季節のおすすめメニュー11月

RECOMMENDED SEASONAL MENU 2020 NOVEMBER

コラム『味と技』第76回

秋から冬へ

ビスボッチャでは、年間定番のグランドメニューに加え、季節のおすすめメニューも展開しています。

11月は、秋の深まりと冬支度を始める季節に美味しく感じるメニューをおすすめします。

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ 料理人・村澤大

写真・文/ライター 織田城司
Food Direction by Yuuki Inoue Mami Tsuyuzume Dai Murasawa
Photo・Text  by George Oda

前菜

1.アンコウと海の幸のズッペッタ

アンコウと海の幸のズッペッタ

メニューについて

◆おつまみスープであたたまる

寒い夜のディナーは、まず、あたたまりたいですよね。

そこで、前菜におすすめするのは、ズッペッタです。

小さなスープのことで、スープよりも汁が少なく、具だくさんで、スタートにちょうどいいおつまみです。

11月の具材のメインは、旬のアンコウ。水温が低くなる冬に身が締まり、美味しくなります。

ムール貝やハマグリ、アサリなどと合わせ、トマトで味に広がりを持たせます。

スープはパンにつけても美味しくいただけます。

調理

フライパンにオリーブオイルを敷き、強力粉をまぶしたアンコウの表面に焼き色をつける。アンコウは北海道産を使用

反対側も焼き、旨みを封じ込め、香ばしさを増す

ムール貝やハマグリ、アサリを投入し、白ワインを加え、香りをつける

自家製魚のダシ汁を加え、煮詰めながら魚介のエキスを抽出。ムール貝はカナダ産、ハマグリは千葉県産、アサリは愛知県産を使用

フレッシュトマトソースを加えて仕上げる

お召し上がり

アンコウと海の幸のズッペッタ

◆イタリア版アンコウ鍋の味

具材はどれもアツアツで、身体の中からじんわり、あたたかくなります。

アンコウの身はぷりぷりして、風味は淡白、味わいは白身魚の旨みを上品に感じます。

合わせるムール貝などの貝類は濃厚な味わいで、アンコウの繊細な味を引き立てます。

アンコウと海の幸のズッペッタ

トマトはとろっと柔らかく、コクのある酸味がアクセントになります。

スープに混ざるトマトの粒子は、魚介のエキスの濃厚な旨みを深めます。

気がつくと、いつの間にか、身体が汗ばんでいます。

アンコウと海の幸のズッペッタ

ラ・ビスボッチャ内観

2.季節のブラータチーズサラダ

①ブラータチーズとサツマイモのサラダ

メニューについて

ブラータチーズは、外はふんわり、中はとろりとした袋状のフレッシュチーズです。

ミルクの風味や甘みが濃厚で、野菜やフルーツと相性抜群。

11月に美味しくなる食材2種とともに、お楽しみください。

ブラータチーズはアメリカの「ディ・ステファノ」社製を使用。イタリア南部プーリア州出身のチーズ職人が、カリフォルニア酪農協会が認めた良質なミルクを使ってつくるチーズ

