イタリアの冬野菜フェア

ITALIAN WINTER VEGETABLE FAIR

コラム『味と技』第77回

野菜に感じる冬の粋

イタリアの冬野菜を集め、

11月18日(水)から30日(月)までフェアを開催します。

期間限定メニューが7品登場。

可憐で繊細な味わいの冬野菜を、サラダやあたたまる料理でお楽しみください。

フェア料理の下ごしらえをする料理長・井上裕基(左)と副料理長・露詰まみ

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ 

写真・文/ライター 織田城司
Food Direction by Yuuki Inoue & Mami Tsuyuzume 
Photo・Text  by George Oda

イタリアの冬野菜

冬野菜がならぶフィレンツェの市場

◆冬の彩り

朝晩冷え込む季節に育つ、イタリアの冬野菜。

その姿は、花のように可憐な美しさがあります。

食感はサクサクと柔らかく、味わいは繊細。噛みしめると、ほのかな甘みや苦みを感じます。

厳しい冬の寒さを、冬野菜の彩りで楽しむ暮らしに、イタリアの食文化の奥深さを感じます。

そんな冬野菜をイタリアから取り寄せ、さまざまな料理で提供します。

肉料理の付け合わせにもおすすめです。

この機会に、ぜひご賞味ください。

1.冬野菜のミックスサラダ

冬野菜のミックスサラダ

メニューについて

◆冬野菜の繊細な味をシンプルに味わう

イタリアの冬野菜を集め、シンプルなサラダでいただきます。

新鮮で小気味よい食感と、繊細な味わいを楽しみます。

国産のルッコラで、香ばしさと辛みを加え、味のバラエティーを広げます。

ミックスサラダに使う冬野菜。左からイタリア産ラディッキオ・タルディーヴォ、イタリア産プンタレッラ、イタリア産カステルフランコ、国産ルッコラ

ミックスサラダに使うイタリア産フェンネル

調理

イタリアと日本から集めた冬野菜5種の共演によるミックスサラダです。それぞれの野菜の味に応じた、カットの大きさや角度が絶妙です。

◆野菜をカットする

ラディッキオ・タルディーヴォは、葉を一枚ずつはがす

紫の部分はサクサクとして、すがすがしい甘さがあり、白い部分はシャキシャキとして、甘苦さがある。部分の味のちがいが楽しめるようにカットする

プンタレッラは、葉を小分けにする。ローマでよく食べられる冬野菜で、プンタとは「尖った」という意味

ほろ苦さがあるため、薄めにスライス

カステルフランコは、葉を一枚ずつはがす

葉が薄くて柔らかいため、やや大きめにちぎる。まろやかな甘みと苦みがある

フェンネルは茎を取り除く

外側のかたい一枚を取り除く

爽やかな香りがやや強いため、薄めにスライスする

国産のルッコラは、茎を取り除き、葉を4等分する。独特の香ばしい風味と辛みをアクセントにする

◆ドレッシングをつくる

ボウルにアンチョビペーストを入れる

赤ワイン酢を入れる

赤ワイン酢は、酢の特産地、イタリア北部エミリア=ロマーニャ州モデナ県で、1891年に創業した老舗メーカー「アドリアーノ・グロソリ」社の「グロソリ・リゼルヴァ」ブランドを使用。ワインを木樽でゆっくり酢酸発酵させる伝統的な製法を用い、発酵後も木樽でじっくり熟成させたリゼルヴァタイプ。豊な香りと、まろやかな味わいがある

赤ワイン酢でアンチョビペーストを溶く

ニンニクの香りをつけたオリーブオイルを入れる

エキストラヴァージン・オリーブオイルを入れる

エキストラヴァージン・オリーブオイルは、特産地のイタリア南部プーリア州の「ディサンティ」社製を使用。オリーブの青々しい香りと、マイルドな辛みに優れる

◆仕上げる

カットした野菜を入れたボウルに塩を振りかけ、下味をつける。ドレッシングに塩を入れず、野菜に直接振りかけることで、苦みを軽減する効果がある

調合したドレッシングを入れる

野菜とドレッシングを和え、盛り付けて完成

お召し上がり

冬野菜のミックスサラダ

◆繊細な味のちがいを、じっくり食べくらべて楽しむ

トマトの赤が入らず、ラッディッキオ・タルディーヴォと、カステルフランコの紫がアクセントなるサラダは、新鮮な印象で「これがイタリアの冬の彩りなのだ」と感じます。

さて、どの野菜から食べようかと考えると、例えば、おなじみのルッコラは味が強く、最後にします。

「ハーイ!」と手をあげているような、プンタレッラの尖りが気になり、ヒョイとつまみます。緑の尖り部分はカリカリして、ほろ苦く、その下の白い部分はザクザクして、ほのかな旨みを感じます。

