季節のおすすめメニュー12月

RECOMMENDED SEASONAL MENU 2020 DECEMBER

コラム『味と技』第79回

年忘れのご馳走

ビスボッチャでは、年間定番のグランドメニューに加え、季節のおすすめメニューも展開しています。

12月は、今年の苦労を忘れ、来年の幸運を祈願するために、特別感のあるメニューを7品おすすめします。

監修/料理長・井上裕基 副料理長・露詰まみ 料理人・赤峰壮介

写真・文/ライター 織田城司
Food Direction by Yuuki Inoue Mami Tsuyuzume Sosuke Akamine
Photo・Text  by George Oda

前菜

1.ブラータチーズとイチゴのサラダ

ブラータチーズとイチゴのサラダ

メニューについて

◆クリスマスカラーのサラダ

ブラータチーズのミルキーな甘みは、果物や野菜、生ハムなど、幅広い食材とよく合います。

そこで、果物のイチゴと、野菜のルッコラを合わせ、クリスマスカラーのサラダをつくります。

ブラータチーズはアメリカの「ディ・ステファノ」社製を使用。イタリア南部プーリア州出身のチーズ職人が、カリフォルニア酪農協会が認めた良質なミルクを使ってつくるチーズで風味が濃厚

イチゴは栃木県産の「とちおとめ」を使用

お召し上がり

ブラータチーズとイチゴのサラダ

◆前菜のイチゴが新鮮

イチゴは果肉がしっかりして、甘い香りと果汁が豊富。甘みが強く、程よい酸味があります。

イチゴは牛乳や練乳などと相性が良い果物で、ブラータチーズとの合わせも期待通りです。

ブラータチーズとイチゴのサラダ

ルッコラは、遠目にはイチゴの葉のようで、お互いがより新鮮に見えます。

ルッコラのゴマのような香ばしい風味と、ほのかな辛みは、イチゴと好対照で、お互い引き立ち、意外とよく合うことに驚きます。

前菜にイチゴを食べる、新感覚をお楽しみください。

ブラータチーズとイチゴのサラダ

ラ・ビスボッチャ店内のクリスマス・ディスプレイ

2.馬肉ロースのカルパッチョ 白トリュフかけ

馬肉ロースのカルパッチョ 白トリュフかけ

メニューについて

◆冬のパワーアップに

カルパッチョは鮮魚でいただくことが多いけれども、年末だから、お肉のカルパッチョも食べたい。

そこで、馬肉料理が名物のイタリア南部プーリア州の郷土料理をイメージして、馬肉のカルパッチョをつくります。

馬肉は、柔らかいロースの部位を使い、食べ合わせの良い白トリュフを振りかけ、香りを高めます。

馬肉は、栄養が豊富で、冬のパワーアップにもおすすめです。

調理

馬肉ロースの塊肉。福島県産を使用

小分けにした馬肉ロースをラップで覆い、ミートハンマーで叩いて広げる。肉の繊維をほぐして柔らかくする効果もある

味付けの塩を振りかける

塩はシチリア産自然海塩「エガディ」の細粒を使用。旨みがたっぷりして、マイルドな辛みがある

味付けのエキストラヴァージン・オリーブオイルを振りかける

オリーブオイルはイタリア南部の特産地、プーリア州にある「ディサンティ」社製を使用。青々しい香りが高い

味付けの黒コショウを削りおろす

黒コショウは世界最高峰の産地、カンボジアで日本人が手がける「クラタペッパー」社製を使用。柑橘系や木材系などのリラックス感ある香りが高く、爽やかな辛みがある

香りを付ける白トリュフを擦りおろし、仕上げる

白トリュフはイタリア産を使用

お召し上がり

馬肉ロースのカルパッチョ 白トリュフかけ

◆白トリュフに合う濃厚な旨み

馬肉ロースは、脂肪分がほとんどない赤身ながら、とろけるような肉質で、とても柔らかい。

エキストラヴァージン・オリーブオイルが、肉質のしっとり感を増し、白トリュフの芳香を高めます。

馬肉ロースのカルパッチョ 白トリュフかけ

馬肉ロースの味わいは、濃厚な旨みを中心に、甘みやコクが絶妙のバランスで絡みます。