①ブラータチーズとサツマイモのサラダ

①ブラータチーズとサツマイモのサラダ

サツマイモは、特産地として300余年の歴史がある、鹿児島県種子島の高級ブランド芋「安納芋(あんのういも)」を使用

お召し上がり

①ブラータチーズとサツマイモのサラダ

茹でてちぎった「安納芋」は明るい黄金色。甘みがたっぷりしています。

食感は、ほくほく、しっとり。ブラータチーズとよく馴染み、ミルキーな甘みによく合います。

②ブラータチーズと柿のサラダ

②ブラータチーズと柿のサラダ

11月の柿は和歌山県産の高級ブランド柿「紀ノ川柿」を使用。樹上に実った状態の柿を一個ずつ丁寧に袋をかぶせて渋抜きし、完熟させたもの

お召し上がり

「紀ノ川柿」は、独特の渋抜きでできる黒褐色の斑状模様が美しく、見た目に完熟を感じます。

噛みしめると、シャキシャキとした歯ごたえの中に黒砂糖のような甘みをほのかに感じ、ブラータチーズのミルキーな味とよく合います。

②ブラータチーズと柿のサラダ

ラ・ビスボッチャ内観

3.甲イカとカルチョーフィのサラダ カラスミのパウダーかけ

甲イカとカルチョーフィのサラダ カラスミのパウダーかけ

メニューについて

◆旬のイカをイタリアン・サラダで味わう

冬から春先までが旬になる甲イカを、野菜たっぷりのサラダでいただきます。

11月使用する甲イカは鹿児島県産。身が大きく肉厚で、食べごたえがあり、茹でて美味しさを引き出します。

イタリアから取り寄せたカルチョーフィやカラスミのパウダーを合わせ、味に深みを加えます。

お召し上がり

甲イカとカルチョーフィのサラダ カラスミのパウダーかけ

◆豊かなイカの味わいを堪能

甲イカは茹でても硬くならず、弾力に富んでいます。

コシのある歯ごたえの中に、イカの香ばしい風味が香ります。

噛みしめると、甘みから旨みまでの広がりを豊かに感じます。

甲イカとカルチョーフィのサラダ カラスミのパウダーかけ

合わせるカルチョーフィやルッコラ、ミニトマトなどの野菜は、それぞれの持ち味でバラエティを広げ、いかにもイタリアン・サラダらしい味にまとめています。

豪快に振りかけた黄金色のカラスミのパウダーは、イタリアの特産地、サルデーニャ島のもの。

深いコクに、地中海のあたたかい太陽を感じます。

甲イカとカルチョーフィのサラダ カラスミのパウダーかけ

ラ・ビスボッチャ内観

パスタ&リゾット

4.鴨モモ肉ラグーのキタッラ

鴨モモ肉ラグーのキタッラ

メニューについて

◆鴨にギター?の合わせが絶妙!

滋味あふれる鴨は、寒さに耐える冬に脂を蓄え、旬になります。

そんな鴨の美味しさを、キタッラというパスタに合わせていただきます。

キタッラはイタリア語でギターの意味。ギターのように鉄弦を張った箱型の道具で製麺することが名称の由来です。

伝統の手づくりのキタッラは、鴨の野趣とよく合い、素朴な味わいに、あたたかさを感じます。

調理

◆キタッラを製麺する

キタッラ用の生地をパスタマシーンで薄く伸ばす。生地は卵黄を増した全卵にセモリナ粉、強力粉、オリーブオイル、塩を加えてつくる

小分けにした生地をキタッラの製麺道具の鉄弦の上にのせる

めん棒を転がし、生地を鉄弦の間から突き出して製麺する

製麺されたキタッラは、道具を傾けて脇から取り出す

取り出したキタッラは、くっつきを防ぐセモリナ粉にまぶす

キタッラの製麺道具はイタリア製を使用

◆仕上げる

キタッラを茹でる。茹で時間7分

鴨モモ肉のラグーソースをつくる。鴨モモ肉とニンジン、タマネギ、セロリを炒めたもの。鴨モモ肉は北海道産を使用

ソースのフライパンに茹で上がったキタッラを投入

キタッラをソースと和える

パルメザンチーズとエキストラヴァージン・オリーブオイルを加え、風味やトロみをつける

再び和え、皿に盛り付け、仕上げにイタリアンパセリのみじん切りとパルメザンチーズを振りかける

お召し上がり

鴨モモ肉ラグーのキタッラ

◆麺に染みわたる鴨の滋味

香味野菜の澄んだソースは、鴨の滋味をシンプルに引き立てます。

鴨のモモ肉は柔らかく、風味はマイルド。

脂が少なく、旨みとコクはすっきりした味わいです。

鴨モモ肉ラグーのキタッラ

キタッラは太めで、モッチリとした歯ごたえがあり、食べごたえがあります。

湾曲するような強いコシはなく、やや柔らかめで、ふぞろい。

その素朴さが鴨と絶妙に合い、たっぷり吸ったソースで鴨の滋味を追いかけます。

鴨モモ肉ラグーのキタッラ

ラ・ビスボッチャ内観

5.黒キャベツのリゾット カレイの炭火焼きのせ

黒キャベツのリゾット カレイの炭火焼きのせ

メニューについて

黒キャベツはイタリア産を使用

◆冬の味のリゾット

黒キャベツは、イタリア中部トスカーナ州が原産とされる冬野菜です。

黒キャベツが市場に山積みになるのが、トスカーナ地方の冬の風物詩です。

黒キャベツの味は、甘みと旨みが豊かで、コクがあり、苦みは控えめで、いろんな食材と合わせやすい。

11月は、そんな黒キャベツをイタリアから取り寄せ、ペーストにしてリゾットに混ぜます。

旬のカレイの炭火焼きをのせ、冬らしい食べ合わせを楽しみます。

フィレンツェの市場に見る黒キャベツ

調理

カレイを炭火で香ばしく焼く。カレイは九州玄界灘産を使用

反対側からも焼く

リゾット用のイタリア米を自家製鶏のダシ汁で炊く

リゾットに使う米はイタリア米。イタリア最大の米どころピエモンテ州ヴェルチェッリ県で1935年からリゾット用の米をつくり続ける「ロンドリーノ」社のブランド米「アクエレッロ」を使用

