真夏の夜の炭
大人のクオリティ・ライフスタイル誌「LEON」編集部が主催して、読者と名店の食体験をともにするイベント「LEON’sガストロノミー」の第2回が2023年7月29日(土)、ビスボッチャで開かれました。
テーマは「Chacoal (炭)」です。炭火焼きづくしのコース料理をご堪能いただきながら、調理のライブ感や交流を楽しみました。その模様を紹介します。
監修/料理長・井上裕基
写真・文/ライター 織田城司
Supervised by Yuuki Inoue
Photo・Text by George Oda
1.開催概要
基本情報
イベントのタイトル:「LEON’s ガストロノミー with ラ・ビスボッチャ」
主催者:株式会社主婦と生活社 LEON編集部
開催日時:2023年7月29日(土)
17:30〜22:00
場所:東京広尾 イタリアンレストラン「ラ・ビスボッチャ」
メインダイニング貸切り
参加者:主催者が募集したお客さま約30名(会費制)
天候:東京都心 晴れ 気温(高)35.7℃(低)25.8℃ 湿度67%
コンセプト
「LEON’sガストロノミー」は、食こそ、知的体験のひとつで、名店の美食を大人に楽しんでもらいたい、という思いからLEON編集部が発足させたイベントです。
その第2回目がビスボッチャで開催されました。
テーマは「Chacoal(炭)」
ビスボッチャが得意で、夏に食べたい炭火焼き料理を特集し、コースで提供します。
ドレスコードは「ドレスアップしてシネマのようなディナー会」をテーマに「男性はジャケット着用、女性はパーティドレスなど」と表記されました。
スペシャル・コンテンツ
①特別ディナーコース
LEON編集部とビスボッチャがコラボして組み立てた、炭火焼きづくしの特別ディナーコースを提供。
②コラボ企業商品との新鮮な組み合わせ
イノベーティブな商品開発に取り組む日本企業の商品を、料理に合わせて紹介。
◆株式会社 hide kasuga 1896
環境調和型素材を開発する同社の新商品で、循環する新たな木材「トランスウッド」を使用し、隈研吾がデザインを担当したテーブルウエア「レトワコレクション」の黒い皿とボウルを料理の盛り付けに使用。
◆平和酒造株式会社
和歌山県の酒造メーカー。料理に合わせるお酒として、同社の日本酒「紀土」とビール「平和クラフト」が提供されました。
③ジローラモさんのステーキソース
LEONのモデルでおなじみのパンツェッタ・ジローラモさんがディナーに同席。ステーキに合わせるソースを提案し、自らソースづくりの調理も実演。
④”劇場型誌面作成”の新体験
ジローラモさんのステーキソースのレシピや調理をLEON 11月号の記事にするため、編集部が同時取材。誌面づくりのリアルな現場感を体験。
進行
17:30 開場・アペリティーボ・タイム
18:30 ディナースタート
20:40〜21:00 ジローラモさんの調理と同時取材する”劇場型誌面作成”
22:00 閉会
2.アペリティーボ・タイム
優雅な食文化を再現
イタリアでは、食事の前に食前酒を楽しむアペリティーボという習慣があります。
ディナーの席に座る前に、バーカウンターで軽めの飲み物やおつまみで立ち飲みをすることが一般的です。食事の食欲を促進する効果があるとされています。
この立ち飲みの時間に、会食者との挨拶や紹介、偶然お店で出会った知人との交流などを楽しみます。ランダムに来店する会食者をまとめ、時間を調整する役割もあります。
食事にたっぷり時間をかけて楽しむ、イタリア人ならではの優雅な習慣です。
今回のイベントでは、そんなイタリアの習慣を楽しんでいただこうと、ディナーの前にアペリティーボ・タイムが約1時間設けられました。
3.ディナー・タイム
開会挨拶要約
◆LEON編集部 編集長 石井洋さん
皆さんと、新しい体験を共にしたいという思いから「Club LEON」という会員サービスを立ち上げました。「LEON’sガストロノミー」はその一環のイベントです。