ラッディッキオ・タルディーヴォの紫の部分は、花びらのようにサクサクして、すがすがしい甘みがあり、その下の白い部分は、シャキシャキして、甘苦さがあります。

冬野菜のミックスサラダ

カステルフランコの見た目はキャベツのようだが、もっと薄く、柔らかい。シャキシャキとした歯ごたえのなかに、まろやかな甘みや苦みを感じます。

フェンネルは根茎らしく、シャリシャリとして、味わいは上品。鼻にスッと抜けるような甘めの香りがあります。

イタリアの冬野菜は繊細な味が多いため、ルッコラの香ばしい風味と、辛みでバランスを取っていることが、よくわかります。

もちろん、食べる順番は、各自のお好みで。爽やかな後味に、ヘルシーな気分になります。

冬野菜のミックスサラダ

ラ・ビスボッチャ内観

2.ラディッキオ・タルディーヴォの炭火焼き バローロチーズのソース

ラディッキオ・タルディーヴォの炭火焼き バローロチーズのソース

メニューについて

◆焼いても美味しい冬野菜

ラッディッキオ・タルディーヴォは、イタリア北部ヴェネト州トレヴィーゾ県の、ミネラルをたっぷり含んだ地下水でしか美味しく実らず、一株からわずかな量しか取れなくて、イタリアでは希少な高級野菜とされています。

鮮やかな紫と白のコントラストや、カリッとした心地よい食感、爽やかでデリケートな甘みは気品があり、イタリアでは「冬の花」とよばれ、季節の風物詩になっています。

加熱すると、甘みや旨みが増すことから、炭火で焼いて味を引き出し、クリーミーで香ばしいバローロチーズのソースを合わせます。

ラッディッキオ・タルディーヴォは、イタリア北部ヴェネト州トレヴィーゾ県特産の冬野菜。鮮やかな紫と白のコントラストが美しく、イタリアでは「冬の花」とよばれている

調理

◆バローロチーズのソースをつくる

バローロチーズを入れた牛乳を、湯煎で加熱する

バローロチーズは、イタリア北部ピエモンテ州で1976年にベッピーノ ・オッチェリ氏が設立し、伝統の手づくり製法を継承する乳製品メーカーの「オッチェリ・アル・バローロ」ブランドを使用。同州の有名ワイン「バローロ」のブドウの搾りかすとワインを入れた樽のなかにチーズを丸ごと入れ、1ヶ月寝かせてつくる