自家製鶏のダシ汁は、鶏がらやひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間かけて煮込んだもの

無塩バターを加え、風味やトロみをつける

パルメザンチーズを加え、風味やトロみをつける

黒キャベツのペーストを加え、味と香りをつける

調味料を混ぜ合わせ、煮詰める

炭火で焼いたカレイをカットし、リゾットの上に盛り付ける

お召し上がり

黒キャベツのリゾット カレイの炭火焼きのせ

◆コク旨に感じる冬の贅沢

黒っぽいリゾットの見た目はインパクトがあります。

黒キャベツのペーストは植物繊維ゆえにサラリとして、イカ墨ほど濃厚ではありません。

定番のパルメザンチーズのリゾットのコクが、ほどよく増した味わいです。

黒キャベツのリゾット カレイの炭火焼きのせ

リゾットの上にのせたカレイは、炭火で焼くことで旬の美味しさが増しています。

脂がのったカレイの皮は、染み出た脂が沸騰して揚げ物のようにサクサクと焼け、焼き魚のいい香りが濃く、身は締まり、白身魚の旨みが凝縮しています。

ご飯とおかずのコク旨セットに、冬の贅沢を感じる一皿です。

黒キャベツのリゾット カレイの炭火焼きのせ

ラ・ビスボッチャ内観

メイン

6.真牡蠣のムニエル カブのピューレ添え

真牡蠣のムニエル カブのピューレ添え

メニューについて

◆香ばしく、ぷりぷりした真牡蠣

真牡蠣は11月から2月にかけて大きくなり、身がぷっくり膨らんで、味も美味しくなります。

そんな真牡蠣をムニエルでいただきます。

小麦粉をまぶし、溶かしバターをたっぷり使い、じっくり火を通して美味しさを引き出します。

季節の野菜として、秋に甘みが強くなるカブのピューレを添えます。

調理

真牡蠣は青森県産を使用

フライパンで無塩バターを溶かす

殻から外し、旨みを封じ込めるために強力粉をまぶした真牡蠣をフライパンに投入

牡蠣の柔らかさを残しながら中まで火を通すため、溶かしバターを何度もかけながら低温長時間加熱を施す

殻に敷いたカブのピューレの上に真牡蠣のムニエルをのせ、焦がしバターを振りかけて仕上げる

お召し上がり

真牡蠣のムニエル カブのピューレ添え

◆バターで極まるクリーミーな旨み

溶かしバターでじっくり火を通した真牡蠣は、バターの風味と真牡蠣の焼けた香りが混じり、食欲をそそります。

身は丸々と膨らみ、低温長時間加熱の効果で、柔らかさがほどよく残っています。

味わいはクリーミーな旨みとコクが広がり、バターの風味とよく合います。

真牡蠣のムニエル カブのピューレ添え

真牡蠣の下から出てくるカブのピューレは、とろとろになった植物繊維が熱を蓄え、アツアツです。

カブの風味や甘みが真牡蠣を引き立て、あたたかさを増しています。

バターで美味しくなる真牡蠣を、ぜひ一度ご賞味ください。

真牡蠣のムニエル カブのピューレ添え

ラ・ビスボッチャ内観

7.牛ホホ肉のペポーゾ ジャガイモのピューレ添え

牛ホホ肉のペポーゾ ジャガイモのピューレ添え

メニューについて

トスカーナ州フィレンツェのボーボリ庭園から撮影した町並み

◆冬のトスカーナ料理

ペポーゾとは、コショウの意味で、コショウを効かせた赤ワインで煮込む牛肉料理です。

中世のトスカーナ地方で生まれたとされ、寒さをしのぐ冬の料理として、何百年も受け継がれてきました。

11月は、国産の牛ホホ肉を煮込みます。

牛ホホ肉は牛一頭から約1kgほどしか取れない希少な部位です。

よく動かす部位のため、筋が発達して、濃厚な味わいがあります。

脂肪やゼラチン質も多く含むため、煮込むととろとろに柔らかくなります。

