CHRISTMAS SPECIAL MENU 2020
コラム「味と技」第78回
クリスマスの特別感を、とっておきのイタリアンで
クリスマスは、美味しい料理をゆっくり味わいたい。
というお客さまのために、12月17日(木)〜27日(日)の期間、
豪華なクリスマス限定メニューを8品ご用意します。
ご注文はコースではなく、アラカルトで承ります。定番メニューとともに、お好みでお選びください。
店内はイタリアから取り寄せたアンティークのクリスマス装飾品をイタリア人が飾り、本場のクリスマスの雰囲気です。
料理とともに、イタリアにいるようなファンタジーをお楽しみください。
監修・調理/料理長・井上裕基 副料理長・ 露詰まみ
写真・文/ライター 織田城司
Food Direction・Cooking by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume
Photo・Text by George Oda
前菜
1.クリスマスカラーの前菜4種のプレート
メニューについて
◆冬の味覚で彩るクリスマス
クリスマス気分を盛り上げる前菜を、冬の味覚で彩りました。
多彩な味に季節を感じてお楽しみください。
①ブラータチーズのカプレーゼ
◆フレッシュな甘み
カプレーゼは通常、モッツァレッラチーズを合わせますが、同じフレッシュチーズでも、ブラータチーズを合わせます。
ブラータチーズは外はふんわり、中はとろりとした袋状のチーズで、ミルキーな風味が濃厚。甘みが強いフルーツトマトとの相性抜群です。
フレッシュで、ひと味ちがうカプレーゼをお楽しみください。
②サン・ダニエーレ産生ハムと柿
◆高級食材の組み合わせ
生ハムの食べ方で人気が高いのは、フルーツとの組み合わせです。
クリスマス版のフルーツは、和歌山県産の高級ブランド柿「富有柿(ふゆうがき)」を合わせます。
果肉は柔らかく、しっとりして、甘味の濃い果汁をたっぷり含み、世界で評価されている柿です。
合わせる生ハムは、イタリアで最高峰とされるサン・ダニエーレ産を使用します。同じ前菜の次項に、サン・ダニエーレ産生ハムの単品メニューがあるので、詳しくはそちらで解説します。
③焼き野菜のマリネ
◆甘酸っぱさをギュッと詰めて
野菜のもつ自然の甘味や酸味を凝縮した焼き野菜のマリネ。クリスマス版はクリスマスカラーの野菜を中心に揃えます。
下ごしらえの火入れは、野菜の特性に合わせ、全て異なる加熱を施すことで、とろける食感や美味しさを引き出します。
④鮮魚のカルパッチョ
◆スパイシーなアクセントでいただく鮮魚
イタリアのカルパッチョは、鮮魚にオリーブオイルで味と香りをつけます。
脂がのった鮮魚の身によく馴染み、フレッシュな旨みが引き立ちます。
クリスマスカラーの薬味を飾り、スパイシーなアクセントを加えます。
2.サン・ダニエーレ産生ハム
メニューについて
◆生ハムの最高峰をたっぷり味わう
イタリアの特産品、生ハムは、豚のモモ肉を塩漬けにして、自然の空気で熟成させたものです。
気候が大きく影響するため、産地が限られ、サン・ダニエーレとパルマが2大産地とされています。
サン・ダニエーレの街は、イタリア北部のフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州の丘にあり、アドリア海からの暖かい風と、アルプスからの冷たい風が混ざる特殊な気候が、生ハムを美味しく熟成させます。
サン・ダニエーレでは、生ハムの生産にプレスの工程を加え、脂肪と塩分を均等に広げることで、深い味わいを生み出しています。
このため、生ハムの最高峰とされ、ローマの大統領官邸や英国王室などで、世界のVIPに振舞われています。
お召し上がり
◆とろける舌ざわり、まろやかな塩味
削りたての生ハムは、シルクのような、しっとりとした光沢があり、熟成香が豊かに香ります。
肉質はキメ細かく、ナイフで切るというより、簡単にちぎれる柔さがあります。
フォークにまとわりついた生ハムはしっとりして、口に含むと、とろける舌ざわりがあります。
味わいは、まろやかな塩味を中心に、脂身の甘みや赤身の旨味、コクを豊かに感じます。
他の生ハムにはない、深い味わいを堪能します。
3.フィレンツェ風 牡蠣のグラタン
メニューについて
◆ホウレン草で美味しく