加熱したバローロチーズを入れたミルクをミキサーで攪拌する

無塩バターとパルメザンチーズを入れ、風味と、とろみをつけてソースの完成

◆ラッディッキオ・タルディーヴォを炭火で焼く

ラッディッキオ・タルディーボの一房を半分にカットする

塩を振りかけ、下味をつける

エキストラヴァージン・オリーブオイルを振りかけ、香りをつけながら火の通りを良くする

炭火焼きグリルの焼き網の上で焼く

反対側からも焼き、ソースとともに盛り付けて完成

お召し上がり

ラディッキオ・タルディーヴォの炭火焼き バローロチーズのソース

◆炭火で濃くなるパーツごとの美味しさ

クルンと丸まった葉先は、紫の部分で、葉が薄く、早く焼け、濃い茶色に焼き上がっています。

食感はサクサクと軽やかで、香ばしさとほろ苦さを感じます。

ラディッキオ・タルディーヴォの炭火焼き バローロチーズのソース

白さが残る部分は、葉がやや厚く、シャリシャリとした食感が炭火でしっとりして、甘みや旨みが増しています。

クリーミーなバローロチーズのソースは、香ばしい風味とミルキーな味わいがあり、パリッと焼けた冬野菜を引き立てます。

ラディッキオ・タルディーヴォの炭火焼き バローロチーズのソース

ラ・ビスボッチャ内観

3.牛モツと冬野菜の煮込み

牛モツと冬野菜の煮込み

メニューについて

◆10種の食材でつくる、モツ煮込みの豪華版

イタリアにもモツ煮込みがあります。

古代より王侯貴族の華やかな食事の陰で、庶民はモツの食べ方に工夫を重ねてきました。そのひとつが煮込みです。

特に、牛肉の産地であるフィレンツェでは、牛モツの煮込みが名物になっています。

そんな料理をイメージしながら、国産の牛モツ3種と、イタリアと日本の冬野菜7種を贅沢に使い、モツ煮込みの豪華版をつくります。

調理

◆牛モツ3種を下茹でする

牛モツは、すぐに野菜と煮込まず、あらかじめ下茹でします。

下茹ですることで、牛モツを野菜と煮込んでも丁度いい柔らかさにしながら、アクを取り除く効果があります。

今回使用する牛モツ3種は、それぞれ肉質がちがうため、3つの鍋に分けて下茹でします。

こうした手間をかけることで、臭みがほとんどなくなり、すっきりと美味しいモツ煮込みができます。

フィレンツェのヴェッキョ橋

牛モツの仕込み方法は2009年、本場フィレンツェの内臓系料理の専門店「イル・マガッツィーノ」のシェフ、ルカ・カイさんを招聘して直接教えていただきました。

ルカさんは牛モツ煮込みの屋台出身で、地元の人に人気があり、2004年にヴェッキョ橋の近くに同店を開店しました。

牛の第2胃袋、ハチノスを下茹でする。柔らかさのなかに、シャキシャキとした食感がある

牛の第3胃袋、センマイを下茹でする。細かい突起状のヒダが多く、コリコリとした食感がある

牛の第4胃袋、ギアラを下茹でする。しっとりして、とろける柔らかさがある

下茹でしながらモツのアクを取る。野菜と煮込んだ時に、アクがほとんど出ないようにする。写真はセンマイ

ギアラは特にアクが多いため、一度茹でこぼし、流水で表面のヌメリを洗い流す

表面がきれいになったギアラを、再びきれいな水で下茹でする

ハチノスとギアラは、美味しいダシが出るため、下茹でする汁にニンジン、セロリ、タマネギなどの香味野菜を入れ、後で煮込みの煮汁の使う。写真はハチノス

下茹でが済んだ牛モツを食べやすい大きさにカットする。写真はハチノス

◆冬野菜7種の下ごしらえ

煮込みに使うイタリアと日本の冬野菜。左からイタリア産黒キャベツ、イタリア産フェンネル、北海道産ニンジン、長野県産ズッキーニ、北海道産男爵芋、茨城県産ハクサイ、千葉県産カブ

ハクサイを除く野菜を1センチ角のサイの目切りにする

ハクサイはそのまま煮込むと水分が出過ぎ、煮汁が薄まり、ハクサイの味も流出するため、塩で下味をつけた後、オーブンで加熱して水分を飛ばし、味を凝縮させる

オーブンで加熱したハクサイを細かくカットする

◆牛モツと野菜を煮込む

鍋底にオリーブオイルを敷き、堅い野菜から順に炒めていく

ハチノスを加える

白ワインで味と香りをつける

ハチノスとギアラを下茹でした汁をシノワで濾しながら煮込みの鍋に入れ、煮汁にする

柔らかいギアラ、センマイ、ハクサイは最後に煮汁に入れる

黒コショウで味を整え、それぞれの野菜が溶けず、形が残る程度に煮込み、盛り付け、イタリアンパセリのみじん切りを振りかけて完成

お召し上がり

牛モツと冬野菜の煮込み

◆10種の食材が混ざり合う深さ

香ばしさが際立ちます。何の香りでもなく、10種の食材が混ざりあった、まろやかな芳香です。

3種の牛モツはどれも柔らかく、食感は、ハチノスはシャキシャキ、センマイはコリコリ、ギアラはとろとろの柔らかさを楽しみ、淡白な味わいのなかに、ほのかな甘みや旨みを感じます。