牛肉と相性がいいジャガイモのピューレを添えます。

お召し上がり

牛ホホ肉のペポーゾ ジャガイモのピューレ添え

◆煮込みで身体の中からあたたまる

長時間煮込んだ煮汁は、ワインや黒コショウが肉汁と溶け合い、まろやかに調和しながら深いコクを生み出しています。

ドロドロとした煮汁の質感は、身体を中からあたためる要素のひとつです。

ほどよく残る黒コショウのスパイシーな刺激も発汗作用を促進します。

牛ホホ肉のペポーゾ ジャガイモのピューレ添え

煮込んだ牛ホホ肉は、繊維質の間の細かい脂分が溶け、とろとろに柔らかくなっています。

噛みしめると、すぐに崩れる柔らかさです。

味わいは、牛肉らしい旨みとコクをしっかり感じ、身体の中からパワーが湧いて、あたたまります。

付け合わせのジャガイモのピューレは、自然の甘みが際立ち、煮込みの濃い味を和らげます。

牛ホホ肉のペポーゾ ジャガイモのピューレ添え

ラ・ビスボッチャ内観

8.柿のタルト

柿のタルト

メニューについて

◆季節のフルーツタルトのシリーズ

旬のフルーツをトッピングするタルトの歳時記。

11月は、和歌山県産の「紀ノ川柿」をトッピングします。

お召し上がり

柿のタルト

◆晩秋の甘さ

「紀ノ川柿」はシャキシャキとした食感で、噛みしめると黒砂糖のような甘みをほのかに感じます。

夏の果実のように、タルトのクリームと競うような甘さではありませんが、そこに晩秋の季節を感じて味わいます。

柿のタルト

柿のタルト

ラ・ビスボッチャ内観

9.リンゴと木の実のストゥルーデル

リンゴと木の実のストゥルーデル

メニューについて

◆旬のリンゴを焼き菓子で

リンゴの生産量日本一の青森県。

その中でも「紅玉(こうぎょく)」は果肉が緻密で、加熱しても形崩れしにくいことから製菓に最適です。

完熟する11月は、ストゥルーデルという、薄い皮で巻いて焼くお菓子でいただきます。

木の実を合わせ、季節の味わいを深めます。

調理

ストゥルーデル用の生地をめん棒で薄く伸ばす。生地は全卵、薄力粉、バター、砂糖を練り、一日寝かせて素材を馴染ませてつくる

綿棒で生地を伸ばした後、素手を使い、さらに生地を薄く伸ばす

伸ばした生地に溶かしバターを塗る

生地の上に具材を並べる

具材はリンゴやレーズン、松の実、アーモンドなど。砂糖やシナモン、ラム酒、レモンの皮、レモン汁などで味と香りをつける

ストゥルーデルに使うリンゴは青森県産の「紅玉(こうぎょく)」。太陽の光をうけて養分をつくる葉を取らずに栽培するため、リンゴの表面に色ムラができるが、味はギュッと凝縮している

具材を生地で巻く

巻いた生地の表面に溶かしバターを塗り、オーブンで焼く

焼き上がったストゥルーデル

粉糖を振りかけて仕上げ、注文に応じて切り分ける

お召し上がり

リンゴと木の実のストゥルーデル

◆多彩な食感と味に驚く

こんがり焼けたストゥルーデルの皮は、上の層は空間が広く、パリンと割れる軽さがあり、サクサクとした食感の中に香ばしさを感じます。

底の層は、具材の重みで密着し、具材から染み出した果汁でしっとりして、しっかりした食感の中に甘さを感じます。

リンゴと木の実のストゥルーデル

中のリンゴは加熱することで柔らかく、ジューシーになり、甘酸っぱさが増しています。

木の実はリンゴから染み出した果汁で柔らかくなり、旨みが増しています。

完熟の具材を引き立てるシナモンやリキュールの香りは、イタリアのお菓子らしい、大人向けの余韻です。

リンゴと木の実のストゥルーデル

11月のディナーは、季節のおすすめメニューに、

深まる秋と、冬の訪れを感じて、お楽しみください。