私とビスボッチャ:土井光さん

ME AND MY BISBOCCIA

Episode 10 : Hikaru Doi

 

『小学生の頃から通うお店』

ビスボッチャに来店されるお客さまの連載コラム。今回は、料理研究家の父、土井善晴さんの「おいしいもの研究所」で勤務する土井光さんに、イタリア料理やビスボッチャの魅力について語っていただきました。

◆土井光さんプロフィール

大阪生まれ、東京育ち。 大学卒業後に渡仏。リヨンにあるポール・ボキューズの料理学校でフランス料理とレストラン・マネージメントを2年半学ぶ。

卒業後はフランスのレストランに料理人として就職。三ツ星レストランの「レ・プレ・ドゥ・ウジェニー」と「トロワグロ」、老舗チョコレート店の「ベルナシヨン」に勤める。

在仏7年の後に帰国。現在は父である料理研究家の土井善晴の「おいしいもの研究所」でアシスタントとして勤務。料理のデモンストレーションのフランス語通訳や、フランスと日本文化をつなぐイベント参加などを行い、マガジンハウスの「POPEYE  Web」に食のコラム を連載。

土井光さんのインスタグラムはこちらから→@hikaruuud

ラ・ビスボッチャの店内で語る土井光さん

1.イタリアへの思い

イタリアに出会うまで

小さい頃は、食に関わる仕事に就くと想像していませんでした。

自宅が父の仕事場で、働く姿を見て育ちました。

職場はいつも緊張感に包まれていたので、現場を見ることを子供ながらに避けていました。

無意識のうちに、いつしか父の仕事に興味があまりなくなっていました。

家族で仕事を営む家庭に育った子は、そんな時期があるのではないでしょうか。

しかし、大学生のフランス留学中に、食文化に興味を持ち始めます。食べることは私のDNAのなかに組み込まれていたようです。

憧れていたフランス料理界で働くことを決心し、リヨンにあるポール・ボキューズ料理学校に入学。2年半勉強しました。

1年生では、フランス料理の基本を叩き込まれ、ソースのつくり方から、魚のさばき方にはじまり、「ブッフ・ブルギニョン」などの家庭料理まで学びました。

レストランを運営するための授業もあり、ワインやサービス、経理、建築など、さまざまな種類の学びが出来た学生生活でした。

世界各国の友人ができ、週末やバカンスの時期は、学校の友人とイタリア旅行に行くようになりました。

ラ・ビスボッチャの店内で語る土井光さん

バカンスはイタリア旅行

リヨンから電車で片道1時間ほどのトリノは頻繁に、格安ジェット便もあったローマへもよく足を運びました。

イタリアに行くと、フランスとイタリアは同じ大陸続きなのに「まったく違うなぁ…」と感じました。風土や食べもの、人のテンションさえちがう。

イタリア人は楽しそうに喋り、ウエルカム度が強く、好奇心が旺盛です。

フランスで美味しい料理を食べようとすると、予約が必要なレストランに行かなければなりません。

しかし、イタリアでは、予約なしで気軽に入れるレストランでも美味しく、ピザやストリートフード、アイスクリームなどの軽食も絶品。その点は「日本に似ている」と感じました。

経験を積んでいくうちに、すっかりイタリアの虜になりました。

ラ・ビスボッチャの店内で語る土井光さん

2.イタリア料理の魅力

五感に訴える力強い料理

フランス料理を学ぶ現場では、フランス人のプライドが高く、イタリア料理はフランス料理よりも格下という空気が漂っていました。

しかし、実際にイタリアに行くと、その先入観は見事にひっくり返りました。

イタリア料理は、旬の食材をたくさん使います。食材にあまり手を加えず、それぞれの存在感を生かす。野菜もシャキシャキとした食感が残る茹で加減に仕上げます。 

イタリアのレストランで、はじめてT ボーンステーキを食べたときは衝撃でした。

炭の香り、粗塩がしっかり効いて、量もかなり多い。ソースもないし、フランス料理の繊細さはないけど、メチャクチャ美味しかった。

イタリア料理は、見た目の美しさよりも力強い料理が多く、五感に訴えてきます。フランス料理は、色や食材の切り方、調理方法で攻めることが多い。

フランス料理でも、家庭料理のようなメニューはイタリア的要素があります。 しかし、野菜の扱い方はイタリア料理の方が優れていると感じてしまいました。

揚げる、焼く、茹でる。シンプルな調理法で味のポテンシャルを最大限に引き出す。もちろん調味料は塩コショウのみ。常に出来たてを食べさせ、食べることに命をかけます。

やはり素材と人間の距離が密接なのでしょう。

私は、祖父の代から日本の家庭料理を伝えていく家庭で育ちました。

母も気取った料理はつくらず、常に出来たての美味しいものをドーンと出す、という感じでしたから、イタリア料理が身近な存在に感じたのかもしれません。

ラ・ビスボッチャの店内で語る土井光さん

3.私とビスボッチャ

ビスボッチャで冒険

私がはじめてビスボッチャに来たのは、小学5年生でした。いまから20年ほど前の2000年代はじめ頃です。

両親は私が幼い頃、仕事の拠点を出身地の大阪から東京に移しました。両親は家庭料理の仕事の関係で、常に家庭料理を実践し、外食は、ほとんど行きませんでした。

しかし、両親が雑誌の情報で知ったビスボッチャに行ってピタリとはまり、それ以後「イタリアンはビスボッチャ」と決めて家族で通い続けています。

ラ・ビスボッチャの生ハムとメロン

小学生の頃、ビスボッチャで私のお気に入りのメニューは「生ハムとメロン」でした。

本場の生ハムのスライスしたての柔らかさ、強めの塩味は、家で食べたことのない味で、インパクトがありました。

お腹が空いているときに、一番最初に出てくるから、さらに美味しく感じたのかもしれません。

初めてリゾットを食べたのもビスボッチャでした。「パルメザンチーズのリゾット」が大好物でした。お米にチーズを合わせた美味しさに、飽きない魅力がありました。

サービススタッフが大きなチーズの塊の中でリゾットの仕上げをする姿にも興奮したのを覚えています。

ラ・ビスボッチャのパルメザンチーズのリゾット

いまは、1ヶ月に1回くらいのペースで、ビスボッチャに通っています。

小洒落ているのに、スーツで行かなければならない雰囲気でもなく、サービススタッフも素敵な方ばかりで、美味しくて、たくさん食べられて、広々としていて、レストランとしては珍しい存在だと思います。

毎月おすすめのメニューが変わり、常に新鮮な魅力にあふれています。

お店に行く前は、ホームページやSNSをよく見て、旬のメニューの予習をします。

料理の完成写真だけだとピンとこないメニューでも、食材や調理のプロセスの写真を見るうちに「へえ、そんなことまでやっているんだ」と思って興味がわきます。

コロナ禍だと、新しいお店を開拓する冒険は難しいですよね。ビスボッチャなら 「あっ!こんにちは」と挨拶するところからはじめられ、豊富なメニューのなかから冒険します。

毎回楽しく、重宝させて頂いています。