牛モツと冬野菜の煮込み

野菜7種は、フォークでザッとまとめて口に運ぶと、口の中で香ばしさや甘み、旨みが次々と現れ、華やぎます。

集積感のなかに「あ!このトロッとした甘みはジャガイモ かな?」と、模索するような味わいに、面白さがあります。

透明度が残る煮汁は、さっぱりした印象だが、10種の食材から染み出したダシが凝縮し、味わいには深味があります。

具だくさんの煮汁は、パンで吸収して口に運び、ジュワッとしみ出す美味しさを楽しみます。

牛モツと冬野菜の煮込み

ラ・ビスボッチャ内観

4.タラバガニとチーマディラーパのパッケリ トマトソース

タラバガニとチーマディラーパのパッケリ トマトソース

メニューについて

◆大きなタラバガニをパッケリで豪快に

冬の冷たい海水で身がしまったタラバガニのボリューム感ある身を、大きな筒形パスタ、パッケリで豪快にいただきます。

合わせるイタリアの冬野菜は、カブの上に実る菜葉、チーマディラーパ。上品な青々しさのアクセントが絶妙です。

調理

◆タラバガニの下ごしらえ

タラバガニは、新鮮な味にこだわり、国産の活きたものを丸ごと一匹仕入れる。広げると1メートルほどになる大型サイズで、身の味わいも迫力がある

タラバガニは、オーブンで蒸して加熱するため、オーブン用の鉄板にのせる

蒸し上がったタラバガニ。鮮やかな朱色になる

ハサミを使い、蒸し上がったタラバガニを胴や足などのパーツに分解する

◆ソースをつくる

フライパンでタラバガニの足を加熱。殻から出てくるカニのエキスがいいダシになる

ニンニクのみじん切りで香りをつけたオリーブオイルと、赤トウガラシを入れ、味と香りを加える

ブランデーを入れ、味と香りを加える

ソースの素になる、自家製のトマトソースや魚のダシ汁、イカとアンチョビのダシ汁、エビのダシ汁を入れる

自家製のトマトソースは、イタリア南部のトマトの特産地、カンパニア州で1954年に創業した缶詰と瓶詰の食品メーカー「ラ・ドリア」社のホールトマトを、エキストラヴァージン・オリーブオイルで炒めたタマネギのみじん切りと煮込んでつくる。イタリアン・トマトを代表する縦長のサンマルツァーノ種は、柔らかく、果肉が厚く、程よい酸味があり、加熱すると旨みが引き立ち、トマトソースに向く

タラバガニの足とソースを煮詰める

ソースのフライパンからタラバガニの足を取り除く

タラバガニの足の殻をハサミでカットする

カットしたタラバガニの足から、スプーンで身を取り出す

ソースのフライパンにタラバガニの身を入れる

チーマディラーパを加え、混ぜ合わせてソースの完成。撮影時は都合によりケーリッシュでチーマディラーパを代替え。フェア期間中はチーマディラーパを使用する予定

◆仕上げる

パッケリを茹でる。茹で時間17分

パッケリは大きな筒状のパスタ。生地が厚いため、茹で時間がかかるが、その分食べごたえがある。表面はソースが絡みやすいようにザラザラしている

パッケリは、乾麺パスタの特産地、イタリア南部カンパーニャ州で1812年に創業した「ヴィチドーミニ」社製を使用。有機栽培したイタリア産デュラムセモリナ粉を100%を使用。昔ながらの低温長時間乾燥により、豊かな小麦の風味がある

茹で上がったパッケリをソースのフライパンに投入

パッケリとソースを和える

皿に盛り付け、仕上げにイタリアンパセリのみじん切りを振りかけて完成

お召し上がり

タラバガニとチーマディラーパのパッケリ トマトソース

◆きわだつタラバガニの甘み

タラバガニの風味は、ソースに混ぜた魚介類のダシ汁の相乗効果で濃厚に漂います。

タラバガニの身の筋は太く、プリッとした弾力があり、甘みが際立ちます。

タラバガニとチーマディラーパのパッケリ トマトソース

パッケリの生地は厚く、長時間茹でた乾麺らしく、モッチリとした歯ごたえがあり、筒の外と中には、タラバガニの身がしっかり絡みます。たっぷり吸ったソースが、タラバガニの甘みを追いかけます。

トマトソースの酸味や旨みが、チーマディラーパのほろ苦さと、魚介の旨みを結びます。

タラバガニとチーマディラーパのパッケリ トマトソース

おすすめのワイン

スパークリング・ワイン「ベルルッキ’61ロゼ」

◆華やかなロゼのスパークリング・ワイン

銘柄/ベルルッキ ’61 ロゼ
ワイナリー/グイド・ベルルッキ社
生産地/イタリア北部ロンバルディア州フランチャコルタ 地方
ぶどう種/ピノ・ネーロ60% シャルドネ40%