料理にホウレンソウを加えるのがフィレンツェの特徴です。なかでも、旬の牡蠣を使ったグラタンは、冬の人気メニューです。
トッピングのチーズは、イタリア北部でチーズフォンデュに使われるフォンティーナチーズを加え、じんわりとあたたかくなる口どけで仕上げます。
調理
お召し上がり
◆あたたかさと元気が出る味わい
アツアツのグラタンから、チーズが焼けた香ばしい香りが漂い、食欲をそそります。
フォンティーナチーズは、なめらかな舌ざわりのなかに、木の実のような香ばしい風味を感じます。
牡蠣は、クリーミーな旨みに存在感があり、チーズやベシャメルソースのミルキーな風味とよく合います。
ホウレンソウはとろとろにやわらかくなり、甘みと旨みが増し、程よいアクセントになります。
あたたかさと元気が出る味わいに、北国の暮らしの知恵を思います。
パスタ
4.生ハム入りバターソースのタヤリン 黒トリュフかけ
メニューについて
◆冬の香りを楽しむ
黒トリュフは、12月から2月までが旬で、クリスマスの時期に香りが高くなります。
そんな黒トリュフを、相性のいい卵をたっぷり使った極細麺、タヤリンや、バターソースで香りを高めます。
黒トリュフの濃い芳香に合わせ、ソースに生ハムを入れ、熟成香と塩味を加えてバランスを取ります。
調理
お召し上がり
◆森を感じる香りが濃厚
削りたての黒トリュフは、タヤリンの卵や、クリーミーなバターソースとよく馴染み、森の香りを濃厚に感じます。
その香りは、ヒノキなどのリラックス感ある木材系に、ナッツのようなニュアンスが混ざり、香ばしさが深く極まります。
生ハムのとろける舌ざわりに感じる熟成香、まろやかな塩味、コクは、程よいアクセントになります。
黒トリュフの香りを引き立てる、極上のダシとして効いています。
5.ワタリガニのパッケリ トマトソース
メニューについて
◆冬の贅沢を丸ごと一匹
イタリアの魚介のパスタといえば、エビやアサリを使ったものがポピュラーです。そのクリスマス版として、日本の冬の味覚、ワタリガニを贅沢に丸ごと一匹使ってパスタをつくります。
ワタリガニは身が締まっていることにこだわり、海水が冷たい青森県産を使用します。
ソースは甲羅やカニ味噌から出る濃厚なコクにトマトソースを合わせ、まろやかに仕上げます。
パスタはソースの味がたっぷり染み込む、大きくて生地が厚いパッケリを合わせ、豪快にいただきます。
お召し上がり
◆ワタリガニの味がたっぷり染みたパッケリ
パッケリは、厚い生地を長時間茹でた効果で、モッチリとした噛みごたえがあります。ワタリガニのソースの香ばしさや甘み、旨み、コクがたっぷり染み込んでいます。
イタリアンパセリとズッキーニの青々しい風味が爽やかなアクセントになります。
ワタリガニのハサミや足の中にある白い身は、キメが細かく、クリーミーな舌ざわりです。
繊細な甘みや旨みを豊かに感じ、味の広がりを楽しみます。
肉料理
6.仔牛の骨付きスネ肉の煮込み “オッソブーコ”
メニューについて
◆とろとろに柔らかい牛煮込みであたたまる
寒い冬は、煮込み料理が美味しい季節です。そこで、クリスマスの時期は「オッソブーコ」をおすすめします。
仔牛の骨付きスネ肉を輪切りにして、野菜と一緒に煮込んだ料理で、牛肉の旨みが濃厚です。
ミラノに代表される、イタリア北部ロンバルディア州の郷土料理が発祥で、「オッソブーコ」はイタリア語で「骨の穴」の意味。煮込んで骨の中の髄液がとろけて陥没し、穴が目立つ姿がそのまま料理名になりました。
濃厚な煮汁に柑橘類や香草で香りをつけ、爽やかに仕上げるところに、ミラノらしい洗練を感じます。
調理
◆香味野菜を炒める
オッソブーコと一緒に煮込む香味野菜をあらかじめ炒め、味を引き出しながら柔らかくする。
◆仔牛のスネ肉を炒める
仔牛のスネ肉は、煮込む前に炒めることで、肉の表面に火を通しながら旨みを封じ込める。
◆仔牛の骨付きスネ肉のダシを取る
◆仔牛のスネ肉を煮込む
◆仕上げる
お召し上がり
◆身体の中からパワーが湧くコク旨
仔牛のスネ肉はじっくり煮込むことで、フォークで簡単に崩せるほどに、とろとろに柔らかくなっています。
スネ肉は運動量が多い部位ゆえに、脂肪が少なく赤身が中心で、旨みがたっぷり。噛みしめると筋がサクサクほぐれ、コクをしっかり感じます。
骨の中の髄液は、煮込む熱で溶け、沈み、骨の底から煮汁に流れ出し、味を濃くしています。
