す

生地の表面にオリーブオイルを塗り、約40分間発酵させる

発酵が完了した生地。平たく焼きあがるように指先でくぼみをつける

生地をオーブンで焼く。温度は190℃12分、プラス180℃12分

焼き上がったフォカッチャを冷ます。底辺の通気にも配慮する

◆ブルスケッタを焼く

フォカッチャを細長く切り分ける

切り分けたフォカッチャを炭火焼きグリルの焼き網の上で焼く

ひっくり返し、反対側からも焼く

自家製白トリュフバターを薄くスライスしてブルスケッタにのせる。自家製白トリュフバターは、白トリュフと無塩バター、塩を混ぜてつくる

スライスしたての白トリュフを振りかけて完成

お召し上がり

白トリュフのブルスケッタ

◆サクッと軽く、香りは濃厚

オリーブオイルをたっぷり塗って焼くフォカッチャ。さらに炭火で焼くことでサクサクの食感になっています。

黄色いサツマイモの甘みと、焦げ目の香ばしさがアクセントです。

白トリュフのブルスケッタ

ブルスケッタの上で、ふんわりと溶けたバターは、なかに仕込んだ細かい白トリュフと、トッピングの白トリュフが、ダブルで濃厚に香ります。

スプマンテやビールなど、泡系の食前酒によく合うおつまみです。

白トリュフのブルスケッタ

ラ・ビスボッチャ店内

2.白トリュフの茶碗し

白トリュフの茶碗蒸し

メニューについて

和食のイメージが強い茶碗蒸しですが、ベースに使う卵は白トリュフと相性がよく、意外な組み合わせが楽しめます。

今回は具材に、イタリアのポルチーニ茸、寒くなる季節に甘みが増すホウレンソウ、熊野地鶏のムネ肉を合わせ、和伊折衷の秋味でまとめました。

調理

メニュー提案・撮影調理:副料理長・露詰まみ

茶碗蒸しの生地を混ぜる

茶碗蒸しの生地の材料。左から卵、生クリーム、パルメザンチーズ、自家製鶏のダシ汁、塩

生地の材料をシノアで濾し、余分なものを取り除く

器に具材を入れる

ホウレンソウは栃木県産を下茹でして使用

ポルチーニ茸はイタリア産のフレッシュタイプを炒めて使用

鶏のムネ肉は三重県のブランド地鶏「熊野地鶏」を使用

器に茶碗蒸しの生地を入れる

バットに湯を入れ、茶碗蒸しの容器を入れ、アルミホイルで覆い、オーブンで加熱して蒸す

蒸し上がった茶碗蒸しに、スライスしたての白トリュフを振りかけて完成

お召し上がり

白トリュフの茶碗蒸し

◆湯気で広がる香りが食欲を刺激する

アツアツの茶碗蒸しに振りかけた白トリュフは、湯気でしっとりして、香りが高く広がります。

白トリュフのシャープな香りは、湯気で丸みが加わり、ふくよかな印象です。

白トリュフの茶碗蒸し

具材のホウレンソウは濃厚でとろりとした美味しさがあり、ポルチーニ茸は旨みがしっかりして、鶏のムネ肉はふっくらジューシー。

濃いめの味がイタリアンらしく、不思議な新食感を楽しみます。

白トリュフの茶碗蒸し

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎パスタ&リゾット

3.白トリュフのタヤリン

白トリュフのタヤリン

メニューについて

白トリュフの産地、イタリア北部ピエモンテ州の地パスタ、タヤリンを自家製の生パスタでつくりました。

白トリュフと相性がよい、卵とバターをたっぷり使い、シンプルに香りを高めました。

調理

メニュー提案・撮影調理:副料理長・露詰まみ

無塩バターを入れたフライパンを加熱し、パスタの茹で汁を入れ、ソースにする

タヤリンを茹でる。茹で時間1分30秒

タヤリンは自家製の生パスタでつくる。生地は、卵黄、小麦粉、セモリナ粉、オリーブオイル、塩を混ぜる

茹で上がったタヤリンをソースのフライパンに投入

スライスしたての白トリュフを振りかけて完成