色は、赤味が強い鮮やかなロゼ。冬のディナーのテーブルを華やかに彩ります。

香りは、森のベリーや完熟したフルーツ。

味わいは、きめ細かくなめらかな泡の中に、エレガントな酸味を感じます。

タラバガニの濃厚な旨味を、爽やかに引き立てます。

スパークリング・ワイン「ベルルッキ’61ロゼ」を合わせた、タラバガニとチーマディラーパのパッケリ トマトソース

ラ・ビスボッチャ内観

5.サーモンとイクラ、ロメインレタスのリゾット

サーモンとイクラ、ロメインレタスのリゾット

メニューについて

◆リゾットで味わう冬の贅沢

秋から冬が旬になるサーモンとイクラは、白米と相性がいい食材です。

そこで、イタリア風にリゾットでいただきます。

日本の親子丼は、三つ葉をアクセントにしますが、こちらの親子サーモンのリゾットは、イタリアのさっぱりとした冬野菜、ロメインレタスをアクセントにします。

調理

◆サーモンの下ごしらえ

サーモンはノルウェー産を使用。1匹丸ごと仕入れ、自店でさばく

流し台で、サーモンのヒレをハサミで切り落とし、ウロコを取り除く

サーモンを三枚におろす。おろした料理人は赤峰壮介

下ごしらえが済んだサーモンの刺身

◆イクラの下ごしらえ

スジコをほぐし、卵を一粒ずつボウルに取り出し、イクラの状態にする

スジコは北海道産を使用

スジコは魚醤で味をつける

魚醤は南イタリアのチェターラ産を使用。魚醤の起源は古代ギリシャからローマに伝来したとされている。いまはイタリア南部カンパーニャ州のアマルフィ海岸にあるチェターラという町が特産地として伝統を継承。「チェターラ産の魚醤」という名で親しまれている

◆ロメインレタスの下ごしらえ

ロメインレタスはイタリア産を使用。ロメインとはローマの意味で、ローマを経由してヨーロッパに伝来したとされる。葉は薄く柔らかく、ほのかな甘みや旨みがある

葉脈と直角に、15ミリほどの幅でカットする

◆リゾットをつくる

鍋底でサーモンを、オイル使わずに炒める

サーモンを炒めることで、鍋底にサーモンの脂や身がくっつく

リゾット用のイタリア米を鍋に入れる。ゴムベラで鍋底のサーモンの脂や身を削ぎ落としながら米を炒めることで、米にサーモンの味と香りをつける

リゾットに使う米はイタリア米。イタリア最大の米どころピエモンテ州ヴェルチェッリ県で1935年からリゾット用の米をつくり続ける「ロンドリーノ」社のブランド米「アクエレッロ」を使用