喉越しはツルッと心地よく、身体の中からエネルギーが湧いてくる後味があります。

馬肉ロースのカルパッチョ 白トリュフかけ

ラ・ビスボッチャ店内のクリスマス・ディスプレイ

パスタ&リゾット

3.シャコとホタテのノッケッテ

シャコとホタテのノッケッテ

メニューについて

◆パスタも蝶ネクタイでドレスアップ

ノッケッテは、イタリア語で「小さな蝶ネクタイ」を意味する、イカ墨を練り込んだ黒いショートパスタです。

そんなノッケッテを自家製の生パスタでつくり、装いのフォーマル度が増す12月におすすめします。

ノッケッテはイタリア南部の港街ナポリが発祥とされ、味はフォーマルというより、イカ墨に合わせた漁師風です。

そんな味わいとともに、イタリアのパスタの奥深さを、改めて感じる一皿です。

調理

◆ノッケッテをつくる

ノッケッテの生地をパスタマシーンで伸ばすため、小分けにする。生地はイカスミペーストや全卵、強力粉、オリーブオイル、水などを練ってつくる

パスタマシーンで生地を薄く伸ばす

生地を丸い金型でくり抜き、両端をつまみ、中心で圧力をかけて固着する

パスタ同士がくっつくことを防ぐため、打ち粉としてセモリナ粉をまぶし、ノッケッテの出来上がり

◆ソースをつくる

シャコをフライパンに入れ、ニンニクのみじん切りや赤トウガラシ、オリーブオイルを入れ、味と香りを付けながら炒める。シャコは宮城県産を使用

ホタテを入れる。ホタテは北海道産を使用

白ワインを入れ、味と香りを付ける

ミニトマトを入れる

ソースにコクを加えるため、自家製イカとアンチョビのダシ汁を入れる

自家製イカとアンチョビのダシ汁は、イカの肝とアンチョビ、トマトペーストを炒め、自家製魚のダシ汁を入れて煮込み、濾過、冷却してつくる

ソースに旨みを加えるため、自家製魚のダシ汁を入れる

自家製魚のダシ汁は、タイのアラ、ニンジン、セロリ、タマネギを約6時間煮込んでつくる

煮詰めながら、具材の味をソースに浸透させる

柔らかいシャコとホタテに火が入りすぎないように、フライパンから取り除く

ミニトマトをつぶし、酸味とトロみをつけてソースの出来上がり

◆仕上げる

ノッケッテを茹でる。茹で時間は5分

茹で上がったノッケッテをソースのフライパンに投入

シャコとホタテをフライパンに戻し、ミニトマトを追加し、ソースと和える

イタリアンパセリのみじん切りを振りかけて仕上げる

お召し上がり

シャコとホタテのノッケッテ

◆きわだつイカ墨の深いコク

ノッケッテはしなやかで柔らかく、歯ごたえはモッチリしています。生地が折り重なり、練り込んだイカ墨のコクがきわだちます。

具材のシャコは炒めることで歯ごたえがしっかりして、香ばしい旨みがあります。ホタテはさっくりと柔らかく、甘みや旨みをたっぷり感じます。

シャコとホタテのノッケッテ

ソースに混ざるシャコやホタテのエキスは、ミニトマトの甘酸っぱさが程よく合います。

そんなソースをたっぷり吸ったノッケッテは、イカ墨のコクとともに、魚介の香ばしさが余韻に残ります。

シャコとホタテのノッケッテ

ラ・ビスボッチャ店内のクリスマス・ディスプレイ

4.ミラノ風リゾット 金箔のせ

ミラノ風リゾット 金箔のせ

メニューについて

◆来年の金運を願う

今年はコロナ禍の影響で、あらゆる分野の経済は停滞しました。

そこで、来年の経済復興を祈願するため、金箔をのせたサフランリゾットをおすすめします。

ミラノ出身の巨匠シェフ、マルケージの代表作です。

斬新なアプローチや、金運が開けるようなイメージは、1980年代後半のバブル時代に流行しました。

そんな時代のご利益に期待を込めて再現します。

調理

イタリア米を自家製鶏のダシ汁で炊く

リゾットに使うイタリア米は、イタリア最大の米どころピエモンテ州ヴェルチェッリ県で1935年からリゾット用の米をつくり続ける「ロンドリーノ」社のブランド米「アクエレッロ」を使用