お召し上がり

白トリュフのタヤリン

◆細くて平たい麺が香りを高める

極細のタヤリンの断面は、よく見ると平麺。

平麺のしなやかさは絶妙で、バターソースと一体になり、とろりとした食感で白トリュフの香りを高めます。

白トリュフのタヤリン

タヤリンを噛みしめると、卵黄の風味が濃厚に香り、バターとともに、白トリュフの香りを高めます。

シンプルでありながら、食べ飽きない美味しさがあります。

白トリュフのタヤリン

ラ・ビスボッチャ店内

4.海老と蓮根のアニョロッティ 百合根入り白味噌バターソース 白トリュフかけ

海老と蓮根のアニョロッティ 百合根入り白味噌バターソース 白トリュフかけ

メニューについて

小粒な詰めものパスタ、アニョロッティは、白トリュフの産地、イタリア北部ピエモンテ州の地パスタで、タヤリンとともに白トリュフと合わせることが多いパスタです。

詰める中身はさまざまで、今回は白トリュフと同じ土で育つ仲間から、冬にかけて美味しくなる蓮根を使い、海老と合わせて海老しんじょをつくり、詰めました。

ソースには、同じく冬に旬を迎える根菜、百合根を入れ、白味噌であたたかみを加えました。

調理

メニュー提案・撮影調理:料理長・井上裕基

◆海老のダシ汁をつくる

海老はハワイ産のブランド海老「カウアイの宝石」を使用

鍋に海老の殻、ニンニク、セロリを入れ、オリーブオイルで炒める

氷を入れ、煮込む。氷から煮ると、ダシがより多く抽出できる

煮込んだ汁をシノアで濾す

シノアで濾した汁と煮詰めて海老のダシ汁の出来上がり

◆海老と蓮根の詰めものをつくる

蓮根は佐賀県産を使用

蓮根の皮をピーラーでむく

蓮根を薄くスライスする

海老と蓮根をフードプロセッサーで細かくする

海老と蓮根を挽いたものに海老のダシ汁を混ぜる

塩コショウで味と香りをつけ、海老と蓮根の詰めものの完成

◆アニョロッティを製麺する

アニョロッティ用に練った生地をパスタマシーンで薄く伸ばす。生地は全卵、卵黄、強力粉、セモリナ粉、オリーブオイル、塩を混ぜてつくる

海老と蓮根の詰めものを絞り袋に入れる

アニョロッティの生地の上に海老と蓮根の詰めものを細長く絞り出す

生地をパスタカッターでカットし、エッジを丸める

生地をつまんで詰めものを寄せる

アニョロッティの単位に切り分ける

切り分けるときに、生地の分離と接合を同時に行い、詰めものを密封する。柔らかい生パスタ生地だからできる技

切り分けたアニョロッティにセモリナ粉を振りかけ、くっつき防止の打ち粉にする

◆百合根の下ごしらえ

百合根は北海道産を使用

百合根を洗う

百合根をほぐす

ほぐした百合根に付着した泥を洗う

ほぐした百合根を下茹でする

◆仕上げる

フライパンで無塩バターを加熱し、パスタの茹で汁を入れ、ソースのベースにする

白味噌を入れ、味と香りをつける

味噌は元禄元年(1688年)に和歌山県で創業した「堀河屋野村」の白味噌を使用。昔ながらの手づくりの味噌と醤油の生産を続け、「三ツ星醤油」などで知られる製造元

百合根を投入

アニョロッティを茹でる。茹で時間1分30秒

茹で上がったアニョロッティをソースのフライパンに投入

アニョロッティをソースと和える

皿に盛り付け、パルメザンチーズを振りかける

スライスしたての白トリュフを振りかけて完成

お召し上がり

海老と蓮根のアニョロッティ 百合根入り白味噌バターソース 白トリュフかけ

◆ほっこり優しい旨み

ソースのバターやアニョロッティに使われている卵が、白トリュフの香りを高めます。

アニョロッティは小粒ながらもっちりした歯ごたえ。なかの海老しんじょは、海老のプリプリ感と蓮根のシャキシャキした食感がほどよくミックスして、やさしい旨みがあります。