自家製野菜のダシ汁を入れ、米を炊く

自家製野菜のダシ汁は、ニンジンやセロリ、タマネギ、ズッキーニ、エリンギ、イタリアンパセリの茎などを約6時間煮込んでつくる

自家製魚のダシ汁を入れる

自家製魚のダシ汁は、タイのアラ、ニンジン、セロリ、タマネギを約6時間煮込んでつくる

塩をひとつまみ入れ、味をつける

具材にするサーモンを入れる

自家製鶏のダシ汁を入れる

自家製鶏のダシ汁は、鶏がらやひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間煮込んでつくる

ロメインレタスを入れる

無塩バターを入れ、風味と、とろみを加える

パルメザンチーズを入れ、風味と、とろみを加える

リゾットの完成間際に火を止めた直後、イクラを入れる

イクラを予熱でリゾットに馴染ませて完成

お召し上がり

サーモンとイクラ、ロメインレタスのリゾット

◆サーモンの脂がつなぐ旨み

リゾットを一口食べると、サーモンの味の割合を強く感じます。最初にイタリア米を炒めたサーモンと、具材にごろごろ入るサーモンの味が効いています。

脂ののったサーモンの旨みは、リゾットに混ぜたバターやパルメザンチーズが持つ、クリーミーでミルキーな風味とよく合います。

サーモンとイクラ、ロメインレタスのリゾット

イクラのプチプチとした食感からドロリと出てくる、濃厚な旨みと塩味は、サーモンの味と共鳴します。

ロメインレタスのシャキシャキとした食感や、さっぱりした風味、ほのかな甘みや旨みは、程よいアクセントになります。

サーモンとイクラ、ロメインレタスのリゾット

ラ・ビスボッチャ内観

6.ウサギのモモ肉のファルチート バターソース白トリュフかけ

ウサギのモモ肉のファルチート バターソース白トリュフかけ

メニューについて

◆白トリュフの香りをもう一度

白トリュフなど、ヨーロッパのキノコ類は、冬でも12月までは出回ります。

そんなキノコ類の旬が終わらないうちに、もう一品おすすめします。

ファルチートという料理で、食材を肉で巻いて焼きます。

今回は、ヨーロッパのジロール茸とトランペット茸を、フランス産のウサギのモモ肉で巻いて焼き、バターソースと、イタリア産白トリュフを振りかけていただきます。

ヨーロッパのキノコ類が効いた、深い香りの料理を、お楽しみください。

調理

◆ウサギのモモ肉の下ごしらえ

ウサギのモモ肉の股を開き、片一方の足の骨を外し、もう一方の足の骨を飾りで残す

さばいたウサギのモモ肉に塩コショウを振りかけ、下味をつける

塩コショウを振りかけたウサギのモモ肉は、味を馴染ませるため、少し休ませる

◆ウサギのモモ肉で巻くキノコ類の下ごしらえ

ウサギのモモ肉で巻くジロール茸(左)とトランペット茸(右)。仕入れる産地はイタリアやフランスなど、旬の時期により、ヨーロッパを転々とする

キノコ類の表面に残る土をブラシで取り除く

フライパンにオリーブオイルを敷き、キノコ類をサッと炒め、ウサギのモモ肉と馴染みやすいように、柔らかくしながら、香りを引き立てる

◆外側に巻くグアンチャーレの下ごしらえ

グアンチャーレとその断面。グアンチャーレは豚のホホ肉の塩漬けを熟成させてつくる食肉加工品。豊な風味と濃いコクがある。イタリア中部マルケ州にある「トマッソーニ」社製を使用

