EARLY SPRING FAIR
コラム『味と技』第57回
春の旬を味わう
風は冷たいけれど、日ざしは春。そんな気分を食卓で先どり!
春の旬菜を集めて3月2日(月)〜14日(土)までフェアを開催します。
期間限定メニューが4品登場。ひと足早い春の訪れをお楽しみください。
料理の下ごしらえをする料理長・井上裕基(左)と副料理長・露詰まみ(右)
監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ
写真・文/ライター 織田城司
Food Direction by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
1.イチゴのサラダ
イチゴのサラダ
メニューについて
◆世界の畑から
世界各国から春野菜や果物を集め、サラダをつくりました。
国産イチゴ「とちおとめ」に、フランス・ロレーヌ地方産のホワイト・アスパラガスやイタリア産のタルディーボを加えました。
調理
サラダの食材。左からイタリア産タルディーボ、フランス・ロワール産ホワイト・アスパラガス、国産マイクロ・リーフ、栃木県産とちおとめ
ホワイト・アスパラガスの皮をピーラーでむく
ホワイト・アスパラガスに塩をふって下味をつける
ホワイト・アスパラガスにオリーブオイルをふりかけて香りをつける
ホワイト・アスパラガスを炭火で焼く。繊維が柔らかくなり、甘みが出てくる
焼き上がったホワイト・アスパラガスを食べやすいように半分にカットする
ホワイト・アスパラガスの上にカットした食材を盛り付ける
自家製ドレッシング(赤ワイン酢、エキストラヴァージン・オリーブオイル、塩)をふりかけて仕上げる
お召し上がり
イチゴのサラダ
◆多彩な歯ごたえ、爽やかな味わい
イチゴは、柔らかい歯ごたえとヌメリ感が程よくミックスして、自然の甘酸っぱさが口いっぱいに広がります。
ホワイト・アスパラガスは、炭火焼きにすることで、香ばしさや旨みがよく引出されています。
あえて残した歯ごたえに、新芽の生命力を感じます。
イチゴのサラダ
タルディーボはシャキッとした歯ごたえとともに、爽やかな風味とほろ苦さを感じます。
春ならではの多彩な歯ごたえと、爽やかな味わいを感じてお楽しみください。
イチゴのサラダ
ラ・ビスボッチャ入口の鉢植え
2.ホタルイカのパスタ
ホタルイカのパスタ
メニューについて
◆ひねりパスタに感じる春の潮騒
海産物で春を感じる食材のひとつに、ホタルイカがあります。
その味わいや食感を、柔らかい自家製生ショート・パスタ「ストロッツァプレーティ Strozzapretti」で引き立てました。
調理
◆ストロッツァプレーティをつくる
パスタの生地をビニール袋に入れて練る
パスタの生地は、薄力粉、卵黄、オリーブオイル、牛乳、水、塩を業務用ミキサーで混ぜてつくる
練りの途中で生地の粘性を素手で確認。材料の比率を決めているが、気温や湿度の影響で粘性が変化するため、素手の感触を頼りに不足する材料を足して微調整する
材料を微調整して再び生地を練る
練りが完了したらビニール袋から余分な空気を抜き、口を結んで生地を30分ほど寝かせて材料をなじませる
寝かせた生地をパスタマシーンに入れて伸ばすため、小分けにする
生地をパスタマシーンに何度か通して伸ばす
伸ばした生地の厚さを確認
生地にカッターで切り込みを入れる。切り込みは生地がテープ状になる20㎜ほどの幅
テープ状にカットした生地の一枚をまな板からはがす
片手にテープ状生地を持つ
もう一方の手で、テープ状生地にひねりを加えながら引き下ろしていく
ひねった生地を6㎝ほどの長さでちぎり、ストロッツァプレーティの出来上がり
ストロッツァプレーティの理想のひねり具合は「半開き」。開きすぎても閉じすぎてもソースが絡むスペースが少なくなってしまうため
バットに並べたストロッツァプレーティのひねり具合を目で確認しながら手加減を調整する