海老と蓮根のアニョロッティ 百合根入り白味噌バターソース 白トリュフかけ

百合根はホクホクして、淡白な味ゆえに、ソースの白味噌がよく合います。

イタリアンでありながら、日本の冬を感じる余韻にほっこりします。

海老と蓮根のアニョロッティ 百合根入り白味噌バターソース 白トリュフかけ

ラ・ビスボッチャ店内

5.白トリュフとグアンチャーレの卵かけリゾット

白トリュフとグアンチャーレの卵かけリゾット

メニューについて

リゾットに使うバターやチーズは、トリュフと相性がよく、トリュフ・リゾットは人気のメニューです。

今回は、白トリュフに卵黄やカリカリに焼いたグアンチャーレを合わせ、より濃厚な味わいに仕上げました。

調理

メニュー提案・撮影調理:料理長・井上裕基

鍋に米を入れ、自家製鶏のダシ汁で炊く

米は、煮崩れしにくいイタリア産のリゾット用品種を使用。イタリア北部ピエモンテ州の米処ヴェルチェッリ県で1935年からリゾット用の米をつくり続ける「ロンドリーノ」社のブランド米「アクエレッロ」

自家製鶏のダシ汁は、鶏がら、ひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間煮込んでつくる

無塩バターを入れ、味と香り、とろみをつける

パルメザンチーズを入れ、味と香り、とろみをつける

グアンチャーレのスライスをオーブンで焼いたときに出た肉汁を入れ、コクと風味をつける

グアンチャーレとその断面。豚のホホ肉を塩漬けにして熟成させたもので、イタリア中部マルケ州の「トマッソーニ」社製を使用

皿にリゾットを盛り付け、卵黄をのせる

卵は神奈川県産の「長寿卵」。卵黄がオレンジ色で味に深みとコクがあり、イタリアの卵の質に似ていることから使用

カリカリに焼いたグアンチャーレをのせる

スライスしたての白トリュフを振りかけて完成

お召し上がり

白トリュフとグアンチャーレの卵かけリゾット

◆重なり合う濃いコクと香り

白トリュフは香りが強く、卵黄やグアンチャーレで旨みやコクを増したリゾットの力強い味がよく合います。

パルメザンチーズとグアンチャーレの熟成香や塩味は味を深め、食がすすみます。

白トリュフとグアンチャーレの卵かけリゾット

グアンチャーレのカリカリした食感がアクセントになります。

白トリュフそのものには、味はほとんどないけれど、強い香りから広がるイメージを、味で表現したようなリゾットです。

白トリュフとグアンチャーレの卵かけリゾット

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎メイン

6.牛フィレ肉のロッシーニ風

牛フィレ肉のロッシーニ風

メニューについて

牛フィレ肉を焼き、フォアグラを焼いてのせ、トリュフを振りかけて仕上げた、贅沢な一品です。

美食家だったイタリア人作曲家、ロッシーニが好んで注文したことが名称の由来とされています。

今回は、白トリュフとマデラ酒のソースを合わせ、美味しさを極めました。

調理

メニュー提案・撮影調理:副料理長・露詰まみ

牛フィレ肉は赤身が美味しいオーストラリア産を使用

フォアグラをカットする。フォアグラはフランス産を使用

素材に下味をつける。牛フィレ肉は塩とコショウ、フォアグラは塩のみを振りかける

牛フィレ肉に強力粉をまぶし、オリーブオイルを広げたフライパンで焼く

ひっくり返し、反対側からも焼く

マデラ酒を入れ、アルコール分をとばす

マデラ酒はポルトガルでつくられる酒精強化ワイン。ポルトガルで15世紀からワイン用のブドウの産地になったマデラ島で1850年に創業した「エンリケシュ&エンリケシュ」社の赤ワインを使用。スモーキーなフレーバーと、ほのかなキャラメルの味、繊細な酸味が特徴のフルボディタイプの甘口。食後のデザートワインに最適で、ソースにも使われる