自家製鶏のダシ汁は、鶏がらやひね鶏の肉、トマト、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエなどを約6時間煮込んでつくる

サフランを入れ、黄色い色と香りを付ける。サフランはスペイン産を使用

濃縮した仔牛のダシ汁を入れ、味を付ける

無塩バターを入れ、風味とトロみを付ける

パルメザンチーズを入れ、風味とトロみを加える

予熱でパルメザンチーズを混ぜ、皿に盛り付け、石川県産の金箔で飾り、仕上げる

お召し上がり

ミラノ風リゾット 金箔のせ

◆金の輝きに華やぐ

料理は見た目も大切だけれども、ど真ん中の金箔は、既成概念を打ち破る衝撃があります。

サフランで染めた黄色いリゾットとともに、強烈なインパクトがあり、テーブルが華やぎ、明るい気分になります。

ミラノ風リゾット 金箔のせ

極薄の金箔は、着地したリゾットの凹凸でできる、板金細工のような陰影がアート感を増しています。リゾットの湯気で、ヒラヒラと微妙に動き、生き物のようでもあり、見ていて飽きません。

とはいえ、リゾットが冷めてしまうから、思い切って金箔にフォークを入れると小さく散り、それ自体に味はなく、何事もなかったように、パルメザンチーズの風味が効いたリゾットを味わいます。