食を非常に重要なカルチャーと考えているので、LEONのフィルターを通した、新しい食体験を皆さんと共にしたいという思いで、スタッフ一同でつくりあげています。
その第2回目のラ・ビスボッチャは、日本のイタリアンの名店です。イタリアの友人が来日すると、ここで、大勢で食事をします。彼らが「イタリアのレストランよりも美味しいかもしれない」というくらい、本当に素敵なお店です。
◆料理長 井上裕基
イベントのお話をいただいたとき、ビスボッチャらしさを改めて考えたら、炭火を囲む雰囲気でした。今日は炭火を使った料理を存分にお楽しみください。
炭火焼きづくしのコースメニューと調理
①カンパチのカルパッチョ
◆メニューについて
イタリアンの冷前菜の定番、カルパッチョ。今回のイベントでは、夏から秋にかけて美味しくなるカンパチの皮目を炭火で軽く炙り、スモーキーな香りをアクセントにしました。
◆調理
②ブラータチーズとイチジク
◆メニューについて
イチジクは、果肉が柔らかく、幅広くアレンジできる果物です。下味をつけて炭火で焼いてから冷やします。
イチジクの濃い甘みを、ブラータチーズのミルキーな風味と、バジルの爽やかな香りで引き立てました。
◆調理
③タコとジャガイモの温製サラダ
◆メニューについて
海産物が豊富で、古代からタコを食べていたイタリア人。大航海時代に南米からジャガイモが伝来すると、庶民の間で、タコとジャガイモを合わせると美味しい、という評判が広まり、定番料理になりました。
ビスボッチャでも、創業以来30年間続ける人気の前菜です。通常、蒸し焼きで仕上げるタコを、今回のイベントでは、さらに炭火で焼き、香ばしく仕上げました。
◆調理
④キャビアとナス冷製カペッリーニ
◆メニューについて
炭火で焼いたナスの果肉のみを冷やし、冷製カペッリーニに絡めます。焦げ目が見えないのに、スモーキーな風味を感じる新鮮な味わいです。
◆調理
⑤ウナギとズッキーニのリゾット
◆メニューについて
パルミジャーノ・レッジャーノのリゾットにズッキーニを加え、ウナギの炭火焼きをトッピングしました。ウナギは、古代ローマのレシピに由来する、バルサミコソースをつけて炭火で焼きました。
◆調理
⑥オマール海老の塩包み焼き
◆メニューについて
最盛期をむかえたカナダ産のオマール海老を、塩の生地で包んで炭火で焼き、ふっくら、しっとり仕上げました。
◆調理
⑦アイルランド産ヘアフォード牛のTボーン
◆メニューについて
牧草を食べて育ち、香ばしく、旨みが濃いアイルランド産のヘアフォード牛のTボーンを、シンプルに塩とオリーブオイルのみを振りかけて炭火で焼きました。焼き上げてから黒コショウを振りかけて仕上げています。
ジローラモさんのソースと、白インゲン豆を添えました。
◆調理
⑧ブルーベリーのメリンガータ
◆メニューについて
メリンガータは、メレンゲ菓子の意味で、メレンゲのクリームがたっぷり使われています。
ビスボッチャが1993年に創業した当時、ヴェネチアの名店『ハリーズバー』のパティシエを招いて教わったレシピを、30年間続ける定番のドルチェです。その夏版として、クリームにブルーベリーを加えました。
表面の焼き色は、通常ガスバーナーの火を使いますが、今回のイベントでは炭火が使われました。
◆調理
⑨黒ゴマのティラミス
◆メニューについて
ビスボッチャが創業以来30年間続ける定番のドルチェです。イベント用に、炭火で炒り、香ばしさを高めた黒ゴマを加えました。
ティラミスに使われるコーヒーやココアに、ゴマが加わることで、植物の種同士の調和が深まります。
◆調理
4.劇場型誌面作成
ソースづくりに感じる優しさ
コース料理のオマール海老と、Tボーンステーキの間に”劇場型誌面作成”というアトラクションが挿入されました。
ジローラモさんは、LEONの連載記事で食文化を紹介しています。