◆ソースをつくる
ソラマメをさやから取り出す
ソラマメは鹿児島県産
ソラマメを茹でる
茹でたソラマメを氷水で冷やす
ソラマメの皮をむく
ソラマメを4分の1の大きさに砕いてパスタに絡みやすくする
ホタルイカの硬い部分をピンセットで取り除く
ホタルイカは兵庫県産
フライパンにオリーブオイル、ニンニクのみじん切り、赤トウガラシを入れて加熱する
アンチョビ・ペーストを加える
ホタルイカを投入
ゴムベラでホタルイカを軽く叩き、中から出てくるワタをダシにする。外側の形状は歯ごたえと見栄えのために、できるだけ維持する
白ワインを加える
自家製魚のダシ汁を加える
自家製イカとアンチョビのダシ汁を加える
自家製トマトソースを加える
煮立てて水分を飛ばしながら粘性を出す
ソラマメを加えてソースの出来上がり
◆仕上げる
ストロッツァプレーティを茹でる
タイマーをセットする。茹で時間6分
茹ではじめはパスタ同士がくっつかないようにほぐす
茹で上がりを待つ
茹で上がったストロッツァプレーティをソースのフライパンに投入
ストロッツァプレーティとソースを和える
イタリアンパセリのみじん切りとエキストラ・ヴァージンオリーブオイルを加えて混ぜる
盛り付けて出来上がり
お召し上がり
ホタルイカのパスタ
◆まろやかなイカの風味と濃いコク
出来上がったパスタからイカの風味が豊かに漂います。
小さなホタルイカゆえに、イカの風味はまろやか。でも、味わいはしっかりして、塩味や旨み、コクを濃厚に感じます。
ホタルイカのパスタ
ストロッツァプレーティは柔らかく、モッチリ感は程よく、魚介系のソースがよくしみて、ホタルイカの歯ごたえや味わいと調和します。
ソラマメの香ばしさと自然の甘みがアクセントになります。
どこかに和食と通じるような余韻が、味わいを深めます。
ホタルイカのパスタ
おすすめのワイン
白ワイン「ソアーヴェ・クラシッコ・ラ・ロッカ」
◆しっかりした味わいの白
銘柄/ソアーヴェ・クラッシコ・ラ・ロッカ
ワイナリー/ピエロパン
生産地/イタリア北部ヴェネト州ソアーヴェ
ぶどう種/ガルガーネガ100%
生産年/2017年
色は深い黄色。香りはトロピカルフルーツやナッツにヴァニラやスパイスのニュアンスが重なります。
味わいは凝縮感の中に複雑味を感じ、リッチな印象。ホタルイカの風味やコクによく合います。
白ワイン「ソアーヴェ・クラシッコ・ラ・ロッカ」と「ホタルイカのパスタ」
ラ・ビスボッチャ入口の鉢植え
3.イタリアン・ロールキャベツ
イタリアン・ロールキャベツ フレッシュ・トマトソース
メニューについて
◆春らしい味を2種のソースで
春に美味しくなるキャベツを使ってロールキャベツをつくります。
キャベツは風味や味が濃いイタリア産のチリメンキャベツを使い、中の挽肉は柔らかくてジューシーな肉を使い、春らしさを強調します。
合わせるソースは、フレッシュ・トマトソースとホワイトソースの2種をご用意します。
調理
◆ロールキャベツのタネをつくる
ミンチマシーンで挽肉をつくる。撮影を担当した料理人は老田裕樹
ロールキャベツの挽肉の肉種。フレッシュで柔らかい肉を使う
挽肉に食材を加える
挽肉に加える食材は卵、レーズン、松の実、牛乳に浸したパン、タマネギのみじん切り
塩コショウを加える
挽肉、食材、調味料を混ぜる
タネの形をつくる
出来上がったロールキャベツのタネ
◆キャベツの下ごしらえ
チリメンキャベツの根をくり抜く
チリメンキャベツはイタリア産
チリメンキャベツの葉を必要数揃える。ロールキャベツ1個につき2枚使用
チリメンキャベツを茹でる
茹でたチリメンキャベツを氷水で冷やす
冷やしたチリメンキャベツを布の上に広げ、余分な水分を吸収する
上からも水分を吸収
ミートハンマーで太い葉脈を叩いて柔らかくする
◆ロールキャベツをつくる
チリメンキャベツに薄力粉をふりかける
葉の根本にタネを置く
根本からタネを巻き込む
2枚目も根本から巻く