オレンジやレモンなど、好対照の爽やかな香りがよく効いて、リッチ感を増しています。
骨の中に残った髄液はドロリとして、ナイフの先で取り出すと、それ自体の味と風味は濃すぎるため、ダシとして煮汁に混ぜると、より美味しくいただけます。
栄養たっぷりで、身体の中からパワーが湧く後味に、あたたまります。
7.キングアイランド牛リブロースの炭火焼き
メニューについて
◆キングアイランド牛を味わう
今年のクリスマス用の炭火焼きのお肉は、柔らかくて美味しく、赤身好きから注目されている、オーストラリアの高級ブランド牛「キングアイランド牛」のリブロースをおすすめします。
◆キングアイランド牛とは
キングアイランド牛は、オーストラリアの南にある小さな島、キングアイランドで育った牛の牛肉です。
◆キングアイランド牛の特徴
キングアイランドは、年間を通じて温暖な気候で、雨量が多く、牧草の生育に適した環境です。
キングアイランド牛はこの島で放牧され、パスチャーフェッドという、栄養価の高い牧草のみを食べさせる飼育管理により、肉質の高い牛肉に仕上げられています。
広い草原を自由に歩き回り、適度な運動をすることで、脂肪が少なく、赤身が多い肉ができます。
ストレスの少ない環境で育つことで、肉質がとても柔らかくなります。
栄養価の高い牧草を食べることで、牛肉の風味や旨みが濃くなります。
そんなキングアイランド牛の極上の美味しさを、炭火焼きで高めます。
調理
お召し上がり
◆牛肉の多彩な味を堪能
焼き上がったキングアイランド牛は、炭火焼きの香ばしさと、牛肉そのものの香ばしさを強く感じます。
肉質は柔らかく、噛みしめると、繊維質が無理なくザクザク切れる歯ごたえが小気味よく、肉汁はしっとりしています。
味わいは、赤身の強い旨みとコクが中心で、脂身のトロける甘みや焼き目の香ばしさ、塩味がアクセントになります。
多彩な味が楽しめるバランスの良さは、飽きない美味しさで、後味に「牛肉の醍醐味を堪能した」という深い余韻が残ります。
おすすめのワイン
イタリアワインの至宝
銘柄/サッシカイア
ワイナリー/テヌータ・サン・グイド
生産地/イタリア中部トスカーナ州
ぶどう種/カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン
生産年/2016年
30年以上も存在感を放ち続け、イタリア最高峰の赤ワインとして名高い「サッシカイア」。
香りはブラックベリーやスパイス、シガー、レザーなどのニュアンスが複雑に混ざります。
味わいはしっかりした辛口ながら、滑らかな口当たりと程よい酸味を感じるエレガントな余韻もあり、味の広がりを豊かに感じます。
牛肉の炭火焼きが郷土料理のトスカーナ州のワインらしく、力強い印象は、キングアイランド牛の強い旨みとよく合います。
デザート
8.パネトーネ
メニューについて
◆開運を祈願する縁起物
イタリアでパネトーネは、歳末に食べることで翌年の開運につながるとされている、縁起物の菓子パンです。
パネトーネは中世の頃、ミラノを統治していたスフォルツェスコ城の公爵から銘菓として認められ、そのパネトーネを開発して献上した青年が恋愛成就した伝説が由来です。
パン生地の断面に見える黄色とドライフルーツが、金貨や宝石のように見えるイメージも金運につながるとされ、歳末菓子としての威光をさらに強めました。
さらに、パネトーネは、イタリア北部でしかとれない特殊な天然酵母の働きで、防腐剤を使わなくても日持ちする利便性もあります。
このため、クリスマスから新年にかけて忙しくなる家庭では、ロングランで食べられるお菓子として重宝されています。
そんなパネトーネを、ビスボッチャ独自のアレンジで、クリームやピスタチオを加えた豪華版でいただきます。
調理
お召し上がり
◆年越し菓子に、新しい年を思う
パネトーネの生地はしっかりした歯ごたえがあり、菓子パンとしては新鮮な印象です。
ほのかな甘みは、クリームと混ぜ、潤いを加えながら食べると美味しさが増します。
焼き色の香ばしさと苦味、ドライフルーツの甘酸っぱさ、ピスタチオのほろ苦さがアクセントになります。
そんな「年越し菓子」のアクセントに、「今年もいろんなことがあったな…」と思い出しながら、新しい年の開運を祈願します。
特別な日のディナーは、
ラ・ビスボッチャの「クリスマス・スペシャル・メニュー」で、
思い出に残るひとときを、お過ごしください。