今回のイベントで、ジローラモさんは、炭火焼きステーキに合わせるソースを提案し、調理も実演しました。その模様をLEON編集部が11月号(9月25日発売予定)の記事に仕立てるため、同時取材をする趣向です。
ジローラモさんは、イタリア国旗をイメージした3色のソースのレシピを解説しながら調理、編集者がディレクションを出し、カメラマンが撮影し、ライターが取材をしました。
誌面づくりは、時間を効率よく使うために、多くの専門スタッフが集まって一斉に作業を進めます。その凝縮感と緊迫感が伝わりました。
ジローラモさんは、家でバーべキューをよくするそうです。でも、焼く食材が毎回ほとんど同じになるため、飽きられないように、ソースで変化をつける技がおすすめと紹介しました。
ジローラモさんは、今回のソースはどれも簡単なものだという。その理由を「難しいと、誰もつくらないでしょ。それに、女性を待たせるのはよくない」と語りました。その優しさが、モテる男の極意だと感じました。
5.まとめ
知的食体験の美味しさ
タコの料理を食べた参加者は「故郷の広島を思い出す」と語りました。
イタリア料理は、家庭料理のように素朴で、どこか懐かしい味わいが美味しく、その魅力をお楽しみいただきました。
カンパチの料理を食べた参加者は「季節感がうれしい」と語りました。
炭のテーマながら、夏に美味しく感じる要素が盛り込まれていることが好評でした。
冷製カペッリーニを食べた参加者は「魚醤のことをはじめて知り、感動しました」と語りました。
イタリアは歴史が長く、調味料も豊富で、奥が深いことをご理解いただきました。
イチジクの料理を食べた参加者は「炭火で焼いてから冷やす調理法に驚いた」と語りました。
ビスボッチャでは、マンスリーメニューのなかで多様な炭火焼き料理も提供しています。その実績を生かして、味と香りにバラエティがありました。
石井編集長は「いろいろなチャコール感を楽しんだ。冷製パスタとか、あまりビスボッチャで食べないメニューもあった。お肉はいくらでも食べられる感じ。もたれず、最高の味」と語りました。
このほか、食材の実物を見たり、調理の実演を見たり、燃え上がる炎の熱を感じたり、料理の背景をライブで感じることが、美味しさをきわだてました。
炭火や厨房が見える、ビスボッチャのメインダイニングの醍醐味が、「LEON’s ガストロノミー」の知的食体験の印象を深めました。
イタリアらしい交流の楽しさ
LEONが提案する大人のクオリティ・ライフスタイルの参考にするのは、人生をエンジョイするイタリア人。そのひとつはフレンドリーな性格です。食事の雰囲気もリラックスして、出会いと交流を楽しみます。
今回のイベントでは、そんな雰囲気が意識され、さまざまな交流がありました。参加者同士の交流はもちろん、厨房と客席との交流、編集部と客席との交流、コラボ企業商品との交流などです。
イベントを通じて、はじめてビスボッチャに来店された参加者もいて、お互いの新しい出会いをよろこびました。
イベント会場と別の席で会食していたイタリア人女性が、ジローラモさんに挨拶に来る一幕もありました。イタリアのレストランでよく見る、フレンドリーな雰囲気そのままでした。
LEONの世界観をリアルに体感
サプライズな出会いもありました。イベント会場と別の席で会食していたイタリアのラグジュアリー・ファッション・ブランド「ブルネロ・クチネリ」ジャパン社代表の宮川ダビデさんは、LEONがイベントを開いていることを知ると、赤ワイン「コルディピエトレロッソ」のマグナムボトルを差し入れてくれました。
これは宮川さんの父親がトスカーナ州のワイナリー「ブリケッラ」で生産するもので、ビスボッチャも仕入れていたので、すぐ対応できました。粋な計らいに感謝します。
こうした、ビスボッチャならではの、イタリアらしい交流が、食事をより美味しく、イベントをより楽しくしました。
「LEON’sガストロノミー」は、LEONの誌面で見る世界観を、リアルな空間で体感することに感動して、酔いしれるイベントでした。