グアンチャーレをミートスライサーを使い、ハムのように薄くスライスする

◆ファルチートを巻く

皿の上にスライスしたグアンチャーレを敷き、ウサギのモモ肉をのせ、広げる

炒めたキノコ類を真ん中にのせる

グアンチャーレでウサギのモモ肉とキノコ類を巻く

ヒモで縛り、ファルチートの仕込みの出来上がり

◆ファルチートを焼く

フライパンにオリーブオイルを敷き、ファルチートを入れ、表面に焼き色をつける

表面が焦げないように弱火で焼く。スプーンでフライパンの底のオイルを、まわしがけしながら、じっくり加熱していく

肉を反転させ、反対側からもじっくり加熱する

ファルチートを鍋に移し、自家製鶏のダシ汁で加熱する

蓋をして蒸し焼きにする。肉の中心部への火入れは、オーブンで加熱することが多いが、ウサギのモモ肉はドライに焼き上がる傾向があるため、蒸し焼きで、しっとりと仕上げる

◆仕上げる

蒸し焼きした鍋からファルチートを取り出す

鍋底に残った汁に無塩バターを入れ、バターソースをつくる

ファルチートの紐を外し、半分にカットして盛り付ける

バターソースと白トリュフを振りかけて仕上げる

お召し上がり

ウサギのモモ肉のファルチート バターソース白トリュフかけ

◆山の幸が濃厚に香る

バターソースで高まる白トリュフの繊細な芳香に、ファルチートの断面から漂うジロール茸やトランペット茸の強い香りが加わります。

ファルチートの表面でカリッと焼けたグアンチャーレは、熟成香が増しています。キノコ類とともに、山の幸の濃厚な香りを堪能します。

ウサギのモモ肉のファルチート バターソース白トリュフかけ

ウサギのモモ肉は柔らかく、肉質はキメ細かく、味わいは繊細で、ほのかな甘みと旨みを感じます。

繊細な味わいゆえに、キノコ類やグアンチャーレの濃いコクと、よく合います。

ウサギのモモ肉のファルチート バターソース白トリュフかけ

ラ・ビスボッチャ内観

7.タルトタタン

タルトタタン

メニューについて

◆焼き菓子で味わうリンゴ

冬野菜はお菓子に使えなく、フェア期間中は、冬が旬になる果物、リンゴを使ったお菓子をおすすめします。

タルトタタンという、フランスが発祥とされる焼き菓子で、リンゴにキャラメルソースを合わせていただきます。

独自のトッピングで飾り、寒い季節の華やぎを彩ります。

調理

◆キャラメルソースを型に敷く

キャラメルソースは、鍋底で砂糖を加熱してつくる

熱で溶解する砂糖をつなげて液状にする

無塩バターを入れ、風味と、とろみを加える

煮詰めて粘性が出たら、バターソースの出来上がり

タルト用の鉄製トレイにバターソースを敷き詰める

◆リンゴを型に敷き詰める

タルトタタンに使うリンゴは、日本最大の生産地、青森県の「紅玉(こうぎょく)」種を使用。果肉が緻密で、加熱しても形崩れしにくいことから製菓に適する。太陽の光をうけて養分をつくる葉を取らずに栽培するため、リンゴの表面に色ムラができ、一般の店頭には出ないが、味はギュッと凝縮している

リンゴの皮をむく

リンゴを半部にカットし、種をくり抜く

リンゴのヘタを切り取る

下ごしらえが済んだリンゴを、4ミリ幅ほどの薄切りにスライスする

キャラメルソースを敷いた型に、スライスしたリンゴを並べていく

スライスしたリンゴは、隙間がほとんど残らないことを意識しながら、ぎっしり敷き詰める

◆タルトタタンをオーブンで二度焼く

型に敷き詰めたリンゴをオーブンで焼く前に、エキストラヴァージン・オリーブオイルを振りかける。リンゴの火の通りを良くし、しっとり仕上げる効果がある

型をオーブンに入れ、加熱する

焼き上がったリンゴ

焼き上がったリンゴを入れた型に、パイ生地を2枚重ねる

生地の余分を型のエッジで切り落とす

生地を焼くことで生じる膨らみを軽減するため、フォークで空気を逃す穴を開ける

再び型をオーブンに入れ、二度目の加熱をする

焼き上がったタルトタタンは、白い受け皿を上にかぶせ、反転させ、生地を下に、キャラメルソースが馴染んだ焼きリンゴが上になるように型を抜く。このどんでん返しが、タルトタタンの特徴

◆トッピングを飾る

トッピングに使うベビーシュークリームの内部にクリームを注入

ベビーシュークリームの内部と、トッピングに使うクリームは、他のパーツに使われているキャラメルとの調和を意識して、生クリームとカスタードクリームを合わせたものに、キャラメルシロップを混ぜてつくる。このため、クリームの色は純白ではなく、ベージュになる

トッピングに使うベビーシュークリームの上にキャラメルシロップを振りかける。アクション・ペインティングのような、ランダムなアート曲線で、甘みと装飾性を加える

キャラメルシロップを振りかけたベビーシュークリーム

タルトタタンの上に、ベビーシュークリームを飾る

中心部は尖状に絞ったクリームで飾る

キャラメルシロップの線状破片は、キラキラとした造形美があるため、クリームの上に飾る

最後に金箔片を飾り、リンゴから広がるゴールド系のグラデーションをまとめて完成

お召し上がり

タルトタタン

◆リンゴを引き立てる、キャラメルのグラデーション

リンゴは、二度のオーブン焼きでしっかり火が通り、とろとろに柔らかく、リンゴの甘酸っぱさが増し、香ばしさも加わっています。

その香ばしさが、キャラメルソースの香ばしい甘さと共鳴し、味わいを広げます。

タルトタタン

トッピングに飾った線状のキャラメルは、パリパリして、甘みが強い。クリームに混ぜたキャラメルは、柔らかく、甘みはまろやか。リンゴに密着したキャラメルソースは、粘性があり、甘みは濃厚です。

さまざまなキャラメルの食感と、甘さのグラデーションは、リンゴの甘酸っぱさを引き立てます。

いかにも冬のお菓子らしい、あたたかい余韻を感じます。

タルトタタン

冬の訪れを感じたら、

ラ・ビスボッチャの「イタリアの冬野菜フェア」で、

あたたかい、ひとときをお過ごしください。