ミラノ風リゾット 金箔のせ

ラ・ビスボッチャ店内のクリスマス・ディスプレイ

メイン

5.熊本県産 地鶏ブランド「天草大王」モモ肉の炭火焼き

熊本県産 地鶏ブランド「天草大王」モモ肉の炭火焼き

メニューについて

◆大きな鶏肉を炭火焼きで堪能

歳末の街頭、クリスマスチキンが目につき、12月に一度は食べておきたいと感じる鶏肉。

そんな鶏肉の美味しさを堪能するため、熊本県産のブランド地鶏「天草大王」の大きなモモ肉を炭火で焼き、豪快にいただきます。

調理

鶏モモ肉は塩コショウで下味を付け、ニンニクと香草で香りを付けたオリーブオイルに漬けてマリネする

マリネが完了した鶏モモ肉を炭火焼きグリルの焼き網の上で焼く。マリネに使ったニンニクや香草をのせて香りを付ける

炭は火持がよく、灰が少ないオガ炭の「五香備長炭」を使用

反対側からも焼いて仕上げる

炭に滴り落ちる肉汁が燃える煙りが燻製効果になり、肉に香ばしい香りを付ける

お召し上がり

熊本県産 地鶏ブランド「天草大王」モモ肉の炭火焼き

◆炭火で増す鶏肉の多彩な美味しさ

鶏肉の皮は、表面の脂が炭火で沸騰し、揚げ物のようにカラッと焼き上がります。

歯ごたえは、サクサクと感じる部分や、パリパリと感じる部分があり、それぞれちがう香ばしさや味わいを堪能します。

熊本県産 地鶏ブランド「天草大王」モモ肉の炭火焼き

中身の肉は、ふっくらジューシー。程よい歯ごたえがあります。

グリルに脂が落ちることで増した旨みを、真ん中のサクッと柔らかい部分と、骨の近くのヌルリとした部分で食べくらべます。

炭火で極まる、鶏肉の多彩な美味しさを、ボリューム感たっぷりに味わいます。

熊本県産 地鶏ブランド「天草大王」モモ肉の炭火焼き

ラ・ビスボッチャ店内のクリスマス・ディスプレイ

6.鹿児島県産 黒毛和牛ブランド「薩摩牛」フィレ肉の炭火焼き

鹿児島県産 黒毛和牛ブランド「薩摩牛」フィレ肉の炭火焼き

メニューについて

◆今年一年を締めくくる美味しさ

牛肉の中で最も運動量が少なく、旨みたっぷりの赤身肉なのに柔らかいフィレ肉。

その中でも最も太く、肉質の良い中心部はシャトーブリアンとよばれ、牛一頭からわずか2kgほどしかとれない希少な部分として珍重されています。

当店では通常、このシャトーブリアンを、オーストラリア産の牛肉を使い、赤身の旨みがしっかりした味わいで提供していますが、12月は特別に、鹿児島県産の高級ブランド牛で、国内格付け4級以上の「薩摩牛」でおすすめします。

黒毛和牛特有の、霜降り肉が美しい、繊細でとろける美味しさを、一年の締めくくりとして、ご堪能ください。

調理

「薩摩牛」フィレ肉の塊肉。長さ1メートルほど。先細りのため、太い部分は少ない

「薩摩牛」フィレ肉の最も太い中心部で、シャトーブリアンとよばれる部分の断面。脂肪に覆われながらも、美しい霜降りの赤身肉が見られる

フィレ肉の塊肉から脂肪や筋を取り除く。シャトーブリアンとして残る赤身肉は希少な存在

シャトーブリアンの塊肉から焼く分を切り出す。撮影に使用した肉は約200g

塩コショウで下味を付ける

炭火焼きグリルの焼き網の上で焼く

炭に滴り落ちる肉汁が燃える煙りが燻製効果となり、肉に香ばしい香りを付ける

反対側からも焼いて仕上げる

お召し上がり

鹿児島県産 黒毛和牛ブランド「薩摩牛」フィレ肉の炭火焼き

◆霜降りのまろやかな美味しさ

「薩摩牛」フィレ肉の美しい霜降りのキメ細かい脂肪分は、牛肉の香りを濃厚に仕上げ、和牛らしさを感じます。

そんな霜降りは、柔らかいフィレ肉をさらに柔らかくして、とろけるような食感があります。

鹿児島県産 黒毛和牛ブランド「薩摩牛」フィレ肉の炭火焼き

肉汁はしっとりとして、甘みや旨み、コクはまろやかで、幅広い味覚として現れます。

こんがり焼けた表面の香ばしさや塩味、苦みは程よいアクセントで、バランスの良さは、飽きない美味しさです。

鹿児島県産 黒毛和牛ブランド「薩摩牛」フィレ肉の炭火焼き

ラ・ビスボッチャ店内のクリスマス・ディスプレイ

ドルチェ

7.イチゴとピスタチオクリームのタルト

イチゴとピスタチオクリームのタルト

メニューについて

◆年末バージョンで味わうタルト

旬のフルーツをタルトで味わう歳時記のシリーズ。

12月は、人気のイチゴにピスタチオのクリームを合わせます。

期間限定のクリスマスカラーの彩りが、年末の思い出を深めます。

イチゴは栃木県産の「とちおとめ」を使用

お召し上がり

イチゴとピスタチオクリームのタルト

◆広がる甘さと香ばしさ

クリスマスカラーのタルトは鮮やかで、食欲をそそり、つい手が出てしまいます。

イチゴの甘酸っぱい刺激を、濃厚なピスタチオクリームの甘みが和らげます。

イチゴとピスタチオクリームのタルト

トッピングやクリームのピスタチオは香ばしく、イチゴを好対照な味で引き立てます。

サクッと焼けたホームメイドパイは、甘さと香ばしさがあり、イチゴとピスタチオの美味しさをまとめます。

イチゴとピスタチオクリームのタルト

12月になると思い出す、年忘れにご馳走を食べる習慣。

今年は、大人数で集まれないけれど、

大切な人と小人数で、ご馳走を堪能したい。

そんな12月は、

ラ・ビスボッチャの季節のおすすめメニューで、

素敵なひとときをお過ごしください。