途中で葉の左右を折り込む
再び巻き込む
先端を楊枝で固定してロールキャベツの出来上がり
フレッシュ・トマトソース味
鍋底にオリーブオイルを注ぎ、砕いたニンニクを入れ、加熱しながら香りをつける
カットしたトマトを加える
トマトは甘みが強い国産フルーツトマトを使用
自家製トマトソースを加える
自家製仔牛のペーストを加える
自家製鶏のダシ汁を加える
自家製鶏のダシ汁は、鶏がらやひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間かけて煮込んだもの
ロールキャベツを入れて煮込む
楊枝を取り除いてソースとともに盛り付ける
お召し上がり
イタリアン・ロールキャベツ フレッシュ・トマトソース
◆若々しい味わいに感じる春
ロールキャベツとトマトソースは定番的な組み合わせです。キャベツに風味と味が濃いイタリア産チリメンキャベツを使うことで、トマトソースのまろやかな酸味が際立ち、春らしさをより強く感じます。
中の挽肉はキメが細かくて柔らかく、若々しい風味を感じます。まろやかな旨みとともに、キャベツの春らしさと調和します。
イタリアン・ロールキャベツ フレッシュ・トマトソース
イタリアン・ロールキャベツ フレッシュ・トマトソース
ホワイトソース味
イタリアン・ロールキャベツ ホワイトソース
カルチョーフィの下処理をする
カルチョーフィはイタリア産
カルチョーフィの可食部を薄くスライスする
鍋底で無塩バターを加熱して溶かす
薄力粉にまぶしたカルチョーフィを投入
牛乳を加える
自家製鶏のダシ汁と、自家製仔牛のペーストを加える
ロールキャベツを入れて煮込む
お召し上がり
イタリアン・ロールキャベツ ホワイトソース
◆まろやかでクリーミー
ホワイトソースのミルキーな風味は、トロトロになったチリメンキャベツの風味、挽肉からしみ出した肉汁の風味と溶け合い、食欲をそそります。
具材のカルチョーフィは柔らかく、旨みやほろ苦さを感じます。
イタリアン・ロールキャベツ ホワイトソース
挽肉の中に仕込んだレーズンや松の実がアクセントになります。
ソースはパンにつけても美味しくいただけることは、言うまでもありません。
イタリアン・ロールキャベツ ホワイトソース
ラ・ビスボッチャ店内
4.ミモザケーキ
ミモザケーキ
メニューについて
◆ミモザに見立てたケーキ
春の季節感を満喫するため、春に咲く黄色い花、ミモザに見たてたケーキをスポンジを散りばめてつくりました。
中にイチゴのスライスとクリームが入っています。
調理
◆表面に飾るスポンジをつくる
スポンジケーキを小分けにする。撮影を担当した料理人は田畑真琴
茶色い部分をカットして取り除く
黄色いスポンジを細かくカットして表面に飾るスポンジの出来上がり
◆ミモザケーキを組み立てる
ベースのスポンジを横にスライスする
マラスキーノ酒で香りをつけたシロップをスポンジに塗る
マラスキーノ酒はチェリーからつくるリキュール。香りが高く、酸味があることから製菓やカクテルの香料として使われる。オランダのアムステルダムで1575年に創業したボルス社のものを使用
ケーキの中に挟むイチゴをカットする。イチゴは福岡県産「あまおう」を使用
スポンジの上にクリームを塗り、イチゴを重ね、その上からクリームを塗り、階層を重ねる
ナイフで表面にクリームを塗る
表面のクリームにスポンジを貼り付けて出来上がり
お召し上がり
ミモザケーキ
◆たっぷりしたクリームの甘み
ショートケーキでおなじみの素材を春の装いでいただきます。
中はクリームがたっぷり積み重なり、細かいスポンジと混ぜると、ボリューミーな食べごたえの中に甘さが広がり、春の気分を盛り上げます。
イチゴの爽やかな酸味とミントの葉のクールな香りがアクセントになります。
ミモザケーキ
春はすぐそこ。今度のディナーは、
ビスボッチャの「春のグルメフェア」でお楽しみください。
ラ・ビスボッチャ入口の鉢植え