自家製鶏のダシ汁を入れる

牛フィレ肉をフライパンから取り出し、アルミホイルで包み、オーブンで焼く

フライパンに残った汁を煮詰めてソースにする。無塩バターと自家製仔牛のブイヨンを入れ、味と香り、とろみをつける

フォアグラの表面を強火でサッと焼く

皿に牛フィレ肉を盛り付け、フォアグラを重ね、マデラソースをかける

スライスしたての白トリュフを振りかけて完成

お召し上がり

牛フィレ肉のロッシーニ風

◆濃厚な旨みとコクを贅沢に味わう

白トリュフの香りを肉に合わせると、肉の味がより深く感じます。

赤身がしっかりした牛フィレ肉との相性は抜群で、旨みやコクを濃く感じます。

牛フィレ肉のロッシーニ風

フォアグラのねっとりとした舌ざわりと濃厚な旨みは、牛フィレ肉と相乗効果で、味のインパクトと深みを増します。

マデラソースの甘みが、牛フィレ肉とフォアグラの旨みをまろやかに引き立てます。

牛フィレ肉のロッシーニ風

おすすめのワイン

ワイン監修:ソムリエ・酒見喜亮

赤ワイン「バローロ」

力強い赤ワイン

銘柄/バローロ
ワイナリー/マッソリーノ
生産地/イタリア北部ピエモンテ州
ぶどう種/ネッビオーロ 100%
生産年/2009年

牛フィレ肉のロッシーニ風は、強い味と香りが重なった料理です。合わせるワインも、力強い味わいの赤ワインをおすすめします。

白トリュフと同じ産地、ピエモンテ州の著名な赤ワイン、バローロ。

そのなかでも、最も強い味のワインをつくることで定評のある、セッラルンガ・タルバ地区のワイナリー、マッソリーニ社のバローロをおすすめします。

「牛フィレ肉のロッシーニ風」に赤ワイン「バローロ」を合わせて

ラ・ビスボッチャ店内

⚫︎ドルチェ

7.白トリュフ風味のシュークリーム

白トリュフ風味のシュークリーム

メニューについて

白トリュフと相性がよい卵や乳製品は、お菓子にもよく使われる材料です。

今回は、ミルキーなクリームで、白トリュフの香りをたっぷり楽しんでいただくために、大きなシュークリームをつくりました。

生地の表面をサクサクに焼いてバランスをとりました。

調理

メニュー提案・撮影調理:料理人・水谷結

◆生地を焼く

シュークリームの生地の材料を混ぜる。材料は卵、バター、牛乳、水、薄力粉、砂糖、塩

生地をオーブン用天板の上に絞り出す

生地の表面をサクサクに焼き上げるため、クッキー生地をのせる。クッキー生地はバターと砂糖、薄力粉を混ぜてつくる

生地をオーブンで焼く。温度は190℃15分、プラス170℃15分

◆白トリュフ風味のカスタードクリームをつくる

牛乳に白トリュフとバニラビーンズを入れ、加熱し、香りをつける

卵黄と砂糖、薄力粉を混ぜた生地に、香りをつけた牛乳を加える

混ぜ合わせた材料を鍋で加熱し、白トリュフ風味のカスタードクリームの出来上がり

◆仕上げる

白トリュフ風味のカスタードクリームに、ミキサーで泡立てた生クリームを混ぜ、仕上げに使う

シュークリームの生地の底辺にジョウゴで穴をあける

シュークリームの底辺に開けた穴から、仕上げのクリームを注入して完成

お召し上がり

白トリュフ風味のシュークリーム

◆白トリュフ香る、たっぷりクリーム

大きなシュークリームのなかに、とろとろのクリームがたっぷり入っています。

クリームは白トリュフの風味がついて、ミルキーな風味を濃厚に感じます。

白トリュフ風味のシュークリームの断面

シュークリームの生地はサクサクの焼き上がりで、クリームとのコントラストが楽しく、飽きない食べごたえがあります。

シュークリームが好きな方には、大満足の一品です。

白トリュフ風味のシュークリーム

11月のディナーは、

冬が来る前に、

ラ・ビスボッチャの「白トリュフフェア」で

お楽しみください。